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新たなる日々
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「おじいちゃま、ネコちゃん」
「フェル、優しく撫でてやりなさい。尾は掴まぬようにな」
「あい」
という、癒しの空間が日常になってきたここ最近のビアジョッティ邸。なのに僕だけが日夜修羅場を味わっている。
何故なら…
陸路で王都に戻る、という体のエヴァはあとひと月ほど姿を現さない。そこでこの一か月の間に出来る限りファッションショーに出す衣装の準備を進めてしまいたいからだ。
そこまでするならエヴァをやめろって?
いーや。あれは何かと有用なキャラ。今後も封印する気はない。
パンキーはフラヴィオに正々堂々戦う事を宣言したらしい。要するに手をまわして票操作をしたり材料を買い占めて困らせたりはしない、ってことだね。
確かに…どれほど僕がパンキーを嫌いでもそこを疑うつもりはない。
奴は腐ってもBLゲーの攻略者。それも主役級。王族公爵家の名に懸け外道な真似はしないだろう。そしてそれは取り巻きたちにも徹底させているはずだ。どっちかというと外道寄り(寄りね。あくまで未満だよ)はイヴァーノのほう。だからパンキーはイヴァーノを毛嫌いしてたんだから。
正攻法で相手をぐうの音もでないほど叩き潰す。それこそが〝俺様”パンクラツィオ!
ってことで…
「イヴ様ー。ギャビーさんが使用人小屋完成したって言ってます」
「あ、今行くー」
ギャビーとはガブリエーレさんのことで、彼はフランコの三つ下になる弟である。
彼は家を出て衛兵になった兄の代わりにお父さんの跡を継ぐ家族思いの青年。歳はフラヴィオの一個下で僕の二個上。
「いやー、今回もご苦労様。ありがとね。今日はごちそう用意するから食べてって」
「じゃあお言葉に甘えて」
「あとでセルジオも来るって」
「えっ!兄さんでなく?」
「フランコは今日夜勤だって」
仕上がった家は小さいが二階建てで、一階は共同のリビング、二階は横長のスペースを縦に三つ仕切った個室モドキ(一部屋三畳ほど)になっている。
そこにベッドとミニテーブルミニハンガー、収納はベッド下の、イメージ的には刑務、…カプセルホテルが近い。
新たな宿舎と馬車小屋の間にはジュゼッペじいさんのために作ってあった簡易の水洗トイレもある。あ、文化にそぐわぬ下水の追求は無しの方向で。ここキラキラBLワールドだから。
そして新たに設置したのが…僕特製シャワーブースだ!
じゃないとお風呂場に連日待機列が出来る。
このシャワーブースはキャンプ動画を参考にした僕のアイデア(パクリ)であり、小さな穴を幾つもあけた大きめのバケツをスタンドに吊り下げ、中にお湯を入れて使う簡易なものだ。自分で言うのも何だが、これはなかなかいいアイデア(パクリ)だと思っている。
いい機会なので邸内の浴室にも同じものを設置したのだが、フランコのお父さんはこれも改良の上製品化して良いかと許可を求めてきた。なので快く「じゃ助っ人の報酬ってことで」とすでに話はついている。
「完璧だよギャビー。お父さんにもお礼言っといてね」
「イヴァーノ様の設計図が良かったんですよ」
〝あつもり”で建てた家を参考にしたのだが…イケてたようだ。
「ただいまイヴ。おや?ギャビー君…そうか。宿舎が完成したのだね」
「邪魔するよ。ガブリエーレ!久しぶりだ!」
そこに帰宅したのがセルジオを伴ったフラヴィオ。きっと勉強会の帰りに馬車で拾ってきたんだろう。
「セルジオさん!たまにはうちの実家にも来てくださいよ!母も楽しみに待ってるんですよ!」
「はは、では近々必ず」
「約束ですからね!」
セルジオとフランコ、気の良い同僚コンビは昔から家族ぐるみの付き合いをしているらしい。
僕は当初「ここはBLの国だしこの二人もしや…」と怪しんだのだが、フランコは女好き(モテるとは言ってない)だし彼らは清く正しい親友同士だ。だ・が!
「セルジオさん、次の非番はいつですか。たまには兄抜きで出かけましょうよ」
「セルジオさん、海に行きたいです俺。連れてってください」
「セルジオさん、あのね」
「セルジオさん、それでね」
…なるほどね。ギャビー…見たところセルジオは何にも気付いていなさそうだが…健闘を祈る!
