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第一章 外界編

六話 光の刃

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「入学式が終わり、授業が始まって────3日目からサボるって、どういうことですか?」
「いや、ほんとそれはすいません」
俺は深々と頭を下げる。
俺は水谷と万物と戦った次の日、俺は疲労と筋肉でぶっ倒れていたため、体が動かず、学校を休んでいた。重篤の万物とその見舞いに行く姉貴も然り。
そのことでHRが終わった今、職員室に来ていた。
「……お姉さんと一緒に休んでたからなにかしらの事情はあるんでしょうけども、それがあるなら先生に言うなりしてください」
やれやれといった感じに言ってくる
変な解釈のされかたされてしまった。まあ俺にとって都合がいいからそれでいいや。別に詳細を教師に説明する義理はない。てか大物会社の御曹司をシバいて重症にした挙げ句の果に自分もぶっ倒れるとか笑えない。
万物は多分全治1ヶ月とかかかるだろ。爆発の傷が割と深かったからな。俺は波動のガードがあったからそこまで重いダメージを喰らわなかったが、あいつはガードが無い状況で粉塵爆発をもろに喰らったからな。
ご愁傷さまでした
あれはあいつの自業自得だ、俺は知らん
だから俺は教師には何も言わん
俺みたいな神無月の末裔なんかには超大物会社の御曹司の万物様には勝てんよ、権力的な意味で。
あいつの自業自得だとしても俺のせいにされかねんからな。
「いや、すいませんでした。何も言わずに」
もう一度頭を下げる
「それと。目、どうしたんですか?」
担任は俺の眼帯を指さした
「ああ。怪我です」
鉄柵云々かんぬんは言うと後々めんどくさくなる未来が見えるので省略した
「わかりました。お大事に。もういいです、教室に戻ってください」
呆れた顔のまま告げてくる先生
俺はもう一度頭を下げた後、職員室を退出した


「あんたねえ……」
教室のドアを開けると、一つの視線が飛んできた
今は休み時間のようだ。みんながワイワイしている
…ん?友だちになるの早くね?
そんなことを思いながらとあるやつの席に向かう
「なにか文句でも?」
そいつの机に腰を落とす
「文句もクソもこんな早くから授業をサボるなんて、感心できないわよ」
「お前変な勘違いしてんだろ」
俺は深く腰掛ける
「てか、その眼帯―――」
「…1の刻印だ、察しろ」
キリッと睨んで返す。
「…なるほどね」
そいつは俺の視線に納得を示したように頷いた
こいつは水谷氷華だ。近くにはあのロング髪の女も居る
「…げ、ロング髪」
俺は低い声で言った
「……京極……疾雷……」
ロング髪の女の髪が馬鹿みたいに低い声と共に逆撫でられる
まるでスーパーサ○ヤ人みたいだ。
呑気なことを考えているとハサミがどこからともなく飛んでくる。
なんかハサミが浮いた後こちらに投げられたとしか思えないのだが。空中から飛んできたんか?としか思えない
俺はそのハサミを手で受け止めようとするがハサミは手を貫通する―――
なんてこともなく、ハサミは雷の波動によって手から発生する磁力によって手にくっついた。
「あぶな」
棒読みで言う
ハサミの刃の部分を身体強化をっ手にかけて握って破壊する。
「…水谷、なんなんだこのロング髪の女は。急にハサミを投げてくるとはこええじゃあねえか」
机から降りてそういう。
「私のセリフだ!お前は誰だ!」
クラスの騒ぎに負けないくらい大きな声で叫ぶロング髪
「……疾雷。この子は神楽麗子かぐられいこよ。麗子、こいつは京極疾雷よ。」
「こいつがあの京極家の息子なわけ無いだろ!」
また叫ぶ神楽とやら。うるせぇと思った
「……あのよぉ。家柄とかどうでもいいだろ、お前男嫌いなだけだろ」
思ったことをストレートに言う。
歯ぎしりをする神楽。あーうっせえなあとボケ―っと思う
顔がだんだん赤くなっていく。
「ちょ、落ち着いて、ふたりとも……」
水谷が慌てて俺らを止めに入る。
「落ち着いてるさ。俺はな。そこの神楽さんが勝手に切れ散らかしてるだけだ」
「私の名を気安く呼ぶな!」
「じゃあ昼休みに屋上に来い、水谷。」
俺はひらひらと手を振る。腕時計を見る。授業開始は50分。今は45分。次の授業は歴史だ。準備をせなばな。
ということで俺は自分の席に戻り、カバンの中から授業で使う歴史のテキストと資料集を取り出す。
どこからかとんでもない殺気を感じるが無視する。あの神楽とかいうやつ。本当に男が嫌いなんだな。単純に。
なお俺のことは殺害願望を持つレベルで。ご無体な~
まあ昼休みだな。とりあえずは。
そんなことを思いながら授業のチャイムを聞いた。






