【完結】 悪役令嬢が死ぬまでにしたい10のこと

淡麗 マナ

文字の大きさ
10 / 107
第一章 死ぬまでにしたい10のこと

10話 告白

しおりを挟む
 朝早く目覚めて、本を開いた。
 【公爵令嬢ヴァイオレットは今日も涙をひた隠す】という小説だ。
 仮面作家が出していて、ファンレターはマルクール王国の本屋が窓口になっている。わたくしは何度も手紙を書いた。


 小説の内容はこうだ。


 最初、ヴァイオレットは余命宣告を受ける。彼女は他の公爵令嬢と王太子妃の座を競っていた。
 ある日、ヴァイオレットが汚い手を使って相手の公爵令嬢をいじめているという噂を立てられた。


 それは相手の公爵令嬢の仕業だった。


 誤解されたヴァイオレット。余命わずかの自分は、そうまでして、王太子妃になりたいわけではないと気づく。せっかく王太子妃となっても死んでしまうのなら、王太子の為、身を引くべきではないかしら。

 そして、ヴァイオレットのライバル令嬢はそこまでしてでも、王太子を手に入れたいほどに好きなのだとわかる。

 ヴァイオレットは、死ぬまでにしたい10のリストを作り、実行していく。

 わざと王太子に嫌われることで、ライバル令嬢とくっつけようとさえした。

 そうして、ライバル令嬢の策略にハマり、無実の罪を着せられて断頭台へといくヴァイオレット。

 そこで、見事な大演説を行う。
『わたくしの名はヴァイオレット! 大悪役令嬢です。あなた方が聞いた醜聞、悪評、噂はすべてほんとうのことです。なぜなら、わたくしは邪神に魅入られた令嬢なのですから』
 
 それを見ていたライバル令嬢は笑った。勝利の笑みだった。ヴァイオレットは笑いかえす。

 真実を話さず、礼をのべて散っていくヴァイオレット。


 その後、ヴァイオレットを好きだった令息によって、ライバル令嬢の悪事は暴かれ、ライバル令嬢も断頭台へ。

 泣きわめき、命乞いをして、死んだヴァイオレットに罪をなすりつけ死んでいく。

 王太子や、みんなはヴァイオレットのことを悔やむ、やがてヴァイオレットが余命幾ばくもなかったことが医師から明かされる。

 王太子とヴァイオレットは次の世界で共に生まれ変わった。余命もない、自由な世界に生き、王太子と幸せに結ばれるヴァイオレット。




 わたくしはハンカチで涙を抑える。
 この話が好き過ぎるのは、自分のことだと思ってしまうからだ。
 多くの部分が違っている。それでも、たしかに自分のことが描かれているとわかる。
 わたくしも、ヴァイオレット様と同じ立場なら、きっと同じことをするだろう、と。
 
 ただし、わたくしは無実の罪を着せられたら、否定するだろう。ヴァイオレット様みたいに綺麗には生きられない。


 わたくしは静かな部屋で、何度もヴァイオレット様が悪役令嬢のふりをする部分を読んだ。




 登校前。門にはやはり騎士のジェイコブがいない。
 婚約破棄されてしまったから、王城に呼び戻されたのだろう。
 
 お別れの挨拶も言えなかった。時間を見つけて、会いに行こう。

 ――いや。このままにしよう。わたくしはもうすぐ死ぬ。ジェイコブも新しい場所でわたくしを忘れて仕事に邁進してもらったほうがいい。彼は騎士爵位の叙爵を楽しみにしていた。




 学校についた。馬車止めから教室に歩いて行く。
 王家の馬車から殿下たちが降りてくる。バルクシュタインも一緒だ。
 
 アラン殿下は見るからに元気がなさそうだ。ブラッド殿下も、いつものさわやかさはなく、目の下のクマがすごい。

「ごきげんよう。アラン殿下、ブラッド殿下、バルクシュタインさん」

「ごきげんよう。アシュフォード様。本日はダンスの件、よろしくお願いいたします。ハンカチはいつもよりも多めに用意しています」
 バルクシュタインは肌つやがよく、元気だ。

「おはよぅ……。フェイトさん。ね、ねむい……立ったまま、寝ることができそう……だ」
 ブラッド殿下の目がぐるぐる回っている。大丈夫、ではなさそうだ。

 アラン殿下は手をあげただけだった。

「リリー。ダンスとはなんのことだ」
「アラン様。本日よりアシュフォード様とダンスの特訓をします」
 手袋をつけ、リリーと手をつなぐ殿下。

「アシュフォード嬢に迷惑をかけぬことだ」
 アラン殿下はちらりとわたくしを見たような気がしたが、気のせいかもしれない。
「心得ています」
 アラン殿下たちは教室に向かう。

「あの。アラン殿下。おからだに気をつけてください」
 わたくしは余計なお世話だが言ってしまう。

 後ろ姿の殿下は首をかたむけ、すこしだけ、手をあげた。

「婚約破棄されて、すでに新しい女を連れてる兄を嫌いになるほうが普通だと思うんだけど。なんで様々な感情が入り乱れたような顔をしているの」

 近い! ブラッド殿下が超至近距離でわたくしの目をのぞき込んでいる。いや、そこをのぞいても答えなんて書いておりませんよ。

「正直なところ、忘れたり、違う方を向いて歩けたら、どれだけいいかと思います」

 アラン殿下とバルクシュタインの後ろを歩く。

「忘れた方がいい。フェイトさんはいま、いいなぁって思う男性はいるの」


 わたくしが思い浮かぶのは、3ヶ月後に死ぬわたくしだけ。

「ぱっとは浮かびませんね。ずっと王太子妃になるものだとばかり思っていましたから」

 ブラッド殿下はわたくしの正面に立つ。こちらが燃えてしまいそうな熱い視線です。

「僕はフェイトさんに婚約を申しこみたい」
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~

marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」 「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」 私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。 暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。 彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。 それなのに……。 やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。 ※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。 ※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

数多の令嬢を弄んだ公爵令息が夫となりましたが、溺愛することにいたしました

鈴元 香奈
恋愛
伯爵家の一人娘エルナは第三王子の婚約者だったが、王子の病気療養を理由に婚約解消となった。そして、次の婚約者に選ばれたのは公爵家長男のリクハルド。何人もの女性を誑かせ弄び、ぼろ布のように捨てた女性の一人に背中を刺され殺されそうになった。そんな醜聞にまみれた男だった。 エルナが最も軽蔑する男。それでも、夫となったリクハルドを妻として支えていく決意をしたエルナだったが。 小説家になろうさんにも投稿しています。

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

処理中です...