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1羽 迷子の銀色狼
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フェリシア神国のフォレストサイド村に住む14歳のライキは、自分の部屋で絵の上手い親友ユデイの描いた大好きな女の子リーネのエッチな絵を見て、自慰を行っていた。
(ハァ、ハァ、ハァ・・・ユデイのやつこんなもの描いて・・・
でもっ・・・あぁ、リーネ・・・!)
今までもリーネを想い勃起することは多々あったが、射精にまで至ってはいなかった。
だがユデイの描いた絵が起爆剤となり、酷く興奮し、たまらず弄っているうちに段々と何かがこみ上げてきたのだった。
(うっ・・・気持ちいい・・・これが・・・射精感・・・か?
・・・やばい・・・出る・・・かも・・・・・・)
「ハァ・・・ハァ・・・リーネ・・・ハッ、ハッ、ハアッ、ハッ、ハッ・・・リーネ・・・リーネ!・・・リーネ!!・・・・・うっ!!」
彼が果てた瞬間、身体が天井をすり抜けて宙に浮かびあがった後、ものすごいスピードでどこかへ飛んでいってしまう。
「えっ・・・!?何!?
うわぁぁぁぁーーーー・・・・・・」
段々遠のく悲鳴。
夜空を駆け抜け、見知らぬ遠い森の上空でピタッと動きが止まったかと思えば、彼の身体はシュン!と消え、真下の森の中にシュン!と姿を現した。
彼は夜の森の中で唖然とした。
「何処だ、ここ・・・どうなってるんだ・・・!?」
左手にはユデイの描いたリーネの絵が握られたままだった。
それから3日後の朝──。
フォレストサイド村にて。
ライキの家の前で農作業中の男達が噂をしていた。
「狩人一家の次男坊の”銀色狼”。
昨夜ふらっと帰ってきたってよ!」
「おお!帰ってきたか!
突然いなくなっちまって3日か・・・。
何の前触れもなく何も持たずに出て行っちまって変だってんでよ。
誘拐か?神隠しか?って村中で心配し、捜索隊が出てたけどよ。
いやー無事でよかったよかった。」
「・・・。」
自分の部屋で寝ていたライキは、そんな会話を耳にして目を覚ました。
「そっか・・・俺、帰って来たんだ・・・。」
ライキは昨夜のことを思い返す。
(疲れきっていつもの森にたどりついたところで、森まで俺を探しに来ていたリーネと会って、その顔を見たとたん安心した俺は「ただいま・・・」と言い残して倒れてしまったんだ。
そのままリーネの膝の上で介抱されて、
(・・・リーネの膝・・・ふわふわでいい匂いだ)等と思っていたら、兄貴と父さんが俺を担ぎあげ、家に帰る途中で意識が途切れたんだっけ・・・。)
と回想する。
部屋を見渡すと、森で出会った親切なお爺さんから借りたけど壊してしまった斧や、いくつかの借り物の道具類が置いてある。
(兄貴が装備を外して置いてくれたのか・・・。)
(斧、修理したら貸してくれたお爺さんに返しにいかないと。)
そう考えながら階段を下りると、ボサボサの髪に汚れたままのライキを見て母が声をかけた。
「おはよう、ライキ。
朝ごはんの前にお風呂にしなさい。
そのまま寝ちゃってるから汚いわよ?」
「・・・うん。」
ライキは脱衣所で服を脱ぎ、風呂に入る。
(はぁ~・・・3日ぶりの風呂生き返る・・・。
けど腹減った・・・。)
ぐぅぅ~と凄い音が浴室に響く。
風呂から上がり、服を着て、鏡を見ながらヘアピンとピアスを付けてから、狩りに出るための武器防具を装備した後リビングに行ったら母に驚かれるライキ。
「ライキ!?
帰ってきたばかりなんだから今日くらい狩りは休んだらいいのに!」
「いや、もう回復したし大丈夫だよ。
それより俺の捜索に参加してくれた人たちがいるんだろ?
そのお礼に回りたいし、それが終わったら少し森に入ろうかなって。」
「も~、あんたは本当に狩り馬鹿なんだから。」
そこへ父がやってきて、軽く挨拶を交わしたあとライキの近くの席に腰掛け、渋い顔をして口を開いた。
「ライキ、どうして突然いなくなったりした?
ちゃんと説明をしろ。」
(きた・・・!
なんて言おう。
射精して遠くへ飛んだなんて言うの恥ずかしいし、信じてもらえないよな・・・。
目の前で証明することもできないことだし・・・。)
「・・・3日前の夜、森に忘れ物をしたことを思い出して、夜中に抜け出して取りに行ったら・・・迷ってしまって。
(ここからは嘘じゃないから堂々と・・・。)
知らないところに来て武器とか道具とか何も持ってなかったけど、森で出会ったお爺さんが斧とか道具類を貸してくれて・・・。
随分遠くまで行ってたから、帰ってくるまで3日かかった・・・。」
父ゲイルはじーっと厳しい顔つきのままでライキを見て、はぁ、と小さくため息をつき、
「何か嘘をついているな?正直に全部話せ。」
と言った。
(やっぱりばれたか・・・。
父さん勘が鋭いからな・・・。
どうする?