「イヴ、殿下が仰っていたのだがあと二週ほどで孤児たちが到着するようだよ。君も出迎えに立ち会うのだろう?」
「もち!とりあえずここの使用人選ばなくちゃいけませんしね」
これはカタリーナ様が送ってくれた早馬ならぬ早鳩である。
この世界の伝書鳩が何万キロもものともしない異様な健脚ならぬ健羽根なのはシナリオライターのご愛敬ってことで。
ショー用の衣装を作る合間を縫って作成したボーイ服…これは某執事アニメの従僕キャラからパクった、身長百六十位を想定した制服である。ワクワク…
「彼らに付き添うのはマヌエルとミケーレ。彼らは自ら志願したそうだ」
「へー」
「そのままここサルディーニャへ定住を希望しているらしい…」
「何でっ⁉ 」
「彼らは嫡男では無いし、その…私に騎士の誓いをたてているのでね…」
つまりビアジョッテイ家の護衛騎士になると。そりゃ一応ここは伯爵家だけど…マジか…
この小さな屋敷に必要かな警備…見たら驚いちゃうよ?
因みにフランコ、セルジオにフラヴィオの素性は告白済みだ。
けどとっくに友人の彼らは「でもまあ…結局イヴァーノのご夫君なんだろ?」「そこが変わらなきゃどっちでも同じだな、ハハハ」と一笑に付した。どっちがどっちの台詞かは…推して知るべし。フランコお前…
「まあいいですけど…当分は薄給ですからね。それからここには空き部屋が一部屋しか無いので住めません。通いですよ?」
「ちょうどいいイヴァーノ。俺たちの住むタウンハウスに最近空きができた。そこはどうだ?よければ家主に話をつけておこう」
借り上げ社宅か…
くっ!儲けても儲けても右から左…セレブへの道は遠く険しい!
「じゃあセルジオお願い」
まあ…どうせこの二人もうちの使いっぱみたいなもんだし?そのタウンハウスはうちの契約寮ってことで。
「そうだフラヴィオ。タウンハウスと言えば明日からエヴァ復帰しますのでよろしくお願いします」
「もうかい?ショーの準備もあるのだろう?大変ではないのかい?」
「カタリーナ様が居なくなって水曜の出張業務が無くなったからヨユー」
月火木金、十時から十五時、一日五時間。これくらいならお裁縫の合間のいい気分転換だって。
ぶっちゃけアイデアが前世のパクリなお陰でネタ出し不要だし、そのデザインは船内でおおよそ描き起こしてあるし、エヴァ不在の一か月にかなり裁断は進めたし…お針子はサロンの腕利きを借りるから…問題なし!
こうして…
僕たちが大体の受け入れ準備を終え日常を取り戻した早春のある日、その船はサルディーニャへと到着したのだ。
「フェル、優しく撫でてやりなさい。尾は掴まぬようにな」
「あい」
という、癒しの空間が日常になってきたここ最近のビアジョッティ邸。なのに僕だけが日夜修羅場を味わっている。
何故なら…
陸路で王都に戻る、という体のエヴァはあとひと月ほど姿を現さない。そこでこの一か月の間に出来る限りファッションショーに出す衣装の準備を進めてしまいたいからだ。
そこまでするならエヴァをやめろって?
いーや。あれは何かと有用なキャラ。今後も封印する気はない。
パンキーはフラヴィオに正々堂々戦う事を宣言したらしい。要するに手をまわして票操作をしたり材料を買い占めて困らせたりはしない、ってことだね。
確かに…どれほど僕がパンキーを嫌いでもそこを疑うつもりはない。
奴は腐ってもBLゲーの攻略者。それも主役級。王族公爵家の名に懸け外道な真似はしないだろう。そしてそれは取り巻きたちにも徹底させているはずだ。どっちかというと外道寄り(寄りね。あくまで未満だよ)はイヴァーノのほう。だからパンキーはイヴァーノを毛嫌いしてたんだから。
正攻法で相手をぐうの音もでないほど叩き潰す。それこそが〝俺様”パンクラツィオ!
ってことで…
「イヴ様ー。ギャビーさんが使用人小屋完成したって言ってます」
「あ、今行くー」
ギャビーとはガブリエーレさんのことで、彼はフランコの三つ下になる弟である。
彼は家を出て衛兵になった兄の代わりにお父さんの跡を継ぐ家族思いの青年。歳はフラヴィオの一個下で僕の二個上。
「いやー、今回もご苦労様。ありがとね。今日はごちそう用意するから食べてって」
「じゃあお言葉に甘えて」
「あとでセルジオも来るって」
「えっ!兄さんでなく?」
「フランコは今日夜勤だって」
仕上がった家は小さいが二階建てで、一階は共同のリビング、二階は横長のスペースを縦に三つ仕切った個室モドキ(一部屋三畳ほど)になっている。
そこにベッドとミニテーブルミニハンガー、収納はベッド下の、イメージ的には刑務、…カプセルホテルが近い。
新たな宿舎と馬車小屋の間にはジュゼッペじいさんのために作ってあった簡易の水洗トイレもある。あ、文化にそぐわぬ下水の追求は無しの方向で。ここキラキラBLワールドだから。
そして新たに設置したのが…僕特製シャワーブースだ!
