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最終章 最期にわたくしがしたいこと
94話 端的にいって、最悪
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マデリンの勝ちほこった笑い声ががらんとした会場に響き、マデリンの召使いはなんの感情も浮かべず、むっつりとしている。
「で、マデリン。いいたいことはそれだけですか?」
わたくしは腕を組んで、言った。
「ふぅむ。そう言われると、いささか首をひねらざるを得ぬが、まあよい。妾は満足したぞ。しゃべり疲れたな。もういっぱいワインを頂こうか」
召使いがワインをマデリンに手渡した。おいしそうに飲んで、感激の声をあげた。
「心配したのですよ。貴方の悪趣味な悪ふざけに対し、本気で死んで、やり直そうとしたのです。で、毒は? マデリンは3ヶ月後に死ぬのですか? それとも大丈夫なの」
マデリンが照れくさそうに鼻をこすった。
「それはすまんかったな。妾は穢れをまとい、寿命が大幅にのびておる。400年近く生きる寿命が100年程度、減ったに過ぎぬ」
「……大丈夫なのですね。――それは、よかったです。それで? マデリンはこの魔法を使って、なにをするつもりなのですか」
イタムは首を何度か縦にふった。
「そうじゃな。たったひとりで成し遂げる、世界征服など、面白かろうな。その為の唯一の障害。照覧の魔女の魔法を知る、フェイトとイタムを始末せねばならぬ」
マデリンの感情は読みとれない。ただ、口を動かしただけのように感じた。
「そうですか……。とても残念です。マデリンとはよいお友達のまま、いられるかと思っておりました。しかし、戦う運命にあったということですね。それで、マルクールとここに住む人々は世界を征服したあとはどうなります? アルトメイアは? 他の国は?」
「……フェイト。さっきからなんの話をマデリン嬢としているのだ? 物騒だぞ。説明してくれ」
アラン殿下が口をはさむ。わたくしと話すのは気まずそうだ。
「アラン殿下、心配ありません。実は先ほど唐突にマデリンを主役にする劇のシナリオを思いつきまして。ずっとふたりで話を詰めていたところなのです。アイデアは生もの。いま話し終えてしまいたいのです。どうか、自室へお戻りください。あと、給仕も全員帰してください。マデリンとふたり、アイデアを固めたく思います」
わたくしが唐突で無理がありすぎる大嘘を言うと、アラン殿下はなにか言いたげだったがおとなしくさがった。「終わったら声をかけてくれ、話をしよう」と言われる。あんなに自信に満ちあふれていた殿下が子犬のようにまるくなっている。殿下に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
でも、これが、わたくしにできる最善の手なら、後悔など、しない。
広いパーティ会場には、わたくし、イタム、マデリン、召使いだけが残った。
「やっと、邪魔者はいなくなったな。あまり緊張感がないように見うけられる。妾の力を見せようか」
赤黒い、いびつな目を見ひらいた。
逃げ出したい、まず思ったことはそれだった。
その、底知れぬ魔力は、ただ、そこにいるだけで、わたくしの力を削いできた。おなじ空気を吸うだけで、いちいちプレッシャーを感じざるを得ない。だんだんと呼吸が苦しくなり、汗がふき出る。全身が鳥肌を立てた。
【黒闇の魔女】と対峙したとき以上の恐怖を感じる。マデリンのいうとおり。魔女という枠を超えて、違う次元へといってしまった。たとえ、すべての魔女が集結してもマデリンをとめることはできなそうだった。
それでも、わたくしができることがまだあるはずだった。
「運命は最後の敵を送りつけてきたというわけですね。貴方なら、わたくしを簡単に殺せるでしょうね。その前に聞かせてください。 マルクールは? アルトメイアは? 他の国は? いったいどうするおつもりなのか答えなさい!」
わたくしは胸を張って、声を張った。偉そうに、不遜に。おびえを見せないように。
「なぜ、妾がこれから死ぬフェイトに、建国理念のようなものを説かねばならぬ? 五月蠅いと感じてしまうの。まずはそのくちをきけぬようにしてやろうか」
マデリンはくちの端を邪悪にゆがめ、見たこともない醜悪な顔をした。
「話しなさい!! いまある世界よりも、ひどいものなら、残りのすべての力を使って、運命に叛逆を開始します! それが、わたくし、悪役令嬢、フェイト・アシュフォードです。けっして、思いどおりにはさせない!」
わたくしにあわせ、イタムが牙を剥いて、低い声をだした。
「強くなったな。フェイトよ。出会ったころのおまえは自分の無力さや運命に押しつぶされそうに見えた。じゃが、いまは、妾すら恐れてはおらぬように見える。英雄気質よの。しかし、ひとりではどうこうできるとも思わぬし、結局前回の世界では死んだな。その性格も考えかたもいかがなものか。もっと実力行使したほうが扱いやすくなるかの?」
