愛を乞う獣【完】

雪乃

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ルーシー②

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"運命の番"。



獣人にはそういう対象が存在する。
運命などと言えば聞こえはいいが、要は種を存続するための遺伝子レベルの相性のことだ。
自然界では強い種でなければ生き残れない。
強い雄でなければ遺伝子を残せない。
生存競争に負けることは恥ずべきこと。
だと罵られるも同様。
ヒトとの交わりで獣人となって以降、それへの渇望は呪いにも似た信仰となる。
確実に己の遺伝子を残すための"運命"。
何よりも優先され、本能がそれを求める。
孕ませたいと、その一心で。

獣人が悲劇だったのは"感情"を知ってしまったからだ。

番、は。

獣人にしかわからない認知。
ヒトにはわからない。
獣人同士なら問題はないがそうでない場合多くが眉をしかめる結果になる。

伴侶がいようがいまいがヒトを攫う。
愛してるヒトの前で本能剥き出しの行為に耽る。

前者は犯罪行為、後者は不貞行為。
ただの生殖行為だと言われても激しく求め合う姿を直視できるヒトはいないし、犯罪行為に嫌悪を抱かないヒトはいない。

ヒトは感情を優先する。


獣人用の抑制剤はあるし、費用は高くなるが番感知不可魔法を刻むこともできる。
ほんとうに愛していると言うのなら服用すべきなのに、自分は大丈夫だと高を括った結果後悔する者も少なくない。




感情を知りながら本能に抗えない苦しさにいっそ獣のままでいたかったと、
己の過ちを心から悔いている男がいることも、女は知らない。
どうすればいいかわからずに、身体だけでも必死で繋ぎ止めようと足掻く男がいることに。















ずくん、っと突き上げられる激しさに目を瞬き、覚醒する。


「ーー、ッ…ぁ、あ…っ」


合わない焦点を、瞳孔の開いた金色の瞳が追ってくる。
シルバーグレイの髪は汗で色を変え、口もとは乾いた赤色。
ひりつく喉は掠れた声しか出せず、揺さぶられる勢いに途切れるばかり。

むせ返る体液の匂いに、お腹の奥の重さを感じた。いったいどれだけ、注がれたのか。
ぱちゅ、ごぷ、と淫らな音を鳴らす身体に絶望する。

いったいどれだけの時間、こうしているのか。

ーー発情期は、にいる約束だったのに。
それだけでは足りないというのか。


もうわたしでなくても、いいはずなのに。


「……なんで泣く?気持ちいいから?寝てるあいだも、反応すごかったからな」

「…っ、はな、し、て…っ、ぁっ」

「離したら逃げるだろ?」

「っ、」

「逃がさねえよ。お前は、俺のモノだ」
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