72 / 77
五章
第72話 子ども大司教、王都を散策する
しおりを挟む
王都シスタリアに白い法衣を纏った小柄な人影があった。
子ども大司教である。
「王都はすごいなぁ!大きいなぁ!」
仮面に隠されて相貌は窺えないが、その声には喜びが滲んでいた。
彼は自身の手で邪神を確保し、自身の遊び道具にしようとしていた。
簡単に外を出歩ける立場ではないのだが、子どもであるが故に自由奔放だった。
大司教である彼が好き勝手に行動しても、誰一人として咎めることはできないのである。
子ども大司教が意気揚々と王都の街を闊歩する。
現在、王都では闘技大会が開催されており、普段以上の賑わいを見せている。
通りには屋台が立ち並んでおり、物珍しそうに辺りを眺める。
屋台で見つけた美味しそうな食べ物を買い食いしては、またプラプラと祭りの雰囲気を楽しむ。
「へぇすごいねぇ!闘技場かな! きっとここで闘技大会をやってるんだよね! ……なんか所々焦げてるけど……」
スタンピード騒動の復興は進んでいるものの、街の至る所に、今もなおその爪痕が生々しく残っていた。
「面白いオモチャをゲットできるかもしれないし、ちょっと見に行ってみようかな!」
闘技場の受付に声をかける。
「お姉さん!闘技大会見たいんだけど!」
「チケットはございますか?」
どうやら闘技大会の観戦にはチケットが必要らしい。
「チケットは持ってないけど……」
「でしたら当日券を販売しておりますので、そちらをお買い求めいただければ観戦いただけますよ?」
「じゃあそれちょうだい!」
「ですが、当日券は少々割高になっておりまして……子どもには買えな……」
「必要な分だけ持って行ってよ!」
子ども大司教は腰に下げた巾着の口を開けて、コインを見せつける。
「なっ……! い、一枚だけで結構です……」
そのコイン溜まりを見た受付嬢は一瞬目を大きく開くが、流石はプロと言うべきか、自身の仕事を全うする。
「じゃあ入るね!」
お金を払うや、さっさと中に入っていく子ども大司教。
「…………あはは …………私がこんなに頑張って働いてるのに、あんなお気楽そうな子どもが大金を持っているのは不公平よ………… 世の中間違っているわ…… どうして……どうして……?」
「大人一人だ。 チケットは持ってる」
次の客が受付嬢にチケットを見せる。
「……きっと私を馬鹿にしているんだわ…… 汗水流して働いて本当に惨めだねって…… どうして子どもにまで馬鹿にされないといけないのよ……ねぇ」
子ども大司教が去っていく後ろ姿を眺めてブツブツと独り言を呟く受付嬢。
「おい、ねーちゃん、早く対応してくれ!」
そんな受付嬢の様子を訝しげに思いつつも、受付を催促する客の男。
「あなたもそう思うわよね!!!?」
カウンター越しに肩をガシッと掴まれ、客の男はビクンと体が跳ねる。
「な、なんだってんだ!」
「私だって頑張っているのよ!!!?」
客の男を強く揺さぶる。
「や、やめろ!あんたおかしいぞ!」
「おかしいですって!? あなたも私をコケにするのね!! こんなものっ!こうしてやるっ!!」
「おい!俺のチケット破るんじゃねぇ!!」
にわかに騒がしくなった受付を振り返ることもなく子ども大司教は上機嫌に場内へと足を進める。
適当に空いている席に座り、客席を走り回っている売り子にオレンジジュースを貰う。
