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第四章 人狼編
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この村にいる殺人鬼は人狼ではない。
この事件の詳細を聞くたびに、不意に心をかすめる言葉だ。
この村にいる「人狼」は、何もかもが普通ではない。行動や対応力を含め、もはや「犯人は人だった」という結論の方が腑に落ちるかもしれない。
「人狼は誰の心にも宿っている、そんな落ちじゃなきゃいいッスけどね……。」
「人であろうと人狼であろうと、犯人を特定する上では変わりはないよ。解決した側の後味の悪さが変わってくる、というだけのことじゃないかな?」
ジールの言葉に俺も同意しようとすると、にこやかな表情のアースが少し冷めたような口調でそういった。
被害者を癒し続けているアースにとっては、犯人が何であれ許せないということだろう。
確かに、人であれ人狼であれ、俺達がやることに変わりはない。
それに、たとえ人であっても、人狼を模している殺人者なら次の満月まで行動は起こさないだろうから、時間はまだある。
「アースの言うとおりだな。俺たちは、自分の役割を遂行しよう。」
俺がそう締めくくると、側近のみんなは力強くうなずいてくれた。
そうして、情報共有の時間は終わり、雑談タイムに入ろうとすると、ローウェルが自然な口調でアルフォンスに問いかけた。
「ところで、アルフォンスさん。この場所は、これから俺たちが密会する場所として使用するんですよね?」
「はい、そうですね。よろしければ、中をご案内いたしましょうか?」
確かに、もしも何かあった時のために建物の内部を構造を把握しておくことは大切だ。
王族の側近を務める者同士、何を求めているのかはすぐに理解できるということだろう。
「ぜひ、お願いします! じゃあ、騎士と魔導士から1人ずつ行くということで……。キースとジール、行ってくれ。」
「なんで、お前が仕切っているんだ。」
「側近全員でぞろぞろといっても、騒がしくなるだけだろう? 役割が異なる騎士と魔導士から1人ずつ行けば十分だ。それに、兄弟同士で情報共有したいこともあるだろ? さっさと行ってこい。」
ローウェルがパタパタと手を振ると、キースは静かに拳を振り上げたが、ジールに「まあまあ、いつものことっスから」となだめられて、何度か舌打ちをしながら部屋を出ていった。
「じゃあ俺は、隠密行動しながら家の周囲を回ってきますんで。主とアースはお茶でも飲みながら待っていてください。」
「いや、俺も行くよ。側近として、何もしないわけにもいかないし……。」
「主を1人で放置していく方が問題だろ? アースは主の護衛という立派な役目を果たしてくれ。じゃあ、行ってくるぜ。」
ローウェルはさわやかな笑顔でそう告げると、一瞬にして姿を消してどこかにへといってしまった。
言っていることは間違っていない、間違っていないが……。
俺は茫然と消えたローウェルの姿をたどっているアースの方をちらりと見た。
急に2人にされても反応に困る。本当に、会うのは久しぶりなんだ。
……が、こんな機会はそうそう訪れないだろう。何か、何か話題を探さなければ。夏休みのこととか、治療をしているとき以外は何をしているのかとか……。
「ローウェルはたまに強引だよね、まったく。キルたちは、冒険者として依頼を受ける予定なの?」
必死にそわそわしている俺とは違い、アースは何も気にしていなさそうな様子でそう尋ねてきた。いや、俺のことよりも冒険者のことが気になっているのかもしれない。……複雑だ。
「……依頼は受ける予定だ。腕試しに来た勘違い貴族の役で来ているからな。腕試しをしないわけにはいかない。」
若干不貞腐れながらそう答えると、アースは目を輝かせながら頷いた。
……なぜアースは、これほど冒険者の話題がすきなのだろうか? これまでの生活で、何か接点があっただろうか?
