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第四章 南大陸
拾われ子とアサシンレオウルフの群れ 後編
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「ヤベー奴が考える事を、真っ当な俺等が解る訳無くね?」
「真っ当?」
「そこに疑問持つな。そこで俺を見んな。で、そいつらは俺等を襲わないでくれんの?」
「……ガルルルル」
《スイ、――》
『……人間は脆いけど、知性があって手強い。町の外にいる奴等の中には、自分達より強い者もいる。下手に手を出せば脅かされるのは此方だから、元々縄張りに入ってきたり先に襲われたりしない限り人間は襲わない掟だったそうです』
「へぇ、アサシンレオウルフって賢いのな……。いや、悪かった。コハク」
《…………》
『死んだ仲間の事は複雑だけど、元に戻す方法を自分達は持ってなかったからこれが最善だと思ってる、と言ってますが……』
失言をしたニコラスを睨むコハクの隣で、スイはアサシンレオウルフのボスに顔を向けた。
『君の仲間達は死んでないよ』
「……ガル……?」
首を傾げたボスに、コハクが倒れたアサシンレオウルフ達をよく見るように告げる。
アレックスとニコラスも、漸く笑顔を浮かべながら息を吐いた。
「俺等、一匹も殺してねぇよ」
「キツかったね。殺すよりも生かす方が難しいって言うけど、この数の強いモンスター相手に実践するのは大変だった」
「……キュー……ン……」
「……!?」
地面に倒れていたアサシンレオウルフ達が動き始めた。それを見てボスは気付く。血の匂いも量も、極端に少ない事に。
「スイが言ったんだ。何かのっぴきならない理由があるかもしれないから、話を聞くまでは出来れば殺さないでくれって」
『今なら何とか出来るかもしれません。ザクロ、降りてこれる?』
「ハーイ!」
「…………ガルゥ」
空から降りてきたザクロを見て、アサシンレオウルフ達がそわそわし始めた。中には涎を垂らす個体もいる。
「ピャッ……!?」
《食っちゃ駄目だぞ。オレとスイが怒る》
「…………ガルッ」
「今葛藤が見えたな」
『ザクロ、このコ達の状態異常を解けるかな? 前みたいな幻覚じゃないし、数も多いけど……』
「ワ、ワカンナイケド、ヤッテミル」
ピュルルルル、と綺麗な声が響く。一匹のアサシンレオウルフが立ち上がるとニコラスは構えたが、その一匹は落ち着いた眼でスイ達を見つめた。
その後も何匹か起き上がり、それぞれの群れに戻っていく。
『良かった……。ありがとう、ザクロ』
「マジで? ザクロってそんなスキルあんの? ただのすげー喋れるメッセージバードじゃなかったのか」
「ムフー!」
「やたら多いなとは思ってたけど、ひとつの群れじゃなくて幾つかの群れの集まりだったんだね」
スイはアイテムポーチから魔力水を取り出すと、蓋を開けて口に含んだ。
飲み干し、空の瓶をポーチに入れて一匹のアサシンレオウルフに近付く。少しふらつきながら警戒しているその個体に、スイは治癒魔法を掛けた。
アサシンレオウルフは癒えていく傷と引いていく痛みに驚き、身体とスイを交互に見る。
『余裕無くて思いっきり剣や魔法で殴っちゃったから……もう痛くない? 大丈夫?』
「……は? 待てって、スイ。こいつら全部治す気か……!?」
『はい』
「馬鹿、魔力枯渇するぞ」
『大丈夫です。魔力水はまだいっぱいあるので』
「魔力水はがぶ飲みするもんじゃねーよ! そこまでするか……!? いや、しそうではあるけど……」
「ニコも解ってきたじゃん。じゃ、アタシも手伝うか」
「え、アレックスも治癒魔法使えんの?」
「いや、使えないよ。だから――」
アレックスはアイテムポーチに手を突っ込むと、掴めるだけ回復薬を取り出した。
「回復薬で治す」
「勿体無っ!」
「そーいう事言わない。強制はしないからニコは黙って見てなよ。ほい、ちょっと滲みるかもしんないけど我慢してね」
回復薬を掛けられたアサシンレオウルフは驚いて身体を引き、毛繕いを始める。だが自分の身体が癒えていくのを感じると、アレックスに頭を擦り付けて感謝の意を表した。
「え、すっごい可愛い……。アタシもアサシンレオウルフと旅したい」
「ちょろすぎだろ。ったく、仕方無ぇなー……」
ニコラスも回復薬を取り出して一匹ずつ掛けていく。
全員の傷を治すと、アサシンレオウルフのボスはスイとコハクに近付いた。
「ガルルルル、ガルルッ」
《皆を助けてくれた事に感謝するって》
『どういたしまして。もう旅人を襲わないんだよね?』
「ガルゥッ」
《さっき言った通り、そっちが先に仕掛けてこなければ》
