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決断の時編
決別の夜 ④
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静かに横たわるアデル。握りしめた手から力が抜ける。
顔を近づけてみても呼吸を感じぬ。そうか、今ここには居ないのだな。
「かあたま…ないないっ」
「どうしたアベニア、うっ!」
「これ、ないない…ぴぇぇ…」
アデルが泣いている。止めどなく流れる涙。不思議なことに、ここには居ないアデルの感情が流れ込んでくる。
淡い光を感じてアベニアを見ると泣きながら魔力が漏れ出し私達3人を包んでいる。
「そうか…お前が…」
アベニアが伝えるアデルの感情。
寂しい、辛い、辛い、寂しい、だが暖かい涙。いつまでも止まらない涙。今こそ心から理解した。そうだ。お前は私を選んだのだな。
より一層強く手を握る。帰ってこい…早く帰ってこい。アベニアも待っておる。
あれからどれくらい時間がたったろうか…涙の止まったアデル。
気がつけば優しく微笑んでいる。ああ、聖母のようだ…
流れ込むのは慈くしむ感情。誰に向けられているのだろうか。私の知らぬどこかの誰か。だが、この者に嫉妬の心が湧かぬのは何故か…
だがそろそろ聖珠の光が消えかかっている。さぁアデル帰宅の時間だ。お前を待つ我らの元へ帰るのだ。
4年ぶりの日本、4年ぶりの僕の部屋、4年ぶりの僕の家族…ああ…これでもう思い残すことはない…
お話こそ出来なかったけど…僕の気持ちは置いてこれた。
アデルがちゃんと生きていることもわかった。幸せそうに笑ってた。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん、みんな元気そうでよかった…会えてよかった…でも本当は話したかった…
ああ、あの時池に近づかなければ……ぼくはここで、家から通える大学行って…バイト先の店長がこのままここで働けばって言ってくれたし…先行予約のライブチケットも…けっきょく観れずに終わっちゃった…
いけないっ…向こうの事考えすぎた…引きずられる…
真っ暗な時空間…何にもない…何も見えない…暗闇…怖い…ここはどこ…
大丈夫…うっすらと感じる大事な人たちの魔力…思い浮かべるんだ…グラナダ様の事、アベニアの事、トマスさん、マカフィーさん、ジョッシュさん、カマーフィールドの家族の事。バーガンディの広大な森、僕の演芸場…それから…僕にはもう、ここに大切な人達がいる…
帰らなきゃ…グラナダ様の元に帰らないと…遠くから…アベニアの声が聞こえる気がする…
ダメ…遠い…遠いよグラナダ様…勝手な事したくせに…こんなこと言ってごめんなさい…助けて…助けてグラナダ様…怖い、怖いよ…僕とお腹の子を守って…お願い…グラナダ様この子を守って…
意識がに何かに引っ張られる…熱い…焼ける…熱くて近づけない…焼け尽くされてしまう…
……ああ、あれは…太陽だ…真っ暗な時空間の宇宙に燃え盛る太陽が…あれはグラナダ様の…灼熱の炎…
あの炎…そうだよ…僕はグラナダ様の黒い炎にだって平気な顔で包まれたじゃないか…真っ赤な太陽…僕の大好きなバーガンディレッド…怖くなんかない…僕を包んでグラナダ様…そうしたら僕は…
「…大丈夫かアデルよ…」
「…グラナダ様の炎が見えた…グラナダ様…僕を迎えに来て…くれたの…?」
「アベニアが私とお前をつなげてくれた…呼んだか?私を」
「…助けてって呼んだよ…この子を守ってって…」
グラナダ様の腕の中で目が覚める。強く強く抱きしめられた腕の中で。
「アビー…良い子…おいで」
「かあたま、めっ!」
「グス…えへへ、叱られちゃった…」
「もう心残りは無いか?」「うん!」
