コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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二人は新たな絆を手に入れる

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ハイタッチ退場により有象無象が去った広場は落ち着きを取り戻していた。そのうち未練がましい何名かは、もうワンチャン、と広場に戻って来ている。
それでもあのヤンキーたちが戻らないってことは、今頃奴らはグヌヌ状態の二コラに謝り倒しているんだろう。ぷぷっ!

さて、奴らを追い出した今のうちに、フラヴィオには思う存分買い物を楽しんでいただこうか。
因みに僕の安全は、腹痛のお金持ちマッティオさんと強火担のトーニオ男爵が保証してくれている。

「ビアジョッティ伯爵、お待たせしてすみません」
「イ、…いやエヴァ嬢…。お、驚いたよ、君は人気者なのだね…」

エヴァの人気はフラヴィオの度肝を抜いたようだ。

「エヴァちゃん、こちらの御仁は?見ない顔だが…」

ムッとしているトーニオ氏。うーん、彼は新参に厳しいタイプか…

「従兄の友人で…近所に住むビアジョッティ伯爵です。身内みたいなものですよ」
「ビアジョッティ…おお!ではコレッティ家ご子息のご夫君であられるか!」

敵ではないと見なしたのか、いきなり握手を求める辺り実に分かりやすい…

そうこうしている間にも、どんどんファンクラブ会員かんじゃに囲まれる僕とフラヴィオ。彼らはフラヴィオを〝エヴァちゃんの従兄の友人”、そして〝既婚” ということで、一定の敬意を払…いや、むしろお近づきになることにしたようだ。

妻帯者の多かった朗読会と違い、ファンクラブ会員かんじゃは身分問わず独身の裕福な人がメインだ。(だからガラが良いんだよ)
文化的な話に花を咲かせた朗読会とうって変わって、経済を中心としたバリキャリの話題にフラヴィオもどこか面食らいながら、それでも熱心に話を聞いている。

「それで…話を戻すがイヴァーノ様のご夫君がここでエヴァちゃんと何をしておられたのかな」

いつ聞かれるかと思っていたが…このままスルーは出来なかったか…

「トーニオ卿…その…宝を探していたのですよ」
「宝を…?」
「トーニオ様!僕の発案した遊びですよ!フラヴィオ様には従兄に代わって付き添いを頼んでいたんですが…ボッチになる間の暇潰しです!」

貴族相手に「ガラクタから値打ちモノを探してた」、なんて言っちゃダメだよフラヴィオ?バカ正直なんだから…

「実はこのメルカート内に僕の口紅で『エヴァ』って書いたハンカチを隠しました。フラヴィオ様はそれを探していたんですよ。屋台の店主に迷惑かけちゃいけないので買い物もしながら…」

ここポイントは…の部分ね。

「そ、それでフラヴィオ殿は見つけたのか!」
「い、いえ…」

ガタガタガタ!

一斉に捜索に乗り出す捜査官たち。僕とフラヴィオは気が付いたらぽつん…と取り残されていた。
どう?木を隠すなら森の中に。いい案でしょ?ハンカチ?今から仕込むよ。ウソはイクナイ。

「さっ、フラヴィオも今のうちに。これで好きなだけ見てまわっても目立ちませんよ」
「あ、ああ…」

え?一緒にまわらないのかって?

…フラヴィオとはイヴのときにまわりたいから…
二人っきりのデートでね♡



さてその後だが…

その日のメルカートは終了時間まで貴族の買い物客であふれていたという…、そして、その日を境に後のメルカートにも、〝突発イベント”を期待する貴族の姿がチラホラ見受けられるようになったとか。

めでたしめでたし。




-----------------------



イヴの演じる、あれがエヴァ…
彼は声の高さも少しばかり変えている。見事なものだ…

あの姿を一度しか見たことのない私は、実際どのような様で過ごしているか、それを知ることは今までなかったのだが…

〝己の妻が男どもに囲まれている”、その状況をどう飲み込めばいいのか戸惑いを隠しきれないでいた。

イヴの深い考えが理解できたのは、その催しが終わり広場に平静が戻ってからのことだ。

男爵位をもつトーニオ卿、そして彼の仲間たちは、下位貴族とは言え陞爵を夢見る新進気鋭の若者が多く、マッティオ殿をはじめとした庶民階級の者たちもまた、野心を隠さぬやり手ばかりだ。

「いや~、エヴァちゃんにお布施するには稼がないとね」
「エヴァちゃんのために頑張ってるようなもんだよ」

その言葉に私が返答に困ったのは言うまでもないだろう…

まるで社交クラブにでもいるかのような、彼らの硬い話にもイヴは笑顔で耳を傾けている。
時折相槌をうっているところを見るに聞き流しているわけではなさそうだ。

彼らの話は私にとっても大いに刺激であったが、それでも中断された宝探し、イヴのくれた憩いの時間を再開出来ないことは残念でならない。

だがイヴの一言を合図に、彼らは一斉に広場へと散っていくではないか!

「これで好きなだけ見てまわっても大丈夫ですよ。フラヴィオも続き…ゆっくり見てきてください」

「ではイヴ、君も一緒にどうだろう」
「ううん、エヴァは目立っちゃうから。僕は目を盗んで着替えたらルイルイと一緒に待ってます」
「そうか…、何から何まで…すまない」
「いいえ、もとはと言えばニコラが怒ってるのは僕のせいだから」

そうとばかりは言えないだろう。火に油を注いだのは私自身だ。だがイヴのすまなそうな顔からは、彼が心底そう思っているだろうことが伝わってくる。
であれば、これ以上辞退してはイヴが気に病むかもしれない…

「では君が言うよう今度こそ楽しんでくるよ」





陽が真上に上る頃、そろそろ屋台は引き揚げ準備に入るようだ。

はあの後どこかの路地に姿を消したが、直後どこからともなく戻ったは、何食わぬ顔でルイージと共に屋台を覗き込んでいた。

「おかえりなさい兄様。宝物は見つかりましたか?」
「とても古い素敵なレリーフを見つけたよ。だが宝物と言うのであれば…」チラリ「イヴほどの宝は見つかりそうにない」

「だっ!ばっ!…もうフラヴィオってば…」テレテレ…「そんなこと言ったってもう何もでませんからね!…これ食べます?」

うむ。やはり私はエヴァよりイヴが好ましい。

「イヴこれは?」
「パニーニです。美味しいですよ。こっちがハムとチーズ、で、こっちがトマトとバジルとベーコンね」
「わぁ!」

具材の入った焼いたパン。気付いていたが、どうやらイヴは手で持って食すメニューが好きなようだ。
だがそれは外で食べるに適しているし、子供たちにもいたく好評なようだ。

「そうだ。イヴァーノ様これを」
「ルイージ君…なにこれ?」

「屋台で見つけた白粉入れです。リコとお金を出し合い買い求めました」
「リコ…大事なお小遣いを…」
「え、えへへ…」

なんということだ!ルイージとリコはどちらともなくイヴへ贈り物を買うと決めたのだという!

「どうしても感謝の気持ちをお伝えしたくて…」
「ル…ルイルイ!」ガバッ!ギュゥゥゥ…
「く、苦しいですイヴァーノ様…」



参ったな。今日ばかりは年下のルイージに教えられてしまったようだ…





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