「やっぱりそうなんだ! 俺も冒険者になりたい!」
「なりたいのか!?」
「あ……なりたいというよりは、やってみたいという方が正確かな! ダンジョンとか行ってみたい!」
「ダンジョンか、ダンジョンに入るためには冒険者のライセンスが必要だな。なら仕方がない……」
そこまで言って俺はふと、寒気を覚えた。
「ダンジョン」というキーワードには聞き覚えがある。あれはそう、ローウェルの魔力回路の治療をアースが行った時のことだ。対外的には、ローウェルの魔力回路は、迷宮からの出土品である「エリクサー」によって治療されたことになっている。あの時兄上は、俺達に「本物のエリクサーをとってこい」というような発言をしていた気がする。冗談かと思っていたが、まさか、俺達にライセンスをとらせたのは……。
いや、考えるのはやめておこう。その時はその時だ。
「どうしたの、キル? 急に黙り込んだりして?」
「いいや、何でもない。兄上の言葉を思い返していただけだ。」
「アルベルト殿下の言葉? そういえば、最近のキルはアルベルト殿下に反抗しがちだと聞いたけど、もしかして指示を聞き流していたとか?」
「誰がそんなこと言っているんだ!? 反抗なんかしていない! ただ少し……自分の意見を言っているだけだ。」
思い当たる節がないわけではない。今回の件も、何度か兄上に反抗していると言えなくもないかもしれない。
だけど、ただ指示を待っているだけでは、お前に会えなかったかもしれないだ……。
「非難しているわけではないよ。アルベルト殿下のご判断が、すべて正しいとは限らないからね。アルベルト殿下に意見できるのは、陛下を除けばキルや限られた側近の皆さんくらいだと思うから、キルが意見するのはすごく大事なことだと思うよ。キルは、自分が正しいと思うことをすればいいよ。」
「……俺が間違っている時は、アースが意見してくれるのか?」
「そうしているつもりだったけど、足りなかったかな?」
アースは意地の悪い笑みを浮かべながら、首を傾げた。
俺がしたいようにしていいなら、お前に言いたいことはたくさんあるんだ。俺はゆっくりと息を吐き、冷めたティーカップを手に取った。
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あけましておめでとうございます。
本年もゆるりと更新していきますので、何卒宜しくお願いたします。
なお、気分転換の作品として、BLではないですが、男2人のバディによるミステリーものを連載していますので、お暇な時に見に来て頂けますと幸いです。
この事件の詳細を聞くたびに、不意に心をかすめる言葉だ。
この村にいる「人狼」は、何もかもが普通ではない。行動や対応力を含め、もはや「犯人は人だった」という結論の方が腑に落ちるかもしれない。
「人狼は誰の心にも宿っている、そんな落ちじゃなきゃいいッスけどね……。」
「人であろうと人狼であろうと、犯人を特定する上では変わりはないよ。解決した側の後味の悪さが変わってくる、というだけのことじゃないかな?」
ジールの言葉に俺も同意しようとすると、にこやかな表情のアースが少し冷めたような口調でそういった。
被害者を癒し続けているアースにとっては、犯人が何であれ許せないということだろう。
確かに、人であれ人狼であれ、俺達がやることに変わりはない。
それに、たとえ人であっても、人狼を模している殺人者なら次の満月まで行動は起こさないだろうから、時間はまだある。
「アースの言うとおりだな。俺たちは、自分の役割を遂行しよう。」
俺がそう締めくくると、側近のみんなは力強くうなずいてくれた。
そうして、情報共有の時間は終わり、雑談タイムに入ろうとすると、ローウェルが自然な口調でアルフォンスに問いかけた。
「ところで、アルフォンスさん。この場所は、これから俺たちが密会する場所として使用するんですよね?」
「はい、そうですね。よろしければ、中をご案内いたしましょうか?」
確かに、もしも何かあった時のために建物の内部を構造を把握しておくことは大切だ。
王族の側近を務める者同士、何を求めているのかはすぐに理解できるということだろう。
「ぜひ、お願いします! じゃあ、騎士と魔導士から1人ずつ行くということで……。キースとジール、行ってくれ。」
「なんで、お前が仕切っているんだ。」
「側近全員でぞろぞろといっても、騒がしくなるだけだろう? 役割が異なる騎士と魔導士から1人ずつ行けば十分だ。それに、兄弟同士で情報共有したいこともあるだろ? さっさと行ってこい。」
