涙袋 ~現代居酒屋千夜一夜物語~

与四季団地

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   第16夜・『正月の美少年』

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 お正月から店を開けたはいいけれど、どうせ暇でしょうと思い、マンガを大量に用意し、ゆっくりと店で寛ごうと思っていたら、予想に反して、かなりの来店があった。
 昨夜は、前半は暇で、この調子で今日は暇だろう、しめしめ、彼女に借りた「夏目友人帳」「銀の匙」を読みまくろうと思っていた。
 が、すぐにお客さんが来て、満員になった。
 中に、常連の夫婦がいた。
 今日は大学生になると言う子供を連れてきていた。
 私の好みであった。
 さらさらのショートカットで丸顔を覆い、目は切れ長で、鼻は尖っていて、 肌は色白で清潔感に満ち溢れていた。
 本田翼を、更にシャープにした感じ。
「うわー! なんちゅう可愛らしさだ!」
 私は、無表情で、たまにチラ見した。
 こちらの夫婦、芦屋小雁のようなお父さんと、40代後半の可愛いお母さんの歳の差は20だそうだ。
 でも、お父さんは元気いっぱいで、夫婦仲睦まじい。
 屈託なく会話していく。
 私は、子供があまりにも好みなので、心中を悟られぬよう無表情で、まだまだ子供らしく、親をぞんざいに扱う息子さんを見ていた。
 そう、男の子なのである。
 うん、最初から男の子と分かっていた。
 しかし、そもそも、私はボーイッシュな女の子が好きなので、とても魅力的で、私はドキドキした。
 ・・・が、その子の片眉に絆創膏が貼られているのが気になった。
 私は、「ボクシングでもしてるの?」と聞く。
「見てください^^」
 少年は、絆創膏を剥がした。
 眉が、傷口に沿って剃られていた。
 4針の傷だそうだ。
 そして、家族は、大晦日かからここまで、家族を揺るがした大事件について語り始めた・・・。
 誰か、他人に、それらの話を聞いて欲しかったのだろう。
 それを聞き、客観的に正しいと思われるアドバイスをするのも、私の仕事である。・・・(2014/01/03)
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