218 / 225
帰還会議
「伊吹、方法は分かったんだ。これでもし上手くいけば…きっとまた会えるさ」
「うん」
「伊吹、同僚の息子さんはアメリカに行ってもう五年も帰ってないんだって。地球に居たってそんなもんよ」
「うん」
「イブちゃん。俺毎日『ドキナイ』観るね」
「うん」
「伊吹、次来るときはイケメン旦那も連れて来なさいよ」
「うん」
別れを惜しむ僕たちを遠目に、心配そうな表情をするイヴァーノの彼氏。
「リンリンさん、イブはその…大丈夫?号泣してるけど…」
「あーえー、ゆ、夢が叶って感動してるの。うれし涙だよ」
「ならいいけど…」
「それよりほら!撮ったげて。記念の家族写真!」
「じゃあ人込みを避けてそこの花壇前にどうぞ」
どうやら彼はコス現場のカメコじゃなく本物のカメラマンのようだ。良かった…カメコと出来てる…とかあり得無いから!
しかし…イヴァーノはこういうタイプが好きだったのかぁ…意外…。なんと言うか…肩の力が抜けた自然体の人。けどどこか満たされてる感じの人。
あっちの誰とも違う…あー、セルジオに雰囲気が似てるような?へー…
「行きますよー」
ゴクリ…「みんな元気で!」
パシャ
スン…「…」
「あ、あれおかしいな…僕の分析に狂いがあるだ…と…?この数々のシステム構築に関わってきた天才SEであるこの僕の分析が間違いだと?」
「お父さん!」
「まあ待ちなさい伊吹。角度かな?若菜、少しずらしてごらん?」
「こう?」
「そうだ。大木君、もう一枚」
パシャ
ドシャァァァァ…
「も、もうダメだ…」
「伊吹!オタクが一度や二度で諦めるな!」
「伊吹!私の息子がこれぐらいでダメだとか言うんじゃないわよ!」
「立て!立つんだ伊吹ぃー!」
「イブちゃん、俺お茶持ってきてあげよーか?」
落胆する僕たちを遠目に、ドン引きっぽい表情をするイヴァーノの彼氏。
「リンリンさん、イブたちはその…大丈夫?スポ根みたいになってるけど…」
「あーえー、あの家族いつもあんなだから」
「まあそうか…」
発動しない奇跡。ああ…やっぱり無理なのか…いいや!奇跡は来る!きっと来る!異世界の扉はきっと開くはず!僕たちは諦めない!
手を変え品を変え何枚も撮影を頼むが、大木と呼ばれたイヴァーノの彼氏は文句ひとつ言わない器のデカさだ。イヴァーノの彼氏が出来るんだから、考えてみりゃそりゃそうか。
「お姉、あの人いい人だね…」
「まあね。仕事の合間縫ってイヴァーノのインスタライブに付き合うくらいだもん」
「インスタ…コスサミのゲストに呼ばれるとか…あれどうなってんの?」
「大人気。この間登録者数一万二千人超えたわよ」
「う…っそ!」
僕の驚きはともかく、ウロウロしながら頭を抱えるお父さん。
ブツブツ「何か…何かが足りないんだ…」ブツブツ
僕は信じてる!今までだって僕の急場を救ったのはいつでもお父さんだったんだから!
そんな我が家の狼狽をよそに、呑気にダベるリンリンさんとイヴァーノの彼氏。
「これだけのイベント会場を撮るのは二度目だな」
「それって事故のあったあのコミケのこと?」
「そうそう。あれに匹敵する異様な熱気だよ」
「すごいでしょ?」
「まさに。人知を超えたパワーを感じるね」
「!」
「!」
今なんて⁉
「人知を超えた?」
「パワー? 」
顔と顔を見合せる僕とお父さん。
最後のファクター!それはきっと〝人知を超える力”だ!
