ひと夏の思い出

桜色キリカ

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ひと夏の思い出

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これはむせ返るような暑苦しい夏だった
いつものように仏間で涼んでいると玄関が空いたような音がした
おかんが帰ってきたと思って無視しているとそこには幼なじみが立っていた
(嘘だろ……)
と思いながら眺めていると
「何見てんのよ変態」とどこか懐かしい声がした
やっぱり幼なじみの千鶴だった
俺は暑さにやられて幻覚を見ているんじゃないかと思った
だけどグーで殴られた
いつも千鶴には殴られてたからわかるだからこそ俺は言いたい
「なんで帰ってきたんだよ……
ちゃんと俺が送り届けたはずだろ」
千鶴は黙って何も言わない
お互いの沈黙がずっと続いていると千鶴が突然何かを呟いた
「忘れ物……」
そうか…忘れ物かと思いながらいると唇に柔らかく暖かい感触が
あたった
「……」
俺が黙っていると
「何か言いなさいよこのド変態」
ふっと我に返り
「忘れ物がキスだなんてお前も変態だな」と返すと
「うっさいわねそれよりも告白の返事は?」といつもの様に怒鳴り散らかしてきた
俺は迷っていた正直嬉しいが返事をどう返すか……
「早くしなさいよ時間が無いの!」そう言い放たれたから咄嗟に
「付き合っちゃるけん」と言ってしまったそうすると
「遅いわよバカ」と言っている彼女の目から一筋の涙が流れていた
俺はその涙を拭こうとハンカチを探した
ポケットに入れてたことを思い出して取りだして彼女の方を見るとそこには誰もいなかった
あれは幻覚でもなんでもない死んだ幼なじみだった
幻でもないってわかった理由はまだ柔らかくて暖かい感触が唇に残っていることだけだった
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みんなの感想(1件)

こいか
2024.03.14 こいか

切なくも儚いザッ青春、ホラーは要素あり

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