大好きな歌で成り上がる!~元孤児でも、歌うことは諦めません~

kurimomo

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第二章 側仕え編

エメラルドムーン

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少しの時間の後、ユットゲー様がいつもの人好きの笑顔を浮かべながら神官長室へと戻ってきた。

その手には、透明な水晶を持っていた。

その水晶を神官長に手渡した後、ユットゲー様は静かに後ろへと控えた。





「良いか、パイル。この水晶は聖水晶といって、聖女の力の有無を判別するものだ。聖女の力がある場合、その力に応じてこの水晶は光輝く。つまり、其方に聖女の力があればこの聖水晶が光り輝くということだ。心の準備ができたら、この水晶に手をかざしてみよ。」



聖水晶……。この水晶で、私に聖女の力があるのか白黒はっきりさせてしまおうということだ。

衆人環視のもとで行われるこの判別によって、私のこれからは左右され、孤児院のみんなを助けられるかどうかが決まってしまう。



……大丈夫。きっと、大丈夫。



私は深く深呼吸をした後に、聖水晶に手をかざした。結果が出ることへの恐怖心ゆえに、目を瞑ってしまった。





私が手をかざしてから少しの時間がたった。

周りは、異様な静寂に包まれている。これは、どういう方向の静寂なのだろうか。成功か、はたまた失敗か。



怖いけれど、自分の目で確かめる方がいいだろう。私に聖女の力があるのなら、聖水晶は光り輝いているはずだ。……光り輝いているはずだ。



私は恐る恐る、静かに目を開けた。





「光らないではないか。」



誰かの口からか、あきれたような落胆したような声色で、ぽつりとつぶやかれた。



そう、私が手をかざしている聖水晶は、先程と何も変わらずに透明なままだった。



「なんということだ。先ほどまでのやり取りが、まったく無意味なものになったではないか。」



「ハルウォーガン、そのような言い方をするものではない。先ほどまでの話は、仮に聖女の力があったらの場合の話だ。なかったからと言って、攻めるようない方をするべきではない。新たな聖女を擁立できないのは残念だが、はっきりとないとわかり腹をくくれるではないか。」



「……其方は相変わらず甘すぎる。これで聖女候補は、其方の娘を除いていなくなったのだぞ。」



「……それはそうだが、端から覚悟していたことだ。」



「はー……。孤児院の調査に移るが、構わないな?」



「ああ。」



イングランド様の娘さんに聖女の力が……?





いや、今はそれよりも……私には聖女の力がないということなの……? それはそうか、ないという確率の方が高いに決まってるんだ。

……私なら、この状況ならって期待した自分が浅はかだったのだ。



くそっ……。孤児院のみんなを助ける手段が、唯一の可能性が無くなってしまった。他に何か、何か……。悔しい、いったいどうすれば……。



私は自分の胸をおさえて、その場にうずくまってしまった。

様々な感情が渦まいて、胸が焼けるように熱い。



……胸が、熱い? これは、激しい感情によるもの……だけではない? 物理的にも熱くなっている。原因は……ネックレスについている緑色の石だ。何度か経験のあるこの現象は、私の感情が高ぶった時に起こっているように思える。



そう、それはまるで私の何かを必死に押さえつけるように。

であるならば、このネックレスを外せば……。

だけど、このネックレスをもらった時に、院長先生はいつ何時でも身につけている様にとおっしゃった。それを外すということは、院長先生との約束を破ることになる。もう何度も熱を帯びさせ、一度であるが光らせてしまったこともある。



院長先生御免なさい、私は先生との約束を破ってばかりだ。今回もまた、破ってしまいます。みんなを助けるために、そして、私の道を進むために。





「……皆様、申し訳ございません。もう一度だけ、もう一度だけでいいですので、私にチャンスをいただけないでしょうか?」





私がそういうと、周りの上位者の皆様からの厳しい視線が突き刺さった。





「チャンスだと? 聖水晶による判定は、何度かやって結果が変わるものではない。時間の無駄だ、却下する。」



「一度だけ、お願いいたします! 次は、このネックレスを外して試させてください!」



私はそういいながら、首元のネックレスを引っ張り出した。

その瞬間、首元の熱がスーッと引いていくのがわかった。



私が首から引っ張り出したネックレスを見た瞬間、部屋にいる皆さんが目を見開いた。



「其方……その純度の高い風の魔石をいったいどこで? 孤児院で育った其方が、魔石などをいったいどこで手に入れたのだ?」



「これは……その……。」



院長先生からもらったと素直に言っていいのだろうか? 別に、孤児院の者が持っていてはいけないというものでもないだろうし、神殿内でも魔石は使われているものだし……。

でも、この雰囲気話してはいけないような気がするな……。





「話せ。」





話すのをためらっている私にしびれを切らしたのか、神官長が厳しい表情と共にそういった。



孤児で側仕えの私にとって、神官長の命令は絶対だ。ごまかし切るのは……難しそうだ。



「これは、院長先生にいただきました。」



「ほう、孤児院長が其方にな。他の孤児たちにも渡しているものなのか?」



「……いいえ、私にだけかと存じます。」



「渡すときに、孤児院長は其方に何か言ったか?」



「……はい。熱を帯びたら一切の行動を止めることと、決して光らせてはいけないとおっしゃいました。」



私がそういうと、またもや部屋の雰囲気が厳しいものへと変わった。そして、神官長が私に詰め寄ってきて手のひらを私に突きだした。



「その魔石をすぐにみせなさい。」



「か、かしこまりました。」



私は神官長のあまりの迫力に驚きながらも、ネックレスを神官長に差し出した。



神官長は受け取ったネックレスの魔石部分を、念入りに調べ始めた。イングランド様も神官長のそばに寄っていき、魔石部分を注意深く観察し始めた。



「ハルウォーガン、これはおそらく……。」



「ああ、その可能性が高い。『アウストラリラス』。」



神官長が何やらそうつぶやくと、どこからともなくナイフのようなものが出てきた。



……何、いったいどこから出てきたの? 神官長ってば、手品までできたの!?



って、何をしているの!?

突然出てきたナイフへの驚きは吹き飛んで、今神官長が行おうとしていることにへと頭がいっぱいとなった。



「し、神官長! そのネックレスは、院長先生からいただいた大切なものです! 傷つけるようなことは……」



「いいから見ていろ。傷つけるわけではなく、表面を削り取るだけだ。」



表面を削り取る……? その言い方はまるで、魔石部分の表面に何かがついているみたいな言い方じゃ……。



すると、神官長はどこからともなく現れたナイフで、魔石の表面部分を削りだした。



……え? 削り取るにつれて、緑色の部分は少なくなり、黒色の部分が増えていった。

一体どういうことなの? あの黒い部分は、核かなにかなのだろうか? だとしても、核の部分をわざわざ見せる必要とはいったい……。



すると、イングランド様が一つ息を吐いて、ぼそりとつぶやいた。



「間違いない、闇の魔石だな。それも、純度がかなり高い、な。」



「ああ、そうだな。しかも、過去に禁止となった「聖女の力を偽る」方法そのものだ。」



闇の魔石……? 闇というからには、闇という言葉のイメージからすると、黒色があの魔石の本来の色ということなのだろうか。

それに、聖女の力を偽る方法って、一体どういうことなの? 



わからないことや新しいことばかりで、頭がもういっぱいいっぱいだ。

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