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第二章 死ぬまでにしたい【3】のこと
59話 そうだ、魔女に会いに行こう!⑦これが、私が思い描くハッピーエンド
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ロレーヌ様の巨大な手では、ミニチュアに見えるカップを持ち、無糖の紅茶をすすった。
「フェイトちゃんはアニエスの子ね。貴方が魔女の同盟を作ろうって言った時は、アニエスが言ったのかと錯覚したぐらいそっくりだった」
「お母さまも同盟を作ろうとしたのですね。その時のことをほとんど覚えていないのです。薄情な娘ですね」
「いいえ。アニエスが殺された現場にフェイトちゃんも一緒にいたのでしょう。ショックでそういうことは忘れるようにできているわ。アニエスの行動原理は常に、フェイトちゃんによりよい未来をつくる為に動いていた。その為に魔女の同盟を作ろうとしていた。それで自分の身が危ないこともわかっていたのかも知れない。だから、私にもフェイトちゃんのことを頼むって言ったのかも」
口もとがふるえ、ロレーヌ様は涙を流した。アンは心配そうに鳴いた。
わたくしはこみ上げてくるものを必死で我慢した。
「希望を持たせるのは、とても残酷なことだけれど、【茨の魔女】を見つけたら、解毒できるかもしれないわ」
「ほ、本当ですか!」
「条件付きの魔法の、付与と解除はセットよ。よほど未熟でもない限り、解除できないということはないでしょう。自分が誤って毒を食らって死ぬなんて、間抜けもいいところでしょう。解除できるということが、毒を盛った相手に有利すぎる交渉材料となるしね。成功すれば、フェイトちゃんは晴れて、自由に生きることができるわ」
「……これでも、覚悟していたつもりだったのですが。まさか、生きられる希望がでてくるとは思いませんでした……。余命のこと、ロレーヌ様にお話ししたのが初めてで……だれにも話すことができませんでした……。友人が楽しそうに将来を語るのが、嬉しくもあり、それ以上に……なんと答えたらいいのか、わからなくて」
次から、次に、我慢してきた感情があふれ出してきた。
「まぁ、大変!」
ロレーヌ様はわたくしの涙をふいてくれた。
「ずっと、ずっと、我慢してきたのよね。まわりの人を心配させないように。まだ16歳の女の子なのにね。偉いわ……。だから、悪役ぶって、強がっていたのね。強い子ね。いまは、泣きなさい。私の胸で」
わたくしは唇をふるわせ、その場から動かなかった。イタムが涙をなめてくれたが、次から次へと、涙がこぼれた。
「すみません……。甘えたらだめなのに……1人で、なんとかしなくちゃ、いけないのに……。力が……ないばかりに。ロレーヌ様にも……ご迷惑ばかりかけて」
ロレーヌ様は大粒の涙をこぼし、腕を広げた。
「今日から、私、フェイトちゃんのお母さんです! 全部、私にぶつけなさい!」
「ロレーヌ様は、イザベラとベアトリーチェのお母さま……です」
声がふるえた。
「いいの! もう、そういうのは! 意地でも私の胸で泣かせます。泣いてから、また歩き出せばいいのよ」
抱きついて、泣いた。とめどなく涙があふれて、とめることができない。ずっと、ロレーヌ様は頑張ったね、辛かったね、とささやいた。大きな手で背中をさすってくれた。わたくしがまだ小さかった頃のお母さまを思い出し、嗚咽がとまらなかった。
「ありがとうございます。落ちつきました」
呼吸を整え、熱をもった目元をぬぐった。
「フェイトちゃん。今日からお母さんだと思ってくれるわね? さあ、恥ずかしがらずに言ってごらんなさい。貴方のお母さんよ! さあ、呼びなさい!」
「はい。ロレーヌ様」
わたくしは笑顔で返す。
「やっぱり、お母さんとは言ってくれないのね!!!!!」
ロレーヌ様は体勢を崩し、派手にずっこけた。
「わたくし、泣くとすごくすっきりして、強くなれるのです。ずっと人前で泣くのを我慢していた反動がでてしまいましたが、もう、大丈夫です」
ロレーヌ様はあたまを押さえ、ソファーに座りなおした。
「やっぱり、貴方は強いのね。イザベラがおなじ状況になったら、きっと耐えることなどできないでしょう。そんな貴方だからこそ、神は試練を与えたのね」
