イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

kozzy

文字の大きさ
198 / 247
決断の時編

決別の夜 ④

しおりを挟む
静かに横たわるアデル。握りしめた手から力が抜ける。
顔を近づけてみても呼吸を感じぬ。そうか、今ここには居ないのだな。

「かあたま…ないないっ」
「どうしたアベニア、うっ!」
「これ、ないない…ぴぇぇ…」

アデルが泣いている。止めどなく流れる涙。不思議なことに、ここには居ないアデルの感情が流れ込んでくる。
淡い光を感じてアベニアを見ると泣きながら魔力が漏れ出し私達3人を包んでいる。

「そうか…お前が…」

アベニアが伝えるアデルの感情。
寂しい、辛い、辛い、寂しい、だが暖かい涙。いつまでも止まらない涙。今こそ心から理解した。そうだ。お前は私を選んだのだな。
より一層強く手を握る。帰ってこい…早く帰ってこい。アベニアも待っておる。

あれからどれくらい時間がたったろうか…涙の止まったアデル。
気がつけば優しく微笑んでいる。ああ、聖母のようだ…
流れ込むのは慈くしむ感情。誰に向けられているのだろうか。私の知らぬどこかの誰か。だが、この者に嫉妬の心が湧かぬのは何故か…

だがそろそろ聖珠の光が消えかかっている。さぁアデル帰宅の時間だ。お前を待つ我らの元へ帰るのだ。






4年ぶりの日本、4年ぶりの僕の部屋、4年ぶりの僕の家族…ああ…これでもう思い残すことはない…
お話こそ出来なかったけど…僕の気持ちは置いてこれた。
アデルがちゃんと生きていることもわかった。幸せそうに笑ってた。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん、みんな元気そうでよかった…会えてよかった…でも本当は話したかった…

ああ、あの時池に近づかなければ……ぼくはここで、家から通える大学行って…バイト先の店長がこのままここで働けばって言ってくれたし…先行予約のライブチケットも…けっきょく観れずに終わっちゃった…



いけないっ…向こうの事考えすぎた…引きずられる…
真っ暗な時空間…何にもない…何も見えない…暗闇…怖い…ここはどこ…

大丈夫…うっすらと感じる大事な人たちの魔力…思い浮かべるんだ…グラナダ様の事、アベニアの事、トマスさん、マカフィーさん、ジョッシュさん、カマーフィールドの家族の事。バーガンディの広大な森、僕の演芸場…それから…僕にはもう、ここに大切な人達がいる…
帰らなきゃ…グラナダ様の元に帰らないと…遠くから…アベニアの声が聞こえる気がする…


ダメ…遠い…遠いよグラナダ様…勝手な事したくせに…こんなこと言ってごめんなさい…助けて…助けてグラナダ様…怖い、怖いよ…僕とお腹の子を守って…お願い…グラナダ様この子を守って…


意識がに何かに引っ張られる…熱い…焼ける…熱くて近づけない…焼け尽くされてしまう…

……ああ、あれは…太陽だ…真っ暗な時空間の宇宙に燃え盛る太陽が…あれはグラナダ様の…灼熱の炎…

あの炎…そうだよ…僕はグラナダ様の黒い炎にだって平気な顔で包まれたじゃないか…真っ赤な太陽…僕の大好きなバーガンディレッド…怖くなんかない…僕を包んでグラナダ様…そうしたら僕は…





「…大丈夫かアデルよ…」
「…グラナダ様の炎が見えた…グラナダ様…僕を迎えに来て…くれたの…?」
「アベニアが私とお前をつなげてくれた…呼んだか?私を」
「…助けてって呼んだよ…この子を守ってって…」

グラナダ様の腕の中で目が覚める。強く強く抱きしめられた腕の中で。

「アビー…良い子…おいで」
「かあたま、めっ!」
「グス…えへへ、叱られちゃった…」

「もう心残りは無いか?」「うん!」




僕とグラナダ様に挟まれてアビーが苦しそうにしてたけどちょっとだけ我慢してね。
今はこうして…抱きしめ合っていたいから…













しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。 するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。 だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。 過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。 ところが、ひょんなことから再会してしまう。 しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。 「今度は、もう離さないから」 「お願いだから、僕にもう近づかないで…」

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。

ホマレ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。 その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。 胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。 それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。 運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

処理中です...