先生、これは18禁乙女ゲームじゃありません。

bara10jisya

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男。

先生、これは18禁乙女ゲームじゃありません。

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・・・・―――――いったい誰の血を浴びているというのか。

窓が開けられたと同時に、漂ってきた、むせ返るほどの血臭を纏った、短髪にすらりとした背の高い男。
その男の短髪が、月光を背に受け、自ら光を放っているかの如く、銀色に煌きながら風に靡く様が、禍々しいほどに美しい・・・・。

そして、悠然と立っている男とは裏腹に、私を庇う天利ちゃんの背中から、ただならぬ、緊張を強いられたような、ピリピリした空気が漂う。

この男は、・・・・――――『』。

天利ちゃんも、それをひしひしと感じているのだ。

「・・・約束です。絶対にしゃべってはいけません。・・・―――何があっても・・・・っ。」

天利ちゃんは、私を背に庇いながら、私にだけ聞こえるように囁く。

私の心配など無用だ。大船に乗ったつもりでいてくれたまえ、天利ちゃん!
たぶん、影も何処かに潜んでいる。いよいよ危ないとなれば、出てきてくれるに違いない!・・・――――はずだ。

だから、あなたは戦いの事だけ考えてくれていいのです。


私は、置物に徹します。
大丈夫、現在私は、体も舌も凍り付いてフリーズ状態なのだ。
私をしゃべらせるには、カツ丼を持ってくるか、一度、電源ボタンを長押しして強制終了するしかないのだから。




・・・・――――先生・・・・っ!!


***************************************



其の頃、緑川篤朗は、裏庭の異様な光景を眺めながら、広いとはいえ、屋敷の敷地内で、このような惨劇が起こっていたことを、気付けなかった自分に、拳を固く握り締め、一瞬だけ目を閉じた。

そして、一人一人丁寧に死体を検め始める。
死体は30体を超えていた。
どの遺体も急所を一突きされ、即死に近い状態だ。

これが一人の人間の所業であるのなら、まさに、鬼神。

だが緑川は、引き返すことはせず、学園へと進路をとる。
何故なら、我が主が自分の命よりも大切に思っている人々の安否を確認する事が、主の最大の願いである事が一つ。


あと一つは・・・・―――。


***************************************


次期女王邸の3階の窓に態々登って来たであろう、その男は、なぜか、そのまま、くずおれる様に、大窓の敷居の上に力なく腰を下ろした。

『なんだ。胸を弾ませて、駆け足で会いに来たというのに、・・・―――どうやら影武者だったらしいな・・・・』

随分と、がっくりしているようだが、気を落とすことはない、私はここにいるぞ。存分に会うがいい。
                                                 
「何語だか知らないが、日本語でしゃべろ。」

あらら。天利ちゃんてロシア語しゃべれなかったのね。うっかりしていたが、普通はしゃべれないよねぇ。

『私が日本語を?・・・・そんな恥ずかしい事を私にしろと言うのか・・・・?』

何やら、この二人の間には、三途の川でも流れていそうな位の、隔たりがありそうだが、しゃべれるのなら、あんたが日本語話さない限り、永遠に橋は架からないぞ?
・・・・―――ん?・・・・・日本語をしゃべるのは恥ずかしいと言う"ワード"に、、心当たりがあるのだが・・・・?

男が敷居に片足をかけた拍子に、男の横顔が、月光に浮かび上がる。

・・・・――――――ァアアアア・・・っ?!

光沢を帯びた蒼白い皮膚を、血飛沫が黒く凄艶に彩り、より一層輝きを増す、・・・――――"人間離れした白皙の美貌"。


アンドレイ・アレクサンドロヴィチ・ロマノフ。


アンドレイの取り柄の一つだった、腰まであった美髪が襟足までスッキリと刈り上げられていたので、全く気付かなかったが、かえって、男の色気が前面に出て、歩くエロと化している。目の毒だ。