「大木君!これで最後だ。集まったレイヤーの皆が移るように…会場全体を背景にして…いいかい?」
「ええもちろん」
「伊吹、ほら前向いて」
「うん」
「笑って伊吹」
「うん」
「イブちゃんファイッ!」
「うん!」
「今度こそ!」
「うん!!!」
右からお姉が、左から青葉がイヴァーノの絵を掲げる。左右から挟み込まれた合わせ鏡ならぬ〝合わせイヴァーノ”、その真ん中に居るのは僕だ。
僕の右手に握りしめられたのは、リンリンさんが気を利かしてさっきスマホからプリントしてきた集合写真。
オープニングアクトへの招待が決まった記念にって、イヴァーノコスをしたイヴァーノを囲んでリンリンさん、そして僕の家族みんなでお祝いした時の写真だって。
ロケットペンダントが持って来れたんだから、きっとこれも持って帰れるって信じてるよ神様!
コスサミとコスサミがリンクしたオタクの奇跡。これは神様からのボーナスなんでしょう?
あっちに行って二年、ゼロスタートどころかマイナススタート、扶養家族を抱えてよくここまで頑張りましたね…っていう…
オルトゥスの神様…ありがとう!ありがとう!
「はい取りますよー!」
「伊吹、ここでまた会おう」
「!」
パシャ!
「うん」
「伊吹、同僚の息子さんはアメリカに行ってもう五年も帰ってないんだって。地球に居たってそんなもんよ」
「うん」
「イブちゃん。俺毎日『ドキナイ』観るね」
「うん」
「伊吹、次来るときはイケメン旦那も連れて来なさいよ」
「うん」
別れを惜しむ僕たちを遠目に、心配そうな表情をするイヴァーノの彼氏。
「リンリンさん、イブはその…大丈夫?号泣してるけど…」
「あーえー、ゆ、夢が叶って感動してるの。うれし涙だよ」
「ならいいけど…」
「それよりほら!撮ったげて。記念の家族写真!」
「じゃあ人込みを避けてそこの花壇前にどうぞ」
どうやら彼はコス現場のカメコじゃなく本物のカメラマンのようだ。良かった…カメコと出来てる…とかあり得無いから!
しかし…イヴァーノはこういうタイプが好きだったのかぁ…意外…。なんと言うか…肩の力が抜けた自然体の人。けどどこか満たされてる感じの人。
あっちの誰とも違う…あー、セルジオに雰囲気が似てるような?へー…
「行きますよー」
ゴクリ…「みんな元気で!」
パシャ
スン…「…」
「あ、あれおかしいな…僕の分析に狂いがあるだ…と…?この数々のシステム構築に関わってきた天才SEであるこの僕の分析が間違いだと?」
「お父さん!」
「まあ待ちなさい伊吹。角度かな?若菜、少しずらしてごらん?」
「こう?」
「そうだ。大木君、もう一枚」
パシャ
ドシャァァァァ…
「も、もうダメだ…」
「伊吹!オタクが一度や二度で諦めるな!」
「伊吹!私の息子がこれぐらいでダメだとか言うんじゃないわよ!」
「立て!立つんだ伊吹ぃー!」
「イブちゃん、俺お茶持ってきてあげよーか?」
落胆する僕たちを遠目に、ドン引きっぽい表情をするイヴァーノの彼氏。
「リンリンさん、イブたちはその…大丈夫?スポ根みたいになってるけど…」
「あーえー、あの家族いつもあんなだから」
「まあそうか…」
発動しない奇跡。ああ…やっぱり無理なのか…いいや!奇跡は来る!きっと来る!異世界の扉はきっと開くはず!僕たちは諦めない!
手を変え品を変え何枚も撮影を頼むが、大木と呼ばれたイヴァーノの彼氏は文句ひとつ言わない器のデカさだ。イヴァーノの彼氏が出来るんだから、考えてみりゃそりゃそうか。
「お姉、あの人いい人だね…」
「まあね。仕事の合間縫ってイヴァーノのインスタライブに付き合うくらいだもん」
「インスタ…コスサミのゲストに呼ばれるとか…あれどうなってんの?」
「大人気。この間登録者数一万二千人超えたわよ」
「う…っそ!」
僕の驚きはともかく、ウロウロしながら頭を抱えるお父さん。
ブツブツ「何か…何かが足りないんだ…」ブツブツ
僕は信じてる!今までだって僕の急場を救ったのはいつでもお父さんだったんだから!