駄目元で本当のことを打ち明けるか?
でもこの父さんに射精・・・とか・・・すげー言い辛い・・・。)
とライキが冷や汗を垂らしながら考えていたら、丁度部屋から降りてきた兄にも父との会話が聞こえていたらしく、助け舟を出してくれた。
「親父さぁ、ライキも14だぜ?
そろそろ親に言いづらいことだって出てくる歳だろ。
別にいいじゃねーか。
無事に帰ってきたんだし。」
父はしばらく考え、もう一度ため息をついてから、
「もういい・・・。
これ以上詮索はしないでおくが、今回のことで村の人が皆心配し、捜索に参加してくれた人もいる。
そのことをよく自覚し、二度と同じことはするなよ。」
と言ってから、いつもの席に座りなおし、母から朝食を受け取り食べはじめた。
兄はライキの隣の席に座り、母が運んできた朝食を目の前に二人でいただきますと手を合わせ、食べはじめる。
「お前がいなくなっている間、リーネがすげー心配して3日の間ろくに寝ずに捜索に参加していたぜ?」
(そっか・・・リーネそんなに心配してくれたんだ。
俺が倒れたとき森にいたのはそういうことだったのか。
危ないことをして・・・。)
ライキが険しい顔になったので
「・・・なーに心配すんなよ。
俺と親父がついてたんだぜ?
怪我一つしてねーから。」
と兄がフォローした。
「・・・うん。
ありがとう兄貴。」
「いーって。
それよりありゃ、脈ありだぜ?
ここいらでぐっとアプローチしとけよ!」
にやけて肘鉄してくる兄。
「そうかな・・・。
一応俺なりにアプローチしてるけど、リーネ鈍いから全然気がつかないんだよ・・・。」
「ふーん・・・?
いつもどんなアプローチしてんの?」
「今年の誕生日に髪飾り作ってあげただろ?
それから、リーネんちの薬屋で素材取りに森に行くとき護衛したり、
狩りのときリーネの好きな果物があったら採って持って行ったり、
悩み事をきいたりとかさ。」
「あー、それじゃあの娘相手だとなかなか進展しねーぞ?
もっとこうぐっと男を見せろよ。
壁にドンってやって、キスくらい仕掛けてみるとかさ。」
「キ・・・キスって、そんなことできるかよ!
怖がらせて泣かれて叩かれて変態扱いだよ!」
「そうか?
あの娘の昨日の様子だといけると思うがな・・・。
お前にはハードルが高すぎたか?
じゃあさ、今だから使える手だ。
俺のこと探してくれてありがとう、
リーネに会いたい一心で帰ってきたんだ、って”ぎゅーーーっ”と強く抱きしめる!」
「!!」
「・・・さすが兄貴、それなら出来そうかな・・・?
抱きしめるのは自信ないけど・・・。
やってみる・・・!
ありがとう兄貴!」
「おう、がんばれよ。」
そんなことを話しているうちに父は食事を終え、もう出るからと席を立ち、母に何か指示をしている。
ライキが食事を終え、俺もそろそろ・・・と席を立つと、母が何かを入れた袋とメモを持ってきた。
「これ、うちの肉屋のハムと捜索に参加してくれた人のリストよ。
御礼言って渡してきなさい。」
ライキはリストの家を回り、お礼を言ってハムを渡して回る。
毎回事情を聞かれるので父に話した内容と同じ説明をした。
(はぁぁ・・・これで”迷子の銀色狼”とかそんなあだ名がつきそうだな・・・。
格好悪い・・・。)
と肩を落として歩いていると、そのまんまで良く知ってる声に呼ばれた。
「おーい、迷子の銀色狼のライキーーー!!」
「ユデイ!って、何でもうその話知ってるんだよ。」
ライキの親友のユデイが実家の本屋の開店準備中なのか、はたきを持って駆け寄ってくる。
「ヘヘっ、俺の情報網を舐めんなよ~って、さっきうちの3軒隣にお礼に来てただろ?
その時に聞こえただけ。」
「そっか。
つか3軒隣って、お前相変わらずの地獄耳な!」
ユデイの変わらない明るさにほっとしたライキはあははと笑いあう。
「俺も捜索に参加したかったんだけどさ、
お前みたいなひょろ坊が加わったところで邪魔なだけだっておとんに言われてさぁ・・・。
でも、ホント帰ってきてくれてホッとしたわ。
お互い年頃だし?いろいろあるだろうから詮索はしねーけどよ、何かあったらちゃんと言えよ?」
「・・・うん。
ありがとう。ユデイ。」
「いいってことよ!
