イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

kozzy

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あっちからみたらこっちが異世界

もう一人の新太 ③

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ある日お姉ちゃんが僕の部屋へ来て言った。

「あんたの先行予約のチケット、ちゃんと払い込んであげといたからね。だけどどうする?もう嫌になっちゃった?JJFの初ドームだって楽しみにしてたでしょ?」
あの怖い顔の人の演奏会があるみたい。お姉ちゃんは僕がきっと元気になるって信じてくれてたんだって。

僕は少し考えて、それでもやっぱり行くことにした。
だってこれは新太君の楽しみにしてた演奏会。

言い訳するつもりはないけれど、ここに来たのはわざとじゃない…僕にもどうしてこうなったかわからない…だけど僕が新太君の居場所を奪っちゃったのは事実だから、せめて楽しみにしてた演奏会、代わりに行こう、行かなきゃって思ったんだ。

お姉ちゃんに付いてきてもらって大きな大きな丸い屋根のホールに入る。
ヒンヤリした空気の中、大勢の人がその演奏を待っていて…そうしたら〝オープニングアクト”っていうのが始まった。

「ハ~イ、みんな~スカイパレスだよっ!今日は僕たちの尊敬する先輩、JJFの初ドームへようこそ!みんな準備はできてるかなっ~?」
「「「出来てるーー!」」」
「「じゅんく~ん」」
「僕らの曲でこの会場を、ねぇ!先輩たちの為に一緒に温めてくれるかなっ?」
「「「「きゃぁぁぁぁーーー!!!!」」」」


じゅんくんっていうんだこの人…あっ、なんかクリフト殿下みたい…キラキラした王子様の衣装を着て、頭の上にちっちゃな冠が輝いている。
えぇ~?その冠はかなり小さい…頭の大きさに合って無いよ?

歌って、踊って、光を浴びて…すごいすごい!わぁキレイ!

「みんな~!実はひとつ報告があるんだ!実はね…僕のアニマル・フレンドミュージカルの出演が決まりましたっっ!」
「「「「わぁぁぁぁ!おめでとー!」」」」
「キツネのリックが僕の役だよ。みんな~、見に来てね~!」
「行くよ~!」
「全部行く~!」
「じゅんく~ん!」
「じゃぁ記念にこの曲!〝ミステリアスフォックス”!」

あっ!頭にキツネのお耳が生えた!えっ?どうして?どうなってるの?
可愛い!すごく可愛い!王子様がキツネになった!

「じゃあね~みんなありがと~!舞台で待ってるよ~!絶対来てねっ!」

ええっ!行くよ行きたい!僕も行く!せっかく自由な世界に来たんだもの。ほら見て、僕より小柄な女の子だってこうしてここに来てるのに。

その後の新太君の好きな団体は僕には少し難しすぎて…すごく難しい踊りと歌で少し理解が追い付かない…
…最初のじゅんくんのほうが良かったな…

お姉ちゃんにそう話したらホールの外でじゅんくんの顔のついた〝クリアファイル”を買ってくれた。







今日も僕は一人学校へ。最初の何日かはお母さんが車で送ってくれたけどもう道は思い出したから大丈夫って断った。
この世界はとても平和で、特別な場所以外は争いなんてないし怖い人も居ない。
それに一番は…こうして独りで道を歩いても…誰も僕を気にしない。

ああなんて気が楽なんだろう…僕をいつでも苦しめたあの姿もあの影も…もうどこにもない。
どこへだって一人で行けるんだ。ここでは誰も僕を見ない。




「おい三木、ちょっとこっち!」
補習のついでに先生と〝進路”についての話をする。

新太君が進むはずだった将来は今の僕には荷が重すぎて…お母さんと相談して〝専門学校”へ行くことになった。
〝社会人”になるのはまだ早いって、家族みんながそう言うから。
お母さんが集めてくれたたくさんの資料。その中の一つが目に留まる。
…うさぎやキツネの耳を付けた女の子や男の子の絵…あ、じゅんくんだ……僕の進路が決まった瞬間。

「新太なぁ、×××アニメデザイン専門学校行くらしいわ。お前もそこだったろ?願書出しに行くの付いてってやれ。」
「アニ学?新太君大学希望じゃなかったっけ?」
「ほら、例の事故、あれで記憶障害起こしてて勉強してきたこと忘れちゃってるんだわ。いいからほれ、連れてってやれよ、頼んだぞ」

こうして僕は生まれて初めて家族以外と出かけることになったんだ。

三木君と新太君は所属が違うみたいで特に一緒に居たわけじゃなかったけど、〝ラノベ”っていう読み物や〝アールピージー”っていうゲームのことで時々お話していたみたい。
新太君は誰とでも仲良くて…その恩恵で会う人会う人良くしてくれる。三木君もそんな一人。

三木君は口調もゆっくりで物腰も柔らかく僕を委縮させるものが何もない。
〝二次元”の話が始まると別人みたいに話し出すけど、それだって笑って聞いていられる。
「二次こそ至高!三次は惨事!」
何を言っているのかわからないけど、安心できる人なのは間違いない。

「あっ、それアニフレの…新太君アニフレ好きだっけ?」

僕のクリアファイルを見て三木君が反応する。

「こ、これ、そのじゅんくんが…」
「あ~、フレミュね。えっ?いつの間に推し変したの?新太君JJFの熱心なファンだったよね?」

トラウマの話でごまかすと案外すんなり分かってくれた。
そうして目的地へ着くまでの1時間、僕はずっとアニフレの話を聞いてたんだ。








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