『……うん、解った。ギルドに言って町の人達に伝えてもらうよ』
従魔と言う例外はあるが、基本的に人間とモンスターは共存共生は出来ない。互いに不可侵を守る事が最大にして唯一の譲歩である。
それを破った者がどんな目に遭っても、文句は言えない。
『……納得してもらえるかは解らないけど……』
「そうだね。家族や大切な人を殺された人達の中には、アタシらのやった事に不満を持つ人もいるかもしれない」
「仇討ちを期待してた奴等もいるだろうしなぁ。まぁ、一般人がアサシンレオウルフに立ち向かえる訳も無いし、その辺に関してはギルドが上手く抑えてくれる事を祈ろうぜ」
「よし、そろそろ帰ろうっ。疲れたぁー」
「おー、賛成」
ぐーっと空に向けてアレックスが腕を伸ばす。その突き出された胸に向けられた手が、身体強化で強化された握力で掴まれる。
「ニコ?」
「ゴメン。完全に無意識」
「歯を食いしばれ?」
「ゴメンって! 未遂だから許し――痛ぇっ!!」
背後から鈍い音が聞こえて、スイは今日何本目かわからない魔力水を取り出しながらアサシンレオウルフのボスに眼を合わせた。
『……人間が、ごめんね』
「ガルゥ」
《それは此方も言える事だ》
『……そっか。じゃあ、私達は行くよ。元気でね』
手を振って、スイは背を向ける。魔力水を飲むとニコラスの方に小走りで向かっていった。
『リンゴほっぺになってますよニコさん……治しますね』
「おー、ありがとなスイ。でも俺、ちょっとだけ火属性もあるから回復薬の方がいーな」
『わ! 危なかった……じゃあ回復薬で』
「あー……しみる」
「スイの優しさが? それとも回復薬が?」
「どっちも」
《(あいつ、やっぱり馬鹿だな)》
「おい。お前、コハクと言ったか」
《?》
ニコラスに呆れた眼を向けていたコハクは、背後から呼び止める声に振り返る。自分と似た姿を持つ相手の眼はスイを見ていた。
「人間の子どもに従うなんて腑抜けた奴だと思っていたが、そんな事無かった。お前は強いし、お前の主……スイも強くて良い奴だな」
《そうだろ。オレの自慢の主で、友達だ》
「トモダチ?」
《えっと……仲間?》
「そうか、じゃあ我等もスイとコハクのトモダチだ」
ガウガウ、グルグルとアサシンレオウルフ達がそれぞれ尻尾を振って共感の声をあげる。
《ありがとう。伝えておく。じゃあな》
コハクは走ってスイ達に追い付くと、スイの隣を歩く。
トモダチの姿が見えなくなるまで、アサシンレオウルフ達はその背中を見送っていた。
「真っ当?」
「そこに疑問持つな。そこで俺を見んな。で、そいつらは俺等を襲わないでくれんの?」
「……ガルルルル」
《スイ、――》
『……人間は脆いけど、知性があって手強い。町の外にいる奴等の中には、自分達より強い者もいる。下手に手を出せば脅かされるのは此方だから、元々縄張りに入ってきたり先に襲われたりしない限り人間は襲わない掟だったそうです』
「へぇ、アサシンレオウルフって賢いのな……。いや、悪かった。コハク」
《…………》
『死んだ仲間の事は複雑だけど、元に戻す方法を自分達は持ってなかったからこれが最善だと思ってる、と言ってますが……』
失言をしたニコラスを睨むコハクの隣で、スイはアサシンレオウルフのボスに顔を向けた。
『君の仲間達は死んでないよ』
「……ガル……?」
首を傾げたボスに、コハクが倒れたアサシンレオウルフ達をよく見るように告げる。
アレックスとニコラスも、漸く笑顔を浮かべながら息を吐いた。
「俺等、一匹も殺してねぇよ」
「キツかったね。殺すよりも生かす方が難しいって言うけど、この数の強いモンスター相手に実践するのは大変だった」
「……キュー……ン……」
「……!?」
地面に倒れていたアサシンレオウルフ達が動き始めた。それを見てボスは気付く。血の匂いも量も、極端に少ない事に。
「スイが言ったんだ。何かのっぴきならない理由があるかもしれないから、話を聞くまでは出来れば殺さないでくれって」
『今なら何とか出来るかもしれません。ザクロ、降りてこれる?』
「ハーイ!」
「…………ガルゥ」
空から降りてきたザクロを見て、アサシンレオウルフ達がそわそわし始めた。中には涎を垂らす個体もいる。
「ピャッ……!?」
《食っちゃ駄目だぞ。オレとスイが怒る》
「…………ガルッ」
「今葛藤が見えたな」
『ザクロ、このコ達の状態異常を解けるかな? 前みたいな幻覚じゃないし、数も多いけど……』
「ワ、ワカンナイケド、ヤッテミル」
ピュルルルル、と綺麗な声が響く。一匹のアサシンレオウルフが立ち上がるとニコラスは構えたが、その一匹は落ち着いた眼でスイ達を見つめた。
その後も何匹か起き上がり、それぞれの群れに戻っていく。
