涙袋 ~現代居酒屋千夜一夜物語~

与四季団地

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第3章・風雲竜虎編

   第202夜・『親父の話・2:ゼシカ』

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 私の親父はガタイが大きくゼネコン畑の営業としてならしてきたので強面でもあった。

 例えば、学校に連れて行こうものなら、担任の先生が親父の外見に「ビクッ!」とするのがよく分かるのである。

 仕事と、子供のために尽くすのが趣味のような親父だった。

 しかし、定年後、ためしに「RPGゲーム」をやらせたら、見事にはまった。

 私は、「ドラクエ」の「5」くらいまではクリアする暇があったが、次第に、買いはするけど終わらせることはできなかった。

 しかし、親父は「8」までちゃんと終わらせている。

 ゼシカがどこぞの王子と結婚する場で、勇者がさらっていく(?)と言う「真のエンディング」までもやっている。

「ファイナル・ファンタジー」も、「9」まではクリアしていた。

「マザー」は「2」までで、その音楽が大好きだった^^

 12/29。

 私は、その日から年末年始の休みだったので、危篤だった父親の横で、ずっと、「FF4・DS版」をやっていた。

 意識不明でも、耳だけは聞こえているという。

 親父は、植松伸夫氏の音楽をどう聴いたか・・・?

 31日に永眠するのだが、その日は、死ぬ直前までモーツァルトを聞いていました。

     #     #     #     #

 親父が、私の子供のころに繰り返し聞かせた話に以下がある。

 親父は、福岡から出てきて、明治学院に通っていたのだが、その下宿には早稲田の学生もいた。

 何かがあったらしく、その隣室の早大生の部屋に、そのご両親が訪ねてきたという。

 なにやら口論していた。

 そして、その早大生が両親に涙ながらに言ったのだという。

   「俺がこんなになったのはお前らのせいだ!」

 学生時代の親父は、友人のそんな姿を見て、とても情けなかったそうだ。

 その早大生は、翌日、自殺したそうだ・・・。

 ・・・で、説教の時に、私に言うのだった。

   「お前は、いい歳して、自分の行いを親のせいにするような人間にはなるな!」

 私は、まだ子供だったので、親父の言わんとすることがよく分からなかったのだが、とりあえず、頷いたものだった。

 その話は、ことあるごとに聞いたので、何十回は聞かされただろう。

 ・・・私には反抗期はなかったが、高校生の頃は、まあ、色々考えた。

 時に、上記の話も思い出した。

 シニカルだった私は、親父の言ってたことこそ、「子への責任放棄」のように思えた。

 しかし、現在、私は、親父の言っていたことが、言葉のままに受け入れれば良いことを理解している・・・。

   


                ・・・(2008/01/15)
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