第一回戦だろうか、既に闘いは始まっており、顔色の悪い陰鬱そうな生徒とガタイの良い生徒が対峙していた。
ガタイの良い男は、身体強化魔法を施して闘うスタイルのようだ。
対する陰鬱な男は、地形を変化させて沼を作り出す魔法を発動させ、相手を寄せ付けないようにしている。
ガタイの良い男は、足を取られ上手く接近できない。
時間を稼いでいる間に陰鬱な男は上級魔法を完成させ魔法を放つ。
勝負ありだ。
その瞬間、大歓声が場内を包み込む。
「うーん……退屈な試合だったなぁ……」
子ども大司教に言わせれば、闘技大会など低レベルの争いでしかない。
虫が争っているのを眺めているような感覚だった。
人間からしたら虫ケラ共がうごうごしている様子を見ても、うごうごしているとしか感じないのは当然のことである。
しかし、子ども大司教から見ると虫の争いでも、魔力の乏しい一般人から見ると上級魔法程度でも大いに盛り上がるのだ。
では何故、闘技大会に足を運んだのか。
単純な理由だ。虫は虫でもカブトムシ同士の闘いであれば、余興としては多少楽しめると思っただけだ。
本来の目的は邪神という強大な虫であり、それ以外の全ては余興でしかない。
試合が終了し、次の選手の入場を促す司会者。
退屈な試合が続くのは嫌だなと思っていると、周りがざわめき始める。
どうやら、選手の一人が現れないようだ。
司会者しきりに選手の名前を呼んでいる。
周りの喧騒で司会者の声が聞こえない。
『……いないようであれば棄権……ますが、……いらっしゃいます……ニア…………選手!』
「ん?」
司会者に自分の名前が呼ばれた気がして首を傾げる。
ニアリー・ショーター、それが彼の名だった。
すると、近くに座っていた観客の声が耳に入ってきた。
「朝起きたらいなかったんだからしょうがねぇだろ……」
「お兄ちゃん…… 学園長との約束破ったりしたら退学になっちゃうんだよね……? どうしてすぐにいなくなっちゃうんだろう……」
「大変ですわ! ニアさんが不良になってしまいましたわ!」
「まったくお主らはいつも騒がしいのぅ…… ニアの小僧なら、そこで気配をドロドロさせておるではないか」
生徒の一人がニアリーの方に顔を向ける。
その生徒を見て、子ども大司教の心臓が跳ねる。
今まで感じたことのない死の気配に冷や汗が止まらない。
こいつが邪神に違いない。
ニアリーはそう確信した瞬間、畏怖と同時に嗜虐心が膨れ上がる。
「お兄ちゃん!どこに行ってたの! 早く行かないと失格になるよ!」
大司教である自分を叱りつける少女に怒りを感じる。
声を張り上げようと大きく息を吸った直後、ニアリーは近くにいたガタイの良い少年に首根っこをガシッと掴まれ闘技場へと投げ込まれた。
「行って来いっ!!」
「うわぁぁぁあああああ!! ぐへぇ……!!」
ニアリーは受け身も取れず、地面に強かに体を打ち付ける。
「ゲホ!ゲホォッ!! なんだお前は!無礼だぞ!」
観客席の少年に文句を飛ばす。
『どうやら選手が揃ったようです!』
「なぁっ……!ちょっと待て!僕はこんな大会参加しないぞ!!」
「試合開始!!」
ニアリーの言葉は聞き入れられることなく、審判の号令により試合が開始してしまった。
(なんなんだ!! 僕はヘブンズアーク教団の大司教だぞ!! こんな無礼は許されない……!)
嵌められた……?
でも誰に……?
