コスプレ令息 王子を養う

kozzy

文字の大きさ
46 / 225

特設イベント会場での出来事

しおりを挟む
ザワザワ…
「お、おいあれ!病院のエヴァちゃんじゃないか!」
「ま、マジか!病院以外では会えないって話じゃなかったのかよ!」
「こんなところで会えるとか…、ラッキーすぎんだろ!」


ここで解説しておこう。
なぜエヴァがここまで人気になったのか。その理由は単純明快。
顔の可愛いさ、この道徳観の強い世界でギリッギリまで攻めたチラリズム、そして何より…

やっぱり属性がナースだったこと。これに尽きる!

ナースを選んだ理由は他に比べて高給だったからであって、そんなつもりはさらさらなかったのだけど…よく考えたら至極当然。
だって人の好みは色々あれど、古今東西ナースの嫌いな男などほぼ皆無と言っていい。(看護師じゃなくてナースってとこがポイントね)

グラフにしたら

スゴク好き50パー
好き20パー
わりと好き20パー
分からない7パー
嫌い3パー

ぐらいの割合だろう(テキトー)。


「エヴァちゃーん!」
「ハァーイ♡」

庶民街からも貴族街からも徐々に人が集まり騒然となる青空広場内。

だって普通エヴァには、けっして安くはない診察費を払わなければ会えないんだから。そう。診察費は握手券の代わりなんだね!

そしてあそこは王立病院。無理に押しかけたり騒ぎを起こせば王への不敬とみなされ罰せられる。気をつけてね。出禁になるよ!

ついでに最近では私設ファンクラブにより、貢ぎモノの量によって治療せっしょくの時間が制限されている。剥がしも居るよ!容赦ないよ!

行き帰りだって、ファンの数が増えてきた頃から気を回したセルジオとフランコ、または勤務明けの衛兵仲間が付き添ってくれている。うん!信頼のおけるボディーガードだね!

手の届かない高嶺の花。これぞまさにトップアイドルのあるべき姿!

あ、フラヴィオがこっち見た。

「あれは…イ…」

しー!言っちゃダメ!

「お、おい!あれもしかして噂のエヴァちゃんじゃないのか!なんでこんなとこにいんだよ!」
「ウソだろおい!俺会ってみたかったんだって。行こうぜ!こんなことしてる場合じゃねえ!」

よっしゃ、釣れた!おいで雑魚ども!つみれの具材にしてあげる!

「ち、ちょっと!」

フラヴィオの死角となる屋台付近で焦ってるニコラが見える。ニコラ…甘い言葉で頼んだんだろうけど…

いい?本物のアイドルとはファンに媚びたりしない。プロ意識を持ってお仕事をするだけでファンは勝手についてくるのだよ。

見るがいいニコラ!

「ハァーイみなさーん注目ー!お買い物楽しんでますかー?」

「エヴァちゃん!今日はどうしたの!」

声をかけてきたのは裕福な常連患者、いつも腹痛のマッティオさんだ。彼は僕がこれから突発イベントを始めるというと観客の取りまとめを自らかって出る、まさにファンの鑑だ。

「いいですかー?本日は〝エヴァと一緒に救急訓練”を行いまーす☆用意はいいですかー!」
「「「ウェーイ!」」」
「用意はいいですかー!」
「「「ウェェェェェイ!!!」」」

あ、ちょっと楽しい…

「まず緊急時における注意事項、良ーく聞いてくださいねー☆」
「「「ウェーイ!」」」

「誰かにケガ人役を…、あっ!そこのあなた!その屋台の向こうに隠れてるピンクブラウンの髪色をした可愛い人!」

噂のエヴァがどうしても気になったのだろう。ニコラ、せっかく隠れてたのに…そんなに身を乗り出しちゃモロ見えだよ?

「ぼ、僕ですかぁ!ち、ちょっと遠慮しようかなぁ…なんてぇ…」
「そんなこと言わないで!みんなも可愛い子がモデルの方がいいよねー?」
「うぇーい!」
「エヴァちゃんよりかわいい子なんていないよー!」
ヒクッ「……」

顔の引き攣るニコラ。ふっ!所詮ニコラは学院のアイドル、僕は登録者数2000人のインスタライブもこなしてたプロ(自称)レイヤー。格の違いを見せてやろうか?