それよか、この間の"おかず"どうだった?」
「あぁー・・・お前の思惑通りで悔しいけど・・・」
『射精したよ・・・!』
赤くなり、後半は小声で打ち明けるライキ。
「お!そっかそっか!
シシシ・・・ついにオナカマだな!」
と大声で言ったあとに腕を無理繰りクロス当て(※この国で男同志の友情・親交を示すときに行われる行為)をしてくる。
「ちょ!声でかいって!」
誰かに聞かれてやしないかと周りをチラチラ見つつ、一応クロス当てに応じるライキだった。
「で、良かったか?」
ユデイはニヤニヤして更に聞いてくる。
「あぁ・・・まぁ・・・。」
(・・・3日間帰って来れない距離に飛ぶくらいな!
・・・あ、この流れだしちょっと聞いてみよう。)
「・・・あのさ、お前射精す時って空に浮かんだりする?」
「空?んな大げさな!
それくらい気持ちが良かったってことか?
確かにあれは病みつきになるけどな!」
(やっぱそうだよな・・・。
あんな空に浮かんで、遠くに飛ばされたりするのって俺だけか・・・。)
ユデイの反応を見てそう確信した。
「そんなによかったならまた描いてやるよ。
今度はもっと刺激が強い空駒鳥のリーネ!」
「・・・お前さ、あーいうの描くときリーネでエロい妄想とかするの?」
複雑そうな表情でライキは尋ねた。
「あー・・・やっぱそれ気になる?
スマン、裸は想像しないと流石に描けないからしたわ。
でも俺他の奴にも頼まれて裸の女描くこと多くてさ、もう仕事みてーなもんだし割り切ってるっつーか・・・。
お前の好きな子をおかずにしたりは絶対にしねーから安心しろ。
俺もルウナのこと他の野郎におかずにされたくねーし、そこはわかるからさ。」
「・・・そっか。」
『それならまた頼む。
お礼するからさ。』
赤くなってこそっと耳打ちする。
「いいぜ!
どんなのご所望?」
『えぇと、ゴニョゴニョ・・・』
「OK!
お前に犯されて涙目で感じてるリーネね!
エロいね~、コノヤロ任せとけ!!」
「ちょ、おま、ホント声でかいから!」
「じゃ、そろそろ戻らないとおかんに怒られるから行くわ。またな!」
「うん・・・またな!」
手を振ってユデイと別れるライキ。
少し離れた所で聴いていた若奥さんたちに、
「迷子の銀色狼くん、夜のお供に薬屋さんとこの空駒鳥ちゃんをご所望なのね?
・・・クスクス」
「涙目でよがらせたいだなんて、ちょっとSっ気があるのかしら?
・・・クスクス」
と噂されてて
「あいつ・・・つつぬけじゃないかよ・・・。」
真っ赤になって通りを去るライキなのだった。
そんな彼の姿を少し離れた家の影から複雑そうな顔をして見つめる少女がいた。
ライキはお礼に回る人のリストを見て、最後に残ったリーネの名前を見てドキドキする。
(よし、リーネに会ったら兄貴のアドバイス通りに・・・!)
そんなことを考えながら”桜駒鳥の薬屋”と書かれた店のドアを開けると、カランカランとドアに取り付けてある鈴が鳴り響き、この店の主である老婆、桜駒鳥ことマールが、ロッキングチェアーに座っている姿が目に飛び込んで来た。
「ばあちゃんおはよう!」
「ライキ、おはよう。
もう大丈夫なのかい?」
「うん、いっぱい寝たから元気になった。
リーネは?」
「お前さんが帰ってきて安心したとたんに寝て、まだ起きてこん。
起こすかい?」
「いや、また後で顔を出すから寝かしといてやって。」
「ありがとう。
ホントにライキは優しいね。」
と言ってから、ライキに近くの椅子を勧めるマール。
「・・・あの子が寝てるうちに少し話しておきたいことがあるんだけどいいかい?」
「・・・?
いいけど、何?」
座りながらライキが返す。
「昨夜帰ってきてくれて本当によかった・・・。
正直わしもかなりの歳だからいつ迎えが来るかわからん・・・。
下手したらライキが帰ってくる前にぽっくり逝っとったかもしれん。」
それを聞いたライキは険しい顔になり、声を落としていった。
「ばあちゃんまだまだ元気じゃないか。
縁起でもないこと言うなよ・・・。」
そんなライキの背中をばしっと叩いたマールは明るく笑い飛ばす。
「そんなしんみりせんと!
今朝夢にじいさんが出てきたもんだからついの。
でも、よく聞いておくれ。」
再び真面目な顔になるマール。
「わしはライキのこと気に入っとるよ。
優しいし、真面目で、努力家で・・・強い男だ。
お前さんの兄貴ほど目立っては騒がれんけど、美少年だしの!
