コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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歓迎バーベキュー

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「あ、あの…」
「どした?」

オドオドと集う三人。声をかけてきたのは一番年長者のディエゴだ。年長ったって十三だけど、大きい子たちを根こそぎ工場に置いてきたせいでショタショタしい屋敷になってしまった…

彼らは屋敷に着くとそれぞれ個室に用意しておいた新品の衣類に着替え、現在裏庭でバーベキューの準備を手伝っているところだ。

「個室だなんて思ってもみなくて…ありがとうございます」
「個室って…ほとんどカプホじゃん!ごめんね狭くて」
「い、いいえ!孤児院は大部屋だったから…」

うっ!

ホロリ…「衣食住完備だから安いけどお給料もあるから。一人月1金貨ね」
「えええっ!」

因みにエヴァちゃんは時給2大銀貨の一日1金貨、月に合計15金貨以上稼いでいる。これは一般労働者が月目一杯働いたのと同じくらいだ。さすが王立病院。ね、給料良いでしょ?

「ほ、ホントに?本当にお給料いただけるんですか!」
「ウソ…夢みたい…」
「ぼ、ぼく金貨って見たこと無いです!」

これはアスタリアが特別ブラックという話でなく、住み込みの使用人は無給というのがわりと一般的だからだ。
でもそれって飼い殺しってことじゃん?ひどい話だよ。

「さーさー、これはみんなの歓迎会だから好きに飲み食いしてね。エルモ、教えてやって」
「はーい。パブロ、このお皿向こう持ってって」
「エルモ…これ?」
「うんそう」

おおっ!八歳のパブロはすでにエルモと打ち解けている。これならリコのいない寂しさは十分紛れそうだ。

といっても一応主従の線引きは必要なので飲食エリアは別々ね。





位置関係はこんな感じ。
絵心や縮小のおかしさは許してほしい。僕にCADの心得はない。

なので、ビュッフェよろしく母屋の庭へ取りに来て拡張エリアで気を抜いて食べる感じね。
新入り三人プラスタウンハウス付きのフリオ君で計四人。あとエルモにジュゼッペじいさん。賑やかになったもんだ。

「こ、こんなご馳走…いいんですか!」

目を丸くしているのはパブロ。

「ご馳走ったって…お肉焼いてるだけだし」

それでも豪勢に見えるのがバーベキューのいいところ。
まあ、アスタリア勢からしたら、何みてもご馳走だろうけど。

「イヴァーノ様、他には何をすれば…」
「じゃ、そこのピッチャーに入ったジュース持ってって」
「はい」

これディエゴ。ディエゴは王都近隣の農家生まれらしいが、口減らしで二年前から孤児院にいたのだとか。

カタリーナ様からのメモ書きによると彼は、「アスタリア王家に恨みはないか」との問いに、「両親が俺を捨てたのは内乱だけが理由じゃありませんから」と答え、「両親に恨みはないか」との問いには「みんな生きるのに必死だった。それだけです」と答えたらしい。出来た子よのう…

「これなんですか?」
「ピザだよ。サルディーニャのソウルフード。好きなだけ食べてね」

僕命名のサルバトールは前述の通りオッドアイだ。
その目を嫌った両親から幼い頃捨てられたのだとか。けど孤児院ですら疎まれることは多く「何軒もたらいまわしにされました」と笑って話す彼は天使に違いない。…こんなの…世を拗ねていないのがむしろ奇跡だろ!

あとパブロは赤ちゃんの時に捨てられてたから何も分からないんだって。

「どれ、ここには慣れたかね?」

そこへやって来たのは彼らの上司になる執事のロデじい。だが騙されるな!ロデじいの執事は名誉職だ!