ローウェルがパタパタと手を振ると、キースは静かに拳を振り上げたが、ジールに「まあまあ、いつものことっスから」となだめられて、何度か舌打ちをしながら部屋を出ていった。
「じゃあ俺は、隠密行動しながら家の周囲を回ってきますんで。主とアースはお茶でも飲みながら待っていてください。」
「いや、俺も行くよ。側近として、何もしないわけにもいかないし……。」
「主を1人で放置していく方が問題だろ? アースは主の護衛という立派な役目を果たしてくれ。じゃあ、行ってくるぜ。」
ローウェルはさわやかな笑顔でそう告げると、一瞬にして姿を消してどこかにへといってしまった。
言っていることは間違っていない、間違っていないが……。
俺は茫然と消えたローウェルの姿をたどっているアースの方をちらりと見た。
急に2人にされても反応に困る。本当に、会うのは久しぶりなんだ。
……が、こんな機会はそうそう訪れないだろう。何か、何か話題を探さなければ。夏休みのこととか、治療をしているとき以外は何をしているのかとか……。
「ローウェルはたまに強引だよね、まったく。キルたちは、冒険者として依頼を受ける予定なの?」
必死にそわそわしている俺とは違い、アースは何も気にしていなさそうな様子でそう尋ねてきた。いや、俺のことよりも冒険者のことが気になっているのかもしれない。……複雑だ。
「……依頼は受ける予定だ。腕試しに来た勘違い貴族の役で来ているからな。腕試しをしないわけにはいかない。」
若干不貞腐れながらそう答えると、アースは目を輝かせながら頷いた。
……なぜアースは、これほど冒険者の話題がすきなのだろうか? これまでの生活で、何か接点があっただろうか?
「やっぱりそうなんだ! 俺も冒険者になりたい!」
「なりたいのか!?」
「あ……なりたいというよりは、やってみたいという方が正確かな! ダンジョンとか行ってみたい!」
「ダンジョンか、ダンジョンに入るためには冒険者のライセンスが必要だな。なら仕方がない……」
そこまで言って俺はふと、寒気を覚えた。
「ダンジョン」というキーワードには聞き覚えがある。あれはそう、ローウェルの魔力回路の治療をアースが行った時のことだ。対外的には、ローウェルの魔力回路は、迷宮からの出土品である「エリクサー」によって治療されたことになっている。あの時兄上は、俺達に「本物のエリクサーをとってこい」というような発言をしていた気がする。冗談かと思っていたが、まさか、俺達にライセンスをとらせたのは……。
いや、考えるのはやめておこう。その時はその時だ。
「どうしたの、キル? 急に黙り込んだりして?」
「いいや、何でもない。兄上の言葉を思い返していただけだ。」
「アルベルト殿下の言葉? そういえば、最近のキルはアルベルト殿下に反抗しがちだと聞いたけど、もしかして指示を聞き流していたとか?」
「誰がそんなこと言っているんだ!? 反抗なんかしていない! ただ少し……自分の意見を言っているだけだ。」
思い当たる節がないわけではない。今回の件も、何度か兄上に反抗していると言えなくもないかもしれない。
だけど、ただ指示を待っているだけでは、お前に会えなかったかもしれないだ……。
「非難しているわけではないよ。アルベルト殿下のご判断が、すべて正しいとは限らないからね。アルベルト殿下に意見できるのは、陛下を除けばキルや限られた側近の皆さんくらいだと思うから、キルが意見するのはすごく大事なことだと思うよ。キルは、自分が正しいと思うことをすればいいよ。」
「……俺が間違っている時は、アースが意見してくれるのか?」
「そうしているつもりだったけど、足りなかったかな?」
アースは意地の悪い笑みを浮かべながら、首を傾げた。
俺がしたいようにしていいなら、お前に言いたいことはたくさんあるんだ。俺はゆっくりと息を吐き、冷めたティーカップを手に取った。
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あけましておめでとうございます。
本年もゆるりと更新していきますので、何卒宜しくお願いたします。
なお、気分転換の作品として、BLではないですが、男2人のバディによるミステリーものを連載していますので、お暇な時に見に来て頂けますと幸いです。
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