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2・6年後に再会
もう二度と、離さない (2)
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「清広さんって、本当に不誠実だね」
「そうだな。これからも俺は、君に不義理をし続けるだろう」
「それがわかっているなら、なんで好きなんて言うの?」
「一度は身を引いた。しかし、二度目は……。つぐみを愛しているからこそ、向き合いたい。そう願った。それでは、理由にならないか」
つぐみは清広を愛しているからこそ、一緒に居たい。
しかし彼は、己を愛してはいるが永遠にそばへはいられないと言う。
(意味が分かんない……。結局、清広さんは私と一体どうなりたいの……?)
いつまで経っても、どちらかが譲歩しなければ終わらない言い争いが続く。
そんな両親の姿をじぃっと見つめていた広春は、不穏な空気を悟ったのだろう。
ついに、泣き出してしまった。
「ママ……。パパと、喧嘩しないで……!」
そんなふうに懇願されたら、口論を止めるしかなくなってしまう。
つぐみはその場へしゃがみ込んで子どもと目線を合わせると、申し訳なさそうに謝罪した。
「ごめんね」
「じゃあ、仲良くしてくれる?」
「すぐには、できないかもしれないけど……。広春が応援してくれたら、頑張れそうな気がする」
「わかった! じゃあ、たくさんママに、頑張れって言う!」
「広春は、いつも笑顔でいてね。ママは、いつだってあなたの幸せを一番に考えているから……」
「うん!」
清広との復縁が、息子の幸せに直結するのだとしたら――。
彼を拒絶してばかりもいられない。
つぐみがどこか悲しそうに眉を伏せて納得すれば、その決断を喜んだ元婚約者が小さな指先に己の大きな手を絡めて愛を囁く。
「もう二度と、離さない」
そのあと繋いだ手を持ち上げ、己と視線を合わせたまま――手の甲に、口づけた。
「……っ」
これには思わず言葉をつまらせてしまい、顔を真っ赤にしながら恥ずかしがる。
(や、やだ……っ。広春だって、見ているのに……!)
清広からこんなふうにストレートな好意を向けられた覚えなど、婚約者時代にすらなかったからだ。
(顔を合わせていない間に、どんな心境の変化があったの……?)
同年代の男性に比べると少しだけぶっきらぼうで、無口。
機嫌がいい時ですらも仏頂面なことが多く――いつまで経っても心の距離が縮まらないような錯覚に陥っていた。
(清広さんを好きなのは私だけで、彼からは妹のようにしか思われていないはずだったのに……)
2つ年下のつぐみの手を引っ張っていくと言うよりかは、そっと隣で歩幅を合わせて寄り添ってくれる。
そんな青年が、同僚との口論をきっかけにもの凄い勢いで距離を詰めてくるのだ。
(6年も離れて暮らしていたら、彼が知らない男の人に見えるのは、当然なのかな……)
つぐみはまるで人が変わったとしか思えぬ清広の変化をうまく受け入れ切れぬまま、彼の告白をぼんやりと聞いていた。
「つぐみは俺のものだ。誰にも渡さないし、傷つけさせない」
真っ直ぐとこちらの目を見て紡がれた言葉は、これまでずっと待ち焦がれていたものだった。
(6年前に、言ってくれたら……)
しかし――。
今となっては、その気持ちに応える気になどなれない。
なぜならばつぐみは、彼に対する想いを断ち切るために子どもを連れて実家を出たのだから……。
「愛している」
たとえどれほど愛を囁かれようろも素直に喜べない。
そんな少女は目を合わせ続けていることすら億劫になり、清広から視線を逸して無言を貫いた。
「ママ……? どうして、パパの言うこと、無視するの……?」
「気にしなくていい。俺がただ、伝えたかっただけだからな」
「でも……。よくないことだって、いつもママは僕に怒るのに……」
「今日は、特別だ」
「そうなの?」
「ああ。そろそろ、時間だ。会場に向かおう」
「うん!」
彼は子どもの純粋な疑問を慣れた様子で納得させ、つぐみと手を繋いだまま会場へと移動する。
「そうだな。これからも俺は、君に不義理をし続けるだろう」
「それがわかっているなら、なんで好きなんて言うの?」
「一度は身を引いた。しかし、二度目は……。つぐみを愛しているからこそ、向き合いたい。そう願った。それでは、理由にならないか」
つぐみは清広を愛しているからこそ、一緒に居たい。
しかし彼は、己を愛してはいるが永遠にそばへはいられないと言う。
(意味が分かんない……。結局、清広さんは私と一体どうなりたいの……?)
