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あっちからみたらこっちが異世界
もう一人の新太 ④
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「『アニフレ』の大きな特徴の一つがね、この人間が動物のコスプレをしているように見せかけて動物が人間の外見をしているところでね、この違いは天と地ほどの違いが…ーーー」
「へぇー」
「低予算かつ少数精鋭で作られた初期のこのゆるい作画、ゆるいグラフィックが逆にこの世界観を…ーーー」
「そうなんだ」
「深夜からじわりじわりと評判が広まりメディアミックス本来の…ーーー」
「それはすごいね」
うんうんとうなずく僕の横で楽しそうに語る三木君。本気の熱意が伝わってくる。
三木君がこんなにアニフレ好きだったなんて!だけど聞いてるだけで僕も興味が湧いて来た。
「フレミュもいいけどアニメで観たらもっと世界観広がるよ?月曜深夜1時15分からだから、絶対見て。あっ、そうだ。チャットしながら観ようよ。見どころ解説してあげられるし?」
「チャット!」
帰りの電車で三木君から提案されたチャット…いわれた通りに用意して、文字でお話しながらアニフレを観る。
読み書きに不自由がなくて良かった…改めてホッとする。
こうして毎週月曜深夜の僕のお楽しみが出来た。
そうこうしてるうちに学校が始まって…だけど三木君が居たから心配なんてしなかった。
一緒に授業受けて、一緒にお弁当食べて、お休みには一緒にアニメショップへ行って。
僕がじゅんくん好きだからって、タレントショップにも連れて行ってくれた。
三木君が好きなファンタジーは僕の居た世界に少しだけ似てて…それで僕はある日の事、思い切って僕の身に起きたことを話してみたんだよ。
「ねぇ三木君…僕、実は本物の新太じゃないんだ…」
「えっ?どういう事?」
異世界での僕の事。辛くて辛くて身を投げたこと。何かの魔法でここに飛ばされたこと。気がついたら新太君になってたこと。
信じてもらえなくていい…気がふれたって思われても良いから、三木君に聞いてもらいたい。
そんな思いで必死だった。
だけど僕の話を聞いた三木君は、ちょっと興奮してこう言ったんだ。
「ふぉぉぉぉ!信じる!信じるよ新太君!だって僕は宇宙人だってどこかにいるって信じてるからね!異世界だって…絶対ないなんて誰にも断言出来っこない!可能性はゼロじゃない!」
「ふゎぁ…三木君信じてくれるの…?」
話したこっちがびっくりだ。
それで?それで?と話をせがまれ、僕は領地の中しか知らなかったけど…魔法のこととか、魔獣のこととか、請われるまま話せばとても喜んでくれた。
ほんとに信じてるかはわからない…〝ラノベ”のお話と思っているのかも。
だけど本当の僕の事を、頭から否定しないで聞いてくれる人が居たことで…僕はここに来てから初めて、生きてるって思えたんだよ。
そして三木君は、新太君の居場所を奪ったことへの後ろめたさを口にする僕に少し考えてからこう言ったんだ。
「僕の知ってる新太君は、元気で前向きで、アイドルと楽しいことが大好きで、それに思いやりがあって…一度だって誰かのことを悪く言ってるの見たことない。」
「三木君の知ってる新太君…」
「高校に入学してすぐの時、まだ友人も出来ず毎日毎日ただ来て帰るだけだった。そうしたらね、ある日新太君が一冊のラノベ本を持って近寄って来て「そのかばんのキーホルダーこれでしょ?」って大きな声で話しかけてきて。気がついたら他のオタ趣味の子も集まって来て。」
「友達になったの?」
「友達になったよ。でも新太君は二次元よりも三次元に夢中だったから。僕に友人を作るきっかけだけくれて、自分はさっさと女子たちのグループに戻っちゃった。」
