妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

文字の大きさ
55 / 77
四章

第55話 交錯する思惑

しおりを挟む

 騎士団は現在、モンスタースタンピードの報告を受け、目が回るほどの忙しさだった。
 ダンジョンから溢れ出した魔物は王都に侵攻してきたのだ。

 街の中枢に魔物災害の対策本部を設置し、住人の避難や魔物への対応を行なっていた。

「状況はどうなっている?」

 騎士団長のギルバートが秘書であるエリナ・ベーレンドルフに声をかける。

「はい、住人の避難については既に完了しております。 冒険者ギルドや教会に協力を仰ぎ、魔物の殲滅を進めているところですが、思うように進んでおりません」

「ふむ、アンデッドか……」

「その通りです。光属性の魔法を使用できるプリーストの数が足りていません」

「光属性の魔法が必須というわけでもあるまい?」

「はい、しかし、危険度が高い魔物が多くいます。 過去のスタンピードとは比べ物になりません」

 エリナが言うには、騎士団と冒険者、協会が対応に当たっているが、人手が足りていないとのことだった。
 魔物の数もそうだが、危険度B相当の魔物が暴れまわっていることが大きい。

「ダンジョンの方はどうなっている?」

「先ほど増援の依頼がきていましたので、早急に部隊を編成し向かわせています」

「これは元凶を叩く必要があるかもしれん……」

「……どういうことでしょうか?」

「このスタンピードの原因を早急になんとかするべきということだ」

「スタンピードの原因ですか……?」

「あれだけの魔物がダンジョンから溢れ出したのは、それ以上の脅威がダンジョン内にあるということだ。 魔物たちはその脅威から逃げるようにして出てきたと私が考えている」

「……もしその仮説が正しいとするならば学園の生徒たちが危険です!」

「……学園…………」

 ギルバートが何かに気付いたように考え込む。

「はい、学園の生徒がダンジョンにて試験を行なっているところにスタンピードが発生したとのことで救助を進めているところです」

「いや、それは聞いている。 学生についても一刻も早く救助を進めていきたいところではあるが……」

 ダンジョンにいる学生を救助しているという報告を受けてはいたが、ギルバートが問題視する部分は別にあった。

「学生の救助は最優先で進めておりますが、街の護衛もあり人手が足りておりません。 スタンピードの発生源ということで一番人数を割いている状況ではあるのですが……」

 エリナは、スタンピードの報告を受けた時点で、ダンジョンには手厚く人員を派遣していた。
 しかし、街を守ることも考えるとそれ以上の人員を派遣するという判断はできなかった。

「いや、ベーレンドルフ、貴殿の采配は間違ってはおらぬ。 しかし私が問題視しているのは、学園の試験が行われていたという点だ」

「……?」

 ギルバートの言葉にエリナは真意がわからず、小首をかしげる。

「これは仕組まれたスタンピードだという可能性があるということだ」

「どういうことでしょう?」

「学園の試験が行われてる日に、偶然スタンピードが起きたというのは少し違和感がある」

「…………確かに試験の日にスタンピードが偶然起きたと考えるより、計画的にスタンピードを起こしたと考える方が自然に思えます…… しかし、その意味とは何でしょうか……?」

「今はその意味を考えている暇はない。 私が出る。指揮は任せたぞ」

「安易に動くのは危険です! 騎士団長の目を王都から逸らすという目的があるのかもしれません……!」

「だとすれば、王都に魔物を差し向けるとは思えん。 街が襲われている状況で私が動くとは限らんからな」

「そ、それはそうですが……」

「敵には別の目的があるのではないだろうか。 だからこそ私が動く必要がある」

「わかりました……。 指揮はお任せください。 依然、王都内の魔物の処理も追いついていない状況です。 最善を尽くしますが、お早くお戻りいただけると……」

 エリナは自分に任せろと言ったは良いが、不安を隠しきれない表情をする。

「善処する」

 ギルバートは短くそう言うと、疾風の如く走り去っていった。

「どうも嫌な予感がしますね……」

 エリナは自身の与り知らぬところで何かよからぬ思惑が進んでいるのではないかと思うと据わりの悪さを感じる。









「あわわわわわ…… どう収集つけるつもりっすかニアさん……」

 ミザリーは四階層と五十階層を繋ぐ隠し通路に身を潜めていた。
 彼女は今とても焦っていた。

 何故なら彼女の当初の計画としては、少し学生たちを脅かして最終的に監視員である冒険者にリッチが討伐されて終わりだろうと思っていたのだから。
 そうやって手がかりを残さないよう邪神復活に必要な感情を地道に集めていく。
 盗賊団での失敗を踏まえて慎重に事を進めることが、彼女の思い描いていた成功へのシナリオだったのだ。

「やばいっすよ…… 自分どうなっちゃうっすか……」

 予定より大幅に感情を集めることに成功してはいるのだが、これほどの騒ぎになってしまったことに身の危険を感じる。
 この謀略が明るみに出れば、ミザリーは打ち首どころでは済まないだろうと、その小さな身体を震わせる。

「で、でも復活に必要な感情はもう十分に溜まったっす……」

 盗賊団で集めた感情と合わせると復活に必要なだけの感情は集め終わっている。
 少々過剰に集めすぎてはいるが、邪神の復活までの感情を一気に回収することができたのだから、良かったと思うべきだろうと自分に言い聞かせる。

 もはやミザリーのコントロールを離れ、暴れ回る魔物たち。

 もうこのまま逃げてしまいたい気持ちになるが、騎士団が動いている以上、下手に動くことはできなかった。

「どさくさに紛れて、なんとか脱出するしかないっす……!」

 魔物も大量に蔓延っており、簡単には脱出はできないだろう。
 しかし、このまま引き籠っていても、いずれ見つかってしまう可能性もある。

 意を決して四階層に繋がる隠し扉を動かそうと、手に力を入れた瞬間――

 物凄い爆発音が鳴り響いた。

「うわぁ!!なんなんすか!!」

 ミザリーは驚きはしたが、すぐにこの爆発を隠れ蓑にして脱出することを決意する。
 何が起きているのかわからなかったが、ダンジョン内が混乱している今が脱出のチャンスのはずだと勇気を振り絞る。

 隠し扉を開き、飛び出していくミザリー。
 すると次々と爆発が起こる。

「いやあああぁぁぁあああ!!なんなんすか!なんなんすか!」

 走り続けるミザリーを追いかけてくるように爆発が起きていく。

 これは一体何なのか、何者かの攻撃なのか、自身の悪だくみがバレてしまったのか、考えがまとまらないまま必死に走り続ける。

 まるで物語のワンシーンかのように爆発の中を激走する。
 ともすれば死んでしまう状況なのだが、自身がその物語の主人公であるかのような錯覚をしてしまう。

「いけるっす!! 自分は風になるっす!!」

 その表情は恐怖に強張り、涙や鼻水、涎などあらゆる体液を撒き散らし、びっしょりと濡れており、年頃の少女がして良い顔面ではなかった。
 しかし、彼女にはそんなことを気に留めている余裕もない。一瞬でも立ち止まれば命はないのだから。

 ダンジョンの中に爆発音と少女の悲鳴が木霊するのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...