涙袋 ~現代居酒屋千夜一夜物語~

与四季団地

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   第8夜・『超ブラックドッキリ隊、老人ホームへ・・・』

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 以前、お客さんで、老人ホーム勤務の女の子がいた。
 なかなかいい子だった。
 私のことを気に入ってくれて、「今度どこかへ連れて行ってください!」とか言ってくれて嬉しかった。
 私にしては自制して、電話番号やアドレスの交換もせずにお店から見送ったのだが、その子は、テーブルの下に忘れ物をしていた。
 2,3日後には現われるかなぁと思ったのだが、なかなか来店しない。
 連絡先も聞いていなかったので、その忘れ物をなかなか返せない。
 ふと思った。
     「彼女の働いている老人ホームに持っていってやればいいんじゃないか?」
 老人ホームの名前は聞いていたのだ。
 かくして、私は、頭の中で、老人ホームに、女の子の忘れ物を届けに行くパターンを想像した・・・。
 母親を連れて行ったら、ウププ^^; 面白いかも・・・。
   ◇
 ・・・「ねえ、バァちゃん、奥多摩に日帰り温泉に行こうと思うんだけど、一緒に行く?」
「うん、息子がどこかに連れて行ったり、親孝行に励んでくれるとなると行かないわけないでしょ!」
「そう^^ じゃあ、替えの下着と、そうだな、自然の豊かなトコに行くんで、親父の遺影も持っていきなよ?」
「うんッ!・・・」
 かくして、私は車に母親を乗せて、奥多摩方面に向かう。
 しかし、車は、何故か、いつもの<つるつる温泉>ではなく、なんか、本道とは違う道を進む。
「なんで、こんな道を通るの?」
 母親が素朴な質問をする。
「うん、平気 平気、気にしないで」
 が、車が着いた先は、誰が見ても分かる老人ホーム。
「ど、どういうことよ! あんたッ!!」
「大丈夫^^ きっとみんなと仲良く出来るよ^^」
「な、なによ、こ、こんなだまし討ちみたいに!」
「んなことないよ、ちゃんと着替えも遺影も用意してあるでしょ^^ 他に必要なものは、一週間に一度は届けるよ^^ でも、忙しい時は来れない時もあるからね^^」
「ふ、ふざけないで!!!」
 助手席で身を縮こませる母親、テコでも動かない態だ。
「わ、私だって、い、いろんな集まりとか、あ、あるんだから、こんなトコに入れられたら、い、行けなくなっちゃうじゃない!!」
「・・・、・・・すぐに、ここの生活にも慣れるよ^^ さ、わがまま言わないで降りるんだよ」
 ・・・、・・・てな感じの「超ブラック・ドッキリ」を仕掛けるような想像さえ、私は出来る。
   ◇
 これが、こうしてものを書く者の「宿命」である・・・。
        
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