秘密の娘を身籠りましたが、御曹司の執着愛が強すぎる。逃げ切るつもりが、失敗した結果

桜城恋詠

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3・俺だけの、運命の女神(6年前・武彦)

運命の女神(3)


「結婚しよう」
「はい?」
「君を深く、愛している」
「ええ……!?」

 昨夜触れたくて、仕方がなかった。
 そんな小さな指先に触れ、己の口元へと近づける。
 そこへ唇を寄せた直後――キスをされた本人だけではなく、その場にいる誰もが悲鳴を上げた。

「なんで結月さんが、ジュニアに告白されてるの!?」
「地味女のくせに……!」
「あんなに美人だなんて、聞いてない!」

 女性職員達は俺がいるのも忘れて、文句ばかりを口にする。
 このままでは、最愛の女性に危害が及びかねない。
 そう危惧し、戸惑う希美を軽々と抱き上げた。

「わ……っ!」
「燈。彼女の荷物を纏めてくれ」
「承知いたしました」
「役員室には、誰も近づけるな」
「仰せのままに」

 燈と会話を続けている間も、彼女は目を白黒させて驚いていた。
 そんな姿も、ペットショップから飼い主の元に初めてやってきた小動物のようで愛らしくて仕方ない。

「あ、あの! これ、何かの間違いですよね!?」
「いや?」
「だって。総務部には、私なんかよりもずっと素敵な女性の方達が、たくさん……!」
「どれほど目麗しい容姿であったとしても、内面が醜ければなんの意味もない」
「わ、私だって……っ」

 希美はどうにかして俺の手から逃れようと、あれこれ適当な理由をつけてくる。
 しかし、それらはすべて無駄でしかない。
 腕に抱いた時点で、手放す気などなかったのだから…。

「君は俺に、一切気のある素振りを見せなかった」
「そ、そんなの……! 当たり前、ですよね?」
「生まれて初めてだ。この俺を見て、好意を抱かなかった女性は……」
「ええ……?」

 彼女は「なんて自意識過剰な男なのだろう」と引いている。
 しかし、それが惚れた理由なのだから仕方がなかった。

 ――この子を逃したら。
 もう二度と、稀有な女性には出会えない。
 消去法や妥協で燈と結婚することになるくらいだったら、俺はなんとしてでも彼女と籍を入れたかった。

 そんな思考に苛まれながら、役員室に彼女を運び込んで鍵をかけた。

「か、鍵……っ。な、んで……?」
「あられもない姿を、誰かに見られたくなどないだろう?」
「ぁ……っ!?」

 希美をソファに優しく横たえて覆い被されば、ようやく己の身に危機が迫っていると気づいたようだ。
 胸元を叩いて押しやろうとするが、か弱い力では俺を退かせるわけがない。

「俺に抱かれるのは、嫌か?」
「ん……っ。だ、って……! 私達、昨日始めて会話をしたばかりで……!」
「これからたっぷりと時間をかけて、知っていけばいい」
「ゃ……っ。で、でも……っ!」

 彼女が戸惑うのも無理はない。
 御曹司なんて肩書きには、一切興味などなかったのだから。

 ――本当はゆっくりと時間をかけて、愛を育みたい。

 だが、そんな悠長なことを言っている間に希美がほかの誰かと恋仲になったらと思うだけでも、腸が煮えくり返る。
 それほどまでに愛してしまったら、身体から籠絡しようと考えるのは無理もないことだった。

「なぁ……。いいだろう……? 俺は自分で言うのも難だが、優良物件だ。いずれこの会社を継ぐ。部下達からの信頼も厚く、女には困っていない」
「だ、だったら……! なんで、私なの……!?」
「仕方ないだろう? 好きになってしまったのだから。恋をする気持ちは、誰にも止められない」
「そ、かも……っ。しれま、せんけど……!」
「駄目か?」

 彼女から同意を引き出すために、ありとあらゆる手段を講じた。
 何度も好きだと愛を囁いたし、己のものだと言い表すため、身体の至るところに所有印を刻み込んだ。

「ん……っ。片平、さ……っ」

 顔を真っ赤にしながら恥ずかしがる姿すら、愛おしくて堪らない。
 俺はもっと彼女のあられもない姿を引き出したくて、どんどんと行為をエスカレートさせていく。

「なぁ……。いいだろう……?」

 とろんと熱を帯びた瞳が、こちらをじっと見つめている。
 彼女は長い間逡巡していたようだが――。
 やがて、コクンと頷く。

「初めて、なので……。優しくして、ください……」
「もちろん。君の身体に刻み込んでやる。俺がどれほど君を愛しているか……。隅々まで、余すことなく……」

 こうして俺達は、合意の上で肌を重ね合わせた。

 ――俺の子を、孕め。
 そうすれば、愛する人を永遠に縛りつけておけるのに……。

 そんな想いをいだいて欲張り、避妊をしなかった結果――あんな悲劇に見舞われるなど、知りもしないまま……。

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