上 下
4 / 5
一章 悪の組織と正義の組織

第2夜「正義の組織は今日も大変みたい」

しおりを挟む
 ここは正義の組織の龍麒麟の本拠地で日本を担当している者達が集まっている部屋だ。

「あと来ていない者は誰だ?」
「龍宮(りゅうぐう)様ですがもうそろそろ来られるかと」
「龍宮様か。あの方は忙しいだろうからな」
「ええ、前の事件もあの方が片付けているらしく」
「何だと!?その前からかなり忙しく家にも帰れていないと言われていたのにか?他の者は何をしてるんだ?あの人はまだ高校生だぞ!」
「それが、、、パートの事件は龍宮様へと言われているので、どうすることも出来ないと悔しそうに言っていました」
「あ~、、、そうか、そうだったな。パートの事件は龍宮様が担当されていたな、、、はぁ」

そんな話をしているとドアが開き一人の若い高校生くらいの年の青年が入って来た。
みんなその青年の姿を見ると頭を軽く下げる。

「遅れてすまないな」
「いえ、お忙しいとお聞きしましたので」
「そうか、なら会議を始めよう。もう皆は集まっているのだろう?」
「はい、龍宮様」

龍宮の合図で会議が始まった。

「まず、鱗(りん)」
「はっ」
「この前はパートが事を起こす前に防げたと聞いた」
「はい。始めに我が部隊員の角(かく)が市民からパートが何処かに人を連れ去るのを見たと言われましたので速やかに何処に居るのか調べ、、、、」

名前を呼ばれた鱗が報告をするとそのあとも名前を呼ばれた者から報告を聞く。
全ての報告が終わると龍宮が口を開いた。

「報告に関することよりも先に伝えたいことがある。この前のパートの事件では被害者を出さなかったがその前の事件で出た被害者達がいただろう?」
「ああ、あの的当ての、、、」
「そうだ。その時の被害者の子供と成人男性の精神が安定してきたらしく近いうちに退院出来るみたいだ」
「本当ですか?それなら良かった」
「酷い事件でしたからね」
「ああ」

正義感の組織の龍麒麟では悪の組織の夜花の被害者を龍麒麟専用の病院で預かり肉体と精神をケアしている。
その病院で働く者達はサポート系の力に秀でている植物などの跡がある者達が働いている。
その者達は龍麒麟からあまり外に出ないがこれは彼らを守るためでもある。
コレクター達から狙われているので自ら外に出ないのだ。

「話を反らしてすまない。早めに伝えたかったのでな」
「いえ、我々も気になっていたことでしたので」
「では、話を戻すが、、、報告を聞く限りパートや他の幹部達の素性は一切不明なままか」
「ええ、悔しい事に一切の証拠も隙も出さない者達なので難しいかと」
「そうか。だが、あまり気を落とさずに続けて欲しい。今までの結果を見ると難しいだろうが偶然というものもあるのだから引き続き夜花の幹部達の素性を調べて欲しい」
「「「はい」」」

龍宮がそう言うとその場に居たみんなは真剣な顔をしながら返事をした。
そのあとも今後の事を話し会議は終わりに近づいてきた。

「と、言うことで今後も頑張ってもらいたい」
「もちろんです龍宮様」
「これにて会議を終わりにするが鱗は少し話があるので残ってくれるか?」
「え?あ、はい」
「では、会議を終了とする。各自仕事を頑張ってくれ」
「「「はい!」」」

そうして部屋に龍宮と鱗だけが残った。

「龍宮様、お話とは?」
「ああ、少し仕事の変更があってな。このあとお前らの部隊は見回りだろう?」
「はい」
「それは違う部隊になった」
「では我々は?」
「お前達はこれからヒーロー隊の者達と話し合いをして欲しい」
「ヒーロー隊と?、、、なんの話し合いを?」
「お前達、、、光輝(こうき)隊との連携だ」
「え?」




鱗視点

龍宮様に言われた俺はヒーロー隊のリーダーがいるだろう天輪(てんりん)学園の大学の校舎にあるヒーロー隊が集まる教室に向かった。

天輪学園とは俺の所属する正義の組織の龍麒麟を育てる為に作られた学校で高校と大学が合併している学園である。
この学園に通っている者は全てが戦える力を持つ跡を持つ者達ではない。

