エリート海上自衛官は秘密の息子ごと、保育士の妻に海よりも深い愛を注ぎ込む

桜城恋詠

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2・6年後に再会

披露宴の終わり(1)

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(清広さんは、新郎側の招待客だって言ってた……。私達とは、テーブルが違うはず……)

 このままずっと一緒になどいられるわけがないと戸惑う元婚約者の様子など気にせずに新婦友人席を素通りしかけたところ、そちらの方向からつぐみを呼ぶ声が聞こえてきた。

「あっ。金沢さん! こっち!」
「清広さ……」

 彼女の呼びかけに応えるため、つぐみは歩みを止めた。
 その後、清広に繋いだ手を離してもらって広春を預かろうとした。

「つぐみは、こっちだ」

 しかし、彼はこちらの思い通りに行動をしてくれなかった。
 ここで別れたら、二度と会えない可能性が高いと危惧しているのだろう。
 首を振った清広は、新婦友人席とは真逆の方向に歩き出した。

 (どこへ、連れて行くつもりなの……?)

 困惑したつぐみが不安そうな顔で彼と手を繋ぎ、息子とともに辿り着いた先は――。

「目黒さんから大目玉を食らう準備は、できました?」
「ああ。愛する人の危機を救えるなら、俺はどうなっても構わない」
「かっこいいこと、言うじゃないですか」

 新郎友人席だった。
 6人掛けの丸テーブルには清広と同じ制服を身に纏う、4人の男性が腰かけている。

「座ってくれ」
「あ、あの……」
「いいから」

 彼は空いている椅子に座るようつぐみへ促すと、広春を抱きかかえたまま彼女の隣に腰を下ろす。

 (本当に、いいのかな……?)

 白と黒の制服を身に纏った彼らの中で、1人だけドレスを纏うつぐみは、明らかに場違いだ。

 (不安な気持ちを表に出していると、広春がぐずりだしてしまう……)

 今のつぐみは、5歳の子どもを産み育てる母親なのだ。
 凛々しくあるべきだと己に何度も言い聞かせて平常心を装い、渋々清広の隣で披露宴に参加することになった。

 (清広さんの気持ちは、本当に嘘じゃないなの……?)

 どれほど好意のある素振りを見せられたとしても素直に受け入れられないのは、一度裏切られた経験があるからだ。
 つぐみは簡単には、彼を信じることなどできなかった。

『新郎新婦の、ご入場です!』

 ――疑心暗鬼のまま、披露宴が始まる。

 息子が清広の膝の上で大人しくしてくれたおかげで、どうにか一度も中座せずに披露宴へ参加し続けることができた。

 (目黒先生の花嫁姿、綺麗だったな……)

 新郎新婦の姿を目にしたつぐみは、清広の隣でウエディングドレスを身に纏う自分の姿を想像した。

 (もう一度、本当に……。やり直せるの……?)

 ――今も、昔も。

 つぐみが誰かの花嫁になりたいと願った時、思い浮かべる相手は清広だけだ。

 (素直な気持ちを、伝えればいいだけだって。わかっている……)

 別れを切り出された当初はこのうえない喪失感に襲われたが、今となっては何も感じない。
 つぐみにとって6年間と言う歳月は長く、彼と過ごした楽しかった思い出すらも早く忘れたい黒歴史でしかなかった。

 (清広さんと一緒に過ごせるようになれば、広春も喜んでくれる。私だって、あの時のように心の底から彼を好きだと言えるかもしれない……)

 片親のまま子どもに寂しい思いをさせるくらいなら、にこのまま子どものために夫婦として関係を構築するべきだと頭ではわかっている。

 (たとえ、それが最善だとしても……)

 当時の謝罪すらまともにしていない状態で、何事もなかったかのように愛を囁く清広を、どうしてもつぐみは許せなかった。
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