ひゃっひゃっひゃっ!」
反応に困り顔を赤らめ俯くライキ。
(・・・俺が優しくしてるのリーネだけだし・・・。
努力してるのだって兄貴みたいな才がないからだし・・・。
リーネでエロい事考えたりもするよ?
目付きだってキツいし・・・。
兄貴みたいな顔が良かったよ・・・。)
「じゃが、ちと押しが足りんかの。
もっとグイグイいかんと、優しいだけじゃなかなかあの子には伝わらんよ?」
「・・・ばあちゃんまでそんなこと言うのかよ・・・。」
赤い顔のまま困ったように顔を歪めるライキ。
「わしはお前たちにつがいになってほしいと思っておる。」
「!」
はっとして顔を上げるライキ。
「昔から結婚できる年齢前の、愛の女神フェリシア様の加護を受けた特別な恋人同士のことをつがいっちゅーじゃろ?
巡礼の旅なんかしおるつがいもおる。
あれじゃあれ。」
(・・・そりゃ、俺だってリーネとつがいになりたいけどさ・・・。)
と俯くライキ。
「・・・もしもわしが死んだら、あの子は一人ぼっちになってしまう。
でも、お前さんがあの子のつがいになって、傍で支えてくれるなら・・・
わしは安心できるんじゃがのう。」
「俺がリーネとつがいになりたいって思っていても、リーネは違うかもしれないじゃないか・・・。」
「そうかねぇ?
今まではお前さんに対して無自覚だったかもしれんけど、ライキがいなくなったとき、流石に何かに気がついた風じゃったぞ?
じゃないと、あんなに必死になって探すもんかい。
一番近くであの子を見て来たわしが言うんじゃから、間違いないよ。」
それを聞いて、ライキはリーネへの想いに希望の光が射した気がし、柔らかく微笑んだ。
「・・・そっか・・・。」
「そうそう、お前さんは笑っておるととびきりいい男じゃよ。」
マールもその笑顔にホッコリとして微笑み返すのだった。
「あの子は気が強いところがあるし、お互いに年頃じゃから照れたりとか、気恥ずかしさもあって、ぶつかり合うこともあると思うが、素直な気持ちを伝えて、末永く仲良くやっていきなね。」
「・・・うん。
ありがとう。ばあちゃん。」
「ひゃひゃひゃ!
わしが元気なうちにちとお節介でも焼かせてもらうかねぇ。
ニヤニヤ・・・」
マールは悪巧みを思いついた風に手元のノートに何かを書きはじめた。
「・・・あの、ばあちゃん?」
「引き止めて悪かったの。
わしはやることができたからもういいぞ。
ホレ。
森に狩りに行くんじゃろ?
さっさと行きな。」
書き込むのに夢中になっているマールにあっち行けと手を振られる。
「・・・捜索のお礼のハム、ここに置いてくから。」
─Line,Thank you! Raiki─
(※和訳:リーネ ありがとう ライキ)
と簡単な走り書きをつけて、ハムをカウンターの上に置くライキ。
「はいよ。」
「じゃあな。」
ライキがそういって店を出ようとしたところで、
「あの子のこと・・・頼むね。」
ともう一度声をかけられる。
ライキは少し不思議そうに首をかしげながらも、
「うん。」
と頷いて店を出た。
─これがばあちゃんとの最後の会話だった─
その後、森で岩鳥を射抜いたライキが矢を回収していると、息を切らしたリーネがライキの名を呼びながら走ってきて、ライキを見つけると涙でぐしゃぐしゃになった顔で勢い良く胸元に飛び込んできた。
「リーネ!?
こんな森の中まで来たら危ないぞ!
・・・何かあったのか?」
「ライキ!
おばあちゃんが、おばあちゃんが・・・!」
ライキの胸を掴んだまま涙で濡れた顔を上げるリーネ。
「ばあちゃん?
今朝会ったばかりだけど・・・。
・・・どうかしたのか・・・?」
リーネの只ならぬ様子から嫌な予感がし、眉を寄せながら愛しい彼女の肩に手を置くと尋ねた。
「・・・目が覚めたらおばあちゃんが座ったまま動かなくなってて・・・。
脈がなくて・・・ひっく・・・
・・・私、一人になったって怖くなって・・・。
そしたらライキの顔が浮かんですぐに会いたくなって・・・。
カウンターの上にライキのメモとハムがあったから、森にいると思って・・・。
それで・・・えぐっ・・・」
ライキはリーネからマールの訃報を聞き、数刻前に会ったばかりのマールの顔を思い出し、泣き崩れるリーネを”ギュッ・・・”と強く抱きしめ、しばらく一緒に泣くことしかできなかった。
「・・・リーネ、ばあちゃんを弔ってやらなきゃいけないから、大人の人に伝えに行こう。
母さん店にいるから・・・。」
─翌日マールばあちゃんの葬儀がとりおこなわれ、みんなで天国へと見送った。
そして、兄貴の助言を望まぬ形で実行したのち、1年の月日が流れたのだった。─
(ハァ、ハァ、ハァ・・・ユデイのやつこんなもの描いて・・・
でもっ・・・あぁ、リーネ・・・!)
