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決断の時編
決別の夜 ③ グラナダ視点
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「これはこれは辺境伯閣下。約束もなく一体いかがなされた」
「おお、義父上。今日は神殿に用があってな。」
「神殿…まさか、生誕珠…アデルに何かっ⁉」
「安心せよ、そうではない。アデルは今も惰眠をむさぼっておるわ。ははは」
「そういうことであれば」
「卿よ。本日はゆっくり出来ぬ。執務は入れぬよう頼むぞ」
神殿に向かう前に釘をさすのを忘れない。
先ぶれを出し、神殿へと向かう。先見の鏡から聞き出せることはすでにない。
今日の相手は聖人殿だ。
「早朝から相すまぬ。だが事は急を要すのだ。聖魔力の奇蹟にまつわることゆえ聖人殿の助言を賜りたい」
「聖魔力に関わるとは捨て置きならぬ事。ぜひにお聞かせ願いたい」
アデルが過去を見たがっておる事。水見の鏡に無理ならと、自分で作り出そうとしておる事、そして例の珠からドノヴァンの魔力を排除した事、そこまでを話す。
「アデルはあの珠を魔力の塊と呼んでおるが、だがそれを水に沈めて聖杯の代わりに出来るとは思えぬのだ。」
「そうですね。おそらくは無理でございましょう。なんとも破天荒な奥方様であられますな。ですが辺境伯様はあの率直な奥方様の願いを叶えて差し上げたいとお思いなのですな」
「アデルが率直か…確かにそうではあるが、そうではないのだ。あれは何でも素直に言葉にするが本当の気持ちは言葉にせぬことが多い。特に誰かを慮るときは…。だがこの願いには…アデルの必死さを感じるのだ。おそらくはあれが口にした真実の願いであろう。ならば私はそれを叶えねばならぬ」
「真実の願い。そうまで必死であれば或いは…。」
聖人殿の提案はあの珠を聖杯ならぬ聖珠としてそのまま媒体とする事。
第三の眼と呼ばれる心眼と連結させ精神を時空へと飛ばす。だがこれには本人の揺らぎ無き確かな想いと、まるで見て来たかのような克明な心象が無ければ時空の狭間で迷う事となる。
「迷えばどうなる⁉」「戻ることは叶わぬと」
おそらくアデルには強い想いがある。そして高位の魔法を展開できるアデルには十分な想像力があるだろう。だがそれをさせて良いのか…否だ!アデルの願いを叶えると、決めたはずの心が容易く揺らぐ。
「辺境伯様、怖い顔をなさっておいでですな。心配なされますな。迷わせぬ術はございます」
「そうかっ!それはどのようにすれば良いのだ。」
「それには辺境伯様の存在が鍵となりましょう。ご自分の想いを信じなさいませ。そして奥方様のお気持ちも。奥方様が想いを馳せる者、その者の光こそが常に奥方様に道を示すのです。其方の有るべき場所はここであると。決して道に迷わぬよう…。その想いが届いたなら、奥方様は戻りましょう」
聖人殿に礼を言い神殿を後にする。神官長には十分な寄付を約束して。
アデルが想いを馳せるもの…私がそうであることは疑う余地も無いが楔は多いに越したことはない。
宮殿の転移陣を借りカマーフィールドへと飛ぶ。転移陣に使う4属性の魔石。その一つに光の魔力を注ぎ入れてもらうため。アデルの愛する義母上殿に…
「おかえりなさいませ旦那様。大事な用は全てお済でございますか?」
「いやまだだ。マカフィーとジョッシュをここへ呼べ」
用意した魔石に魔力を注ぎ込ませる。風と土と…これで揃った。
アデルにとってこの二人は従者というより今ではもはや友人のようだ。ならばこれらも又楔となろう。
最後の一つ、水の魔石にはカマーフィールドの父兄たちが何も聞かずに注いでくれた。
ああ…何故私の魔力は炎なのだ。アデルの…何の役にも立たぬとは…
嘆いたところで属性は変わらぬ。やることはやった。あとはその日に備えるまでだ。
「おお、義父上。今日は神殿に用があってな。」
「神殿…まさか、生誕珠…アデルに何かっ⁉」
「安心せよ、そうではない。アデルは今も惰眠をむさぼっておるわ。ははは」
「そういうことであれば」
「卿よ。本日はゆっくり出来ぬ。執務は入れぬよう頼むぞ」
神殿に向かう前に釘をさすのを忘れない。
先ぶれを出し、神殿へと向かう。先見の鏡から聞き出せることはすでにない。
今日の相手は聖人殿だ。
「早朝から相すまぬ。だが事は急を要すのだ。聖魔力の奇蹟にまつわることゆえ聖人殿の助言を賜りたい」
「聖魔力に関わるとは捨て置きならぬ事。ぜひにお聞かせ願いたい」
アデルが過去を見たがっておる事。水見の鏡に無理ならと、自分で作り出そうとしておる事、そして例の珠からドノヴァンの魔力を排除した事、そこまでを話す。
「アデルはあの珠を魔力の塊と呼んでおるが、だがそれを水に沈めて聖杯の代わりに出来るとは思えぬのだ。」
「そうですね。おそらくは無理でございましょう。なんとも破天荒な奥方様であられますな。ですが辺境伯様はあの率直な奥方様の願いを叶えて差し上げたいとお思いなのですな」
「アデルが率直か…確かにそうではあるが、そうではないのだ。あれは何でも素直に言葉にするが本当の気持ちは言葉にせぬことが多い。特に誰かを慮るときは…。だがこの願いには…アデルの必死さを感じるのだ。おそらくはあれが口にした真実の願いであろう。ならば私はそれを叶えねばならぬ」
「真実の願い。そうまで必死であれば或いは…。」
聖人殿の提案はあの珠を聖杯ならぬ聖珠としてそのまま媒体とする事。
第三の眼と呼ばれる心眼と連結させ精神を時空へと飛ばす。だがこれには本人の揺らぎ無き確かな想いと、まるで見て来たかのような克明な心象が無ければ時空の狭間で迷う事となる。
「迷えばどうなる⁉」「戻ることは叶わぬと」
おそらくアデルには強い想いがある。そして高位の魔法を展開できるアデルには十分な想像力があるだろう。だがそれをさせて良いのか…否だ!アデルの願いを叶えると、決めたはずの心が容易く揺らぐ。
「辺境伯様、怖い顔をなさっておいでですな。心配なされますな。迷わせぬ術はございます」
「そうかっ!それはどのようにすれば良いのだ。」
「それには辺境伯様の存在が鍵となりましょう。ご自分の想いを信じなさいませ。そして奥方様のお気持ちも。奥方様が想いを馳せる者、その者の光こそが常に奥方様に道を示すのです。其方の有るべき場所はここであると。決して道に迷わぬよう…。その想いが届いたなら、奥方様は戻りましょう」
聖人殿に礼を言い神殿を後にする。神官長には十分な寄付を約束して。
アデルが想いを馳せるもの…私がそうであることは疑う余地も無いが楔は多いに越したことはない。
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「いやまだだ。マカフィーとジョッシュをここへ呼べ」
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アデルにとってこの二人は従者というより今ではもはや友人のようだ。ならばこれらも又楔となろう。
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ああ…何故私の魔力は炎なのだ。アデルの…何の役にも立たぬとは…
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