「ほら、そこのお友達、彼を連れてきて!」
「えっ⁉ 」
「さっきお話してたでしょ。ほら早く☆」

見てないけど。

満面の笑みを振り撒くエヴァのお願いに、ヤンキーは二コラとの打ち合わせも忘れてすっかり有頂天だ。渋るニコラを引っ張り、ついにステージ(そんなの無い)まで連れ出した。

「可愛いお兄さんお名前は?」
「二、ニコラですぅ…」
「じゃあまずそこに横たわって!」
「はぁい…」シブシブ…

「じゃあみんな!まずは事故が起きた場合からね☆けが人まわりの安全を確認しまーす!」
「「「ウェーイ!」」」

「それからけが人の意識があるかどうか確認しまーす。みんなで名前を呼んであげて!」
「ニコラしっかりー」
「大丈夫かニコラー」

「おや?反応が無いようですねー。これは大変!人が居なければ大声で手助けを呼びますよー。せーの!」
「「「エヴァちゃーん!」」」
「うーん聞こえないなぁ。そんなもんですかー?みんなが僕を呼ぶ声はそんなもんですかー?」
「「「うぉぉぉ!エッヴァちゃーん!!!」」」

地鳴りのような野郎たちの大声援。あーあ、そんなに差付けちゃ可哀想でしょうが!おかげでニコラがただのしかばねのようだ。

「助けがきたらそのけが人をどこに運ぶかわかりますねー?はい、さっきのあなた方」
「び、病院?」
「エヴァちゃんのところ?」

「はい良く出来ましたー!正解☆」バチコン
「はぅぅ!」

チョロいな。

「そうしたら二本の棒で担架を…たん、ひゃっ!毛虫ー!ちょ、ちょ、誰か取って!」

ザワザワザワ…

「ウソだろ。血だらけの包帯でも平気なエヴァちゃんが…」
「か、カワユス…」

「見てないで取ってよー!もうっ!」プンプン!


しかし…とんだ毛虫ゲストだったが、これは棚からぼたもち。僕ってツイてる!

ナース好きの男が求めるのはまず第一に癒しと安らぎ。…身をゆだねて甘えられそう、と言う、ちょっとリード味を感じる部分だ。
つまり…男など大なり小なり程度の差あれどマザコン、どれ程屈強な男でも家に帰れば赤ちゃんみたいに甘えたい…そう思っている生き物だ。

けど強いだけではダメ、ここがさじ加減の難しいところで…

しっかり者のナースさんが自分の前でだけは弱みを見せる…、これこそが大事なポイント。赤ちゃんでありながらナイトでありたい。それが複雑な男心。かっこ笑い。

でももうわかったね。ギャップ萌え…それは常に沼の畔に落ちている。そして…

ヴィットーレを見てたら分かるでしょ?「あの子を理解できるのは自分だけだ!」とかなんとか。
これはいつもならニコラの得意技なんだけどね。テヘペロ☆本日の神様はこっちの味方みたい。


「はーい、そろそろ訓練も終了時間ですよー。みんなお疲れ様でしたー☆次の三つを守りながらお行儀よく僕にハイタッチして広場から退場しますね、出来るかなー?いくよー☆」

「「「うぇーい!」」」

「押さない!」パン
「走らない!」パン
「割り込みしない!」パン


「お前!順番守って後ろに並べ!」
「うるせー!」
「野郎はひっこめ!」

「あっ!あなたたちニコラさんのお友達ですね?もー!イケマセン!順番守れない人は怒りますよ!」

「えー、そんなこと言わないでよぉ」
「僕の患者さんならお利口に出来るはずです」
「エヴァちゃーん…」
「出・来・ま・す・ね」ジィィィ
「…後ろに並ぶね。だから怒らないでね」

「怒りませんよ大丈夫」ナデナデ「どれほど時間かかっても最後までちゃーんと待ってますから」ニッコリ

「あ、頭…俺の頭…ナ、ナデ…」
「エヴァちゃんマジ天使…」

完落ちご苦労様…っと☆





しおりを挟む
感想 609

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

処理中です...