戦える跡を持つ者は戦いを主にする“戦闘科”

戦えないがサポートに特化した跡を持つ“サポート科”

不思議な力を持つ跡は持たない(たまに跡がある者も居る)が正義の組織の龍麒麟に協力したい者や興味がある者や龍麒麟の幹部からの推薦で入る者達が居る“普通科”

の主に3つの科に別れて居る。
色々と大変な事を習うので大学は4年まである。
ちなみにこの学園に入って直ぐに龍麒麟に入る場合もある。
この場合は龍麒麟に入っている者の勧誘でその部隊に入る者が一番多い。
もう一つは色々な偶然が重なり活躍した者を幹部達が話し合いその者を認める事でこれは居ないに久しいくらい少ない。

ヒーロー隊のリーダーはその少ない部類の一人で今年大学4年生になったばかりの若い者なので俺は学園に来ているのだ。

「確かここだったか?」

俺がある教室のドアを見るとそこには“ヒーロー隊基地”と書いてある看板がかけてあった。
(堂々と書いてある基地ってのはどうなんだ?)

「しかし、まだ授業が終わってないよな、、、もう少し待つか」

教室の中には入らず廊下にある窓(ここは一階)から外を見た。
(相変わらずこの学校の廊下はデケェな、、、いや、学校、、学園事態がデケェから今さらか)

「ん?、、、サボりか?」

目の端で人が見えたのでそっちに顔を向けると一人の男子学生が校庭の端っこをゆっくり歩いているのが見えた。
(いやにゆっくり歩いてんな、、、っ!あれは)

「おい!大丈夫か!?」

男子学生はゆっくり歩いている様に見えたが一瞬ふらつくと近くにあった壁に寄りかかり動かなくなったので俺は急いで男子学生の所に走った。(学校の廊下を走ってはいけません)
(具合いが悪かったのか!)

「おい、大丈夫か?吐き気は?」
「、、、っ“ふるふる”」
「腹か?違うのか、、、じゃあ頭が痛いのか?」
「、、“こく”」

うつむいているので顔色は分からないがどうやら頭が痛いらしい。
(保健室に行く途中だったのかもな)

「その制服って事は普通科の生徒だよな?」
「“こく”」
「保健室に行く途中だったのか?」
「“こく”」
「その様子じゃあ自力で行くのは無理だよな、、、抱き上げるが大丈夫か?少し恥ずかしいかもしれないが我慢してくれ」
「っ!」

返事を聞かずに抱き上げたので驚いたみたいだが抱き上げた俺も驚いた。
(軽っ!見た感じ俺より少し低いくらいだから180はあるはずだが凄く軽い!)

「お前、軽すぎねぇ、、、か、、、」
「、、、?」

横抱き(お姫様抱っこのこと)にしたことでその男子学生の顔を初めて見て体重が軽過ぎるのを上回る驚きが沸き上がった。
(これは上玉だ、、、色々美形は見慣れていたがこれは、、、)

「、、、かぐや姫、、だな」
「、、、?」
「いや、悪い。このまま保健室に運ぶからな」

男にかぐや姫はないと思うがそうとしか言えないほどの美人だった。
(かぐや姫じゃなくても夜の妖精みてぇな奴だ、、、目の色だけは夕焼けみてぇだが。しかし人外じみた顔ってのはあの人以外にも居るんだな。言葉に出来ない美人ってのはこういう奴らの事を言うんだろうな)




近くにある保健室に運ぶが先生が居るかは分からない。
(ここはあの人の所だから今の時間なら大抵は居るだろうが、、、)

“コンコン”
「すみません、具合いが悪い生徒が居るんですが入っても大丈夫ですか?」
「ああ」
“ガラガラ”
「おや?鱗くんか?何故鱗くんが学園に、っ!密(みつ)くん!」
「知り合いで?」
「ああ、、、具合いが悪いのかな?」
「いえ、頭が痛いみたいで一人では歩けなさそうでしたので俺が連れて来ました。ここ(保健室)に行く途中で酷くなったみたいですよ」
「そうか、、、ベッドに寝かせてくれるかな?」
「はい」

