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四章
第56話 絶好のタイミングで颯爽と助けに入る作戦
しおりを挟むうーん。アーサーを尾行することに集中して、皆とはぐれてしまった。
でもまあ……問題ないだろう。彼らに任せておけば僕の分の魔物もきっと倒してくれるはずだ。
現在マジックミラーの魔法を駆使しながら、アーサーを監視しているのだが、時折アーサーに対してフランちゃんが熱い視線を送っているように見えて、とても気になった。
もしかしてフランちゃんはアーサーのことが……?……いやいやまさかね……。
僕としたことがあり得ない妄想に憑りつかれてしまっているようだ。疲れてるのかな?
アーサーとフランちゃんのやりとりをやきもきしながら見守る。
彼らの一挙手一投足に声が出てしまいそうになる。
この!くそう!アーサーめ!やはりお前はこの世に存在してはならない!
僕のフランちゃんにそれ以上近付くんじゃない!!
やめなさい!フランちゃんの吐いた息を吸うんじゃない!!
ちくしょう!僕にも吸わせろ!
「スーッ!ハーッ!スーッ!ハーッ!」
「……?」
……っ!アーサーの野郎がこっちを向きやがった……!勘の良い奴め……。
サッと物陰に隠れる僕。
結構距離はあるのだが、僕の鼻息を敏感に察知したのだ。
鬱陶しい奴だ……。石でも投げてやる!おりゃ!
すると奴は後ろに目でもついているかのように剣で打ち払う。
なんだか怪しんではいるようだが、魔物の仕業とでも思ったのだろう。幸い僕の存在には気が付いていないようだ。
ふふふ……貴様程度に僕の隠形を見破れると思うなよ……。
その後も度々嫌がらせをしながら尾行を続け、四階層に到達すると、何やらアーサーたちがごにょごにょ話し始めた。
結構距離が離れており、全然会話が聞こえない。
僕は耳の穴を大きく膨らませて何を話しているのか聞こうと試みる。
「アーサー君……やっぱりちょっと……が…………ない…………します……」
「……とりあえず手ごろな……見つけて………………よう」
「…………ねぇアーサー……おかし…………よ……」
あんまり聞こえないが、僕の妄想力、もとい推理力で会話を補完する。
『アーサー君……やっぱりちょっと私、我慢できない……興奮します……』
『……とりあえず手ごろな場所見つけてから…………しよう』
『…………ねぇアーサーもうおかしくなっちゃうよ……』
はぁっ……!?いやいや……そんな馬鹿なっ!!
彼らは一体何をしようと……!?破廉恥な!!破廉恥な!!
魔物がうろつく空間だからこそなのか!?そっちの方が気持ち良いのか!?
ちくしょう……。ちくしょう……。
あまりのショックに涙が溢れてくる……。
すると、セシルと呼ばれていた女の子がブルブルと震えだした。
遠隔操作なの……?桃色玩具なの……?
この分だと、フランちゃんにも搭載されているのかな……。
絶望に打ちひしがれてシクシクと涙を流す僕。
すると、突然冒険者の人が大声を上げる。
「が、学生!?……こんなところ……のか!」
なんだか焦っているような気がする。
それはそうだ、こんなところで少年少女が破廉恥行為をしているのだ。皆驚くに決まっている。
「今すぐ出口に戻るんだ!」
怒られてる。そうだ、もっと怒られろ……!変態どもが!!
失意に沈んだ僕は、なんだか慌ただしくなり出したアーサーたちをボーっと眺めていたのだった。
そして、沸々とアーサーへの憎しみが沸き上がってきた。
くそう!!やっぱりあんな奴やっつけてやる!!
頭を捻じり取ってゴルフボールにしてやる!!……あれ?サッカーボールだっけ……?なんか兵士の首を使って生まれたスポーツがあったような……?ええい!どっちでもいい!!汎用的なボールにしてやる!!
僕がアーサーをやっつける決意を固めていると、ダンジョンの奥から魔物がやってきた。
なんかいっぱいいる……。
あれ?ピンチなのかな?
でもアーサーに限ってそんなことはないはずだ。あいつはあろうことか先代の勇者が得意としていた光属性の魔法に長けているし……。
しばらく奮闘していたようだが、僕の方にまで魔物がどんどんと抜けてくるので、とてもひやひやする。
今はマジックミラーを発動し、事なきを得ているがいつまで隠れていられるのかわからない。
早くやっつけろ!アーサー!
……いや、このままピンチになってくれれば僕が颯爽と現れ、フランちゃんを救うことで彼女は真実の愛に気付くのではないだろうか。
だとすると、僕は魔物を応援するべきではないだろうか。
くたばれー!アーサー!
でもよく考えると僕はこの量の魔物たちを倒すことができるのか?