そんな我が家の狼狽をよそに、呑気にダベるリンリンさんとイヴァーノの彼氏。
「これだけのイベント会場を撮るのは二度目だな」
「それって事故のあったあのコミケのこと?」
「そうそう。あれに匹敵する異様な熱気だよ」
「すごいでしょ?」
「まさに。人知を超えたパワーを感じるね」
「!」
「!」
今なんて⁉
「人知を超えた?」
「パワー? 」
顔と顔を見合せる僕とお父さん。
最後のファクター!それはきっと〝人知を超える力”だ!
「大木君!これで最後だ。集まったレイヤーの皆が移るように…会場全体を背景にして…いいかい?」
「ええもちろん」
「伊吹、ほら前向いて」
「うん」
「笑って伊吹」
「うん」
「イブちゃんファイッ!」
「うん!」
「今度こそ!」
「うん!!!」
右からお姉が、左から青葉がイヴァーノの絵を掲げる。左右から挟み込まれた合わせ鏡ならぬ〝合わせイヴァーノ”、その真ん中に居るのは僕だ。
僕の右手に握りしめられたのは、リンリンさんが気を利かしてさっきスマホからプリントしてきた集合写真。
オープニングアクトへの招待が決まった記念にって、イヴァーノコスをしたイヴァーノを囲んでリンリンさん、そして僕の家族みんなでお祝いした時の写真だって。
ロケットペンダントが持って来れたんだから、きっとこれも持って帰れるって信じてるよ神様!
コスサミとコスサミがリンクしたオタクの奇跡。これは神様からのボーナスなんでしょう?
あっちに行って二年、ゼロスタートどころかマイナススタート、扶養家族を抱えてよくここまで頑張りましたね…っていう…
オルトゥスの神様…ありがとう!ありがとう!
「はい取りますよー!」
「伊吹、ここでまた会おう」
「!」
パシャ!
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
何もしなかっただけです
希臘楽園
ファンタジー
公爵令嬢であり王太子の婚約者であった私は、「地味だ」という理由で婚約を破棄され、王宮を去った。
それまで私が担っていた役目を、誰も知らないまま。
――ただ何もしなくなっただけで、すべては静かに崩れていく。
AIに書かせてみた第14弾は、「追放ざまぁ」系の短編。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
『お前の針仕事など誰でもできる』——なら社交界のドレスの裏地を、めくってごらんなさい
歩人
ファンタジー
「地味な針仕事しかできない令嬢は要らない」——公爵家の嫡男にそう言い渡された伯爵令嬢ティナは、
裁縫道具だけを持って屋敷を出た。その翌週、社交界が凍りつく。王妃の夜会服も、公爵令嬢の舞踏会
ドレスも、第一王女の外交用ローブも——仕立てた職人が消えたのだ。しかもティナが十年かけて縫った
全てのドレスの裏地には、二重縫いで隠された署名が残されていて——。
辺境の小さな仕立て屋で穏やかに暮らすティナの元に、王都から使者がやってくる。
追放された宮廷花師が辺境の荒野に花を咲かせたら、王都の庭園だけが枯れ続けているようです
歩人
ファンタジー
「花を飾るだけの令嬢は不要だ」——王城の庭園を十年守った伯爵令嬢フローラは追放された。
翌月、王城の庭園が一夜にして枯れ果てる。さらに隣国への外交花束を用意できず国際問題に——
フローラの花束に込められた花言葉が、実は外交メッセージそのものだったのだ。
一方、辺境の荒野に降り立ったフローラが地面に触れると花が芽吹き始める。
荒野を花畑に変えていくスローライフの中で、花の感情が色で見える加護が目覚めて——。
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。