コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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二人と新たな友人

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「フ、フラヴィオ様、なんと言うお召し物を!」
「ふふ、情熱の赤と黒だ。似合わないかい?」
「いえ…驚きはしましたが…美麗なお顔立ちに良くお似合いです」

私の専属護衛だったマヌエルとミケーレ、彼らには事前に男であるイヴと女であるエヴァが同一人物であると知らせてある。
また、イヴの前で私を「殿下」と呼ばぬよう約束させた。

私は弱い男だ…。
素性を知ったイヴがそれをどう思うか、それが不安で仕方がないのだ。

彼らは私の身分を知れば夫人は名誉に思うはずだ、そう考えているようだが果たしてそうだろうか…?

「いくら大国サルディーニャの貴族と言っても嫡男ですらない侯爵子息ではありませんか!」
「かたやフラヴィオ殿下は小国とは言えまごうことなき直系王族。見下げられる筋合いはない!」

「そう言うことではないのだよ…」

イブは王族公爵家の嫡男を嫌い、あげく不敬を承知で悪態をつき捕らえられた豪気な人だ。
またエヴァとしてではあるが、アマーディオ殿下に対する態度も決して褒められたものではない。

唯一、一見敬意を払っているかのように見える姫殿下相手であっても、イヴのそれはもっと気安いものだ。まるで市井の友人同士かのような…

つまり、イヴにとって王族とはその程度のものだということだ。

私たちは愛し合う夫婦だと自負している。が、偽りの姿で彼を欺き続けた私をイヴはどう思うのか…その不安が拭えない…

こうして一抹の不安を抱えたまま私はイヴを二人に引き合わせた。

「あなたがフラヴィオ様の伴侶、イヴァーノ様であられるか…」
「だがこれは…どう見ても女性ではないか…」

「フラヴィオ…もしかしてお友だちですか?」

「友人?なんと恐れ多い…私たちは」
「その通りだイヴ。恩ある大切な友人だよ。よろしく頼む」

イヴの言葉を訂正しようとするマヌエルを制し「友人だ」と紹介するやイヴは頬を膨らませる。

「やだもうフラヴィオ。お友だちが来るなら来るって言ってくれたらいいのに」ペシッ

文句を言うそんな姿も可愛いと言えば一層怒るだろうか。

「あのごめんなさいこんな格好で。ちょっと今日は特別なお祭りで…」

「いえ事情は聞いております。我々も通りから覗き見ておりました故」
「気落ちした住人の士気を高める…目論見通りではございませんか」
「イヴ、今の彼らを見るがいい。魂に火が灯ったかのようだ。君の発想は感嘆に値するよ」

「ふっ、怒りをヤル気に変換しただけですよ。けど多分これはこの国の人たちの特性…」

「そう!その通りなのだよ!この情熱こそが彼らの姿だ!ここは愛と情熱の国、アs」
「愛と情熱?音楽の国じゃなくて?」



-------------------



「この国の人は音楽を愛してるとばっかり…」
「音楽?ああもちろんだ。音楽を嗜むのはごく普通の事だろう?」

なるほど!当たり前過ぎてキャッチコピーにする必要すらないと、そういうことか!

それにしても僕はちょっぴりプンプンモードだ。
夫の友人に会うならイヴァーノとしておしゃれしたかったのに…男ってこれだから…あ、自分も男だったわ。

「それにしても夫人、いくらなんでも露出がすぎるのではないだろうか…」
「あなたの性別を知っているはずの私たちでさえも…その、目のやり場に困る…」

真っ赤になって目を泳がせる友人たち。純情かっ!

