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撃壌之歌
4話
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夜明けと共にラージュへと出発したオルハンたちは翌日の明け方にラージュに到着した。そこでラージュを拠点にしている西方九大隊の大隊長、マラシュを始めとする西方九大隊幹部たちと緊急の会合を行った。
「まず初めに、このような危険な任務を受けてくれて本当に感謝する。知っての通りここからさらに西にあるホネーデが先日陥落した。そして数日中にもここ、ラージュに侵攻するだろうという情報がホネーデに潜伏中の調査兵から送られてきた。ただ、ブレジニア側も数日前の戦闘で多数の死傷者を出しているため、明日、明後日に攻めてくることはないそうだ。そこで諸君らにはリワール大隊長からあったと思うが、この作戦の指揮官として20人組の組織を命ずる。隊長にはオルハンを指名する。また20人組内で5人組の組織も併せて命ずる。分隊長はここにいる4名である。この会議終了後、別の部屋に生き残りの西方十二大隊の隊員が数十名集まっているので好きに使ってくれ。」
このようなマラシュの言葉を皮切りに、任務当日までの流れ、当日にはどこに誰が攻め入るのかという話など、その後の任務に必要な会議がなされた。
ちなみに20人組とは、その名の通り隊長を初めとする20人の兵士で構成される部隊のことである。
また作戦の際、迅速な動きを可能にするため、この20人組を4つの部隊に分け、分隊長を初めとする5人組と呼ばれる部隊を作って作戦を実行することになる。
この20人組や5人組の主な仕事だが、基本は非常時に臨時で結成される少数精鋭の部隊とされるため、主に【敵の偵察】【敵の暗殺】【敵基地への破壊工作】を任される。このような任務に対して作戦を20人で立て、20人、時には5人で実行するというのが主な仕事なのだ。
そして会議後、オルハンたちは生き残りの西方十二大隊のメンバーと合流した。
「君たちが今度の暗殺任務の指揮を執る子かぁ、まだまだ若いねぇ、しかも召集兵で現場のスキルもなにもない。ほんとに大丈夫かなぁ?」
そう見下すように言うのは、西方十二大隊の生き残り達ををラージュまで率いてきた西方十二大隊第二中隊、中隊長のフアリスだ。ここに来るまでにあまり十分な食事を摂らなかったためか、頬は痩せこけ、口元に伸びた髭は彼が若くはないということを表していた。
「リワール大隊長、及びマラシュ大隊長から指示があり、今回の暗殺任務の総指揮官になりました。オルハン・イルハームといいます。これから早速ではありますが20人組と5人組を編成しますので、希望者は集まっていただきたい。」
そうはいったものの、経験年数もくぐってきた修羅場も数が違う。しかも共和国内最強ともいわれる集団の生き残り、プライドがあるのだろうか、集まる者は1人もいない。
自分には無理なのか。そうオルハンが諦めて戻ろうとした時、1人の声が部屋に響いた。
「ここにいてもやられっぱなしだ。上からの命令なんだったら、どうせ俺たちが参加しなくても九大隊のメンバーを集めて作戦は実行するんだろ?ならここでやらなきゃ俺たちはずっとやられっぱなしだ。プライドを気にして何もしないより、お前らに従って一発返すことができるならそれでいい。オルハンって言ったな、俺を連れていけ。」
男の名はラードと言った。
ラードの言葉を皮切りに、「そうだそうだ。」と複数の兵士が名乗りを上げた。一人二人と人が増えていき、最終的には20人組を結成するのに十分な人数が集まった。
「ありがとうございます。では皆さん打ち合わせをするので、この後所定の部屋に集まってください。」
こうオルハンが言い、何事もなく終わったかに思えた。
しかしオルハンたちが部屋から出ようとすると一人の男が声を上げる。フアリスだ。
「俺は認めねぇぞ!どうせお前が行ったって返り討ちにされるだけだ。なら俺はここに残って新しい部隊を作ってから攻め込む。」
この言葉を聞いてその場の空気が変わるのが肌でわかった。しかしオルハンは動じない。