「皆、今日はフラヴィオ様イヴ様の厚意に甘え、明日からはしっかり働くのですぞ」
「はいロデオ様」

と、そこへ…

「おじいちゃま!おいてかないで!」

トテトテ追いかけて来たのは偽孫のフェルたん。彼はある種のトラウマによりロデじいにベーッタリ。

くっ!そのポジションは僕のはずだったのに!くやちーい!
しょうがないよね…。僕もフラヴィオも留守が多いし、子供とネコは一緒に過ごす時間が長い相手に懐くもんだ。

それにしても緊張の一瞬。一応事情(捏造)は話してあるけど…ドキドキ…

「あ、あれがロデオ様のお孫さまなんですね?」
「孤児院で偶然見つけるなんて…きっと神の思し召しです」
「おじいさんがみつかって本当に良かった…」

みんな良い子過ぎでしょ!カタリーナ様の人選…パないな!

「じ、じゃあ足りなくなったら何度でも取りにおいで。遠慮は要らないからね!」

「はい!」




ってことでこちらは母家側。

「アスタリアの公爵邸でもルイージ様に食事を振る舞っておられたが…本当に夫人自ら家事をなさるのだな」

「マヌエル、イヴァーノはこう見えて料理の腕は本物だ。まあ食ってみろ。ただ焼いただけの肉とは一味違う、絶品だぞ」
「そーそー、じゃんじゃん食べて!」

どうせ肉の出所フランコんちだし。
そのマヌエル氏はアルコールに弱いのだろう。お酒が入るにつれどんどん饒舌になっていく。

「しかしあれには参ったよ。後を追ったつもりがあっという間に撒かれてね…」
「あー、あの貴族街ね」

エルモと買い食いツアーに出た時ね。教会行きたかったから撒いたんだけど…いやー、しつこかった…

「マヌエル、ここだけの話だがこいつは姫殿下に変装させて街に連れ出したこともある。みくびるな」
「し、信じられない!いや…イヴァーノ様はフラヴィオ様にも赤と黒の衣装でビウレラを弾かせていた…あり得る…」

工場に行って戻ってくるという僅かな時間に、フランコとマヌエルは妙に意気投合している。
けどその会話の八割が僕のろくでもない話、という事実をどう受け止めればいいのだろう…

そこへいくとセルジオとミケーレはまだましである。セルジオは基本がお人好しだしこれでも一応貴族位、分別がある。

僕に対する態度も多少は…多少は…

「イヴァーノ、次の非番はあれがいいな。オッソ・ブーコ。デザートにティラミスを添えて」
「骨付き肉のワイン煮ね」

伯爵家夫人に手料理のリクエストか…、別にいいけど。

「色々とその…驚かされますが悪い方でないのは十分理解しています」
「こう見えて人の良い奴だ。俺はイヴァーノの我儘が嫌いじゃないよ」
「セルジオ。手土産用意しとくから」
「ははっ、現金だな」

こちらはこちらで意気投合。おっとりチームだ。

「そうだイヴァーノ様。マヌエルと話し合ってイヴァーノ様も護衛」
「結構です!」ビシッ!
「ですが…」
「僕のウィークディはほとんどエヴァですしSPなんかついてたら親近感が薄れます。要りません」

僕の自由は何人足りとも奪わせない!

「二人は交互に一人フラヴィオのお付き、一人は屋敷の警備。これ決定です」

正直言おう。今までのビアジョッティ邸はイヴァーノの悪評が勝り、限られた友人以外の来客が皆無だった。
だがこれからはフラヴィオに近づかんとする野心家がこぞってやってくるに違いない。

僕の眼の黒いうちは舐めた真似などさせるつもりはないが…
どう考えても屋敷の警護は必要不可欠。だってここには…年寄りと子供しか居ない。

「幸いここはドン突き。不埒な輩は僕が帰るまで捕まえといて」
「わかりました」
「お前…なにする気だ」
スルー「あ、あと見合いの釣り書きとかは絶対受け取らないように。受け取ったら身の保証は出来ないからね。フラヴィオの」
「わ、分かりました!」
「おいおい脅すなイヴァーノ。アスタリアはともかくこのサルディーニャでお前を敵に回すやつが居るわけないだろ」

……褒め言葉…でいいんだよね?







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