愛を乞う獣【完】

雪乃

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ルーシー③

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「…ど、して、…っ」

「愛してるからだよ」

「うそ…っ、…っあ、…ッ!」

「嘘じゃない」


ばちゅん、っとひときわ強く穿たれて、行き止まりに先端が触れる。その刺激に大きく身体は震え、痙攣する。
どれだけ否定しても、快楽に従順になる身体がいやだった。
ぐり、と押し付けられれば苦しいほどに締め付けるからだ、が。


だってわたしはこのひとしか知らなくて、ずっと、この先もそうだって、思ってたのに。


このひとは、そうじゃなかった。
わたしだけじゃ、なかった。


本能?番?
そんなの知らない。知りたくない。
聞きたくない。信じたくない。



『ーー…俺はそんなのに負けたりしないから。信じて。ルーシーだけが好きだ。この先もずっと、ルーシーだけを愛してる』



信じて、たのに。





「…も、ゃぁ…っ」

「ーーる、「ど、してぇ…?わたしだけって、言ったのに…っ、信じてたのに…っ」

「…ごめん、」


顔も見たくない。声も聞きたくない。
拘束の緩んだ両腕で、ぐちゃぐちゃな顔を覆う。


「だいっきらい…!二度と信じない…っ」

「ごめん」

「うそつき…っ、…愛してるなんて、二度と言わないで…っ」

「……ごめん」


抱きしめられる。そっと。壊れものみたいに。大事だと、言ってるみたいに。
ごぷりごぷり、垂れる体液が背中まで濡らしてゆく。


今さら遅い。何もかも。


せめて正直に話してくれていたら、結果は変わらなくてもいつか、いつか、いい思い出だって笑って、話せたかもしれないのに。



「…ふ、…ぅ、…っ」



仕方ないだろ、って。
愛してるのはお前だけだって。
誤魔化すようにわたしを抱こうとした。


愛してるなんて言葉はそのときから、何の価値もなくなった。


まるで今の、わたしみたいに。












「…………おはよう」

「…」

「……腹、減ってないか。水も、」

「…」

「ルーシー…、」



報われないと知っていて、それでも信じていたのだ、本気で。
田舎から働きに出てきた女は世間知らずだった。
初めての恋と失恋の痛みは、純粋で浅はかだった女の心を容易く壊した。

女はその日から、話すことも笑うこともしなくなった。
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