あざとかわいいとか自分で言うのどうかしてる【完】

雪乃

文字の大きさ
22 / 23

飼い主は責任を持って最後まで

しおりを挟む



「…うぅぅ…いたぃ…」 


ぼくは大っきいベッドの上でうつ伏せで泣いていた。 
朝まであの変態がぼくをいじめていたせいだ。
ジャラジャラした鎖も重たくて痛い。首輪が息苦しい。


なんでぼくがこんな目に?
何度考えてもわからない。
でもたぶんあのブスのせいだって思う。
あとあの変態のせい。
変態はラストって名前の嘘つき男だ。


……味方だと思ってたのに。


『ーー…このまま何もしなくていいんじゃないかな?噂が広まっていけば身動き取れなくなるでしょ?…そうしたら手に入れるのも楽になるしね』

『…協力してくれるの?』

『……もちろん。俺は公爵家の人間だからね、……んだよ』

『…』

『大変だったね。これからは俺がいるよ』


急に話しかけてきて変な奴だと思ったけど優しくしてくれたし、顔だって、まぁ、かっこいいし。
王太子さまの近くで働いてるってゆうし、お金持ちであのブスより偉いおうちだってゆうから僕は今までのことをぜんぶ話したんだ。
助けてくれると思ったから。なのに。


『しっかり努めなさい。ご迷惑にならないよう大人しくするんだよ。家のことは心配しなくていい…養子の手続きも進んでいる。
キャシディ、不甲斐ない親ですまなかった。
…離れていても会えなくてもお前は私たちの可愛い息子だ。…元気でやりなさい』

『…待ってなんでぼくが退学なのっ!?話がちがう…ッ領地になんか戻りたくない…!ぼくにはロニーが必要なの!父さま、…母さまッ…待ってよ…ッ』


色々説明されてぼくが悪いことをしたからってゆわれても納得できなくて。
退学になって、領地に戻るって。
それなのに父さまも母さまもぼくを置いていなくなって。


『…やっと片づいたね。じゃ、帰ろっか』

『…ッ帰るってどこに!助けてくれるんじゃなかったのかよ…っ!なんでぼくがっ『殺人未遂で牢獄に行きたい?』

『ーーは……?』

『騒乱罪。侮辱罪。あとは何かな…偽証罪とか成績不振とか何でもいーけど、俺と来なきゃきみ、そーなるよ?……で、牢獄にぶち込まれる前にキリング侯爵パリスのお父さんに殺される。そうなりたいの?』


…ろうごく、…さつじん…?ころされる…?なんで…?
なにもしていない。わけわかんない。

でもすごく怖い顔をしてぼくを見るから、ぽろぽろ涙が止まらなくなった。

そしたら、


『…大丈夫、守ってあげる。』


もっと怖い顔で、ぼくを抱きしめてきたんだ。


……思い出しても怖い……そんで、そんで、


ぼくは変態の、おうちの離れに、閉じ込められた。


変態はぼくにひどいコトをいっぱいする。
いやだってゆってもやめてくれないし、抱かれるのは好きじゃないのに、泣いたって笑うだけ。


ぼくは両親に捨てられて、売られたんだ。


痛くて苦しくて、ロニーの名前を何度も叫んだ。
そうしたらもっとひどくされて、しつこくて、寝かせてもらえなかった。


ルールを決めよう、って。

勝手に部屋を出ないとか、
逃げないとか、
名前を呼ばなきゃいけないとか。

他にもいっぱいあった気がするけどぼくは疲れて身体はガクガクしていたし、まぶたはとろんと開かなくって。
返事しないと終わらないよってゆーから、よくわかんないまま、うなずいた。


『……いい子にしてたら、いーっぱい可愛がってあげる。最後までちゃんと責任持つからなんの心配もしなくていーよ。
いい子にしてたら、…そのうち外にも連れて行ってあげる。ご両親にも会えるかもしれないよ?』


いつか、ね。


『でも忘れないで。……ひとつでも破ったら、きみを侯爵に引き渡す。侯爵は今でもきみをゆるしてない。娘を傷つけた人間きみに、報復する機会を狙ってる。俺のところにいるから見逃してくれてるだけ。
安全なのはここだけなんだって、……忘れちゃだめだよ、……キャス』


そうして、ぼくが泣いてるのを見てうれしそうに微笑んで、また、近づくんだ。




その日から、首輪と鎖がつけられた。

…べつに、部屋のなかは歩き回れるからいいけど。咳だって出なくなったし、おいしいごはんだってくれるし。

ただ、なんでここにいるんだろうって。
なんで、こうなったんだろう、って。


それがわからない。




ラストが、読みなさいってくれた本がある。
小等部の子ども向けの本だ。ばかにしてって腹が立った。内容もさっぱりなんだもん。
ひとのものは取っちゃいけませんとかわかるけど、欲しくなったらしょうがないよ。
ちょーだいってちゃんとゆったのにくれないのは相手が悪いもん。


ぼくが泣けば、両親はなんでも買ってくれたし、欲しいものはほとんど手にできた。


ぼくは欲しいものが、あっただけなのにな。



「…ロニー、」



……会いたいなぁ……。
ラストがいると考えられなくさせられちゃうから、いないときにこっそり名前を呼んでる。

ひとことも話してくれなかった。顔も、見てくれなかったなぁ。嫌われちゃったのかな…。ひどい…さみしいよロニー…。


ここにはラストとぼくしかいない。
使用人はいるけどみんなラストの味方だ。
ぼくの味方はひとりもいない。
誰も会いにきてくれない。
会いにきてくれる友だちもいない。


…友だち、


ロニーは友だちをつくろうって言ってた。
ぼくはロニーさえいればよかったからそんなのいらないって言った。ロニーはどんな顔をしてたかな。




……あのブスも、言ってたな。




『ーー…友だちは大事ですよ。善いことも悪いこともきちんと話し合える関係って、素敵だと思いませんか?きっと世界が広がりますよ。
もっと周りを見てください、何か思うことはありませんか?…努力してみませんか?…わたしも、努力しますから』



「…、」


ケガ、とか、したかな…。


いやなことばかり言う女だった。ぼくのロニーを横取りして、奪っていった。
努力なんてきらいだし、いじわる言う奴は友だちなんかじゃない。


だからぼくたちは友だちにはなれない。



僕はひとり。ラストはいるけど、僕はひとりぼっちだ。


なんでだろう。わからない。いつかわかるの?


それがわかったらまた、会えるの?ロニー。





自分がいないときにぼくが泣くのをラストはいやがる。
だから泣き止まなくちゃいけないのに、涙はいつまでも止まらなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

安らかにお眠りください

くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。 ※突然残酷な描写が入ります。 ※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。 ※小説家になろう様へも投稿しています。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

処理中です...