僕とグラナダ様に挟まれてアビーが苦しそうにしてたけどちょっとだけ我慢してね。
今はこうして…抱きしめ合っていたいから…
顔を近づけてみても呼吸を感じぬ。そうか、今ここには居ないのだな。
「かあたま…ないないっ」
「どうしたアベニア、うっ!」
「これ、ないない…ぴぇぇ…」
アデルが泣いている。止めどなく流れる涙。不思議なことに、ここには居ないアデルの感情が流れ込んでくる。
淡い光を感じてアベニアを見ると泣きながら魔力が漏れ出し私達3人を包んでいる。
「そうか…お前が…」
アベニアが伝えるアデルの感情。
寂しい、辛い、辛い、寂しい、だが暖かい涙。いつまでも止まらない涙。今こそ心から理解した。そうだ。お前は私を選んだのだな。
より一層強く手を握る。帰ってこい…早く帰ってこい。アベニアも待っておる。
あれからどれくらい時間がたったろうか…涙の止まったアデル。
気がつけば優しく微笑んでいる。ああ、聖母のようだ…
流れ込むのは慈くしむ感情。誰に向けられているのだろうか。私の知らぬどこかの誰か。だが、この者に嫉妬の心が湧かぬのは何故か…
だがそろそろ聖珠の光が消えかかっている。さぁアデル帰宅の時間だ。お前を待つ我らの元へ帰るのだ。
4年ぶりの日本、4年ぶりの僕の部屋、4年ぶりの僕の家族…ああ…これでもう思い残すことはない…
お話こそ出来なかったけど…僕の気持ちは置いてこれた。
アデルがちゃんと生きていることもわかった。幸せそうに笑ってた。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん、みんな元気そうでよかった…会えてよかった…でも本当は話したかった…
ああ、あの時池に近づかなければ……ぼくはここで、家から通える大学行って…バイト先の店長がこのままここで働けばって言ってくれたし…先行予約のライブチケットも…けっきょく観れずに終わっちゃった…
いけないっ…向こうの事考えすぎた…引きずられる…
真っ暗な時空間…何にもない…何も見えない…暗闇…怖い…ここはどこ…
大丈夫…うっすらと感じる大事な人たちの魔力…思い浮かべるんだ…グラナダ様の事、アベニアの事、トマスさん、マカフィーさん、ジョッシュさん、カマーフィールドの家族の事。バーガンディの広大な森、僕の演芸場…それから…僕にはもう、ここに大切な人達がいる…
帰らなきゃ…グラナダ様の元に帰らないと…遠くから…アベニアの声が聞こえる気がする…
ダメ…遠い…遠いよグラナダ様…勝手な事したくせに…こんなこと言ってごめんなさい…助けて…助けてグラナダ様…怖い、怖いよ…僕とお腹の子を守って…お願い…グラナダ様この子を守って…
意識がに何かに引っ張られる…熱い…焼ける…熱くて近づけない…焼け尽くされてしまう…
……ああ、あれは…太陽だ…真っ暗な時空間の宇宙に燃え盛る太陽が…あれはグラナダ様の…灼熱の炎…
あの炎…そうだよ…僕はグラナダ様の黒い炎にだって平気な顔で包まれたじゃないか…真っ赤な太陽…僕の大好きなバーガンディレッド…怖くなんかない…僕を包んでグラナダ様…そうしたら僕は…
「…大丈夫かアデルよ…」
「…グラナダ様の炎が見えた…グラナダ様…僕を迎えに来て…くれたの…?」
「アベニアが私とお前をつなげてくれた…呼んだか?私を」
「…助けてって呼んだよ…この子を守ってって…」
グラナダ様の腕の中で目が覚める。強く強く抱きしめられた腕の中で。
「アビー…良い子…おいで」
「かあたま、めっ!」
「グス…えへへ、叱られちゃった…」
「もう心残りは無いか?」「うん!」
僕とグラナダ様に挟まれてアビーが苦しそうにしてたけどちょっとだけ我慢してね。
今はこうして…抱きしめ合っていたいから…
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