135 / 247
エンタメ充実編
ティッカーテープパレード
しおりを挟む
陛下の乗った馬車群がグレインジャーを過ぎいくつかの小領地も過ぎ、もうすぐバーガンディに入領するよ。
沿道にはすでにとんでもない数の人が群がっている。イモ洗いってこういう事をいうんでしょ?夏の流れるプールだってここまでじゃないよ。
すでに身バレしまくっているからアラタで来てもそれなりに人だかりが出来ちゃう。
でも、アラタだと少しみんな気が楽になるみたい。
「あの、アデル様。入会希望者、取りまとめておきました。こ、これをっ!」
「えっ?取りまとめてくれたの?」
「そっ、そのほうが作業が楽かと思いまして…」
カワイイお姉さんがそういって束になった樹皮紙を渡してくれる。フフフ、羊皮紙から樹皮紙へと進化をとげた今、繊維紙まではもう少しである。
それにしても気の利くお姉さん。僕はお礼にマカフィーさんの秘蔵写真を一枚そっと握らせ…ファンクラブ会長の打診をしておいた。
街道をゆっくりとパレードしながら領主邸へ向かうその途中、敷地へ向かう細道手前にある大き目の空き地に特別観覧スペースをしつらえた。陛下とお兄様を中央に、その両サイドには護衛の騎士団員たち。右手に王都の、左手にバーガンディの。
そこからのびる観客席にはご招待の近隣貴族。そして反対側の陛下たちから一番離れた立見席。いわゆる外野席が一般開放エリアだよ。
その中でぐるりと一周、僕秘蔵のマーチングバンドが陛下たちの歓迎演奏をする予定。そして最後には…待っててね。絶対成功させて見せる!
おっと、鼓膜がしびれるような歓声が沸き上がる。
「アデル様、時間です。準備に向かわないと」
「ちょっと、ちょっとだけ!僕王都でもパレード見れなかった。せっかくうちわ作ってきたのに!くっ、リベンジを~」
やっぱり今日も見れなかった…
バタバタと準備が進むバックヤード。大丈夫。この日の為に特訓したんだから!
「あ、グラナダ様!こっちこっち!」
「アデルお前は…陛下たちが直に到着だと言うに落ち着きのない」
「それよりもグラナダ様にお願いが…」「ダメだ!」
「お前はこういう時ろくなことを言わん!」「簡単な事だから~!お願ぁ~い」
「ダメと言ったらダ「グ、グラナダ様のしてほしい事、なんでもしてア・ゲ・ル♡」」
「クリフ、強行軍のパレードでしたが疲れてはおりませんか?これが終わればアデルの待つ邸で少しは羽を伸ばせるよう手配してありますからね」
「疲れたのは其方であろうワイアット。色々と無茶をさせたし…心無い者も居ただろう?ここで少し癒されておくれ。王都へ戻ればまた丁々発止の日々だ」
「そうですね。でももう一人の身体じゃありませんから無理はしませんよ。」
「ふふ、アデルにもそう言っておやり。あの子は無茶ばかりする」
「えぇ全く困ったものです。あっ、始まりますよ」
何が始まるのかと静まりかえったその場に太鼓の音が聞こえてくる。整ったリズム、整った音、そして姿を現したのは…バーガンディ辺境伯、グラナダ・リーガル王弟閣下その人だった。
「叔父上⁉」「閣下⁉」
馬上の叔父上は大きく厚みのある旗を軽々と片手で持ち集団を先導してゆっくりと進む。
その衣装もいつもとは違う式典用の、派手ではないが豪華な装飾をあしらったものだ。
そしてその後に続くは長い杖を掲げた…指揮をとる者。
その後ろには叔父上とは違う小さめの旗を持つ隊が続き、寸分違わぬ揃いの動作で旗を小気味よく振り回しながらきびきびと態勢を変えていく。
大中小の横笛、縦笛の部隊が素晴らしく調和のとれた音階を幾重にも重ね、その後ろをやはり大中小の太鼓の部隊が身体が弾みだすようにリズムを刻む。
時折、太鼓のバチを投げたり回したりするのが、またなんとも楽しい。
おそらく時間にすれば半刻にも満たない短い時間。だがとても愉快な心弾む時間だった。
それはこの場に居た全ての者が感じたようで、場内には大きな拍手が沸き上がった。
隊列から一人の兵が太鼓を外し近づいてくる。途中、従者から大きな花束を受け取って。
そしてその大きな花束を持ち私たちの顔前に立つと深くかぶったその四角い帽子を外す。
「陛下、お兄様、ご婚礼おめでとうございます。えへっ」