今までもリーネを想い勃起することは多々あったが、射精にまで至ってはいなかった。
だがユデイの描いた絵が起爆剤となり、酷く興奮し、たまらず弄っているうちに段々と何かがこみ上げてきたのだった。
(うっ・・・気持ちいい・・・これが・・・射精感・・・か?
・・・やばい・・・出る・・・かも・・・・・・)
「ハァ・・・ハァ・・・リーネ・・・ハッ、ハッ、ハアッ、ハッ、ハッ・・・リーネ・・・リーネ!・・・リーネ!!・・・・・うっ!!」
彼が果てた瞬間、身体が天井をすり抜けて宙に浮かびあがった後、ものすごいスピードでどこかへ飛んでいってしまう。
「えっ・・・!?何!?
うわぁぁぁぁーーーー・・・・・・」
段々遠のく悲鳴。
夜空を駆け抜け、見知らぬ遠い森の上空でピタッと動きが止まったかと思えば、彼の身体はシュン!と消え、真下の森の中にシュン!と姿を現した。
彼は夜の森の中で唖然とした。
「何処だ、ここ・・・どうなってるんだ・・・!?」
左手にはユデイの描いたリーネの絵が握られたままだった。
それから3日後の朝──。
フォレストサイド村にて。
ライキの家の前で農作業中の男達が噂をしていた。
「狩人一家の次男坊の”銀色狼”。
昨夜ふらっと帰ってきたってよ!」
「おお!帰ってきたか!
突然いなくなっちまって3日か・・・。
何の前触れもなく何も持たずに出て行っちまって変だってんでよ。
誘拐か?神隠しか?って村中で心配し、捜索隊が出てたけどよ。
いやー無事でよかったよかった。」
「・・・。」
自分の部屋で寝ていたライキは、そんな会話を耳にして目を覚ました。
「そっか・・・俺、帰って来たんだ・・・。」
ライキは昨夜のことを思い返す。
(疲れきっていつもの森にたどりついたところで、森まで俺を探しに来ていたリーネと会って、その顔を見たとたん安心した俺は「ただいま・・・」と言い残して倒れてしまったんだ。
そのままリーネの膝の上で介抱されて、
(・・・リーネの膝・・・ふわふわでいい匂いだ)等と思っていたら、兄貴と父さんが俺を担ぎあげ、家に帰る途中で意識が途切れたんだっけ・・・。)
と回想する。
部屋を見渡すと、森で出会った親切なお爺さんから借りたけど壊してしまった斧や、いくつかの借り物の道具類が置いてある。
(兄貴が装備を外して置いてくれたのか・・・。)
(斧、修理したら貸してくれたお爺さんに返しにいかないと。)
そう考えながら階段を下りると、ボサボサの髪に汚れたままのライキを見て母が声をかけた。
「おはよう、ライキ。
朝ごはんの前にお風呂にしなさい。
そのまま寝ちゃってるから汚いわよ?」
「・・・うん。」
ライキは脱衣所で服を脱ぎ、風呂に入る。
(はぁ~・・・3日ぶりの風呂生き返る・・・。
けど腹減った・・・。)
ぐぅぅ~と凄い音が浴室に響く。
風呂から上がり、服を着て、鏡を見ながらヘアピンとピアスを付けてから、狩りに出るための武器防具を装備した後リビングに行ったら母に驚かれるライキ。
「ライキ!?
帰ってきたばかりなんだから今日くらい狩りは休んだらいいのに!」
「いや、もう回復したし大丈夫だよ。
それより俺の捜索に参加してくれた人たちがいるんだろ?
そのお礼に回りたいし、それが終わったら少し森に入ろうかなって。」
「も~、あんたは本当に狩り馬鹿なんだから。」
そこへ父がやってきて、軽く挨拶を交わしたあとライキの近くの席に腰掛け、渋い顔をして口を開いた。
「ライキ、どうして突然いなくなったりした?
ちゃんと説明をしろ。」
(きた・・・!
なんて言おう。
射精して遠くへ飛んだなんて言うの恥ずかしいし、信じてもらえないよな・・・。
目の前で証明することもできないことだし・・・。)
「・・・3日前の夜、森に忘れ物をしたことを思い出して、夜中に抜け出して取りに行ったら・・・迷ってしまって。
(ここからは嘘じゃないから堂々と・・・。)
知らないところに来て武器とか道具とか何も持ってなかったけど、森で出会ったお爺さんが斧とか道具類を貸してくれて・・・。
随分遠くまで行ってたから、帰ってくるまで3日かかった・・・。」
父ゲイルはじーっと厳しい顔つきのままでライキを見て、はぁ、と小さくため息をつき、
「何か嘘をついているな?正直に全部話せ。」
と言った。
(やっぱりばれたか・・・。
父さん勘が鋭いからな・・・。
どうする?