「……………」
「あーうめ」
俺は笑顔で飯を食う。
姉貴が作った弁当だ。中身は焼き鮭、米、卵焼きetc…
ブラックコーヒーを飲みながら食う弁当は美味いとは思わないだろうか
屋上で風に当たりながら鮭を箸でつまんで食う
「…氷華。なんでこいつが」
「いや、貴方達には仲良くなってほしいし…」
フェンスにより掛かる。後ろを見ると、葉桜があった。綺麗だな、全く。
葉桜はなにかを感じる。綺麗とか美しいとかじゃなくて
なんかこう、見ていると別の世界にひこまれる感じがする。俺はそれが好きだ
ということで葉桜は意外に好きである
「……無理だ。私は男が生理的に無理だ」
「なにが生理的だ犯すぞ」
「話をややこしくしないでくれない!?」
「冗談だ」
「このッ…!」
自覚はある、やべーセクハラしたってのは。
個人的にはシバかれて終わる気がする。
次の瞬間、急に何かが俺の腹にぶっ刺さった。なぜか痛みはなかった
やべ、フラグ立てた。俺死ぬかも~
よく見たらナイフだった。ナイフ?ハサミじゃなくて?
俺は純粋に疑問に思った。
血は?…少し出てるな。浅く刺さってる。少々笑えないな
「ふん」
神楽の声が聞こえる。なんだあいつ誇らしげにしやがって……
腹にナイフが突き刺さっても腹の虫はおさまらない。
ナイフを引っこ抜くと血が大量に流れる可能性があるため抜きたくない。
てかまた空中から攻撃が来た気がする。姿が見えなかったが、誰かが投げたとしか思えん。
……姿が見えない?
今のナイフは神楽が投げたわけがない。
姿
「おい!誰だ!そこに居るのは!」
俺は弁当を置いて叫ぶ。
食ってる途中だが、仕方ない、戦闘とはいついかなる時にでも発生しうるものだ。
神楽の反応的に、あいつが関わってるのは確実だ。
ただし神楽自身がナイフを投げるのはできるのか?
もしあいつ自身が投げたならば、俺にナイフを当てるのが可能な能力は、空間を捻じ曲げる能力くらいしか無いだろう。
流石に不自然すぎる。あいつは俺の2つ隣に居るのだ。そこから俺に直撃する攻撃を出すのは見え見えすぎる。そんなことわざわざするか?あいつ自身が武器を操るとか空間を捻じ曲げるとかなら……
ナイフなんか使わないでもっと殺傷能力の高い武器を使うだろう。空間を捻じ曲げるならばこういうことをするのもあるだろうが、それなら直接叩けばいいだけだ!
俺は雷の波動で神楽を叩こうとする。
そのために俺は強めの雷の波動を空中から射出するが―――
神楽を見ると、傷一つ負っていなかった。
なにか、その波動は軌道が曲がっていた
俺はその場に座り込む。
そして再度弁当を手に取った。
「…疾雷?」
氷華が心配そうに聞いてくる
「…?」
こいつ、俺を心配してるらしいがどうも様子が変だ
だってこいつ、俺の顔を見ているんだぞ

恐る恐る腹を見ると、ナイフはどこにもない。血も流れてない。
……なんだったんだ、今の
「どうしたの疾雷。急に叫んで」
俺ははあ、とため息をつく
「なんでもない。視線を感じただけだ。ただ誰も居なかったようだがな。そうだろう?神楽麗子」
「人の名をッ…!」
「落ち着いて!」
激昂する神楽を取り押さえる水谷。神楽はもう飯を食べ終わったらしい
……どうにもわからんな。なんだったんだ今の。まるでホルスのようなやつだったな。もしあの攻撃が本物だとしたら
腕時計を見て急いで飯を掻き込む。そろそろ授業が始まってしまう
「……なんだ、この能力」
ポツポツと言葉を吐く
まるで幻覚を見た感覚だ
ナイフが刺さったという幻覚。
わけがわからん
幻覚を見せるスキルだとでも言うのか?
…わからねえな、全く
俺は飯を食い終わって、屋上をさっさと出て教室に向かった