「脅しには屈しない。わたくしはひとりではないのです!! イタム、お母さま、そして、わたくしをここまで導いてくれた、8人のわたくし。みんなの力でここにいます。力の限り、戦いぬきます!!」
そういった瞬間、マデリンが指を1本、立てた。
急に、息が、できなくなった。
肺が、酸素をもとめて、からだじゅうに信号を送る。
「フェイト!!」
イタムの不器用な声が響いた。
喉を押さえ、口を動かす。涙がこぼれ、目の前の色が急速に失われていく。
――死ぬ、そう思った瞬間、呼吸が、酸素が、もどってきた。
いつのまにか、床に倒れていた。むせながら、全身で息を吸いこむ。
横隔膜が痙攣し、しばらく床でうずくまっていた。
「英雄にでもなったかのようじゃな。気に障る。あと10秒、妾が空気をなくせば、死んだ。フェイトには過去にもどれる秘術がある。魔女であってもそんなことができる相手には勝てぬだろう。しかし、妾に対してははなんと無力か。いや、待て――」
車椅子から顔をだし、わたくしを食い入るよう、見つめた。
「それでも、ここまで戦い抜いた。怖い、な。フェイトのような輩がいちばん危ない。油断したら、ほんとうに寝首をかかれるやもしれぬ。よい。妾の目指す世界のことを話そう。王となり、世界を我がものとする。妾は自由だ。毎日、好きなだけ寝て、好きなだけ本を朗読させ、好きなだけ食べる。トマト以外をじゃ。もう自分に背く仕事も、殺しも魔法もいっさいを使わぬ。妾にとって最高の夢見の世界よ」
荒い呼吸をなんとか、ととのえた。
「自分のこと……ばかり……ですね。マルクールは? 他の国は……」
「虫けらのように殺す、つぶす。特にアルトメイアは徹底的に。世界を妾にとって必要な人数だけを残し、すべて間引こう」
マデリンの興奮した声が、ぽっかりとあいたパーティ会場にむなしく反響する。
両腕をあげ、酔ったように話すマデリンはすでにわたくしが知る彼女ではなかった。
「素晴らしい!」
わたくしは感嘆の声をあげた。
「じゃろう?」
「ええ」
わたくしは笑顔でうなずく。
「端的にいって、最悪です。ここまで状況が悪くなるとは思いもしませんでした。しょうがないですね。残りのすべての力をもって、マデリンに決戦を挑みます。ですが、ひとつ心残りがありまして。さきにブラッド殿下に会ってきてもよいでしょうか」
「ふむ……。たしかに、茨の魔女はそのままほうってはおけぬ、な。よかろう。ただし、条件がある。フェイトが生きて、茨の魔女から生還することだ。連れ去られたら探すのが面倒だし、妾の手でちゃんと、葬ってやらねばな」
指先を曲げながら、不敵に笑うマデリン。
「承知しました。格段のお引き立て、誠に感謝いたします」
「うむ。せいぜい、悪あがきをすることだな。フェイトよ。妾に一矢報いてみよ。できるものならな」
「で、マデリン。いいたいことはそれだけですか?」
わたくしは腕を組んで、言った。
「ふぅむ。そう言われると、いささか首をひねらざるを得ぬが、まあよい。妾は満足したぞ。しゃべり疲れたな。もういっぱいワインを頂こうか」
召使いがワインをマデリンに手渡した。おいしそうに飲んで、感激の声をあげた。
「心配したのですよ。貴方の悪趣味な悪ふざけに対し、本気で死んで、やり直そうとしたのです。で、毒は? マデリンは3ヶ月後に死ぬのですか? それとも大丈夫なの」
マデリンが照れくさそうに鼻をこすった。
「それはすまんかったな。妾は穢れをまとい、寿命が大幅にのびておる。400年近く生きる寿命が100年程度、減ったに過ぎぬ」
「……大丈夫なのですね。――それは、よかったです。それで? マデリンはこの魔法を使って、なにをするつもりなのですか」
イタムは首を何度か縦にふった。
「そうじゃな。たったひとりで成し遂げる、世界征服など、面白かろうな。その為の唯一の障害。照覧の魔女の魔法を知る、フェイトとイタムを始末せねばならぬ」
マデリンの感情は読みとれない。ただ、口を動かしただけのように感じた。
「そうですか……。とても残念です。マデリンとはよいお友達のまま、いられるかと思っておりました。しかし、戦う運命にあったということですね。それで、マルクールとここに住む人々は世界を征服したあとはどうなります? アルトメイアは? 他の国は?」
「……フェイト。さっきからなんの話をマデリン嬢としているのだ? 物騒だぞ。説明してくれ」
アラン殿下が口をはさむ。わたくしと話すのは気まずそうだ。
「アラン殿下、心配ありません。実は先ほど唐突にマデリンを主役にする劇のシナリオを思いつきまして。ずっとふたりで話を詰めていたところなのです。アイデアは生もの。いま話し終えてしまいたいのです。どうか、自室へお戻りください。あと、給仕も全員帰してください。マデリンとふたり、アイデアを固めたく思います」