駄目元で本当のことを打ち明けるか?
でもこの父さんに射精・・・とか・・・すげー言い辛い・・・。)
とライキが冷や汗を垂らしながら考えていたら、丁度部屋から降りてきた兄にも父との会話が聞こえていたらしく、助け舟を出してくれた。
「親父さぁ、ライキも14だぜ?
そろそろ親に言いづらいことだって出てくる歳だろ。
別にいいじゃねーか。
無事に帰ってきたんだし。」
父はしばらく考え、もう一度ため息をついてから、
「もういい・・・。
これ以上詮索はしないでおくが、今回のことで村の人が皆心配し、捜索に参加してくれた人もいる。
そのことをよく自覚し、二度と同じことはするなよ。」
と言ってから、いつもの席に座りなおし、母から朝食を受け取り食べはじめた。
兄はライキの隣の席に座り、母が運んできた朝食を目の前に二人でいただきますと手を合わせ、食べはじめる。
「お前がいなくなっている間、リーネがすげー心配して3日の間ろくに寝ずに捜索に参加していたぜ?」
(そっか・・・リーネそんなに心配してくれたんだ。
俺が倒れたとき森にいたのはそういうことだったのか。
危ないことをして・・・。)
ライキが険しい顔になったので
「・・・なーに心配すんなよ。
俺と親父がついてたんだぜ?
怪我一つしてねーから。」
と兄がフォローした。
「・・・うん。
ありがとう兄貴。」
「いーって。
それよりありゃ、脈ありだぜ?
ここいらでぐっとアプローチしとけよ!」
にやけて肘鉄してくる兄。
「そうかな・・・。
一応俺なりにアプローチしてるけど、リーネ鈍いから全然気がつかないんだよ・・・。」
「ふーん・・・?
いつもどんなアプローチしてんの?」
「今年の誕生日に髪飾り作ってあげただろ?
それから、リーネんちの薬屋で素材取りに森に行くとき護衛したり、
狩りのときリーネの好きな果物があったら採って持って行ったり、
悩み事をきいたりとかさ。」
「あー、それじゃあの娘相手だとなかなか進展しねーぞ?
もっとこうぐっと男を見せろよ。
壁にドンってやって、キスくらい仕掛けてみるとかさ。」
「キ・・・キスって、そんなことできるかよ!
怖がらせて泣かれて叩かれて変態扱いだよ!」
「そうか?
あの娘の昨日の様子だといけると思うがな・・・。
お前にはハードルが高すぎたか?
じゃあさ、今だから使える手だ。
俺のこと探してくれてありがとう、
リーネに会いたい一心で帰ってきたんだ、って”ぎゅーーーっ”と強く抱きしめる!」
「!!」
「・・・さすが兄貴、それなら出来そうかな・・・?
抱きしめるのは自信ないけど・・・。
やってみる・・・!
ありがとう兄貴!」
「おう、がんばれよ。」
そんなことを話しているうちに父は食事を終え、もう出るからと席を立ち、母に何か指示をしている。
ライキが食事を終え、俺もそろそろ・・・と席を立つと、母が何かを入れた袋とメモを持ってきた。
「これ、うちの肉屋のハムと捜索に参加してくれた人のリストよ。
御礼言って渡してきなさい。」
ライキはリストの家を回り、お礼を言ってハムを渡して回る。
毎回事情を聞かれるので父に話した内容と同じ説明をした。
(はぁぁ・・・これで”迷子の銀色狼”とかそんなあだ名がつきそうだな・・・。
格好悪い・・・。)
と肩を落として歩いていると、そのまんまで良く知ってる声に呼ばれた。
「おーい、迷子の銀色狼のライキーーー!!」
「ユデイ!って、何でもうその話知ってるんだよ。」
ライキの親友のユデイが実家の本屋の開店準備中なのか、はたきを持って駆け寄ってくる。
「ヘヘっ、俺の情報網を舐めんなよ~って、さっきうちの3軒隣にお礼に来てただろ?
その時に聞こえただけ。」
「そっか。
つか3軒隣って、お前相変わらずの地獄耳な!」
ユデイの変わらない明るさにほっとしたライキはあははと笑いあう。
「俺も捜索に参加したかったんだけどさ、
お前みたいなひょろ坊が加わったところで邪魔なだけだっておとんに言われてさぁ・・・。
でも、ホント帰ってきてくれてホッとしたわ。
お互い年頃だし?いろいろあるだろうから詮索はしねーけどよ、何かあったらちゃんと言えよ?」
「・・・うん。
ありがとう。ユデイ。」
「いいってことよ!