「女子!」
「だからね、きっと新太君なら何処に居たって楽しく暮らしてると思う。だからね、ここに居る新太君も楽しく暮らすのがいいと思うんだ。あの新太君ならきっとそのほうが喜ぶよ。」
それから僕は毎日をとても大切に暮らしてる。
家族には、…三木君と違い本当のことは話せない。これ以上悲しい思いはさせたくないから、僕はちゃんと新太で居なくちゃ。
バイトだって始めたんだよ。新太君が行ってた洋食屋。記憶障害だからって遠慮したけどいいからおいでって言ってくれて…役立たずだけど可愛がってもらってる。
三木君はというと、「2.5次元なら許容範囲」って言って、毎回アニフレの舞台に付いて来てくれる。
優しい三木君、僕はもう三木君が居ないと息も出来ない。
「三木君…僕の事好きになってくれないかな…三次元だから無理かな…ううんっ、前みたいにあきらめたりなんかしない!頑張る!僕頑張るんだから!」
誰かの目にとまりたい…そんなことを思う日が来るなんて考えたこともなかった…
あれほど人の目が怖かったのに…好きな人に見られるのがこんなに嬉しい事だったなんて。
今日はフレミュの公演日。大きなアリーナが満員御礼だ。
三木君を通して知り合ったアニフレ仲間はやっぱりとても話しやすくって、たまにちょっと挙動不審だけど、僕も人見知りだからお互い様だよ。
みんなでサイリウムを振ってみんなで覚えた振付をして、みんなで同じ歌を歌って…。
友達や大好きな人と過ごす至福の時間。ふぅって一息ついたとき、何かの気配を感じたんだ。
優しい優しい暖かい気配…なぜかわからないけど新太君がここに居る…そう思った…
その優しい気配に包まれてたら…なにかすべてが許された気がして…
ごめんなさい新太君…僕の事故に巻き込んで…ううん、違うね、こう言うんだ。
ありがとう新太君。僕にもう一つの世界をくれて。僕は君のくれた世界を大切に大切に生きていくから…だから…
いつか二人ともの命の灯が消えるとき…時空の狭間のどこか遠くで…報告会をしよう?どっちがたくさん幸せになったか…ねぇ約束だよ。
もう一人の新太君…
「へぇー」
「低予算かつ少数精鋭で作られた初期のこのゆるい作画、ゆるいグラフィックが逆にこの世界観を…ーーー」
「そうなんだ」
「深夜からじわりじわりと評判が広まりメディアミックス本来の…ーーー」
「それはすごいね」
うんうんとうなずく僕の横で楽しそうに語る三木君。本気の熱意が伝わってくる。
三木君がこんなにアニフレ好きだったなんて!だけど聞いてるだけで僕も興味が湧いて来た。
「フレミュもいいけどアニメで観たらもっと世界観広がるよ?月曜深夜1時15分からだから、絶対見て。あっ、そうだ。チャットしながら観ようよ。見どころ解説してあげられるし?」
「チャット!」
帰りの電車で三木君から提案されたチャット…いわれた通りに用意して、文字でお話しながらアニフレを観る。
読み書きに不自由がなくて良かった…改めてホッとする。
こうして毎週月曜深夜の僕のお楽しみが出来た。
そうこうしてるうちに学校が始まって…だけど三木君が居たから心配なんてしなかった。
一緒に授業受けて、一緒にお弁当食べて、お休みには一緒にアニメショップへ行って。
僕がじゅんくん好きだからって、タレントショップにも連れて行ってくれた。
三木君が好きなファンタジーは僕の居た世界に少しだけ似てて…それで僕はある日の事、思い切って僕の身に起きたことを話してみたんだよ。
「ねぇ三木君…僕、実は本物の新太じゃないんだ…」
「えっ?どういう事?」
異世界での僕の事。辛くて辛くて身を投げたこと。何かの魔法でここに飛ばされたこと。気がついたら新太君になってたこと。
信じてもらえなくていい…気がふれたって思われても良いから、三木君に聞いてもらいたい。
そんな思いで必死だった。