俺は放課後病院に来ていた
「元気か?クソ副委員長」
俺の問いかけにベッドに横たわる男がうめいた
「…元気に見えるかい?」
俺はその言葉にフン、と鼻を鳴らす
「反論できるなら元気だな」
「…君ねえ…おっと」
包帯でぐるぐる巻きの副委員長、万物の体に俺は袋を投げた。万物はそれをキャッチする
ちなみに万物は腕は無事なようだ。包帯をしているのは被弾した胴体と足だけらしい。…ほんと、腕生きててよかった。これで腕も被弾してたら普通に罪悪感が半端なかった
一応こいつ高校3年生だからな、受験勉強したいだろう
「…これは」
袋の中を見て驚く万物
「慰謝料代わりだ、受け取れ」
万物は袋から箱を一つ取り出したその箱はいかにも高そうだ
「ロレックスだ」
俺がもらった小遣いで買った50万のロレックスだ
なんで小遣いがこんなにあるのかって言うと、お年玉を溜め込んであるからである
使い道が本くらいにしか無いのでね、あまり消費しないのだよ
あと姉貴と一緒に金を払ったってのもある
姉貴が『私も払うわ!』と言って聞かなかったためしぶしぶ金を出させた(なんなら本当はもっと安い時計を買うはずだったのに、姉貴の意向でロレックスになった)
「…受けっとっても」
不思議そうに聞いてくる万物俺は少し笑った
「でけえ企業の御曹司様が50万円程度でビビるな」
あと、と一拍おいて俺は話し出す
「お前に聞きたいことがある」
ベッドのそばにあるパイプ椅子に腰掛ける
「聞きたいこと?」
「ああ」
俺は持参したゾーン(キャップ付き)を一口飲む
「…幻覚を見せるスキルって、ある一人にだけ幻覚を見せることは可能か?」
「…なるほど」
顎に手を当て目を閉じて考える万物。そしてやがて目を開き答えた
「…わからないなあ…使ったことも使われたこともないなあ。ただ、もし君にしかその幻覚とやらが見えないなら、幻覚じゃなくて目に写る光を変えたのかもね」
「…目に写る光を変える?」
理解できなかった為問い返す
「一応俺はそういうスキルと戦ったことがある。そいつは俺の目に入る光の情報を変えたんだ。たとえば、ほんとうは見えるはずの存在を見えなくさせたり、その逆をさせたり」
「なるほど」
ふんわりと理解できたような気がする。
つまり俺は光の情報を変えられ、体にナイフが刺さっているという錯覚を覚えたということか
もしあいつのスキルが光を改変するスキルなら、それが可能だ。幻覚を操るスキルなのかもしれんがな。
…ただ、ますますわからなくなってきたな。いい情報を得られたっちゃ得られたけど、戦ってみなければ真実はわからなさそうだな
「ありがとよ。お大事に」
「こちらこそ」
俺は手をひらひらと振って病室を出た









