コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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番外 エビータ登場

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いかにも遣り手のキャリアウーマン風なショートボブに、つんと上向いた小鼻。
身長を底上げしたハイヒールとパンツスーツで武装しているのは、少しマニッシュなキャリアウーマン。

何処からともなく現れて…気が付いたら去っている…それがエビータ、BKDの敏腕マネージャーである。

なにしろパート勤務があったエヴァと違い彼女は完全フリー。かつ、エビータとイヴはマネージャーとプロデューサーの関係、ビアジョッテイ家の出入りも違和感ない。

そして屋敷にはディエゴ、エルモという、事情を知る助っ人が居る。なんとなくパブロ、サルバ、そしてロシオにもバレてそうな気がするっちゃするが、孤児院から来た苦労人である彼らには、余計なことは言わないという処世術がある。

けど、エヴァを神と崇めるルキーナにだけは、エヴァとエビータ、そしてイヴァーノの法則がバレるとなんか面倒な気がする。
そこで「ルキーナにだけはバレないように!」と、ディエゴには強く言い聞かせてある。

そんなエビータの日常をお見せしよう。



パンパンパン

「はーい一旦集まってー!」


本日一階で通し稽古するのはチームレッドとグリーンとオレンジ、三つ子を有する三チームだ。
残った三チームは二階の個室でパートごとの練習をする。

三つ子チームは庶民街のコンサートホール(集会場)で、ヴィットーレによる新作脚本の舞台初日が控えている。連日稽古に余念がない。

ヴィットーレの脚本だが、ライトコメディまで書けるあたりに才能を感じないではいられない。が、そもそも彼は二面性の男。いろんな仮面をかぶって演じる…という意味では歌劇と大差ないのだろう。

さて、アスタリア遠征を終え好調なBKD内では、各チームごとの特徴なんかが見えてきたように思う。

三つ子のアマート、ベニート、クレートを有する三チームは喜劇に強い。
三つ子の利点を生かしたドタバタコメディなんかを演じられるのも彼らならではの特徴。よって庶民街のコンサートホールが一番彼らを生かせると考えている。

そしてジーノ有するチームイエロー。ここは観客との距離感が近いフレンドリーな団員が多い。
掛け合いなんかも入れちゃったりして…つまりライブ感を大事にするってやつ。よって舞台のある飲食店(ライブハウス的な)や、貴族邸でのプライベートな舞台が最も生きる。

因みにチームイエローのファンだが、数こそ少ないがとてもコアなファンが多い。彼らを見ているとジャンルの終焉時に残った、ニッチなカプを推す精鋭オタを思い出さずにはいられない。

残るは実質BKDの首位争いをしている、ロシオ有するチームブルー、ルキーナ有するチームピンク。
彼らは人気も華やかさも他チームの追随を許さない、BKDの顔にして最も動員数が多い稼ぎ頭。
因みにエヴァファンクラブの推し変先は七割がロシオ、ルキーナに集約される。あと三割は普通に女の子ね。

広く人気があるのでファンには若年層、ライト層も多い。広告コスパの最も良いのがこの二チームだ。

なので小さな箱では無理があるし、そもそもこの二チームのファンは富裕層が多い。必然的に活動の場は貴族街のコンサートホールが中心となる。歌劇場(オペラホール)?遥か高みにある目標だよ。東京ドーム…みたいなもんかな?



「スケジュールの変更があります。フィーニー伯爵令嬢十六歳の誕生パーティーにお呼びがかかったので、チームイエロー、その日はレッスンじゃなく出演準備お願いします」
「はい」
「リタさん」
「はい!」
「ご令嬢とご友人はこれから社交界という戦場へ狩りにでます。そこを踏まえて衣装は戦闘力じょしりょくの高いデイドレスでお願いしますね」
「新作のストライブでどうでしょうか?」
「うーん、ストライプは男受けが悪いです。無難に花柄がいいんじゃないでしょうか」
「わかりました」

覚えておいでだろうか?BKDはイヴァーノ・モードのセカンドライン、イヴ・イヴの宣伝用歌劇団である。

「それからアマート、ベニート、クレート」
「「「はい」」」
「中日にお姉さんのヨッチャンをお呼びしてあります」
「「「ええー!」」」

ヨッチャンは三つ子のお姉さんで、田舎にお嫁入している三つ編みの女性らしいが、三つ子の晴れ舞台を見たいとお手紙が届いたのでご招待してさしあげたのだ。

「一番いいお席を用意してあります。そのつもりで頑張ってくださいね」
「「「はい!」」」

「チームピンクのルキーナ」
「はぁーい♡」

「来週の出演だけど…どうしても断れない筋からご挨拶したいと要望があって…。本番前に楽屋お邪魔していいかな?」
「じゃあ一時間早く支度します」
「ごめんね。でもチケット爆買いしてくれてね、この方」
「わぁ嬉しい♡」

誰かって?ルキーナ推しの第二王子だよ。アマーディオの弟ね。今…十六になったかな?お忍びで来るんだって。恐ろしいねDNAって。

「それから来月行われる鷹狩りのアンバサダーだけど…チームブルーのリーザさんご指名です」
「はい」
「要請は二名なのでもう一人はお任せします」
「はい。後で報告します」
「あ、メイクは勇ましい感じでね」
「分かりました」

リーザさんはチームブルーのお姉さまだ。鷹狩のアンバサダーにピッタリのきりっとしたイケメン女子ね。

「あと注意事項ね。ジーノ」
「んー?はーい」
「食べ過ぎに注意ね。あれだけ食べて太らないのは凄いけどお腹壊したりしたらみんなに迷惑かかるからね」
「キャベツも食べればいいですか?」
プク「…」

違う!消化に良いけど違う!

「それからジェンマ」
「はい」
「来週どこかで三日間強制休暇ね。練習熱心なのはいいけど…休みはちゃんと取るように」
「でもっ!」
「でもじゃなくて。ジェンマ、息抜きは必要だよ」
「はい…」

チームピンクの彼女は現在女役のトップだ。トップの座を維持するのは楽じゃないんだろうけど…
肩の力を抜く重要性を理解するには…まだまだだね。

僕?僕は常に趣味と実益派だから!
実は僕に一番近いのってルキーナだったりする。ちょっと方向性違うけど。

「じゃあ僕は寄ってから営業にでます。各チームリーダー、任せたよ」

「はい!」

まあ、営業の名目で家事に戻るかサロンに行くんだけど。


「おっ、イ、…エビータ」
「フランコ…さん」

通りで顔を合わせたのは本日非番のフランコ。今日も今日とて出張帰りの彼は鮮度の良い魚を持って来たようだ。

「これで何か作ってくれ」
「いわし…南蛮漬けにでもしようかな。酢漬けだから半分持って帰っていいよ」
「カルピオーネのことだな?それもいいけどあれも頼む。ベッカフィーコ」
「パン粉焼き?ここで食べてくの?」
「フリオには洗濯が終わったら昼飯にくるよう言ってある」

ここは定食屋か!

とまあ気安くしゃべりがらビアジョッティ家の門をくぐると…

「ハー…それにしてもなぁ…」
「なに?」

「エビータの中身がお前じゃなきゃな…」
「なにその残念そうな顔」

フランコは病院のナース、モニカさんが寿退社をしたことでただいま絶賛凹み中だ。
モニカさん、そしてエビータ(外見)が好き…そこから導き出される答えは一つ。

フランコのタイプはしっかり者の勤労女子だな?




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