だけど僕の話を聞いた三木君は、ちょっと興奮してこう言ったんだ。
「ふぉぉぉぉ!信じる!信じるよ新太君!だって僕は宇宙人だってどこかにいるって信じてるからね!異世界だって…絶対ないなんて誰にも断言出来っこない!可能性はゼロじゃない!」
「ふゎぁ…三木君信じてくれるの…?」
話したこっちがびっくりだ。
それで?それで?と話をせがまれ、僕は領地の中しか知らなかったけど…魔法のこととか、魔獣のこととか、請われるまま話せばとても喜んでくれた。
ほんとに信じてるかはわからない…〝ラノベ”のお話と思っているのかも。
だけど本当の僕の事を、頭から否定しないで聞いてくれる人が居たことで…僕はここに来てから初めて、生きてるって思えたんだよ。
そして三木君は、新太君の居場所を奪ったことへの後ろめたさを口にする僕に少し考えてからこう言ったんだ。
「僕の知ってる新太君は、元気で前向きで、アイドルと楽しいことが大好きで、それに思いやりがあって…一度だって誰かのことを悪く言ってるの見たことない。」
「三木君の知ってる新太君…」
「高校に入学してすぐの時、まだ友人も出来ず毎日毎日ただ来て帰るだけだった。そうしたらね、ある日新太君が一冊のラノベ本を持って近寄って来て「そのかばんのキーホルダーこれでしょ?」って大きな声で話しかけてきて。気がついたら他のオタ趣味の子も集まって来て。」
「友達になったの?」
「友達になったよ。でも新太君は二次元よりも三次元に夢中だったから。僕に友人を作るきっかけだけくれて、自分はさっさと女子たちのグループに戻っちゃった。」
「女子!」
「だからね、きっと新太君なら何処に居たって楽しく暮らしてると思う。だからね、ここに居る新太君も楽しく暮らすのがいいと思うんだ。あの新太君ならきっとそのほうが喜ぶよ。」
それから僕は毎日をとても大切に暮らしてる。
家族には、…三木君と違い本当のことは話せない。これ以上悲しい思いはさせたくないから、僕はちゃんと新太で居なくちゃ。
バイトだって始めたんだよ。新太君が行ってた洋食屋。記憶障害だからって遠慮したけどいいからおいでって言ってくれて…役立たずだけど可愛がってもらってる。
三木君はというと、「2.5次元なら許容範囲」って言って、毎回アニフレの舞台に付いて来てくれる。
優しい三木君、僕はもう三木君が居ないと息も出来ない。
「三木君…僕の事好きになってくれないかな…三次元だから無理かな…ううんっ、前みたいにあきらめたりなんかしない!頑張る!僕頑張るんだから!」
誰かの目にとまりたい…そんなことを思う日が来るなんて考えたこともなかった…
あれほど人の目が怖かったのに…好きな人に見られるのがこんなに嬉しい事だったなんて。
今日はフレミュの公演日。大きなアリーナが満員御礼だ。
三木君を通して知り合ったアニフレ仲間はやっぱりとても話しやすくって、たまにちょっと挙動不審だけど、僕も人見知りだからお互い様だよ。
みんなでサイリウムを振ってみんなで覚えた振付をして、みんなで同じ歌を歌って…。
友達や大好きな人と過ごす至福の時間。ふぅって一息ついたとき、何かの気配を感じたんだ。
優しい優しい暖かい気配…なぜかわからないけど新太君がここに居る…そう思った…
その優しい気配に包まれてたら…なにかすべてが許された気がして…
ごめんなさい新太君…僕の事故に巻き込んで…ううん、違うね、こう言うんだ。
ありがとう新太君。僕にもう一つの世界をくれて。僕は君のくれた世界を大切に大切に生きていくから…だから…
いつか二人ともの命の灯が消えるとき…時空の狭間のどこか遠くで…報告会をしよう?どっちがたくさん幸せになったか…ねぇ約束だよ。
もう一人の新太君…
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