次の日の昼休み、俺ら三人はまた昨日と同じ並びで屋上に居た。
ちなみに飯は食い終えている
「……神楽麗子…」
やはり気になる
結局こいつのスキルはどっちなんだ?
もし第三の選択肢があるならどんなスキルなのだろうか
「疾雷、どうしたの?そんな深刻そうな顔して。昨日から変よ?」
昨日と同じように心配してくる氷華。やはり何も知ら無さそうだ。昨日のことも。
「…気にするな」
俺が変なのはお前の隣に居る神楽麗子のせいだ。変なスキルを持つ神楽が悪い
『……しっかし変ねえ。ここには三人しか居ないのに』
急にホルスの声が聞こえてくる。流石にホルスの姿を二人に見せたり存在を示唆するわけにも行かないので
(は?)
と心のなかで呟いた。どういうことだ、三人しか居ないって
『だってここにある気配は四つだもの。私を除いて。…さっき屋上を探し回ったけど、もう一つの気配らしき人物は居なかったわ』
(つまり?)
俺の心を読んだかのようにホルスが答える
『私のように姿を隠せるやつが居るのよ、ここに。』
俺は目を見開く。
(気のせいじゃあ無いのか?)
『…ええ。多分気の所為よ。おおかた、神楽ちゃんの中に誰かの能力が宿ってるとかじゃあないかしら』
誰かの能力が宿っている?
お前ホルスみたいな感じか?)
『ええ、そうね。なんなのかしら。神様でも宿ってるのかしらね?』
(ええ……)
困惑する。えなに?この世には人間に宿る神が何人も居るのか?
「ふふふ…」
神楽が不気味な笑みを浮かべる
「なんだ?やんのか?」
俺は立ち上がった。食事後の運動くらいにはなるだろう
「……ふふふ。お前じゃあ私に勝てない。」
神楽も立ち上がった
「氷華に勝ったってのも嘘なんだろう」
「ああ嘘だ」
俺はあくまでも真実を述べる。
俺は勝ってない。あの勝負は俺の負けだ。水谷が綺麗に俺から逃げ切ったのだ、潔く負けを認めよう。
次の瞬間、急に前方からナイフが飛んでくる。
これが幻覚なら俺を通り過ぎると思うが―――
ナイフはしっかりと俺の腹に刺さった。血もでる。氷華はそれに気づいていない。
…今わかったぜ
「京極疾雷。お前はそのナイフを引っこ抜けるか?私はいくらでもナイフを作れるし、お前に刺せる。私の勝ちは揺るぎない…氷華を騙したクズ野郎が。死ね」
勝ち誇ったような笑みを浮かべる神楽
水谷は困惑したような顔を浮かべる。
たしかに俺にはナイフを抜くことはできない。
しかしこの攻撃はあくまで精神的ショックを与えるためのものであり、相手に自分は勝てないと考えさせたり、恐怖を植え付けるために行ったものだろう。
だからこそ神楽は勝ち誇ったのだ。精神的ショックを俺に与えたから
しかし
「お前のスキル程度、見破れないとでも思ったかこのタコ」
俺は一歩踏み出す。
「このナイフは本物じゃあねえからな」
俺は拳を握り、雷の波動を集める。そして俺は水谷の前をゆっくり通り過ぎ、神楽の前方1m程度のところで止まった。
「何やってるんだあ?もうお前は何しても無駄なんだよ!」
ワハハ、と笑う神楽。
俺はそれを無視し、拳を引く
そして。
「フン!」
拳を前に突きつける。前方に雷の波動が空を駆けていく。
「うがああああ!!!!」
神楽は叫び声を上げる。弱めの波動で殴ったため致命傷にはなってないはずだ。
神楽はその場に座り込む。
「麗子!?どうしたの!?」
氷華が叫ぶ。
腹を見ると、血とナイフは消えていた。あいつがダメージを受けたことでスキルが消えたのだろう
「…神楽麗子。お前のスキルは、光の情報を操るスキルだ。…万物から話を聞いといてよかったぜ」
俺は神楽麗子に近寄る。神楽はうっすら目を開き、上目で俺を睨む
「こ、この―――」
「お前の言ったことをそっくりそのまま返してやる」
俺は勝ち誇った顔で
「もう俺の勝ちは揺るぎない」
そういった瞬間、急にドン!という音が聞こえた
それとともに、空間が、揺れた
「!?」
俺は驚いて後ろに跳ぶ。着地すると、目の前に黒い光が見えた
上を見上げると、それは天から繋がってきていた
「疾雷!」
ホルスが姿を現す
「馬鹿野郎!なに姿を―――」
「あぶなーい!!!!!!!!」
ホルスは叫んで俺を抱えて後ろに突き飛ばす。
体の位置が低くなり、地面と体が水平になった状態で吹っ飛ぶ
次の瞬間。
俺の頭がある位置くらいに黒い光線が一直線に走った。
「!?」
地面に着地する。ズザーっと言う音とともに地面を少し滑り、背中に痛みが走る
立ち上がるときには光線は消えていた。
「ぐ…」
神楽のうめき声が聞こえる
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
そして次に叫び声が聞こえ、すぐに途絶えた
「麗子!?麗子ォォォォォォ!!!」
水谷の叫び声。
その時、黒い光が消えた
「……お前は!」
ホルスが叫ぶ。
光のあった位置に立っていたのは、人間とはとても思えない生き物だった。
背中から漆黒の羽が生え、全身に真っ黒の服を纏い、体から黒いオーラを発する
そして―――頭の上に黒い輪っか。
その姿は、まるで
「…天使……」
天使のようだった。その生き物は手を広げ、そこに力を集め、こちらに光線を撃ってくる。
俺はそれを左に跳んで避けた
「…お前は!」
ホルスがもう一度叫んだ。今度はさっきより大きな声で
そして、ホルスはさらに叫ぶ。
そいつの名を。
この生き物―――化け物の名を



「ルシファー!!!!!!!!!!!!」




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