じゃないとお風呂場に連日待機列が出来る。
このシャワーブースはキャンプ動画を参考にした僕のアイデア(パクリ)であり、小さな穴を幾つもあけた大きめのバケツをスタンドに吊り下げ、中にお湯を入れて使う簡易なものだ。自分で言うのも何だが、これはなかなかいいアイデア(パクリ)だと思っている。
いい機会なので邸内の浴室にも同じものを設置したのだが、フランコのお父さんはこれも改良の上製品化して良いかと許可を求めてきた。なので快く「じゃ助っ人の報酬ってことで」とすでに話はついている。
「完璧だよギャビー。お父さんにもお礼言っといてね」
「イヴァーノ様の設計図が良かったんですよ」
〝あつもり”で建てた家を参考にしたのだが…イケてたようだ。
「ただいまイヴ。おや?ギャビー君…そうか。宿舎が完成したのだね」
「邪魔するよ。ガブリエーレ!久しぶりだ!」
そこに帰宅したのがセルジオを伴ったフラヴィオ。きっと勉強会の帰りに馬車で拾ってきたんだろう。
「セルジオさん!たまにはうちの実家にも来てくださいよ!母も楽しみに待ってるんですよ!」
「はは、では近々必ず」
「約束ですからね!」
セルジオとフランコ、気の良い同僚コンビは昔から家族ぐるみの付き合いをしているらしい。
僕は当初「ここはBLの国だしこの二人もしや…」と怪しんだのだが、フランコは女好き(モテるとは言ってない)だし彼らは清く正しい親友同士だ。だ・が!
「セルジオさん、次の非番はいつですか。たまには兄抜きで出かけましょうよ」
「セルジオさん、海に行きたいです俺。連れてってください」
「セルジオさん、あのね」
「セルジオさん、それでね」
…なるほどね。ギャビー…見たところセルジオは何にも気付いていなさそうだが…健闘を祈る!
「イヴ、殿下が仰っていたのだがあと二週ほどで孤児たちが到着するようだよ。君も出迎えに立ち会うのだろう?」
「もち!とりあえずここの使用人選ばなくちゃいけませんしね」
これはカタリーナ様が送ってくれた早馬ならぬ早鳩である。
この世界の伝書鳩が何万キロもものともしない異様な健脚ならぬ健羽根なのはシナリオライターのご愛敬ってことで。
ショー用の衣装を作る合間を縫って作成したボーイ服…これは某執事アニメの従僕キャラからパクった、身長百六十位を想定した制服である。ワクワク…
「彼らに付き添うのはマヌエルとミケーレ。彼らは自ら志願したそうだ」
「へー」
「そのままここサルディーニャへ定住を希望しているらしい…」
「何でっ⁉ 」
「彼らは嫡男では無いし、その…私に騎士の誓いをたてているのでね…」
つまりビアジョッテイ家の護衛騎士になると。そりゃ一応ここは伯爵家だけど…マジか…
この小さな屋敷に必要かな警備…見たら驚いちゃうよ?
因みにフランコ、セルジオにフラヴィオの素性は告白済みだ。
けどとっくに友人の彼らは「でもまあ…結局イヴァーノのご夫君なんだろ?」「そこが変わらなきゃどっちでも同じだな、ハハハ」と一笑に付した。どっちがどっちの台詞かは…推して知るべし。フランコお前…
「まあいいですけど…当分は薄給ですからね。それからここには空き部屋が一部屋しか無いので住めません。通いですよ?」
「ちょうどいいイヴァーノ。俺たちの住むタウンハウスに最近空きができた。そこはどうだ?よければ家主に話をつけておこう」
借り上げ社宅か…
くっ!儲けても儲けても右から左…セレブへの道は遠く険しい!
「じゃあセルジオお願い」
まあ…どうせこの二人もうちの使いっぱみたいなもんだし?そのタウンハウスはうちの契約寮ってことで。
「そうだフラヴィオ。タウンハウスと言えば明日からエヴァ復帰しますのでよろしくお願いします」
「もうかい?ショーの準備もあるのだろう?大変ではないのかい?」
「カタリーナ様が居なくなって水曜の出張業務が無くなったからヨユー」
月火木金、十時から十五時、一日五時間。これくらいならお裁縫の合間のいい気分転換だって。
ぶっちゃけアイデアが前世のパクリなお陰でネタ出し不要だし、そのデザインは船内でおおよそ描き起こしてあるし、エヴァ不在の一か月にかなり裁断は進めたし…お針子はサロンの腕利きを借りるから…問題なし!
こうして…
僕たちが大体の受け入れ準備を終え日常を取り戻した早春のある日、その船はサルディーニャへと到着したのだ。
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