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第3章・風雲竜虎編
第201夜・『親父の話:ホッチキス』
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昨年の大晦日に死去した我が親父について、ちょっとづつ書いてみようと思う。
享年69歳で、後ひと月生きていたら、70歳でキリが良かったのだが・・・。
最終的には病院で息を引き取ったのだが、末期は、呼吸が困難でずっと口を開いていた。
臨終後、看護婦さんが遺体を清めている時、口がなかなか閉まらなかった。
私は、「ホッチキスでとめろ」と言った。
母親も看護婦さんも、どう答えていいか困っていた。
私は、いつも毅然としていたかったらしい親父の、その口が、間抜けにも開いているのは、本人が嫌だろうと思ったのだ。
一度は閉じられた口だったが、すぐに開いて前歯が覗けるようになってしまった。
葬儀のクライマックス、棺おけを花でいっぱいにする段において(キリスト教式なので)、私は、口から歯が覗けてしまう死に顔の父親に、何故だか、涙を流してしまった・・・。
# # # #
私は、あまり、親父から昔話を聞いたことがない。
それを思い出して書いてみるか?
# # # #
親父がまだ幼い頃、近所で遊んでいると、小猫がいたそうだ。
可愛かったので、ずっと一緒に過ごしたのだそうだ。
夕方になり、親父は帰宅しようとしたが、その小猫があまりにも可愛かったので、また明日も遊ぼうと思い、近くの木にヒモで結んで帰ったのだそうだ。
晩飯の時に、その話を母親にすると、母親は「すぐ逃がしてきなさい」と怒ったそうだ。
親父は、福岡の片田舎の真っ暗闇の中を、恐怖におののきながら、猫を開放しに行ったとのこと。
# # # #
親父は、とても子煩悩だったので、私は非常に厳しくも甘やかされて育てられた。
長時間、説教されることもたびたびあったし、多くのオモチャを買い与えられもした。
ある日、私は、父親に、当時一世を風靡した「ジャンボ・マシンダー」を買い与えられた。
子供の私の背丈ほどもある巨大な「マジンガーZ」の人形だった。
いろんな種類の「ロケットパンチ」のアタッチメントも購入した。
・・・写真は、ネット上からの借りもの^^;
当時、近所に「しみずや」と言うオモチャ屋があったのだが、親父は、その店と我が家の往復を、車で行き来すれば良いのに、わざとに歩いていき、私に「マジンガーZ」を抱えさせ、歩かせた。
親父は、私に「優越感」をもたせようとしたのだ。
今で言うと、「ニンテンドウDS」を十個、体にぶら下げているようなイメージか・・・。
すれ違う子供は皆、そんな私を見て、羨望の眼差しを向けてきた。
私は、「エッヘン!!^-^v」と、腕に力を入れて、凱旋した。
・・・時代は、高度経済成長時代。
大手ゼネコンに務めていた親父は稼ぎまくっていた。
我が家は裕福だった。
「まあ、友だちにも貸してやることだ!」
親父は言った。
親父は私に、妙に、聖と俗の入り混じったような<帝王学>を学ばせ続けた・・・。
・・・(2008/01/08)
享年69歳で、後ひと月生きていたら、70歳でキリが良かったのだが・・・。
最終的には病院で息を引き取ったのだが、末期は、呼吸が困難でずっと口を開いていた。
臨終後、看護婦さんが遺体を清めている時、口がなかなか閉まらなかった。
私は、「ホッチキスでとめろ」と言った。
母親も看護婦さんも、どう答えていいか困っていた。
私は、いつも毅然としていたかったらしい親父の、その口が、間抜けにも開いているのは、本人が嫌だろうと思ったのだ。
一度は閉じられた口だったが、すぐに開いて前歯が覗けるようになってしまった。
葬儀のクライマックス、棺おけを花でいっぱいにする段において(キリスト教式なので)、私は、口から歯が覗けてしまう死に顔の父親に、何故だか、涙を流してしまった・・・。
# # # #
私は、あまり、親父から昔話を聞いたことがない。
それを思い出して書いてみるか?
# # # #
親父がまだ幼い頃、近所で遊んでいると、小猫がいたそうだ。
可愛かったので、ずっと一緒に過ごしたのだそうだ。
夕方になり、親父は帰宅しようとしたが、その小猫があまりにも可愛かったので、また明日も遊ぼうと思い、近くの木にヒモで結んで帰ったのだそうだ。
晩飯の時に、その話を母親にすると、母親は「すぐ逃がしてきなさい」と怒ったそうだ。
親父は、福岡の片田舎の真っ暗闇の中を、恐怖におののきながら、猫を開放しに行ったとのこと。
# # # #
親父は、とても子煩悩だったので、私は非常に厳しくも甘やかされて育てられた。
長時間、説教されることもたびたびあったし、多くのオモチャを買い与えられもした。
ある日、私は、父親に、当時一世を風靡した「ジャンボ・マシンダー」を買い与えられた。
子供の私の背丈ほどもある巨大な「マジンガーZ」の人形だった。
いろんな種類の「ロケットパンチ」のアタッチメントも購入した。
・・・写真は、ネット上からの借りもの^^;
当時、近所に「しみずや」と言うオモチャ屋があったのだが、親父は、その店と我が家の往復を、車で行き来すれば良いのに、わざとに歩いていき、私に「マジンガーZ」を抱えさせ、歩かせた。
親父は、私に「優越感」をもたせようとしたのだ。
今で言うと、「ニンテンドウDS」を十個、体にぶら下げているようなイメージか・・・。
すれ違う子供は皆、そんな私を見て、羨望の眼差しを向けてきた。
私は、「エッヘン!!^-^v」と、腕に力を入れて、凱旋した。
・・・時代は、高度経済成長時代。
大手ゼネコンに務めていた親父は稼ぎまくっていた。
我が家は裕福だった。
「まあ、友だちにも貸してやることだ!」
親父は言った。
親父は私に、妙に、聖と俗の入り混じったような<帝王学>を学ばせ続けた・・・。
・・・(2008/01/08)
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