妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

文字の大きさ
2 / 77
一章

第2話 妹のいないシスコンの異世界転生

しおりを挟む
 ――僕の人生は終わったかに思えたが、目が覚めた。

 知らない天井だ。

 どうやら僕は奇跡的に生還していたようだ。
 あの状態から生き延びられるとは日本の医療技術も進歩しているということかな。
 そう感心していると、目の前に巨大な女の顔がぬっと顔を出した。

「おんぎゃー!!」

 あまりにも巨大過ぎる顔面にびっくりして泣いてしまった。
 何故か感情が制御できず、涙が溢れてくる。
 それになんだかうまく喋れない。

「オンブ、ンブリ、ゴリアリアス?」

 穏やかな表情をして、僕に謎の言語を話す女。優しそうな人である。
 よく見ると、艶やかなブロンドの髪と海のようなブルーの瞳で、なんだか外国人のような顔立ちをしている。

 ははーん、さては異世界転生ってやつだな?

 僕が読んでいるライトノベルではトラックに轢かれると、異世界に転生すると相場が決まっているのだ。
 その証拠に自分の身体を見ると、とても小さな手足が生えていた。
 まあ、それ以外に考えられるとしたら、トラックに轢かれた時の身体の状況からして、手足が千切れたり捻じれたりしていたので、サイズ違いの手足を移植したという可能性は確かに捨てきれない。
 しかしだ、現在、目の前で僕をあやしている謎の女の説明がつかない。
 運び込まれた病院が外国であるという可能性は限りなく低いのである。
 このことから、僕は異世界へ転生したということになる。

 そうと分かれば、やることは一つしかない!

 今度こそは前世では叶えられなかった妹同意えっちを達成するために、僕はこの異世界を満喫しようと決意した。




***




 僕が転生してから3年の月日が経った。

 この3年の間、僕はただ指を咥え、鼻水を垂らし、糞尿を垂らしてきたわけではない。
 目的を達成すために、この世界のことを知っていく必要があったため、無垢な赤ん坊になりすましながら、情報を集めていたのである。

 僕が住んでいるのはフラタール王国にあるトオイという名前の辺境の村だ。
 トオイ村は地球の中世ヨーロッパ的な感じの牧歌的な雰囲気がある。
 住民たちは、畑仕事や家畜の世話で、なんとか生活していた。

 また、村の近くの森には魔物が多く生息している。
 魔物も立派な食料となるため、週末になると村の男たちは狩りに出て獲物を得ていた。
 これがそこそこの値段で売れるらしく、狩った魔物を売ることで多少余裕のある生活ができている。

 地球の中世ヨーロッパでは、農民は朝から晩まで働き詰めで、家も小さく、家族で一部屋に寝るという貧しい暮らしをしていたらしいけど、この村では魔物による収入もあり、そこまで働く必要はないみたいだ。
 僕には一日中働いている暇なんてないので、その点に関しては好都合だ。

 そんな感じで、地道に情報を集めていた。
 だが、3歳児の行動範囲は狭く、外出などできるはずもなかったため、両親の会話か、家にある数冊しかない本から情報を得るしかなかった。
 本は高級品であり、農民ごときが所持しているというのは稀だが、両親は過去に冒険者として活動しており、多少稼ぎがあったらしい。
 その活動の最中、突如、僕が発生したということだ。
 男女で冒険をして子どもが発生するというのは、自然の摂理なのだ。
 僕をお腹に宿したままでは、冒険者も続けられないため、この辺境の村に定住したと聞いている。

 3歳児にこんな話をしても話半分以下も分からないだろうに、父親は酒を飲んで酔っ払うと、冒険者時代の話を武勇伝のように語りだすのだ。
 正直なところあまり興味は無かったが、僕は模範的な児童として、目一杯リアクションをしてあげている。まったく困った父親である。

 そして、この世界には魔法が存在する。
 母親が台所で火をつけるために炎を指先から出していたのをこの目で見たのだ。

 魔力というのは、大昔に神様たちが大喧嘩をした影響によって、発生した不思議エネルギーらしい。
 その大喧嘩は天地をひっくり返すような壮絶な戦いだったらしく、人間たちや動物たちはドミノのようにバタバタ死んでいくような状況だった。

 争いが激化していく中、戦いに参加していなかった一柱の神がブチ切れた。
 近所で毎日のようにお祭り騒ぎが起きていたのだから、ストレスが溜まるのも無理はない。しかも自分が参加していないお祭りでだ。
 狂ったように暴れ回った神は、全ての神々を葬った後、自身も姿を消したという。

 そこからは人類繁栄の時代となり、世界の生態系が大きく変わっていく。
 不思議エネルギーである魔力の影響により、動物は魔物に進化し、またそれは人間にも変化をもたらした。
 獣人族や精霊族など、多くの種族が生まれたのだそうだ。

 こんな感じのことを毎晩のように母親が僕を寝かしつけるときに聞かせてくるものだから、うんざりしている。しかも無駄にディティールが凝っていて迫真なのだ。
 子どもに話すにしては、あまりにも血生臭すぎるが、この世界では常識らしい。
 世界の成り立ちを教えるために必要なことなのである。

 こうして集めれる範囲では情報を集めたのだが、まずは両親に妹をこさえてもらわないと僕の転生物語は始まらない。
 両親もまだ若い男女であり、毎晩エキサイトしている声が聞こえてくるので、心配しなくても2、3人はすぐに出来るだろう。
 だが、問題となるのが、生まれてくるのが妹なのか、弟なのか、だ。
 残念ながら、これに関しては運次第である。
 だが、やれることはやっておきたい。





 夜――。
 両親のエキサイティングな声が聞こえ、目を開けた。
 居間から持ってきた蝋燭を円になるように並べる。

「妹来たれ……妹来たれ……妹来たれぇぇぇえええええ!!」

 どうか、僕の祈りが届けば良いのだが……。





「まみーおはよう。なんだか眠そうだね」

「おはよう……。わたしの可愛い坊や」

 我が母親は、毎日の妊活により、寝不足気味なようだ。
 かくいう僕も、毎晩のように儀式を執り行っているので寝不足だ。
 しかし、生まれてくる妹のことを考えれば、疲れることはない。
 体の内側から無限のエネルギーが湧いてくるのだ。

「お父ちゃんは?」

「まだ、寝てるわよ……まったくあの人ったら……」

 自分は早く起きて、朝食をする準備をしなければならないのに、父親はぐっすりと寝ていることが腹立たしいのだろう。
 僕だったら、叩き起こしてやるのに、僕の母親はお優しいことだ。

 ちなみに母親であるカーラは、自身のことをまみーと呼べと強要してくる。
 前世がある僕としては少々恥ずかしいのだが、今の僕は無垢な3歳児であるため、仕方なくそう呼んであげている。
 なお、父親のことはお父さんだと他人行儀だし、パパはちょっとアレだから、間をとってお父ちゃんと呼べと言われたので、希望通りにしてあげた。
 こう見えて僕は、両親の希望に応えてあげられるほどには大人なのだ。

 ちなみに妹ができたら、絶対にお兄ちゃんと呼ばせると決意している。
 大体お兄ちゃんだろと思うかもしれない。
 だが、……うん、まあよく考えたら、確かにその通りだ。
 あんまり心配することはないかもしれない。


 夜は妊活、昼は家事。
 そんな、母親の努力により、妊娠に至ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...