涙袋 ~現代居酒屋千夜一夜物語~

与四季団地

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第2章・この世界の片隅で

   第151夜・『専業主婦のささやかな「冒険」(後編)』

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   (前回からの続き)

 その物腰・・・。

 色っぽいのである。

 外見は池脇千鶴を四十路近くにした感じである。

 その一行が帰った後、私は、カウンターに座っていた常連と、「あの奥さん、可愛いし、色っぽいなぁ・・・^^;」などと話すのだった。

 その次に、A子さんは、旦那さんと二人できた。

 カウンターに座ったので、私との会話も弾み、三人の息子さんがいるそうで、息子さんとのツーショット携帯写真なども見せられたのだが、

 それが高校生カップルにしか見えないので、ゾッとした。

 この人、次回は一人で来る・・・!

 私は覚悟した。

 ・・・一週間後、A子さんは一人で、閉店間際に来て、閉店までいて、私が車で送り、帰ることになった。

 親しき仲にも礼儀あり、だが、屈託ないA子さんとの会話は弾み、A子さんの家近くになった。

 旦那さんは夜勤であった。

 A子さんは唐突に言った。

「・・・夫は、何度か私を裏切っています。私は常々、裏切られたら、倍返しにすると言ってあるのです・・・」

 ・・・私は冷や汗をかきながら、心の中で、「俺はロリコンだからにゃあ、人妻にゃあ興味にゃあ…」と呟いた。

「倍返しってのは、なかなか厳しいですね^^; ・・・そうですか・・・、夫婦ってのは色々ありますね」とやり過ごす。

 A子さんの家の前に到着し、私は、A子さんに降りてもらう。

「明後日、またお店に寄らせていただきますね^^」とA子さん。

「・・・そんなに日にちを密にしないで、一週間に一回ぐらいで、長くお店とつきあって欲しいです^^」

「でも、行けるときは、そうはないのです」

「そうですか^^ ではお待ちしております。・・・車の前を通って、道を渡ってくださいね」

 A子さんは、ヘッドライトに照らされながら、手を振り振り、自宅に戻っていった。

 やっぱ、(若い頃の)池脇千鶴に似ているなぁ、と思った。

 ・・・二日後、A子さんは来店しなかった。

        ・・・専業主婦のささやかな「冒険」は終わったのだ・・・。

           ・・・(2013/12/02)
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