それよか、この間の"おかず"どうだった?」
「あぁー・・・お前の思惑通りで悔しいけど・・・」
『射精したよ・・・!』
赤くなり、後半は小声で打ち明けるライキ。
「お!そっかそっか!
シシシ・・・ついにオナカマだな!」
と大声で言ったあとに腕を無理繰りクロス当て(※この国で男同志の友情・親交を示すときに行われる行為)をしてくる。
「ちょ!声でかいって!」
誰かに聞かれてやしないかと周りをチラチラ見つつ、一応クロス当てに応じるライキだった。
「で、良かったか?」
ユデイはニヤニヤして更に聞いてくる。
「あぁ・・・まぁ・・・。」
(・・・3日間帰って来れない距離に飛ぶくらいな!
・・・あ、この流れだしちょっと聞いてみよう。)
「・・・あのさ、お前射精す時って空に浮かんだりする?」
「空?んな大げさな!
それくらい気持ちが良かったってことか?
確かにあれは病みつきになるけどな!」
(やっぱそうだよな・・・。
あんな空に浮かんで、遠くに飛ばされたりするのって俺だけか・・・。)
ユデイの反応を見てそう確信した。
「そんなによかったならまた描いてやるよ。
今度はもっと刺激が強い空駒鳥のリーネ!」
「・・・お前さ、あーいうの描くときリーネでエロい妄想とかするの?」
複雑そうな表情でライキは尋ねた。
「あー・・・やっぱそれ気になる?
スマン、裸は想像しないと流石に描けないからしたわ。
でも俺他の奴にも頼まれて裸の女描くこと多くてさ、もう仕事みてーなもんだし割り切ってるっつーか・・・。
お前の好きな子をおかずにしたりは絶対にしねーから安心しろ。
俺もルウナのこと他の野郎におかずにされたくねーし、そこはわかるからさ。」
「・・・そっか。」
『それならまた頼む。
お礼するからさ。』
赤くなってこそっと耳打ちする。
「いいぜ!
どんなのご所望?」
『えぇと、ゴニョゴニョ・・・』
「OK!
お前に犯されて涙目で感じてるリーネね!
エロいね~、コノヤロ任せとけ!!」
「ちょ、おま、ホント声でかいから!」
「じゃ、そろそろ戻らないとおかんに怒られるから行くわ。またな!」
「うん・・・またな!」
手を振ってユデイと別れるライキ。
少し離れた所で聴いていた若奥さんたちに、
「迷子の銀色狼くん、夜のお供に薬屋さんとこの空駒鳥ちゃんをご所望なのね?
・・・クスクス」
「涙目でよがらせたいだなんて、ちょっとSっ気があるのかしら?
・・・クスクス」
と噂されてて
「あいつ・・・つつぬけじゃないかよ・・・。」
真っ赤になって通りを去るライキなのだった。
そんな彼の姿を少し離れた家の影から複雑そうな顔をして見つめる少女がいた。
ライキはお礼に回る人のリストを見て、最後に残ったリーネの名前を見てドキドキする。
(よし、リーネに会ったら兄貴のアドバイス通りに・・・!)
そんなことを考えながら”桜駒鳥の薬屋”と書かれた店のドアを開けると、カランカランとドアに取り付けてある鈴が鳴り響き、この店の主である老婆、桜駒鳥ことマールが、ロッキングチェアーに座っている姿が目に飛び込んで来た。
「ばあちゃんおはよう!」
「ライキ、おはよう。
もう大丈夫なのかい?」
「うん、いっぱい寝たから元気になった。
リーネは?」
「お前さんが帰ってきて安心したとたんに寝て、まだ起きてこん。
起こすかい?」
「いや、また後で顔を出すから寝かしといてやって。」
「ありがとう。
ホントにライキは優しいね。」
と言ってから、ライキに近くの椅子を勧めるマール。
「・・・あの子が寝てるうちに少し話しておきたいことがあるんだけどいいかい?」
「・・・?
いいけど、何?」
座りながらライキが返す。
「昨夜帰ってきてくれて本当によかった・・・。
正直わしもかなりの歳だからいつ迎えが来るかわからん・・・。
下手したらライキが帰ってくる前にぽっくり逝っとったかもしれん。」
それを聞いたライキは険しい顔になり、声を落としていった。
「ばあちゃんまだまだ元気じゃないか。
縁起でもないこと言うなよ・・・。」
そんなライキの背中をばしっと叩いたマールは明るく笑い飛ばす。
「そんなしんみりせんと!
今朝夢にじいさんが出てきたもんだからついの。
でも、よく聞いておくれ。」
再び真面目な顔になるマール。
「わしはライキのこと気に入っとるよ。
優しいし、真面目で、努力家で・・・強い男だ。
お前さんの兄貴ほど目立っては騒がれんけど、美少年だしの!
ひゃっひゃっひゃっ!」
反応に困り顔を赤らめ俯くライキ。
(・・・俺が優しくしてるのリーネだけだし・・・。
努力してるのだって兄貴みたいな才がないからだし・・・。
リーネでエロい事考えたりもするよ?
