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6.
しおりを挟むはく、と、息が止まった。
ぶつりと鋭い痛みに刺し突かれて、反動で身体が痙攣する。
目の前が黒く塗り潰されてゆく。
「…きっつ、」
彼は。
さっき何と言っただろう。
わたしは、
わたしが、
好きなのは彼なのに。
何一つ、伝わらず。
ただの捌け口に成り下がる。
愛しているのに。
その彼にわたしは、冷えた床の上で身体を暴かれている。
それほど、わたしが憎いのだろうか。
憎かったのだろうか。
わからない。
手馴れたように動く。
揺れる。
揺さぶられる。
わからなかった、何も。
「声くらい出せよ。…つまんねぇ女、」
吐き捨てるように言う彼を見つめる。
もう、これで、最後。
「…好き、…」
「……何言ってんの?」
「好きです、…シエル、さま、っ」
「……黙れ。」
最後に、する。
解放してあげる。
彼は余程わたしのことが嫌だったのだろう。
最後だからと言い訳をしながら、
媚びるように何度もくり返すわたしのくちびるは塞がれてしまった。
彼の表情は苦しげに歪み、わたしはその頬に触れることすらできないまま。
なにかが砕けてゆくのを、感じていた。
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