あいするひと。【完】

雪乃

文字の大きさ
7 / 22

シエル

しおりを挟む



「婚約解消…?」


学園から戻ったところで父に呼び出され書斎で告げられた言葉に顔を顰める。


「そうだ。残念だが、…どうしようもない。」

「……理由は何と言ってるんです」

「……レイラ嬢は学園を退学し領地の修道院に入られる」


苦悶を浮かべる父の表情に急激に心が冷えていく。








あの日以来レイラは学園を休んでいた。
それはそうだ。
失神するまで抱き、その後も時間の許す限り飽きるまで貪ってやった。


の状態で馬車に放り込んでやろうか思案して、




『好きです、…シエル、さま、っ』




行為中の甘言など聞き流すものだと知っている。意味なんてない。快楽に押し出されて吐かれる言葉にそんなもの求めるほうがどうかしている。

どんなに貞淑そうに振る舞っていても女という生き物は。

恋人を。夫を。


婚約者を、愛していると言いながら。

嫌だと言いながら、身体を開く。



俺みたいな人間クズに相応しい、同じ穴の狢ども。

俺にとっては取るに足らない聞き慣れた戯言が、やけに胸をついたのはなんでだったか。
黙れと塞ぐまで、気を失うまで何度もレイラはくり返していた。


不快だったし、腹が立ったんだ。
お前も他の女と一緒なのかって。

無理矢理暴かれて、あんな場所で。
仮にも婚約者の俺に、娼婦以下の扱いを受けながら平然と嘘を吐く。

腹が立ったんだ。嘘を吐くから。
お前が。
お前は、


好き、の、間違いだろ?

知らないとでも思ってんのか?


なのにさも真実かのように何度も言うから、
腹が立った。

だから余計止まれなかった。


お前に、触れるつもりなんかなかったのに。
泣いて、苦しんでる顔だけ俺に見せてればよかったのに。

いつからかもうずっと泣かなくなって。
笑顔すら浮かべて俺を見るようになって。


腹が立っていたから、あいつと笑ってる姿を見て、追いかけて、捕まえた。



久しぶりの泣き顔を見て安心した。
硬い身体。何をされるか悟って見せた絶望。
白濁に混じる赤色。

狂いそうなほど興奮した。







『…好き、…』



それだけだ。


面倒な事になるのは煩わしいから、浄化して馬車に放り込んだんだ。


それなのに。



俺の前から消えるのか。
貴族として生きていけないなら、大人しく俺の下に居ればいいのに。そうしたはずなのに。


逃げるのか。





そんな事、


……許すわけねえだろ、レイラ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

【4話完結】 君を愛することはないと、こっちから言ってみた

紬あおい
恋愛
皇女にべったりな護衛騎士の夫。 流行りの「君を愛することはない」と先に言ってやった。 ザマアミロ!はあ、スッキリした。 と思っていたら、夫が溺愛されたがってる…何で!?

公爵令嬢のひとりごと

鬼ヶ咲あちたん
ファンタジー
城下町へ視察にいった王太子シメオンは、食堂の看板娘コレットがひたむきに働く姿に目を奪われる。それ以来、事あるごとに婚約者である公爵令嬢ロザリーを貶すようになった。「君はもっとコレットを見習ったほうがいい」そんな日々にうんざりしたロザリーのひとりごと。

王太子殿下との思い出は、泡雪のように消えていく

木風
恋愛
王太子殿下の生誕を祝う夜会。 侯爵令嬢にとって、それは一生に一度の夢。 震える手で差し出された御手を取り、ほんの数分だけ踊った奇跡。 二度目に誘われたとき、心は淡い期待に揺れる。 けれど、その瞳は一度も自分を映さなかった。 殿下の視線の先にいるのは誰よりも美しい、公爵令嬢。 「ご一緒いただき感謝します。この後も楽しんで」 優しくも残酷なその言葉に、胸の奥で夢が泡雪のように消えていくのを感じた。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」「エブリスタ」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、雪乃さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎泡雪 / 木風 雪乃

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

私の意地悪な旦那様

柴咲もも
恋愛
わたくし、ヴィルジニア・ヴァレンティーノはこの冬結婚したばかり。旦那様はとても紳士で、初夜には優しく愛してくれました。けれど、プロポーズのときのあの言葉がどうにも気になって仕方がないのです。 ――《嗜虐趣味》って、なんですの? ※お嬢様な新妻が性的嗜好に問題ありのイケメン夫に新年早々色々されちゃうお話 ※ムーンライトノベルズからの転載です

処理中です...