「フラヴィオの友だちとは思えませんね」
「イヴ。いつかその誤解は解いて欲しい…」

いや事実だから。

「いいですか?別に僕は意味もなく肌を見せたワケじゃありません」

「ほう?イヴ、その真意は?」
「肌を出すのは神への冒涜ではなく、これは…」

「これは…?」

コスプレサミットに向けた初めの一歩!とは言えないか…

「か、神様への誓い!僕たちはいつどんな時でも自分を偽らないで強く生きるっていう誓いです!」

「偽らないで…」
「そうです!露出部分が多いほど心が強いってことです!」

ほら、マッパのヘンタイとか究極の強メンタルじゃん。犯罪者だけど。

「ホントはフラヴィオの衣装も胸元開けたかったけど…これは僕のマクラだからガード♡」モジモジ
「イヴ…」

どこか神妙な顔のフラヴィオ。どうやら友達の前でのろけるのは恥ずかしかったらしい。反省反省…

「夫人は破天荒であられるのだな」
「そうですか?普通ですよ?」
「だが我が国への多大なる支援…心から感謝する」

…?祭りぐらいで大げさな…

「別に大したことじゃ…それに何度も言ってますけど全部自分のためだから」

将来への布石と、そもそも祭りは楽しい。それだけだ。

「だが私たちはあの公爵子息、パンクラツィオ殿に助けれれなければあのまま死んでいたかもしれない」
「それを思えばあなたは影の功労者だ」

「はぁ!? 」

何故ここでパンキーの名前がでる!
待てよ…。パンクラツィオたちは確か、二か月か三か月ぐらいかけて山側からザクロの国を目指したはずだ。山と言えば危険はつきもの…

はっ!もしや彼らは山中の遭難者!もしくは熊にでも追われてたとか!で、ばったり会ったパンキーたちの一団に助けられたとか?
ちょっとカマかけてみるか…

「それはずいぶん危険な目に合われましたね…」

「危険…には違いない。だが我々はそう訓練を受けているのでね」
大切な宝フラヴィオを守る栄誉ある任務だ。危険になど怯みはしない」

…見たところ彼らは貴族位。ってことは…もしや山側が領地のお家?つまり大切な宝って…山の幸のこと?領地に侵入する密猟者から山を守ってるってこと?となると常時山の巡回に出るだろうし…

ゴクリ…「それでも奴らクマに追われるのは怖かったでしょう」
「怖いとは思わぬが…死を覚悟したのは事実だ」

はいビンゴ!熊から救ったのか!

「へー…、奴が人助けを…パンクラツィオのくせに」
「イヴ…彼はね」

「分かってますよ。パンクラツィオは勇敢っちゃ勇敢ですからね」

仮にも奴はBLゲーの準主役。困っている人を助けるのは当然のことだ。
だからといって僕との関係性は変わらない。旅行から帰ればそこに待つのは再戦の時。今度こそ凹ませてやる。いやマジで。

「そんなことよりもしかして貴族位なら知ってるかな?」

「イヴ、何の話だい?」
「闘牛の牛さん。どうしてるのかなーって思って」
「夫人は騎馬闘牛に興味があるのだろうか?」
「闘牛に興味はないですけど安否確認がしたいです」

お肉は好きだけどね、…経過を知ってて気が付いたら目の前のお皿に…とかモヤるから。

「そういえばが帰国前に一度…と闘牛を見たがっていたな…。良ければその時は案内しよう」

ちょっと待ったー!

「僕は動物愛護の観念から牛をイジメるのは反対です!」

ダメ!ゼッタイ!

「イヴ…、あれはこの国の男たちが勇敢さを競う大切な国技なのだよ」

国技!むむ…前世で言う相撲みたいなもんか…でもだからと言って…そうだ!

「なら槍は却下!僕は安全に配慮したスポーツとしての闘牛を推奨します!」
「ですが夫人…」

「こんな野蛮な催しじゃ外国の人から嫌がられます!もっと競技として洗練されるべきです!真のグローバル化を図って海外からお客さん呼びたくないですか!」

フラヴィオは以前から世界情勢に関心を持つ男だ!グローバルって言っときゃ多分OKっしょ!

「イ、イヴ!詳しく聞かせてくれるか!」

ほらビンゴ!どさくさに紛れてルール変更だー!






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