もしそのような状況になったら全力でなんとかするしかないけど、できれば遠慮したい。
アーサーにはできるだけ多くの魔物を葬ってからくたばってほしいものである。
「こ、これはやばいよ…… ……やばいやつが……いる……」
「なんだかやばそうだ…… とっとと撤退を…………っ!」
僕がアーサーの死を願っていると、なんだか緊迫した声が聞こえてきた。
同時に恐ろしいほどの魔力に圧し潰されそうになる。
そして僕は見た。
あれは……リッチさんじゃないか……。
しかし、彼があれ程までに強かったとは思いもしなかった。
これは僕に運が向いてきたかもしれない。
彼は復讐仲間なので、アーサーを葬ることに協力してくれそうだ。
「あ、あれは……なんなんだ……」
アーサーが情けない表情を浮かべている。
ふふふ……いい気味だ。リッチさんの強さにひれ伏すがいいさ!
「俺たちはもう終わりだ…… あいつはリッチ…… しかも普通のリッチとは明らかに違う……」
冒険者の人も怯えた声を出している。
リッチさんは意外と有名人だったようだ。
その実力が高さからどうしても注目されてしまうのだろう。
しかし、普通のリッチさんとは違うとはどういうことだろうか。
寡黙な人だしあんまり目立つことは得意ではなさそうだが、今日に限っては気合いが入っているということかな。
「でもセシルたちを逃がしてくれる気配はないみたいだよ……」
アーサーを逃がす気はないだろうね。
リッチさんは光属性が苦手だとミザリーが言っていたし、最初に叩き潰すはずだ。
「……皆、聞いてくれ……俺が隙を作るからその間に逃げてくれ……!」
いいぞぉ……。
さあリッチさん、アーサーの奴が格好をつけて俺に任せて先に行けをやっている隙に、奴の脳天に魔法を叩き付けるんだ。
アーサーたちが問答をしていると、冒険者の人が口を挟む。
「……っち!学生にそんなことさせるわけねぇだろうが……! ここは俺が押さえておくから、お前らは逃げろ!」
違う!お前はしゃしゃり出てくるんじゃない!
「こんな魔物……! 俺だってそれなりの修羅場は潜ってきたんだ……! やってや……る…………」
「……あ……ああ……だ、だめだ……死ぬ……」
勢い良く飛び出して、リッチさんの前に行くと急に立ち止まってしまった。
戦いのプロである冒険者に恐怖を与えるとは流石はリッチさんだ。
リッチさんが呪文のようなものを唱え始める。
冒険者さんを攻撃するつもりのようだ。
その瞬間――
フランちゃんとセシルという女の子の魔法が立て続けにリッチさんに直撃する。
なんてこった……!完全にクリーンヒットしたぞ……!
これはリッチさんも相当堪えたのではないだろうかと思ったが、あんまり効いていないようで再び呪文を唱え始める。
だが、その一瞬の隙に飛び込んできたアーサーの斬撃をまともに受けてしまう。
何をしてるんだ!リッチさん!
光属性が苦手なのにまともに食らってしまったよ……。
アーサーの奴リッチさんが死んだらどうするんだ!この人殺し!
「なっ……! 効いていない……!? 光属性が弱点ではなかったのか……!?」
かと思ったけどなんか全然効いてなかったみたいだ。
確かにリッチさんを見ると再び呪文を唱え始めていた。
ふふふ……結果オーライだ……!
リッチさんは一晩で苦手を克服していたのだ。流石だ。
「アーサー!!早く離れて!!」「アーサー君!!」
あれ、でもこの魔法って僕も巻き込まれたりしないのだろうか。
フランちゃんも危ない気がする。急に不安になってきた。
あれ?大丈夫だよね?
僕が隠れていたばっかりに僕の存在に気付いていないリッチさんはここら一帯を吹き飛ばすつもりなのかもしれない。
え?僕死んじゃう……?
あわあわあわ……
――その瞬間とてつもない爆発が僕の背後で発生した。
ぶへぇ!!
僕の背後で突如として爆発が起きたのだ。
なんだというのだ一体……!
どこの頭のおかしい奴がダンジョンに爆弾なんか仕掛けやがったんだ……!!
……そうこの僕だ!くそう!
試験の時間に合わせて時限爆弾を仕掛けていたのをすっかり忘れていた。
しかもこの爆発の魔法石の時間設定は結構ざっくりとしており、更に魔法石ごとに個体差もあるため、爆発する時間が定かではないという欠点もある。
幸い、僕は自作したリアクティブアーマーを装備しているので、ダメージはそんなにないが、ダンジョンに仕掛けた爆弾とアーマーにくっついている爆弾との相乗効果で、僕の体は物凄い勢いで投げ出されていた。
ぎゃあああぁぁぁああああ!!
さながら流星のようにリッチさんへと向かって飛んでいく。
リッチさん避けてええぇぇえええ!
というかリッチさんの魔法が発動寸前なんだけど……!
僕の着弾と同時にリッチさんの魔法が発動し、とてつもない爆発が発生した。
い、いてて……
体中が痛むが、どうやら生きているようだ。
僕の設計したリアクティブアーマーは、理論通りに仕事をこなしたようだ。
高度な四則演算の末に生み出された防具は、リッチさんの強大な魔法をも防ぐことができたのだ。
しかし、背負っていたリュックは木端微塵になってしまった。
今度はリュックも防火対策をしておくべきだな。
そんなことを考えているとふと気付く。
どういう経緯でそうなったのかわからないが、僕は不敵な笑みを浮かべながら、仁王立ちをしていた。
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