ニアリーが混乱していると、対戦相手の狡賢そうな顔の男が、無詠唱で拘束の魔法を発動させる。
ニアリーの体に土属性魔法の鎖が巻き付くのを見てニヤリと笑う狡賢そうな男。
彼は拘束して足を止めたニアリーに無詠唱で魔法を発動した。
「食らえぇぇえええ!!」
狡賢そうな男は普段大きな声を出す機会が少ないのだろう。
ぎこちない雄叫びを上げながら、土属性の中級魔法アイアンランスを無造作に投げ続ける。
ニアリーはこんな低レベルな魔法で本当に自分を倒せると思っているのだろうかと疑問に思うと同時に怒りが込みあげてくる。
舐められたものだ、と。
大司教である自分をこんな状況に陥れたことは、ひとまず置いておくとして、だからといって雑魚相手に好き勝手される謂れはない。
「…………僕を舐めるなあぁぁぁあああ!!」
障壁など張る必要もない。
ニアリーの身体から一気に魔力が放出される。
通常、魔力は物質に作用しない。
魔法で具現化された物質であっても同様だ。
しかしそれは通常であればの話だ。
ニアリーの放った魔力はリッチすらも上回る密度であり、それほどの練度があれば、魔力を放出するだけでも純粋な暴力装置となる。
中級魔法のアイアンランスを弾き飛ばし、その魔力を浴びた対戦相手の男は昏倒する。
ニアリーは我を忘れて昏倒した男に追撃の魔法を発動しようとする。
その瞬間、
『旨そうじゃ』
ノイズが混じったような声がニアリーの鼓膜を震わせる。
背筋に冷たい汗が落ちる。
臓器を直接握られているようなそんな感覚。
身体が無意識に震え出す。ニアリーは恐怖を感じていた。
ふと気付くと、ニアリーは暗闇の中にいた。
一寸先すら見えない深淵。
「な、なんだよこれ……」
声が震える。
直後、ニアリーの体が重くなる。
バケツの底に穴が開いているかのように魔力が抜けていく。
魔力が無理矢理に絞り出される苦痛に声を上げる。
「あああぁぁぁああああ!!やめろぉぉぉおおおおお!!」
どれだけ続いたのだろうか。
既に時間の感覚もなくなっていた。
気付けば、ニアリーは闘技場の真ん中で膝を付いていた。
荒い息を吐き、滝のように汗を流す。
『勝敗がついたようです! 勝者はニア・シスコーン選手! ニア選手が弾き返したアイアンランスがケン・セマッカ選手に直撃したのでしょうか! あまりにあっけない幕切れです!』
勝者は膝を付き、攻めていたと思っていた選手が何故か昏倒している状況に肩透かしを食らった観客席からブーイングが起こる。
しかし、この試合が常軌を逸していることに気付いている者もいた。
「魔力だけで魔法を弾くなんて本当に驚かされるよ…… ニア……あの時から更に強くなったな……」
「ちょっと!弱音なんか吐かないでよね!」
「わかっているよ。 闘うのが楽しみってだけだよ」
「アーサー君も強くなってますよ!」
「ありがとうフラン。 彼と当たるとしたら決勝だから、それまでに負けないように頑張るよ」
子ども大司教である。
「王都はすごいなぁ!大きいなぁ!」
仮面に隠されて相貌は窺えないが、その声には喜びが滲んでいた。
彼は自身の手で邪神を確保し、自身の遊び道具にしようとしていた。
簡単に外を出歩ける立場ではないのだが、子どもであるが故に自由奔放だった。
大司教である彼が好き勝手に行動しても、誰一人として咎めることはできないのである。
子ども大司教が意気揚々と王都の街を闊歩する。
現在、王都では闘技大会が開催されており、普段以上の賑わいを見せている。
通りには屋台が立ち並んでおり、物珍しそうに辺りを眺める。
屋台で見つけた美味しそうな食べ物を買い食いしては、またプラプラと祭りの雰囲気を楽しむ。
「へぇすごいねぇ!闘技場かな! きっとここで闘技大会をやってるんだよね! ……なんか所々焦げてるけど……」
スタンピード騒動の復興は進んでいるものの、街の至る所に、今もなおその爪痕が生々しく残っていた。
「面白いオモチャをゲットできるかもしれないし、ちょっと見に行ってみようかな!」
闘技場の受付に声をかける。
「お姉さん!闘技大会見たいんだけど!」
「チケットはございますか?」
どうやら闘技大会の観戦にはチケットが必要らしい。
「チケットは持ってないけど……」
「でしたら当日券を販売しておりますので、そちらをお買い求めいただければ観戦いただけますよ?」
「じゃあそれちょうだい!」
「ですが、当日券は少々割高になっておりまして……子どもには買えな……」
「必要な分だけ持って行ってよ!」
子ども大司教は腰に下げた巾着の口を開けて、コインを見せつける。
「なっ……! い、一枚だけで結構です……」
そのコイン溜まりを見た受付嬢は一瞬目を大きく開くが、流石はプロと言うべきか、自身の仕事を全うする。