「お好きにどうぞ。しかしながら、ここで重要なのはいがみ合うことよりも手を取り合って勝利することなのではないのでしょうか。ただでさえ人数が少ない中で互いに協力すれば、勝利が近づくのではないかと思うのは私だけでしょうか。」
こうオルハンは言った。
そして最後にこうつけ加えた。
「今のフアリス中隊長の言葉を聞いて協力したくないと思った人はここに残ってくれて構わないです。これは強制ではなく任意です。やりたいと思う人はこの後指定されるであろう部屋に来てください。」
そういったオルハンは部屋を出ていった。
そこに過去のオルハンの姿は無い。
いや、完全になくなったとは言えないだろう。
もちろん怖いものは怖い。
まだ18歳の子供だ。
しかし今のオルハンの心にあるのは、何事も無かった平穏な日々、ずっと続けばいいと思っていたあの日々が、壊されてしまわないかという不安。
そしてなにより罪なき人たちを守りたいという思いと、この特別な任務を任せてもらったという使命感。そういったものが相まってオルハンの心を強くしているのだろう。
アーティフ達は顔を見合せた。
「あいつってあんなに頼もしかったっけ…?」
そうハキーマは言いながらも、一段と頼もしくなったオルハンの背中を見て微笑むのだった。
ーーーーーーーーーー
それから少しして、オルハンたちが待つ部屋に、西方十二大隊の志願兵が集まった。
その数はざっと50人。
20人組、5人組を作るのには十分な数だった。
その場で一人一人の性格や、戦闘スタイルに合わせて部隊を編成していった。
頭の切れるアーティフは主に後方支援部隊、体の強いクトゥブは本隊を守る護衛隊、動きの素早いハキーマは偵察隊、そして隊長であるオルハンは集まった西方十二大隊の中でもエリートを集めた本隊を率いることになった。
作戦決行は2日後に決まった。
しかし敵の数は多く、危険度の高い任務である。また目的であるミールの暗殺を運良く成功させたとしても敵がそそくさと引き上げる保証は無い。
そんな任務をオルハンたちは行わなければならないのだった。
会議が終わり、それぞれが部屋に戻って準備をすることになった。
2日後に出発予定のため、翌日は1日の休暇となったため、それぞれが思い思いの日を過ごした。
そうしてやってきた出発の日の朝、オルハンたち20人は早朝にラージュを出発し、ホネーデへと向かうのだった。
「まず初めに、このような危険な任務を受けてくれて本当に感謝する。知っての通りここからさらに西にあるホネーデが先日陥落した。そして数日中にもここ、ラージュに侵攻するだろうという情報がホネーデに潜伏中の調査兵から送られてきた。ただ、ブレジニア側も数日前の戦闘で多数の死傷者を出しているため、明日、明後日に攻めてくることはないそうだ。そこで諸君らにはリワール大隊長からあったと思うが、この作戦の指揮官として20人組の組織を命ずる。隊長にはオルハンを指名する。また20人組内で5人組の組織も併せて命ずる。分隊長はここにいる4名である。この会議終了後、別の部屋に生き残りの西方十二大隊の隊員が数十名集まっているので好きに使ってくれ。」
このようなマラシュの言葉を皮切りに、任務当日までの流れ、当日にはどこに誰が攻め入るのかという話など、その後の任務に必要な会議がなされた。
ちなみに20人組とは、その名の通り隊長を初めとする20人の兵士で構成される部隊のことである。
また作戦の際、迅速な動きを可能にするため、この20人組を4つの部隊に分け、分隊長を初めとする5人組と呼ばれる部隊を作って作戦を実行することになる。
この20人組や5人組の主な仕事だが、基本は非常時に臨時で結成される少数精鋭の部隊とされるため、主に【敵の偵察】【敵の暗殺】【敵基地への破壊工作】を任される。このような任務に対して作戦を20人で立て、20人、時には5人で実行するというのが主な仕事なのだ。
そして会議後、オルハンたちは生き残りの西方十二大隊のメンバーと合流した。
「君たちが今度の暗殺任務の指揮を執る子かぁ、まだまだ若いねぇ、しかも召集兵で現場のスキルもなにもない。ほんとに大丈夫かなぁ?」
そう見下すように言うのは、西方十二大隊の生き残り達ををラージュまで率いてきた西方十二大隊第二中隊、中隊長のフアリスだ。ここに来るまでにあまり十分な食事を摂らなかったためか、頬は痩せこけ、口元に伸びた髭は彼が若くはないということを表していた。