目付きだってキツいし・・・。
兄貴みたいな顔が良かったよ・・・。)
「じゃが、ちと押しが足りんかの。
もっとグイグイいかんと、優しいだけじゃなかなかあの子には伝わらんよ?」
「・・・ばあちゃんまでそんなこと言うのかよ・・・。」
赤い顔のまま困ったように顔を歪めるライキ。
「わしはお前たちにつがいになってほしいと思っておる。」
「!」
はっとして顔を上げるライキ。
「昔から結婚できる年齢前の、愛の女神フェリシア様の加護を受けた特別な恋人同士のことをつがいっちゅーじゃろ?
巡礼の旅なんかしおるつがいもおる。
あれじゃあれ。」
(・・・そりゃ、俺だってリーネとつがいになりたいけどさ・・・。)
と俯くライキ。
「・・・もしもわしが死んだら、あの子は一人ぼっちになってしまう。
でも、お前さんがあの子のつがいになって、傍で支えてくれるなら・・・
わしは安心できるんじゃがのう。」
「俺がリーネとつがいになりたいって思っていても、リーネは違うかもしれないじゃないか・・・。」
「そうかねぇ?
今まではお前さんに対して無自覚だったかもしれんけど、ライキがいなくなったとき、流石に何かに気がついた風じゃったぞ?
じゃないと、あんなに必死になって探すもんかい。
一番近くであの子を見て来たわしが言うんじゃから、間違いないよ。」
それを聞いて、ライキはリーネへの想いに希望の光が射した気がし、柔らかく微笑んだ。
「・・・そっか・・・。」
「そうそう、お前さんは笑っておるととびきりいい男じゃよ。」
マールもその笑顔にホッコリとして微笑み返すのだった。
「あの子は気が強いところがあるし、お互いに年頃じゃから照れたりとか、気恥ずかしさもあって、ぶつかり合うこともあると思うが、素直な気持ちを伝えて、末永く仲良くやっていきなね。」
「・・・うん。
ありがとう。ばあちゃん。」
「ひゃひゃひゃ!
わしが元気なうちにちとお節介でも焼かせてもらうかねぇ。
ニヤニヤ・・・」
マールは悪巧みを思いついた風に手元のノートに何かを書きはじめた。
「・・・あの、ばあちゃん?」
「引き止めて悪かったの。
わしはやることができたからもういいぞ。
ホレ。
森に狩りに行くんじゃろ?
さっさと行きな。」
書き込むのに夢中になっているマールにあっち行けと手を振られる。
「・・・捜索のお礼のハム、ここに置いてくから。」
─Line,Thank you! Raiki─
(※和訳:リーネ ありがとう ライキ)
と簡単な走り書きをつけて、ハムをカウンターの上に置くライキ。
「はいよ。」
「じゃあな。」
ライキがそういって店を出ようとしたところで、
「あの子のこと・・・頼むね。」
ともう一度声をかけられる。
ライキは少し不思議そうに首をかしげながらも、
「うん。」
と頷いて店を出た。
─これがばあちゃんとの最後の会話だった─
その後、森で岩鳥を射抜いたライキが矢を回収していると、息を切らしたリーネがライキの名を呼びながら走ってきて、ライキを見つけると涙でぐしゃぐしゃになった顔で勢い良く胸元に飛び込んできた。
「リーネ!?
こんな森の中まで来たら危ないぞ!
・・・何かあったのか?」
「ライキ!
おばあちゃんが、おばあちゃんが・・・!」
ライキの胸を掴んだまま涙で濡れた顔を上げるリーネ。
「ばあちゃん?
今朝会ったばかりだけど・・・。
・・・どうかしたのか・・・?」
リーネの只ならぬ様子から嫌な予感がし、眉を寄せながら愛しい彼女の肩に手を置くと尋ねた。
「・・・目が覚めたらおばあちゃんが座ったまま動かなくなってて・・・。
脈がなくて・・・ひっく・・・
・・・私、一人になったって怖くなって・・・。
そしたらライキの顔が浮かんですぐに会いたくなって・・・。
カウンターの上にライキのメモとハムがあったから、森にいると思って・・・。
それで・・・えぐっ・・・」
ライキはリーネからマールの訃報を聞き、数刻前に会ったばかりのマールの顔を思い出し、泣き崩れるリーネを”ギュッ・・・”と強く抱きしめ、しばらく一緒に泣くことしかできなかった。
「・・・リーネ、ばあちゃんを弔ってやらなきゃいけないから、大人の人に伝えに行こう。
母さん店にいるから・・・。」
─翌日マールばあちゃんの葬儀がとりおこなわれ、みんなで天国へと見送った。
そして、兄貴の助言を望まぬ形で実行したのち、1年の月日が流れたのだった。─
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