取り敢えず、元気な姿にほっとして、言葉が喉から出かかったが、おおっと、いけない。しゃべりませんよ。
私が天利ちゃんとの約束を破るわけがない。

私は、挨拶代わりに、トットットっと、アンドレイにちょっとだけ近づき、天利ちゃんには見えない位置で、大きく口を開けて、ごぼっと、内臓を吐いた。

『うぉ?!ど、どうしたんだ?!何か出たぞ?!病気か?!』

私は何事も無かったかのように、内臓をごっくんと戻し、誇らしげに嘴を閉じる。
これで私の複雑な心理を完璧に表現できたと言えるだろう。

『・・・・平気そうだな。ビックリした。それにしても、デカいオウムだな!葵のペットか?可愛いな!!』

可愛いは正解だが、オウムではない。どう見ても違うだろう!
そう言えば彼は、無類の動物好きであった。
登別のクマ牧場で、大はしゃぎで羆に餌をやりまくっていた姿を思い出す。

「近づくな!!誰だお前は?!刺客じゃないのか?!」

あらら。アンドレイが分からないのね天利ちゃん。
まあ、アンドレイも私をオウムと勘違いしている時点で、どっちもどっちだが。

長髪のインパクトが強すぎたのが、敗因なのか、髪型だけで見分けていた可能性は高い。
外国映画で、みんな同じ顔に見える人間に、ありがちな落とし穴である。

「アンドレイ・アレクサンドロヴィチ・ロマノフ。、ソビエト皇帝、かな?」

「!!・・・・――――何故血を浴びているんですか?誰の血なんですか?!」

「葵に類が及ばないように、ずっと帝国の動向を監視していたからね。君も危険を承知で、ここで次期女王の影武者をやってたんだろう?・・・・うちのウサチェヴァが、放った刺客が思いの外、盛大だったようなんで、私が、責任を持って、きれいに掃除しに来たんだよ、もちろん、宰相ごとね。元から絶たなきゃダメって言うだろ?多少、生ゴミが出てしまったが、燃えるゴミにでも、出しておいてくれたまえ」

何気に、けろりとすんごい事を、聞かされているような気がするのは、私の幻聴だと思いたい。

「じゃあ、その血は、刺客のものなんですか?我が国の人間ではなく?!」

「もちろん。私が、スウィートハニーに嫌われるようなことを、するわけがないじゃないか。
おおっと、不倫愛には欠かせない“奥さんと不仲説”は、断固として否定するが、私は、このキューティハニーなオウムちゃんと、うたかたの夢を語り合いたいな。ベロベロベロ、可愛いでちゅね~!!ジュテ~ム」

「日本語でも意味不明なんですが?!」

相変わらず日本語しゃべると愉快だな、ハニー。


『だが・・・・――――あんなに逢うのを楽しみにしていたのに、・・・葵は、たぶん、あの男のもとだろう・・・・―――。・・・・私の涙が枯れるまで、君の胸で泣かせてくれないか?オウムちゃん?』

あららら、浮気ですか、しょうがない人ですねぇ。相手が私でなかったら、お仕置きですよ。

まあ、実際にオウムが自分を慰めてくれるとは思っていないだろうし、思わず本音を漏らしてしまっただけなんだろうが、しょんぼり項垂れている、アンドレイが可愛くて、私は、思わず彼のもとに飛んで行って抱き付いてやった。

「~~~~!!!!!」

ぬ?天利ちゃんが焦っているな。大丈夫ちょっとだけね。
よ~しよしよしよし・・・・可愛い奴め~。さっぱりした銀髪を撫でくる。

「おぉぅ!人懐っこいなぁ!!そこのレディー!葵に伝えてくれ、貴方の可愛いオウムちゃんは預かったと。早く迎えに来ないと、可愛いオウムちゃんを、愛欲の奴隷にしてしまうかもしれないよん 。では、До свидания (ダスヴィダーニャ)。私をつかまえてごらんなさ~い。ほ~ほほほ・・・。」

「ちょっっ!待てっ、変態!!」

そして彼は、地上3階の窓から、無造作に飛び降り易々と、脱出を果たしてしまった。



可愛いオウムちゃんを抱いたまま・・・―――――。



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