俺は男子学生をベッドになるべく丁寧に下ろした。
男子学生は頭が痛いだろうに俺に礼を伝えようと少し頭を下げる様に動かした。

「すまないね。この子は凪 夕密(なぎ ゆうみつ)という名前で普通科の大学一年生なんだ。よくここに来る子なんだけど今日は酷かったみたいだ」
「そうなんですか、、、あ―、、、俺は龍麒麟の鱗だ。今日はちょっと用事があって学園に来ただけで普段は学園には居ない」
「用事?それなら、その子は私が診ているから鱗くんは用事の方をすませた方がいい」
「あ~、、、確かにもう授業も終わりそうですし、そうさせていただきます」
「この子を連れて来てくれてありがとう。気をつけて行っておいで」
「、、、はい、、、、さく、卯月(うづき)先生」
「昔みたいに朔夜(さくや)で良いよ?」
「あ~、、、なら朔夜先生」
「なんだい?」
「あ~、、、自覚がないみたいなのでどうしようもないかもしれませんが、あまり優しい笑みを浮かべない方が良いですよ」
「?、、、普通じゃないのかな?」
「いえ、朔夜先生が悪いわけでは無いんすけど、、、危ないのでとしか言えないですね」
「ん~?よく分からないが気をつけておこう」
「ええ、そうしてください。ではこれで」
「ああ、また今度」

絶対によく分かってない朔夜先生をそのままにして俺は保健室を出た。
さっきまで話していた男は卯月 朔夜(うづき さくや)という名前でこの学園の保健室の先生の一人で俺が初めて見た人外じみた美形だ。
男が男に言うのもなんだがあの人はともかく色気が凄い。
初めて会った時の印象が色っぽい綺麗な人だった。
さっきの男子学生と似た夜がよく似合う人外の印象があるが、あの男子学生は神性的な印象を受けるが朔夜先生は何というか吸血鬼などの人を魅了し誘惑する様な魔物のような者の印象が思い浮かぶのだ。
(微笑みさえ誘惑されている印象を受けるからな。バカな奴が勘違いして襲わない様に気をつけて欲しいが、、、あれは分かってないだろうな)

そんな事を考えながら歩いていると直ぐにヒーロー隊の教室に着いた。
だが、まだカネが鳴ってないのでヒーロー隊の教室の近くの窓から外を見て待つ事にした。
30分ほど待つと授業の終わりを告げるカネが鳴った。
(直ぐに来るのか?、、、ん?足音が聞こえるな?)

“バタバタ”
「あれ?えーと、、、あの、この教室に何か用ですか?」
「廊下を走るなら先生にバレない様にしろよ?それとお前はヒーロー隊の者か?俺は龍麒麟の光輝隊の者なんだが、、、レッドの奴は居るか?」
「え!光輝隊!」

そんな話をしているとコイツの同級生なのかコイツを追って2人が走って来た。

“バタバタ”
「はぁはぁ、、、は、早いよ!少し待ってくれても、、、誰?」
「あの、ど、どうかした?」
「あ!こ、この人!光輝隊の人らしい!」
「「え!光輝隊!」」
「隊長に用事があるらしいんだけど」
「隊長ならもう少しでブルーさんと一緒に来るんじゃない?」
「だよな~、、、あの鍵開けるんで中で待ってて下さい」
「ああ、悪いな。ありがとう」
「いえ」
“ガチャ、ガラガラ”
「どうぞ。ソファーがあるんで良かったら座って下さい」

ずいぶん若い高校生くらいの3人組が現れたがヒーロー隊に新しく入った奴等だろう。
その3人に言われた通り教室の中にあるソファーに座った。
(まだ高校生の1、2年くらいだよな?)