「いいえ。わたくしも、イザベラも弱虫で泣き虫で、不器用で世間知らずな令嬢であることにかわりません。イザベラだって、余命わずかになれば、似たような行動をするはずです」
「イザベラが……。そうね。私もそう、信じたいわ」
宙を見上げ、イザベラを思う、ロレーヌ様はまごうかたなき母の表情をしていた。
「やっぱり、ロレーヌ様は優しい方ですよね」
「だから!! ――。まぁ、いいわ。それはフェイトちゃんが好きに思うことだからね」
しばらく沈黙が続く。わたくしは紅茶を飲み、カップを置いた。
「【穢れの魔女】にお会いしたいです。ご紹介いただけませんか」
「魔女の同盟を作る為よね。そのあとは、7つの魔女、すべてに会うってこと?」
「そうなります」
わたくしがうなずくと、ロレーヌ様は首をふった。
「穢れの魔女は最重要秘匿情報。私には会わせる権限がない。それ以上に情報を知ったことで、フェイトちゃん自身がさらに危険になる。ただ、あの100歳を超えた元気なお婆ちゃんは大局を見ている。必要になったら自分から姿をあらわすわ」
「わかりました。待つようにいたします」
「あとそのやり方には無理がある。2ヶ月しかないなかで茨の魔女を探し、魔女と全員会って同盟を作る時間はない。同盟はそんな簡単にはいかないわ」
「やって見なくてはわかりません。事情を話したら、残り2ヶ月の寿命が武器になるかもしれません」
「ごめんなさい。説明不足ね。魔女の同盟を作る件は私が動く。といっても、私は敵が多い。最終的にはフェイトちゃんが代表をやるっていう条件ね。フェイトちゃんは茨の魔女を探すことに専念なさい。そして、解毒し、貴方は生きのびて、魔女の同盟を作る。そして、私をお母さんと呼んで頂戴。これが、私が思い描くハッピーエンド」
「素敵ですね。ロレーヌ様! わたくしではそんな未来は思い浮かべられませんでした」
「では、それで話を進めましょうね。ところで、聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」
「はい、なんでしょうか」
その後、ずっとイザベラのことを聞かれた。学校ではどうなのか、クラスメイトとはうまくやっているのか。授業の態度。わたくしは苦笑いして、それに答えた。その度に一喜一憂するロレーヌ様をかわいらしいと思った。
「フェイトちゃんはアニエスの子ね。貴方が魔女の同盟を作ろうって言った時は、アニエスが言ったのかと錯覚したぐらいそっくりだった」
「お母さまも同盟を作ろうとしたのですね。その時のことをほとんど覚えていないのです。薄情な娘ですね」
「いいえ。アニエスが殺された現場にフェイトちゃんも一緒にいたのでしょう。ショックでそういうことは忘れるようにできているわ。アニエスの行動原理は常に、フェイトちゃんによりよい未来をつくる為に動いていた。その為に魔女の同盟を作ろうとしていた。それで自分の身が危ないこともわかっていたのかも知れない。だから、私にもフェイトちゃんのことを頼むって言ったのかも」
口もとがふるえ、ロレーヌ様は涙を流した。アンは心配そうに鳴いた。
わたくしはこみ上げてくるものを必死で我慢した。
「希望を持たせるのは、とても残酷なことだけれど、【茨の魔女】を見つけたら、解毒できるかもしれないわ」
「ほ、本当ですか!」
「条件付きの魔法の、付与と解除はセットよ。よほど未熟でもない限り、解除できないということはないでしょう。自分が誤って毒を食らって死ぬなんて、間抜けもいいところでしょう。解除できるということが、毒を盛った相手に有利すぎる交渉材料となるしね。成功すれば、フェイトちゃんは晴れて、自由に生きることができるわ」
「……これでも、覚悟していたつもりだったのですが。まさか、生きられる希望がでてくるとは思いませんでした……。余命のこと、ロレーヌ様にお話ししたのが初めてで……だれにも話すことができませんでした……。友人が楽しそうに将来を語るのが、嬉しくもあり、それ以上に……なんと答えたらいいのか、わからなくて」
次から、次に、我慢してきた感情があふれ出してきた。
「まぁ、大変!」
ロレーヌ様はわたくしの涙をふいてくれた。