『良かった……。ありがとう、ザクロ』
「マジで? ザクロってそんなスキルあんの? ただのすげー喋れるメッセージバードじゃなかったのか」
「ムフー!」
「やたら多いなとは思ってたけど、ひとつの群れじゃなくて幾つかの群れの集まりだったんだね」
スイはアイテムポーチから魔力水を取り出すと、蓋を開けて口に含んだ。
飲み干し、空の瓶をポーチに入れて一匹のアサシンレオウルフに近付く。少しふらつきながら警戒しているその個体に、スイは治癒魔法を掛けた。
アサシンレオウルフは癒えていく傷と引いていく痛みに驚き、身体とスイを交互に見る。
『余裕無くて思いっきり剣や魔法で殴っちゃったから……もう痛くない? 大丈夫?』
「……は? 待てって、スイ。こいつら全部治す気か……!?」
『はい』
「馬鹿、魔力枯渇するぞ」
『大丈夫です。魔力水はまだいっぱいあるので』
「魔力水はがぶ飲みするもんじゃねーよ! そこまでするか……!? いや、しそうではあるけど……」
「ニコも解ってきたじゃん。じゃ、アタシも手伝うか」
「え、アレックスも治癒魔法使えんの?」
「いや、使えないよ。だから――」
アレックスはアイテムポーチに手を突っ込むと、掴めるだけ回復薬を取り出した。
「回復薬で治す」
「勿体無っ!」
「そーいう事言わない。強制はしないからニコは黙って見てなよ。ほい、ちょっと滲みるかもしんないけど我慢してね」
回復薬を掛けられたアサシンレオウルフは驚いて身体を引き、毛繕いを始める。だが自分の身体が癒えていくのを感じると、アレックスに頭を擦り付けて感謝の意を表した。
「え、すっごい可愛い……。アタシもアサシンレオウルフと旅したい」
「ちょろすぎだろ。ったく、仕方無ぇなー……」
ニコラスも回復薬を取り出して一匹ずつ掛けていく。
全員の傷を治すと、アサシンレオウルフのボスはスイとコハクに近付いた。
「ガルルルル、ガルルッ」
《皆を助けてくれた事に感謝するって》
『どういたしまして。もう旅人を襲わないんだよね?』
「ガルゥッ」
《さっき言った通り、そっちが先に仕掛けてこなければ》
『……うん、解った。ギルドに言って町の人達に伝えてもらうよ』
従魔と言う例外はあるが、基本的に人間とモンスターは共存共生は出来ない。互いに不可侵を守る事が最大にして唯一の譲歩である。
それを破った者がどんな目に遭っても、文句は言えない。
『……納得してもらえるかは解らないけど……』
「そうだね。家族や大切な人を殺された人達の中には、アタシらのやった事に不満を持つ人もいるかもしれない」
「仇討ちを期待してた奴等もいるだろうしなぁ。まぁ、一般人がアサシンレオウルフに立ち向かえる訳も無いし、その辺に関してはギルドが上手く抑えてくれる事を祈ろうぜ」
「よし、そろそろ帰ろうっ。疲れたぁー」
「おー、賛成」
ぐーっと空に向けてアレックスが腕を伸ばす。その突き出された胸に向けられた手が、身体強化で強化された握力で掴まれる。
「ニコ?」
「ゴメン。完全に無意識」
「歯を食いしばれ?」
「ゴメンって! 未遂だから許し――痛ぇっ!!」
背後から鈍い音が聞こえて、スイは今日何本目かわからない魔力水を取り出しながらアサシンレオウルフのボスに眼を合わせた。
『……人間が、ごめんね』
「ガルゥ」
《それは此方も言える事だ》
『……そっか。じゃあ、私達は行くよ。元気でね』
手を振って、スイは背を向ける。魔力水を飲むとニコラスの方に小走りで向かっていった。
『リンゴほっぺになってますよニコさん……治しますね』
「おー、ありがとなスイ。でも俺、ちょっとだけ火属性もあるから回復薬の方がいーな」
『わ! 危なかった……じゃあ回復薬で』
「あー……しみる」
「スイの優しさが? それとも回復薬が?」
「どっちも」
《(あいつ、やっぱり馬鹿だな)》
「おい。お前、コハクと言ったか」
《?》
ニコラスに呆れた眼を向けていたコハクは、背後から呼び止める声に振り返る。自分と似た姿を持つ相手の眼はスイを見ていた。
「人間の子どもに従うなんて腑抜けた奴だと思っていたが、そんな事無かった。お前は強いし、お前の主……スイも強くて良い奴だな」
《そうだろ。オレの自慢の主で、友達だ》
「トモダチ?」
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「そうか、じゃあ我等もスイとコハクのトモダチだ」
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《ありがとう。伝えておく。じゃあな》
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