イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

kozzy

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番外編 バーガンディの日常Ⅱ

アデルとグラナダ 第三子との道 グラナダ視点

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「…トマスよ、アデルは何をやっているのだ…あのような柱の陰に隠れなくとも中で座っていれば良かろうに」

「そう申し上げたのですが「誰も見てなかったらやるかもしれない」とおっしゃられて、こうして陰から旦那様の歌の練習を眺めておいでです」

「少しも隠れてはおらぬがな。だが懐かしい姿ではあるな。ふふ、そうだ。あの頃もこうやって毎日見ておったな」

「ええええ、どこへ移動しようが必ずついて参りましたな。旦那様は大層お怒りでございましたが…」

「言うなトマスよ。あの頃の私は瘴気に侵され絶望しておったのだ。誰一人信じられぬと、この私を受け入れるものなど居るはずが無いと。誰もが恐れおののくあの頃の私に、ふふ、まさか一目惚れをする者が居るなどとは考えつくはずも無かろうよ」


柱の陰に隠れていても刺さるほどに感じるアデルの熱視線。またいつものように鼻息を荒くしておるのだろう。何年たっても可愛い奴め。

ああ、思えばあの頃の私はなんと愚かであったことか。それがこうして子を3人も望むほど睦まじい仲になるとは…私を想い続けていてくれたアデルには感謝してもしきれない…そう思えば歌の一つや二つ。
アデルが喜び、ミルドレッドをあやせるのならばこの程度の歌など歌いこなして見せようぞ。
トマスや長年勤めてくれておる乳母のステラ、マカフィーあたりが笑顔で視線を寄越すのが煩わしいがそれだけだ。
愛しのアデルや子供たちの為ならば…

「父さま、ミルディに聞かせる歌のれんしゅう?」
「アベニア、聞いておったのか。そうだ。アデルが是非にと言うのでな。だがこれがなかなかに難解な曲で。先日などはなにやらおかしな手遊びなども入れ込もうとしておったわ。あやすだけなら鼻歌程度で構わないと思うのだがな」
「ふぅん。でも母さまは衣装を作るってはりきってたよ?」
「…何の衣裳だ?」
「父さまのじゃないかな?」
「衣装を着てどうするのだ」
「母さまの前でポーズきめたらいいんじゃないかな?僕の時はそれでおおよろこびだよ?」

アデル、まったく欲望に忠実な奴だ。とは言え、その欲望が私にだけ向けられることに言いようのない喜びを感じるのだが。




寝室に入ってからもアデルは机に向かい決して手を止めず何かを描き続けている。

「何を描いておるのだ。アベニアが話しておった衣装とやらか?」
「えへへ、どうしても着てみて欲しくって。青春の一ページと言うか思い出の一着と言うか」
「どれ見せて見よ。…襟は無いのか。ずいぶんと緩い感じだが部屋着なのか?」
「緩いですか?おかしいな、ロック調なのに。まぁいつもの正装ガチガチですもんね」
「お前は私に何をさせたいのだ…」

そう言いながら腕を引くと文句も言わず立ち上がる。そのままベッドへと誘うと呆れたように笑って乗り上げて来た。
産後とは言え、アデルは毎回自分自身にに治癒をかけ、ともすれば産前よりも調子が良いのが恒例となっている。
つまり…何も問題は無いと言うことだ。

「何をさせたいって…ちょっと暴走しましたけど、基本はミルドレッドに歌ってあげて欲しくて。あの子は多分可愛いものが好きだけどキラキラしたものも好きなはずだから、グラナダ様の王族オーラを全開にしたらきっと喜ぶんじゃないかって。」
「…それであの衣装なのか?趣が違うと思うのだが…」
「あー…、あの衣装は僕の観賞用です…。ミルドレッド用のは白を基調にした正装風ので。ついでにどっちも写真を一枚…いや、いっぱい…」
「アデルよ…」
「あぁっ!呆れないで!お願い!写真と歌ってる動画を少しだけ!今のこのちょっと渋さが混じって来たグラナダ様を残しておくのは僕の使命で…、この瞬間は二度とはこないんですよ!」
「…見返りはあるのだろうな…」
「えぇー、…もぅ、しょうがないなぁ。お望みはなんでしょうか、ご主人様♡」


その晩アデルがどうなったかは言うまでもない。





「あれ?閣下、大分覚えられましたね。もうほとんどいけんじゃないですか?ここまできたら手振りも覚えちゃったらどうです?」
「そう思うかジョッシュよ。しかし、ミルドレッドを歌ってあやすだけのことがこんなに大変とは…」
「分かってないですね閣下。あやすのはアデル様のご機嫌ですよ?アデル様のご機嫌はミルドレッド様にも領全体にも波及しますからね」
「アデルは大概ご機嫌だろうが」
「だけど何年も前からずっと言ってましたよ。「グラナダ様の歌声が聴きた~い♡」って」
「そういえばうっすら聞いた気もするが…聞き流しておったわ。そ、そうか…。ふむ、そうなのか…」


何年も前からそこまで望んでおったとは。ならばもっと真剣に取り組まなければならぬのではないか?
私はアデルが置いて行ったもう一枚の紙に手を伸ばした。




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