「じゃあ入るね!」
お金を払うや、さっさと中に入っていく子ども大司教。
「…………あはは …………私がこんなに頑張って働いてるのに、あんなお気楽そうな子どもが大金を持っているのは不公平よ………… 世の中間違っているわ…… どうして……どうして……?」
「大人一人だ。 チケットは持ってる」
次の客が受付嬢にチケットを見せる。
「……きっと私を馬鹿にしているんだわ…… 汗水流して働いて本当に惨めだねって…… どうして子どもにまで馬鹿にされないといけないのよ……ねぇ」
子ども大司教が去っていく後ろ姿を眺めてブツブツと独り言を呟く受付嬢。
「おい、ねーちゃん、早く対応してくれ!」
そんな受付嬢の様子を訝しげに思いつつも、受付を催促する客の男。
「あなたもそう思うわよね!!!?」
カウンター越しに肩をガシッと掴まれ、客の男はビクンと体が跳ねる。
「な、なんだってんだ!」
「私だって頑張っているのよ!!!?」
客の男を強く揺さぶる。
「や、やめろ!あんたおかしいぞ!」
「おかしいですって!? あなたも私をコケにするのね!! こんなものっ!こうしてやるっ!!」
「おい!俺のチケット破るんじゃねぇ!!」
にわかに騒がしくなった受付を振り返ることもなく子ども大司教は上機嫌に場内へと足を進める。
適当に空いている席に座り、客席を走り回っている売り子にオレンジジュースを貰う。
第一回戦だろうか、既に闘いは始まっており、顔色の悪い陰鬱そうな生徒とガタイの良い生徒が対峙していた。
ガタイの良い男は、身体強化魔法を施して闘うスタイルのようだ。
対する陰鬱な男は、地形を変化させて沼を作り出す魔法を発動させ、相手を寄せ付けないようにしている。
ガタイの良い男は、足を取られ上手く接近できない。
時間を稼いでいる間に陰鬱な男は上級魔法を完成させ魔法を放つ。
勝負ありだ。
その瞬間、大歓声が場内を包み込む。
「うーん……退屈な試合だったなぁ……」
子ども大司教に言わせれば、闘技大会など低レベルの争いでしかない。
虫が争っているのを眺めているような感覚だった。
人間からしたら虫ケラ共がうごうごしている様子を見ても、うごうごしているとしか感じないのは当然のことである。
しかし、子ども大司教から見ると虫の争いでも、魔力の乏しい一般人から見ると上級魔法程度でも大いに盛り上がるのだ。
では何故、闘技大会に足を運んだのか。
単純な理由だ。虫は虫でもカブトムシ同士の闘いであれば、余興としては多少楽しめると思っただけだ。
本来の目的は邪神という強大な虫であり、それ以外の全ては余興でしかない。
試合が終了し、次の選手の入場を促す司会者。
退屈な試合が続くのは嫌だなと思っていると、周りがざわめき始める。
どうやら、選手の一人が現れないようだ。
司会者しきりに選手の名前を呼んでいる。
周りの喧騒で司会者の声が聞こえない。
『……いないようであれば棄権……ますが、……いらっしゃいます……ニア…………選手!』
「ん?」
司会者に自分の名前が呼ばれた気がして首を傾げる。
ニアリー・ショーター、それが彼の名だった。
すると、近くに座っていた観客の声が耳に入ってきた。
「朝起きたらいなかったんだからしょうがねぇだろ……」
「お兄ちゃん…… 学園長との約束破ったりしたら退学になっちゃうんだよね……? どうしてすぐにいなくなっちゃうんだろう……」
「大変ですわ! ニアさんが不良になってしまいましたわ!」
「まったくお主らはいつも騒がしいのぅ…… ニアの小僧なら、そこで気配をドロドロさせておるではないか」
生徒の一人がニアリーの方に顔を向ける。
その生徒を見て、子ども大司教の心臓が跳ねる。
今まで感じたことのない死の気配に冷や汗が止まらない。
こいつが邪神に違いない。
ニアリーはそう確信した瞬間、畏怖と同時に嗜虐心が膨れ上がる。
「お兄ちゃん!どこに行ってたの! 早く行かないと失格になるよ!」
大司教である自分を叱りつける少女に怒りを感じる。
声を張り上げようと大きく息を吸った直後、ニアリーは近くにいたガタイの良い少年に首根っこをガシッと掴まれ闘技場へと投げ込まれた。
「行って来いっ!!」
「うわぁぁぁあああああ!! ぐへぇ……!!」
ニアリーは受け身も取れず、地面に強かに体を打ち付ける。
「ゲホ!ゲホォッ!! なんだお前は!無礼だぞ!」
観客席の少年に文句を飛ばす。
『どうやら選手が揃ったようです!』
「なぁっ……!ちょっと待て!僕はこんな大会参加しないぞ!!」
「試合開始!!」
ニアリーの言葉は聞き入れられることなく、審判の号令により試合が開始してしまった。
(なんなんだ!! 僕はヘブンズアーク教団の大司教だぞ!! こんな無礼は許されない……!)