「お前ら高校生だよな?」
「ええ、俺ら3人とも高校1年です」
「そうか、俺は光輝隊のリーダーの鱗だ」
「あ、俺はブラックです」
「、、、イエローです」
「今お茶を用意してるのはホワイトです」
「そうか、これから何かと関わるだろうからよろしくな」
「え?関わる?あの、それはいった、」
“ガラガラ”
「すまん!遅れたか?」
「遅れました~」

ブラックが俺に疑問に思った事を聞こうとしたときドアが開きそこから2人の青年が入って来た。
(やっと来たか)

「ん?鱗さん?、、、ああ、あの話だな!」
「レッドが朝に言っていた事ですか~?」
「そうだぞブルー!あの事だ!」
「いいから早く入って来い!後輩の3人が戸惑ってるぞ」
「おお!すまない!みんなにも話すことがあるから近くに座ってくれ!」

レッドがそう言うと後輩達3人は俺の目の前に座ったレッドとブルーを挟む様に座る。
(これで話が出来るな)

「それで俺がここに来たわけは龍宮様に言われたからなんだが」
「え?龍宮様ってあの3年の」
「ああ、その高校3年生の龍宮様だ」
「隊長!ど、どういう事ですか!?」

どうやらレッドは一年達になにも説明していなかったらしい。

「おう!説明するぞ!昨日急に龍宮さん言われたんだが」
「ちょっと待って下さい!」
「何だ?どうかしたかブラック?」
「隊長!あ、あんた龍宮様の事をさん付けで呼んでるんすか?」
「ん?何か駄目か?ブルーもさん付けだぞ?」
「な、な、あ、あの人をさん付け?」

一年達は信じられないと言う顔をしながらレッドとブルーを見ているがそれも仕方ない事だ。
(かなり上の立場の龍宮様をさん付けで呼ぶのはこいつらくらいだからな。こいつら以外にも、もしかしたらいるのかも知れないが俺も知らないからな)

「あ~、、、コイツらは龍宮様自身が了承してるから文句は言えないんだ。俺もよく知らないが色々あったらしいからそこにはツッコムな」
「色々って、、、はぁ、分かりました。それで話の続きは?」

ブラックはこれ以上は話して話が進まないと思ったのか話を戻した。

「は~い~、龍宮さんがここ最近の夜花は幹部が複数で来ることが多くなったからボク達も他の隊の人達と連携した方が良いだろう~と言ってましたので~」
「だが、頼んでもみんな自分の力に自信がありプライドも高いから直ぐには上手くいかないだろうから最初の見本になって欲しいと頼まれてな!それなら鱗さんの隊をと言ったのはオレなんだ。鱗さんの隊は温厚というかプライドより鱗さんを信頼していて鱗さんの迷惑になることは極力しないからな!」
「あ~、、、何で俺の隊かと思っていたらお前の推薦か。龍宮様がお前に頼ったのはお前を一番信頼してるからだろうがな」
「そうか?」
「そうだろうな。龍宮様がお前と話してる時だけは年相応の顔をするからな、、、あの人もまだ高校生だってのに大人の俺達が苦労かけてる上に年相応の顔をさせる時間もねぇし甘やかす事も出来ねぇなんて恥ずかしい話だがな」
「?、、、鱗さんの事は信頼してると思うが?龍宮さんは前に鱗さんには少し甘えてしまうと言っていたからな!」
「は?マジか?」
「ああ!な、ブルー!」
「は~い~、ボクも聞いてました~」

俺があまりの事に驚いて固まっていると俺達の話を聞いていた一年達が驚きの声をあげた。

「、、、え?え?、、、た、隊長って龍宮様に一番信頼されてるんすか!?」
「ああ、こいつ(レッド)は一番信頼されてるな。俺も詳しくは知らないが何か色々あったらしいぞ」
「また色々っすか!あ~、、、けど、一番か、、なんで隊長が?、、、話を遮ってすみません。さっきの話を続けて下さい」

驚くのも疑問に思うのも仕方ない事なのだがブラックは話が脱線してしまう事が分かり疑問を自分の中にしまったようだ。
(話が終わった後が大変だろうなコレは)

「まず、連携といっても俺らは融通がきくがお前らは学生だからな、、、色々な話は放課後が良いと思うんだが何か用事がある奴は?」

俺はまずみんなで集まる為の日にちや時間を聞いた。
(はぁ、、、これからは、いや、これからもだな。これからも大変そうだな、、、色々忙しそうだ)






しおりを挟む

処理中です...