寝取られるくらいなら、抱いてやるよ 幼馴染の執着愛に囚われて

桜城恋詠

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6・香帆の嘘

幼馴染の不穏な行動・1

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(ただでさえ飲みすぎて、二日酔いなのに……。顔見知りの常連客が総支配人として出向してくるわ、面談中に告白されるわ……もう、散々なんだけど……)

 香帆はガンガンと痛む頭を抑えながら通常通りの業務に勤しむ中で、昨日までに起きた目まぐるしい出来事を回想する。

(これも全部。渉が人目を憚らずに、交際相手とキスなんてするからよ……)

 うんざりとした表情を浮かべて愛する幼馴染を恨めしそうに睨みつけようとした彼女は、あることに気づく。

(あれ? 渉がいないわ……)

 フロントにいるはずの幼馴染は、忽然と姿を消していた。

(総支配人との面談は、とっくに終わったはずなのに……)

 かれこれ三十分も姿が見えないともなれば、どこかでサボっていると考えるべきだ。

(まさか、交際相手とよろしくやっているんじゃ……?)

 再び気分が落ち込むような光景を脳裏に思い浮かべた香帆は、深いため息を溢して頭を悩ませる。

(自由奔放な渉なら、やりかねないわね……)

 ホテル・アリアドネの風紀を乱すような行動を何度も繰り返すのであれば、幼馴染である香帆から注意をするべきだ。

(仕方ないわ。探しに行きましょう)

 そう決意した彼女は、休憩ついでに渉を探しに出かけた。

(もう。渉ってば。どこにいるのかしら……)

 休憩室を覗いてみたが、彼の姿はどこにもない。

(入れ違いでフロントに戻ったのかも……)

 幼馴染を探すのは諦め、フロントに戻ろうとした香帆は──。

「ああ。こんなところ、一分一秒も居たくないね」

 苛立つ渉の声を耳にして、足を止めた。

「誰が聞いているかわからぬ場所で、そんなことを言うのはやめなさい」
「別に、バレたって構わねぇよ」
「相原くん……」

 壁から顔だけをひょっこりと出し、香帆は声がした方向へ視線を巡らせる。
 そこには1108号室に宿泊中の山田やまだに軽口を叩く、渉の姿があった。

(お客様に、なんて口の利き方をしているの……!?)

 香帆は思わず、驚愕で目を見開いたが──会話に割って入り、宿泊客の前で幼馴染を叱りつけるわけにはいかない。
 彼女は二人が立ち去るのを待った。

「あの女には、オレから言っておく」
「すまないね……」
「心にも思ってないことは言うなよ。不愉快で仕方ねぇ」

 宿泊客の山田は毎年この時期になると決まって二泊する、常連客だ。
 滞在中は必ず幼馴染を呼び出すほど、彼を気に入っていた。

(いくら孫に似ていると言われて好かれているからって、あの態度はないでしょ……!)

 香帆はモヤモヤとした気持ちを抱きながら、急いでフロントへ戻った。
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