イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

kozzy

文字の大きさ
77 / 247
王位交代開始編

推しへの愛は深く  グラナダ視点

しおりを挟む
奴の氷像を叩き壊そうと剣を振り下ろしたその瞬間、何とも言えぬ嫌な空気が私を包み込んだ。
なんだこの纏わりつくねっとりとした蒸気は。

だが、何が起こるでもなく奴は粉塵になって消滅した。足元に血のように真っ赤な2つの魔石を残して。

「アデル、…アデル!大丈夫かアデルッ!」

…なんだ?兵たちがうずくまっている。私を遠巻きにして辛そうな顔をしているのは何故だ?

「か、閣下、その気配は一体…」
私のまとう瘴気が一段と変質している、のか…?
「も、申し訳ございません。ですがこれ以上近づくことが、で、出来ません。身体が圧し潰されそうな重圧を感じるのです…」
刀身に姿を映す。な!なんだこれは!これでは本当に化け物ではないか。

禍々しい瘴気はそばに寄るだけで近づく者の身体を壊す凶器のようだ。もとより赤い私の瞳はまるでヴィーヴルの魔石のような毒々しい血の色に変化した。

「くそっ!奴の最後のあがきか…これではもう、…人間には戻れぬな…」

「そ、そんなことない…」
アデルがマカフィーに支えられ身体を起こす。

「来るなアデル。来てはならぬ」
近寄れぬマカフィーの手を離れゆっくりとこちらへ向かってくる。

「だめだと言うに、アデル頼む、言う事を聞いてくれ」
「グラナダ様が言ったんですよ。『アデルの好きにさせよ』って」

「そうではないアデル。私はお前を壊したくはない」
「壊れませんよ僕は。オタクは丈夫いんです。2徹くらいなら出来るくらいに…え、へへ…」

「だ、だめだ!それ以上近づいては!」
「後ろ、下がらないでグラナダ様。歩くのちょっとツライ…」

決して下がろうとしないアデルから距離をとるため大股で離れる。ああ、アデルなぜ私がお前から離れねばならぬのか。

「  !  」
「捕まえた!っふ、…忘れてたでしょ、僕のへっぽこ転移」

笑って見せるアデルの鼻から血が滴る。
「き、傷ついたグラナダ様が、セクシーすぎてちょっと、興奮したんです…」

アイスブルーのアデルの瞳から血が流れる。
「悔しいがすぎると、血涙流すんですよ、オ、オタクの標準仕様です…」

「すぅ…。ねぇ、グラナダ様、僕は推し変はしない主義なんです。グラナダ様がジジイになったってキャーキャー言ってる自信があります。……後悔したって知らないってそう言ったでしょ。……ねぇキスして。僕の大好きなグラナダ様のキス…」

「…お前は……口づけが好きだな…アデル…」
「グラナダ様が教えたくせに…」

アデルの覚悟ごと抱きしめてキスをする。
アデル、こんな私でもまだ傍に居てくれると言うのだな。十分だ。触れ合うことがかなわなくとも…こうしてお前が居てくれるだけで…ふふ、こんなことなら私のものにしておけば良かっただろうか。

舌を絡め吐息すら漏らさぬキス。
腕の中でアデルの身体から次第に力が抜けていく。違う、これは、意識を保つことがもう出来ぬのだ。



「っ。もう良いアデル。最後の口づけはポーションの味か。覚えておこう。ふっ、ははは」







しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

処理中です...