いつまで経っても、どちらかが譲歩しなければ終わらない言い争いが続く。
そんな両親の姿をじぃっと見つめていた広春は、不穏な空気を悟ったのだろう。
ついに、泣き出してしまった。
「ママ……。パパと、喧嘩しないで……!」
そんなふうに懇願されたら、口論を止めるしかなくなってしまう。
つぐみはその場へしゃがみ込んで子どもと目線を合わせると、申し訳なさそうに謝罪した。
「ごめんね」
「じゃあ、仲良くしてくれる?」
「すぐには、できないかもしれないけど……。広春が応援してくれたら、頑張れそうな気がする」
「わかった! じゃあ、たくさんママに、頑張れって言う!」
「広春は、いつも笑顔でいてね。ママは、いつだってあなたの幸せを一番に考えているから……」
「うん!」
清広との復縁が、息子の幸せに直結するのだとしたら――。
彼を拒絶してばかりもいられない。
つぐみがどこか悲しそうに眉を伏せて納得すれば、その決断を喜んだ元婚約者が小さな指先に己の大きな手を絡めて愛を囁く。
「もう二度と、離さない」
そのあと繋いだ手を持ち上げ、己と視線を合わせたまま――手の甲に、口づけた。
「……っ」
これには思わず言葉をつまらせてしまい、顔を真っ赤にしながら恥ずかしがる。
(や、やだ……っ。広春だって、見ているのに……!)
清広からこんなふうにストレートな好意を向けられた覚えなど、婚約者時代にすらなかったからだ。
(顔を合わせていない間に、どんな心境の変化があったの……?)
同年代の男性に比べると少しだけぶっきらぼうで、無口。
機嫌がいい時ですらも仏頂面なことが多く――いつまで経っても心の距離が縮まらないような錯覚に陥っていた。
(清広さんを好きなのは私だけで、彼からは妹のようにしか思われていないはずだったのに……)
2つ年下のつぐみの手を引っ張っていくと言うよりかは、そっと隣で歩幅を合わせて寄り添ってくれる。
そんな青年が、同僚との口論をきっかけにもの凄い勢いで距離を詰めてくるのだ。
(6年も離れて暮らしていたら、彼が知らない男の人に見えるのは、当然なのかな……)
つぐみはまるで人が変わったとしか思えぬ清広の変化をうまく受け入れ切れぬまま、彼の告白をぼんやりと聞いていた。
「つぐみは俺のものだ。誰にも渡さないし、傷つけさせない」
真っ直ぐとこちらの目を見て紡がれた言葉は、これまでずっと待ち焦がれていたものだった。
(6年前に、言ってくれたら……)
しかし――。
今となっては、その気持ちに応える気になどなれない。
なぜならばつぐみは、彼に対する想いを断ち切るために子どもを連れて実家を出たのだから……。
「愛している」
たとえどれほど愛を囁かれようろも素直に喜べない。
そんな少女は目を合わせ続けていることすら億劫になり、清広から視線を逸して無言を貫いた。
「ママ……? どうして、パパの言うこと、無視するの……?」
「気にしなくていい。俺がただ、伝えたかっただけだからな」
「でも……。よくないことだって、いつもママは僕に怒るのに……」
「今日は、特別だ」
「そうなの?」
「ああ。そろそろ、時間だ。会場に向かおう」
「うん!」
彼は子どもの純粋な疑問を慣れた様子で納得させ、つぐみと手を繋いだまま会場へと移動する。
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