わたくしが唐突で無理がありすぎる大嘘を言うと、アラン殿下はなにか言いたげだったがおとなしくさがった。「終わったら声をかけてくれ、話をしよう」と言われる。あんなに自信に満ちあふれていた殿下が子犬のようにまるくなっている。殿下に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
でも、これが、わたくしにできる最善の手なら、後悔など、しない。
広いパーティ会場には、わたくし、イタム、マデリン、召使いだけが残った。
「やっと、邪魔者はいなくなったな。あまり緊張感がないように見うけられる。妾の力を見せようか」
赤黒い、いびつな目を見ひらいた。
逃げ出したい、まず思ったことはそれだった。
その、底知れぬ魔力は、ただ、そこにいるだけで、わたくしの力を削いできた。おなじ空気を吸うだけで、いちいちプレッシャーを感じざるを得ない。だんだんと呼吸が苦しくなり、汗がふき出る。全身が鳥肌を立てた。
【黒闇の魔女】と対峙したとき以上の恐怖を感じる。マデリンのいうとおり。魔女という枠を超えて、違う次元へといってしまった。たとえ、すべての魔女が集結してもマデリンをとめることはできなそうだった。
それでも、わたくしができることがまだあるはずだった。
「運命は最後の敵を送りつけてきたというわけですね。貴方なら、わたくしを簡単に殺せるでしょうね。その前に聞かせてください。 マルクールは? アルトメイアは? 他の国は? いったいどうするおつもりなのか答えなさい!」
わたくしは胸を張って、声を張った。偉そうに、不遜に。おびえを見せないように。
「なぜ、妾がこれから死ぬフェイトに、建国理念のようなものを説かねばならぬ? 五月蠅いと感じてしまうの。まずはそのくちをきけぬようにしてやろうか」
マデリンはくちの端を邪悪にゆがめ、見たこともない醜悪な顔をした。
「話しなさい!! いまある世界よりも、ひどいものなら、残りのすべての力を使って、運命に叛逆を開始します! それが、わたくし、悪役令嬢、フェイト・アシュフォードです。けっして、思いどおりにはさせない!」
わたくしにあわせ、イタムが牙を剥いて、低い声をだした。
「強くなったな。フェイトよ。出会ったころのおまえは自分の無力さや運命に押しつぶされそうに見えた。じゃが、いまは、妾すら恐れてはおらぬように見える。英雄気質よの。しかし、ひとりではどうこうできるとも思わぬし、結局前回の世界では死んだな。その性格も考えかたもいかがなものか。もっと実力行使したほうが扱いやすくなるかの?」
「脅しには屈しない。わたくしはひとりではないのです!! イタム、お母さま、そして、わたくしをここまで導いてくれた、8人のわたくし。みんなの力でここにいます。力の限り、戦いぬきます!!」
そういった瞬間、マデリンが指を1本、立てた。
急に、息が、できなくなった。
肺が、酸素をもとめて、からだじゅうに信号を送る。
「フェイト!!」
イタムの不器用な声が響いた。
喉を押さえ、口を動かす。涙がこぼれ、目の前の色が急速に失われていく。
――死ぬ、そう思った瞬間、呼吸が、酸素が、もどってきた。
いつのまにか、床に倒れていた。むせながら、全身で息を吸いこむ。
横隔膜が痙攣し、しばらく床でうずくまっていた。
「英雄にでもなったかのようじゃな。気に障る。あと10秒、妾が空気をなくせば、死んだ。フェイトには過去にもどれる秘術がある。魔女であってもそんなことができる相手には勝てぬだろう。しかし、妾に対してははなんと無力か。いや、待て――」
車椅子から顔をだし、わたくしを食い入るよう、見つめた。
「それでも、ここまで戦い抜いた。怖い、な。フェイトのような輩がいちばん危ない。油断したら、ほんとうに寝首をかかれるやもしれぬ。よい。妾の目指す世界のことを話そう。王となり、世界を我がものとする。妾は自由だ。毎日、好きなだけ寝て、好きなだけ本を朗読させ、好きなだけ食べる。トマト以外をじゃ。もう自分に背く仕事も、殺しも魔法もいっさいを使わぬ。妾にとって最高の夢見の世界よ」
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両腕をあげ、酔ったように話すマデリンはすでにわたくしが知る彼女ではなかった。
「素晴らしい!」
わたくしは感嘆の声をあげた。
「じゃろう?」
「ええ」
わたくしは笑顔でうなずく。
「端的にいって、最悪です。ここまで状況が悪くなるとは思いもしませんでした。しょうがないですね。残りのすべての力をもって、マデリンに決戦を挑みます。ですが、ひとつ心残りがありまして。さきにブラッド殿下に会ってきてもよいでしょうか」
「ふむ……。たしかに、茨の魔女はそのままほうってはおけぬ、な。よかろう。ただし、条件がある。フェイトが生きて、茨の魔女から生還することだ。連れ去られたら探すのが面倒だし、妾の手でちゃんと、葬ってやらねばな」
指先を曲げながら、不敵に笑うマデリン。
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