嵌められた……?
でも誰に……?
ニアリーが混乱していると、対戦相手の狡賢そうな顔の男が、無詠唱で拘束の魔法を発動させる。
ニアリーの体に土属性魔法の鎖が巻き付くのを見てニヤリと笑う狡賢そうな男。
彼は拘束して足を止めたニアリーに無詠唱で魔法を発動した。
「食らえぇぇえええ!!」
狡賢そうな男は普段大きな声を出す機会が少ないのだろう。
ぎこちない雄叫びを上げながら、土属性の中級魔法アイアンランスを無造作に投げ続ける。
ニアリーはこんな低レベルな魔法で本当に自分を倒せると思っているのだろうかと疑問に思うと同時に怒りが込みあげてくる。
舐められたものだ、と。
大司教である自分をこんな状況に陥れたことは、ひとまず置いておくとして、だからといって雑魚相手に好き勝手される謂れはない。
「…………僕を舐めるなあぁぁぁあああ!!」
障壁など張る必要もない。
ニアリーの身体から一気に魔力が放出される。
通常、魔力は物質に作用しない。
魔法で具現化された物質であっても同様だ。
しかしそれは通常であればの話だ。
ニアリーの放った魔力はリッチすらも上回る密度であり、それほどの練度があれば、魔力を放出するだけでも純粋な暴力装置となる。
中級魔法のアイアンランスを弾き飛ばし、その魔力を浴びた対戦相手の男は昏倒する。
ニアリーは我を忘れて昏倒した男に追撃の魔法を発動しようとする。
その瞬間、
『旨そうじゃ』
ノイズが混じったような声がニアリーの鼓膜を震わせる。
背筋に冷たい汗が落ちる。
臓器を直接握られているようなそんな感覚。
身体が無意識に震え出す。ニアリーは恐怖を感じていた。
ふと気付くと、ニアリーは暗闇の中にいた。
一寸先すら見えない深淵。
「な、なんだよこれ……」
声が震える。
直後、ニアリーの体が重くなる。
バケツの底に穴が開いているかのように魔力が抜けていく。
魔力が無理矢理に絞り出される苦痛に声を上げる。
「あああぁぁぁああああ!!やめろぉぉぉおおおおお!!」
どれだけ続いたのだろうか。
既に時間の感覚もなくなっていた。
気付けば、ニアリーは闘技場の真ん中で膝を付いていた。
荒い息を吐き、滝のように汗を流す。
『勝敗がついたようです! 勝者はニア・シスコーン選手! ニア選手が弾き返したアイアンランスがケン・セマッカ選手に直撃したのでしょうか! あまりにあっけない幕切れです!』
勝者は膝を付き、攻めていたと思っていた選手が何故か昏倒している状況に肩透かしを食らった観客席からブーイングが起こる。
しかし、この試合が常軌を逸していることに気付いている者もいた。
「魔力だけで魔法を弾くなんて本当に驚かされるよ…… ニア……あの時から更に強くなったな……」
「ちょっと!弱音なんか吐かないでよね!」
「わかっているよ。 闘うのが楽しみってだけだよ」
「アーサー君も強くなってますよ!」
「ありがとうフラン。 彼と当たるとしたら決勝だから、それまでに負けないように頑張るよ」
0
あなたにおすすめの小説
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる