あざとかわいいとか自分で言うのどうかしてる【完】

雪乃

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飼い主は責任を持って最後まで

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「…うぅぅ…いたぃ…」 


ぼくは大っきいベッドの上でうつ伏せで泣いていた。 
朝まであの変態がぼくをいじめていたせいだ。
ジャラジャラした鎖も重たくて痛い。首輪が息苦しい。


なんでぼくがこんな目に?
何度考えてもわからない。
でもたぶんあのブスのせいだって思う。
あとあの変態のせい。
変態はラストって名前の嘘つき男だ。


……味方だと思ってたのに。


『ーー…このまま何もしなくていいんじゃないかな?噂が広まっていけば身動き取れなくなるでしょ?…そうしたら手に入れるのも楽になるしね』

『…協力してくれるの?』

『……もちろん。俺は公爵家の人間だからね、……んだよ』

『…』

『大変だったね。これからは俺がいるよ』


急に話しかけてきて変な奴だと思ったけど優しくしてくれたし、顔だって、まぁ、かっこいいし。
王太子さまの近くで働いてるってゆうし、お金持ちであのブスより偉いおうちだってゆうから僕は今までのことをぜんぶ話したんだ。
助けてくれると思ったから。なのに。


『しっかり努めなさい。ご迷惑にならないよう大人しくするんだよ。家のことは心配しなくていい…養子の手続きも進んでいる。
キャシディ、不甲斐ない親ですまなかった。
…離れていても会えなくてもお前は私たちの可愛い息子だ。…元気でやりなさい』

『…待ってなんでぼくが退学なのっ!?話がちがう…ッ領地になんか戻りたくない…!ぼくにはロニーが必要なの!父さま、…母さまッ…待ってよ…ッ』


色々説明されてぼくが悪いことをしたからってゆわれても納得できなくて。
退学になって、領地に戻るって。
それなのに父さまも母さまもぼくを置いていなくなって。


『…やっと片づいたね。じゃ、帰ろっか』

『…ッ帰るってどこに!助けてくれるんじゃなかったのかよ…っ!なんでぼくがっ『殺人未遂で牢獄に行きたい?』

『ーーは……?』

『騒乱罪。侮辱罪。あとは何かな…偽証罪とか成績不振とか何でもいーけど、俺と来なきゃきみ、そーなるよ?……で、牢獄にぶち込まれる前にキリング侯爵パリスのお父さんに殺される。そうなりたいの?』


…ろうごく、…さつじん…?ころされる…?なんで…?
なにもしていない。わけわかんない。

でもすごく怖い顔をしてぼくを見るから、ぽろぽろ涙が止まらなくなった。

そしたら、


『…大丈夫、守ってあげる。』


もっと怖い顔で、ぼくを抱きしめてきたんだ。


……思い出しても怖い……そんで、そんで、


ぼくは変態の、おうちの離れに、閉じ込められた。


変態はぼくにひどいコトをいっぱいする。
いやだってゆってもやめてくれないし、抱かれるのは好きじゃないのに、泣いたって笑うだけ。


ぼくは両親に捨てられて、売られたんだ。


痛くて苦しくて、ロニーの名前を何度も叫んだ。
そうしたらもっとひどくされて、しつこくて、寝かせてもらえなかった。


ルールを決めよう、って。

勝手に部屋を出ないとか、
逃げないとか、
名前を呼ばなきゃいけないとか。

他にもいっぱいあった気がするけどぼくは疲れて身体はガクガクしていたし、まぶたはとろんと開かなくって。
返事しないと終わらないよってゆーから、よくわかんないまま、うなずいた。


『……いい子にしてたら、いーっぱい可愛がってあげる。最後までちゃんと責任持つからなんの心配もしなくていーよ。
いい子にしてたら、…そのうち外にも連れて行ってあげる。ご両親にも会えるかもしれないよ?』


いつか、ね。


『でも忘れないで。……ひとつでも破ったら、きみを侯爵に引き渡す。侯爵は今でもきみをゆるしてない。娘を傷つけた人間きみに、報復する機会を狙ってる。俺のところにいるから見逃してくれてるだけ。
安全なのはここだけなんだって、……忘れちゃだめだよ、……キャス』


そうして、ぼくが泣いてるのを見てうれしそうに微笑んで、また、近づくんだ。




その日から、首輪と鎖がつけられた。

…べつに、部屋のなかは歩き回れるからいいけど。咳だって出なくなったし、おいしいごはんだってくれるし。

ただ、なんでここにいるんだろうって。
なんで、こうなったんだろう、って。


それがわからない。




ラストが、読みなさいってくれた本がある。
小等部の子ども向けの本だ。ばかにしてって腹が立った。内容もさっぱりなんだもん。
ひとのものは取っちゃいけませんとかわかるけど、欲しくなったらしょうがないよ。
ちょーだいってちゃんとゆったのにくれないのは相手が悪いもん。


ぼくが泣けば、両親はなんでも買ってくれたし、欲しいものはほとんど手にできた。


ぼくは欲しいものが、あっただけなのにな。



「…ロニー、」



……会いたいなぁ……。
ラストがいると考えられなくさせられちゃうから、いないときにこっそり名前を呼んでる。

ひとことも話してくれなかった。顔も、見てくれなかったなぁ。嫌われちゃったのかな…。ひどい…さみしいよロニー…。


ここにはラストとぼくしかいない。
使用人はいるけどみんなラストの味方だ。
ぼくの味方はひとりもいない。
誰も会いにきてくれない。
会いにきてくれる友だちもいない。


…友だち、


ロニーは友だちをつくろうって言ってた。
ぼくはロニーさえいればよかったからそんなのいらないって言った。ロニーはどんな顔をしてたかな。




……あのブスも、言ってたな。




『ーー…友だちは大事ですよ。善いことも悪いこともきちんと話し合える関係って、素敵だと思いませんか?きっと世界が広がりますよ。
もっと周りを見てください、何か思うことはありませんか?…努力してみませんか?…わたしも、努力しますから』



「…、」


ケガ、とか、したかな…。


いやなことばかり言う女だった。ぼくのロニーを横取りして、奪っていった。
努力なんてきらいだし、いじわる言う奴は友だちなんかじゃない。


だからぼくたちは友だちにはなれない。



僕はひとり。ラストはいるけど、僕はひとりぼっちだ。


なんでだろう。わからない。いつかわかるの?


それがわかったらまた、会えるの?ロニー。





自分がいないときにぼくが泣くのをラストはいやがる。
だから泣き止まなくちゃいけないのに、涙はいつまでも止まらなかった。
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