イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

kozzy

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決断の時編

初舞台

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「いい、しししししっかりね。緊張しなくてもいいから。えーと、あの、なんだっけ」
「アデル様こそ落ち着いて下さい」
「アデル様が緊張してどうすんですか?」
「だだ、だって、あんなに人がghjkl」

興行主として舞台挨拶?こけら落としの挨拶をしようとしたけどグラナダ様の許可は下りなかった。
僕の代わりにセオドアさんが舞台に立つ。ナイジェルさんが第二部隊からヘッドハンティングしてきた同僚だ。

彼もまた、ナイジェルさんと同じく大変に有能感のある人なんだけど、彼の方が一般受けが良さそうだ。
キリっとしてリーダー感がある。挨拶には良さそうだとグレゴリー隊長からの助言があった。

拡声の魔石が調子悪いのか、舞台の上ではナイジェルさんが今日もクールにイライラしてる。そう、あまり顔には出さないけれど多少見て来た僕にはわかる。イライラしてる。
ナイジェルさんがセオドアさんをどうしてもって連れて来た理由。それは多分こんな場面。
合理性の塊みたいなナイジェルさんには不合理な事がどうにも我慢ならないようで…その緩和剤がセオドアさんなのだ。
めっちゃ赤ポジのセオドアさんはナイジェルさんの扱いが上手い。それをわかってて呼んだんだね。
あれほど頭の良い人がなんでバーガンディに燻ぶったのか不思議だったけど今ならわかるってもんだよね。



無事に拡声器をセオドアさんに引き渡し舞台袖に戻ってくるナイジェルさん。

「魔石大丈夫だった?」
「…欠けがありました。誰が用意したのかはっきりさせて締め上げなければ。」
「あーあーあー、お手柔らかにね…。コワー…」
「あいつか?いや確かあの時は…」
「あっ、ほらほら見て、お揃いの制服で、可愛いよねー」



ナイジェルさんをなだめている間にセオドアさんの挨拶が終わってしまった…ぐぬぬ…

「アデル様、代理挨拶無事終わりましたよ。待ちに待った合唱団の出番です。こちらの見やすい場所へどうぞ」
「ありがとう。挨拶、良かったよすごく。聞けなかったけど多分」

僕の隣で眉を吊り上げてるナイジェルさんにすぐさま気付いたセオドアさん。
ほらね、こういうところが有能感を感じるんだよ。

「ほらナイジェル、いつまでもイライラしてないの。子供たちの出番そんな顔で見るつもりか?」

はっとしてナイジェルさんが顔を改める。そうだよ天使の歌声でそのイライラもふきとばしちゃえ。





最年長のコラート君を先頭に舞台に用意したひな壇に並ぶ子供たち。主役のソリストはキャンディス君だ。
今日は舞台が神殿と言う訳でも無いので某ねずみの国の楽曲なんかも教えてみた。
ちっちゃい子なんだからちっちゃい世界の歌が良いかと思って。
でも鼻歌でメロディーだけ教えたから歌詞はなんと合唱団の先生がつけてくれた。

聞こえてくる澄んだ歌声、耳に優しいハーモニー。
先生の歌詞は子供たちを夢の未来へつれていく。ありがとう先生。すっごくいい歌詞だね。

4曲ほどを歌いきるといったん戻ってくる子供たち。

「良かった!すごく良かったよ!よく頑張ったね!」

割れんばかりの喝采に、すぐ舞台へと戻り追加歌唱の準備へと入る。そのときキャンディーが転んじゃったんだ。

「ああっ」

思わず舞台に躍り出てキャンディス君を抱き起す。そしてその目の前には…





アベニアを膝に乗せ、豪華な招待席で舞台を見守るグラナダ様のひきつった顔があった…






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