馬上の叔父上がカッと目を見開いたのが分かった。
沿道にはすでにとんでもない数の人が群がっている。イモ洗いってこういう事をいうんでしょ?夏の流れるプールだってここまでじゃないよ。
すでに身バレしまくっているからアラタで来てもそれなりに人だかりが出来ちゃう。
でも、アラタだと少しみんな気が楽になるみたい。
「あの、アデル様。入会希望者、取りまとめておきました。こ、これをっ!」
「えっ?取りまとめてくれたの?」
「そっ、そのほうが作業が楽かと思いまして…」
カワイイお姉さんがそういって束になった樹皮紙を渡してくれる。フフフ、羊皮紙から樹皮紙へと進化をとげた今、繊維紙まではもう少しである。
それにしても気の利くお姉さん。僕はお礼にマカフィーさんの秘蔵写真を一枚そっと握らせ…ファンクラブ会長の打診をしておいた。
街道をゆっくりとパレードしながら領主邸へ向かうその途中、敷地へ向かう細道手前にある大き目の空き地に特別観覧スペースをしつらえた。陛下とお兄様を中央に、その両サイドには護衛の騎士団員たち。右手に王都の、左手にバーガンディの。
そこからのびる観客席にはご招待の近隣貴族。そして反対側の陛下たちから一番離れた立見席。いわゆる外野席が一般開放エリアだよ。
その中でぐるりと一周、僕秘蔵のマーチングバンドが陛下たちの歓迎演奏をする予定。そして最後には…待っててね。絶対成功させて見せる!
おっと、鼓膜がしびれるような歓声が沸き上がる。
「アデル様、時間です。準備に向かわないと」
「ちょっと、ちょっとだけ!僕王都でもパレード見れなかった。せっかくうちわ作ってきたのに!くっ、リベンジを~」
やっぱり今日も見れなかった…
バタバタと準備が進むバックヤード。大丈夫。この日の為に特訓したんだから!
「あ、グラナダ様!こっちこっち!」
「アデルお前は…陛下たちが直に到着だと言うに落ち着きのない」
「それよりもグラナダ様にお願いが…」「ダメだ!」
「お前はこういう時ろくなことを言わん!」「簡単な事だから~!お願ぁ~い」
「ダメと言ったらダ「グ、グラナダ様のしてほしい事、なんでもしてア・ゲ・ル♡」」
「クリフ、強行軍のパレードでしたが疲れてはおりませんか?これが終わればアデルの待つ邸で少しは羽を伸ばせるよう手配してありますからね」
「疲れたのは其方であろうワイアット。色々と無茶をさせたし…心無い者も居ただろう?ここで少し癒されておくれ。王都へ戻ればまた丁々発止の日々だ」
「そうですね。でももう一人の身体じゃありませんから無理はしませんよ。」
「ふふ、アデルにもそう言っておやり。あの子は無茶ばかりする」
「えぇ全く困ったものです。あっ、始まりますよ」
何が始まるのかと静まりかえったその場に太鼓の音が聞こえてくる。整ったリズム、整った音、そして姿を現したのは…バーガンディ辺境伯、グラナダ・リーガル王弟閣下その人だった。
「叔父上⁉」「閣下⁉」
馬上の叔父上は大きく厚みのある旗を軽々と片手で持ち集団を先導してゆっくりと進む。
その衣装もいつもとは違う式典用の、派手ではないが豪華な装飾をあしらったものだ。
そしてその後に続くは長い杖を掲げた…指揮をとる者。
その後ろには叔父上とは違う小さめの旗を持つ隊が続き、寸分違わぬ揃いの動作で旗を小気味よく振り回しながらきびきびと態勢を変えていく。
大中小の横笛、縦笛の部隊が素晴らしく調和のとれた音階を幾重にも重ね、その後ろをやはり大中小の太鼓の部隊が身体が弾みだすようにリズムを刻む。
時折、太鼓のバチを投げたり回したりするのが、またなんとも楽しい。
おそらく時間にすれば半刻にも満たない短い時間。だがとても愉快な心弾む時間だった。
それはこの場に居た全ての者が感じたようで、場内には大きな拍手が沸き上がった。
隊列から一人の兵が太鼓を外し近づいてくる。途中、従者から大きな花束を受け取って。
そしてその大きな花束を持ち私たちの顔前に立つと深くかぶったその四角い帽子を外す。
「陛下、お兄様、ご婚礼おめでとうございます。えへっ」
馬上の叔父上がカッと目を見開いたのが分かった。
381
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる