コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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イヴァーノの事情 ②

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陽の沈む薄暗い病室で二度目の目覚め…
リンリンと呼ばれた女子は消え、傍らでは青い服を着替えた夫人とタヌキだけが僕の目覚めを待っていた。

「イヴァーノくん、ドクターが来る前に打ち合わせを済ませておこうか」
「打ち合わせ?」
「確認…というかすり合わせ…と言うか。ねえお父さん」

うすうす気づいていたことだが、このタヌキと夫人は夫婦らしい。
そして夫人は思った通り、この病院の職業看護婦らしい。

「君は…というか、イブはイベントの将棋倒しに巻き込まれ意識不明でこの病院に運び込まれたんだよ」

「外傷以外無いというからすぐ気付くかと思いきや…どうしても目覚なくて、それどころか一度はあなた…というか伊吹は心肺停止しかけてたの。私たちがどれほど焦燥したか…それがいきなり心拍を取り戻したのよ!アレ奇跡だったわね!」
「思えばアレがそうだったんだな…ありとあらゆる二次元に精通した僕の経験値から弾き出されたデータがそう主張している!」

「アレアレってな、なんのこ…」

「ここは君の知るサルディーニャ国じゃない。とある異世界の…日本という小さな島国だ」

「はっ?は、ははっ…はっ!馬鹿馬鹿しい!そんな荒唐無稽な話!は…な…し…」キョロキョロ

荒唐無稽と言えるだろうか…?
事実この部屋も、チカチカと光る異質な調度品(?)も、ここに居る庶民たちも全てが僕の知るサルディーニャとかけ離れている…

「信じるも信じないも自由だけどね、とりあえず今の君は、君の言うあの白い狼藉者に全ての命運を握られている」
「な、なんだって!」

「だってあなたドクターの許可がなければここを出られないのよ?」
「それにドクターは注射一本で君を黙らせることが出来る。納税額的にもかなりの強者だ」

ゴクリ「確かに…あの注射は危険だ…」

一瞬で意識がとんだ…なんという物騒な薬物だろう…

「ここを出たいなら体調は回復した、と思わせないとね」

「う…、そういうものなのか…」

「そしてこれも信じたくないだろうけど…僕たちは君の両親だよ♪」

こっ!このタヌキがっ!?

「ママって呼んでいいわよ?」
「じゃあ僕はお父様で」

クラクラ…「う、嘘だ…」

「まあまあ。とりあえず君が思うよりずっと良いところだよ、ここは。なんでもあるし。君の世界より自由だし」
「サルディーニャは自由の国だ!」
「それでもだよ」
「イヴァーノ!余計なことは言わず大人しく私たちの言う通りにしなさい!じゃないと永遠にここから出して貰えないわよ!」

ヒェ!

「い、嫌だ!こんな白い部屋で寝たきりなど…」

くぅ!屈辱だがここは言う通りにするしかない…

「良いだろう庶民。今はお前たちにあわせてやる。でもここを出たら僕が満足出来るだけの待遇を用意すると約束しろ」

「はいはい」
「ブハハ!」

「何がおかしい!」

と言うことで…
この身体の母親にいわれるがまま診察を受け様子を見ること二日間、ついにこの白い部屋を出る日がやってきたのだが…

カタン

「ひ!部屋が動いてる!」
「エレベーターね」
チーン
「はい一階」

「あ、あれは何!箱の中で人が動いている!」
「テレビね。50インチかな?」

ウィィィ…ン

全面ガラスの扉?ええっ!勝手に開くだ…と…?

オロオロ「…ば、馬車はどこ…」

「プ、クク…、なんか面白いわ」
「じゃあこれはどうだ!さあ乗った乗った!」

「こ、この四角い箱に乗り込んでどうす…」

ブロロン!

「ぎゃ!う、動いた!」

「あははははは!」
「わははははは!」

こ、この僕が庶民なんかに笑われっぱなしだと?キィィィ!許せない!
…けどそれ以上に今は…

疲れた…私室で休みたい…


到着したのは箱みたいな家が立ち並ぶある一角。庶民街のむさ苦しさとは違うが…どうもこう…息苦しさを感じるのは緑が少ないからだろう。

「ち、小さい…」
「失礼ね。中古でローンはまだあと十五年残ってるけど一応これでも5LDKよ」
「庭もあるよ。一坪だけど」

正気か?うちの厩舎と同じ広さじゃないか。

「イヴァーノくん、突き当たりの五畳間があなたの部屋ね」

こ、ここか…

ガチャ

「狭い!ベッドと貧相な机しかないじゃないか!」

バン!

「おい!」
「イヴァーノ!ドアは静かに開けなさい!」
「そんなことよりあれは何だ!あんな狭い部屋が僕の部屋だと?ふざけるな!」
「イヴァーノ君、見るがいいこの居間を。ここはこの家で一番広い部屋だ。あとはわかるね」ポン

ここが居間…?兄弟の中で一番小さな部屋をあてがわれている僕の私室より狭いここが…クラリ…

ガチャガチャ バタン!

「ただいま!伊吹…じゃない、イヴァーノどこぉ?」
「お姉ちゃん、あんた早退してきたの?」
「だって面白いことになってるって聞いて…午後休とった。でイヴァーノは?」

「イヴァーノって言うな!何だお前h」
ベシィ!「年上に向かって何よその口の利き方!気をつけなさい!」

「い、痛い…」

お姉ちゃんとか言ったな?じゃあこいつはこの身体の姉弟か。あのリンリンといいこの世界の女は凶暴だな…

「異世界入れ替わり転移か…、はぁ~良かった。じゃあ伊吹はどっかで生きてんのね」
「どっかというか」

「サルディーニャだ!愛と自由の国、僕の愛する美しきサルディーニャだ!」

「戻って来ないの?」
「どうやって戻る。『ドキナイ』は魔法のある世界観じゃない。まあ…このパターンじゃセオリー的に無理だな」
「おい」
「なんとかならないの?」
「なるとすれば…鍵はイヴァーノ君だ」
「おいっ!」
「そっか…」

「取り敢えず生きてるって分っただけでよしとするわ」

「無視するな!というかお茶と焼き菓子が欲しい。あの病院は水のようなスープばかりで最低だった…。文化文明の進んだ国だと言うから期待したというのに…なんだあれは!」

「仕方ないでしょ、三日間意識不明でいきなり食べたら胃腸がびっくりしちゃうんだから」
「ほらこれあげる」トン

「な…なにこれ」

「ミセスドーナツのフレンチクルーラーとシェイク」

ハム「…お…美味しい…」ホワァァァン…

「イヴァーノ、夕飯前だからそれ一つにしときなさいね」
「誰に向かってものを言って」
「ごはん抜かれたいの?」

「…分かった」シブシブ…

その後、イブキの弟とやらも帰宅し、「イブちゃん、イブちゃん」と纏わりつかれうんざりしたが(悪い気はしない)、とにかく…

こうして僕のこの狭くて貧相な部屋での生活が幕を開けたのだった。






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