「リワール大隊長、及びマラシュ大隊長から指示があり、今回の暗殺任務の総指揮官になりました。オルハン・イルハームといいます。これから早速ではありますが20人組と5人組を編成しますので、希望者は集まっていただきたい。」
そうはいったものの、経験年数もくぐってきた修羅場も数が違う。しかも共和国内最強ともいわれる集団の生き残り、プライドがあるのだろうか、集まる者は1人もいない。
自分には無理なのか。そうオルハンが諦めて戻ろうとした時、1人の声が部屋に響いた。
「ここにいてもやられっぱなしだ。上からの命令なんだったら、どうせ俺たちが参加しなくても九大隊のメンバーを集めて作戦は実行するんだろ?ならここでやらなきゃ俺たちはずっとやられっぱなしだ。プライドを気にして何もしないより、お前らに従って一発返すことができるならそれでいい。オルハンって言ったな、俺を連れていけ。」
男の名はラードと言った。
ラードの言葉を皮切りに、「そうだそうだ。」と複数の兵士が名乗りを上げた。一人二人と人が増えていき、最終的には20人組を結成するのに十分な人数が集まった。
「ありがとうございます。では皆さん打ち合わせをするので、この後所定の部屋に集まってください。」
こうオルハンが言い、何事もなく終わったかに思えた。
しかしオルハンたちが部屋から出ようとすると一人の男が声を上げる。フアリスだ。
「俺は認めねぇぞ!どうせお前が行ったって返り討ちにされるだけだ。なら俺はここに残って新しい部隊を作ってから攻め込む。」
この言葉を聞いてその場の空気が変わるのが肌でわかった。しかしオルハンは動じない。
「お好きにどうぞ。しかしながら、ここで重要なのはいがみ合うことよりも手を取り合って勝利することなのではないのでしょうか。ただでさえ人数が少ない中で互いに協力すれば、勝利が近づくのではないかと思うのは私だけでしょうか。」
こうオルハンは言った。
そして最後にこうつけ加えた。
「今のフアリス中隊長の言葉を聞いて協力したくないと思った人はここに残ってくれて構わないです。これは強制ではなく任意です。やりたいと思う人はこの後指定されるであろう部屋に来てください。」
そういったオルハンは部屋を出ていった。
そこに過去のオルハンの姿は無い。
いや、完全になくなったとは言えないだろう。
もちろん怖いものは怖い。
まだ18歳の子供だ。
しかし今のオルハンの心にあるのは、何事も無かった平穏な日々、ずっと続けばいいと思っていたあの日々が、壊されてしまわないかという不安。
そしてなにより罪なき人たちを守りたいという思いと、この特別な任務を任せてもらったという使命感。そういったものが相まってオルハンの心を強くしているのだろう。
アーティフ達は顔を見合せた。
「あいつってあんなに頼もしかったっけ…?」
そうハキーマは言いながらも、一段と頼もしくなったオルハンの背中を見て微笑むのだった。
ーーーーーーーーーー
それから少しして、オルハンたちが待つ部屋に、西方十二大隊の志願兵が集まった。
その数はざっと50人。
20人組、5人組を作るのには十分な数だった。
その場で一人一人の性格や、戦闘スタイルに合わせて部隊を編成していった。
頭の切れるアーティフは主に後方支援部隊、体の強いクトゥブは本隊を守る護衛隊、動きの素早いハキーマは偵察隊、そして隊長であるオルハンは集まった西方十二大隊の中でもエリートを集めた本隊を率いることになった。
作戦決行は2日後に決まった。
しかし敵の数は多く、危険度の高い任務である。また目的であるミールの暗殺を運良く成功させたとしても敵がそそくさと引き上げる保証は無い。
そんな任務をオルハンたちは行わなければならないのだった。
会議が終わり、それぞれが部屋に戻って準備をすることになった。
2日後に出発予定のため、翌日は1日の休暇となったため、それぞれが思い思いの日を過ごした。
そうしてやってきた出発の日の朝、オルハンたち20人は早朝にラージュを出発し、ホネーデへと向かうのだった。
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