「ずっと、ずっと、我慢してきたのよね。まわりの人を心配させないように。まだ16歳の女の子なのにね。偉いわ……。だから、悪役ぶって、強がっていたのね。強い子ね。いまは、泣きなさい。私の胸で」
わたくしは唇をふるわせ、その場から動かなかった。イタムが涙をなめてくれたが、次から次へと、涙がこぼれた。
「すみません……。甘えたらだめなのに……1人で、なんとかしなくちゃ、いけないのに……。力が……ないばかりに。ロレーヌ様にも……ご迷惑ばかりかけて」
ロレーヌ様は大粒の涙をこぼし、腕を広げた。
「今日から、私、フェイトちゃんのお母さんです! 全部、私にぶつけなさい!」
「ロレーヌ様は、イザベラとベアトリーチェのお母さま……です」
声がふるえた。
「いいの! もう、そういうのは! 意地でも私の胸で泣かせます。泣いてから、また歩き出せばいいのよ」
抱きついて、泣いた。とめどなく涙があふれて、とめることができない。ずっと、ロレーヌ様は頑張ったね、辛かったね、とささやいた。大きな手で背中をさすってくれた。わたくしがまだ小さかった頃のお母さまを思い出し、嗚咽がとまらなかった。
「ありがとうございます。落ちつきました」
呼吸を整え、熱をもった目元をぬぐった。
「フェイトちゃん。今日からお母さんだと思ってくれるわね? さあ、恥ずかしがらずに言ってごらんなさい。貴方のお母さんよ! さあ、呼びなさい!」
「はい。ロレーヌ様」
わたくしは笑顔で返す。
「やっぱり、お母さんとは言ってくれないのね!!!!!」
ロレーヌ様は体勢を崩し、派手にずっこけた。
「わたくし、泣くとすごくすっきりして、強くなれるのです。ずっと人前で泣くのを我慢していた反動がでてしまいましたが、もう、大丈夫です」
ロレーヌ様はあたまを押さえ、ソファーに座りなおした。
「やっぱり、貴方は強いのね。イザベラがおなじ状況になったら、きっと耐えることなどできないでしょう。そんな貴方だからこそ、神は試練を与えたのね」
「いいえ。わたくしも、イザベラも弱虫で泣き虫で、不器用で世間知らずな令嬢であることにかわりません。イザベラだって、余命わずかになれば、似たような行動をするはずです」
「イザベラが……。そうね。私もそう、信じたいわ」
宙を見上げ、イザベラを思う、ロレーヌ様はまごうかたなき母の表情をしていた。
「やっぱり、ロレーヌ様は優しい方ですよね」
「だから!! ――。まぁ、いいわ。それはフェイトちゃんが好きに思うことだからね」
しばらく沈黙が続く。わたくしは紅茶を飲み、カップを置いた。
「【穢れの魔女】にお会いしたいです。ご紹介いただけませんか」
「魔女の同盟を作る為よね。そのあとは、7つの魔女、すべてに会うってこと?」
「そうなります」
わたくしがうなずくと、ロレーヌ様は首をふった。
「穢れの魔女は最重要秘匿情報。私には会わせる権限がない。それ以上に情報を知ったことで、フェイトちゃん自身がさらに危険になる。ただ、あの100歳を超えた元気なお婆ちゃんは大局を見ている。必要になったら自分から姿をあらわすわ」
「わかりました。待つようにいたします」
「あとそのやり方には無理がある。2ヶ月しかないなかで茨の魔女を探し、魔女と全員会って同盟を作る時間はない。同盟はそんな簡単にはいかないわ」
「やって見なくてはわかりません。事情を話したら、残り2ヶ月の寿命が武器になるかもしれません」
「ごめんなさい。説明不足ね。魔女の同盟を作る件は私が動く。といっても、私は敵が多い。最終的にはフェイトちゃんが代表をやるっていう条件ね。フェイトちゃんは茨の魔女を探すことに専念なさい。そして、解毒し、貴方は生きのびて、魔女の同盟を作る。そして、私をお母さんと呼んで頂戴。これが、私が思い描くハッピーエンド」
「素敵ですね。ロレーヌ様! わたくしではそんな未来は思い浮かべられませんでした」
「では、それで話を進めましょうね。ところで、聞きたいことがあるのだけど、いいかしら?」
「はい、なんでしょうか」
その後、ずっとイザベラのことを聞かれた。学校ではどうなのか、クラスメイトとはうまくやっているのか。授業の態度。わたくしは苦笑いして、それに答えた。その度に一喜一憂するロレーヌ様をかわいらしいと思った。
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