異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿

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第4章『猫耳貴族を復興させる事にした』

マキの覚悟と父親の静かなる狂気

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「それじゃあ始めるぞ…最初はグー……」

ユートの掛け声と共に二人は片手を差し出し手を握る
普通ならば一瞬で終わるこのゲーム…だがしかし、マキは今不思議な体験をしていた

ユートや周りにいる者の動きが急激に遅くなり、脳の回転が異常に早くなっているのがわかる
今ならば宇宙の真理さえも理解出来るのはないかと思える程に頭が冴え渡る

マキは知っている
ユートが先日同じ様なゲームで指を全て失ってでもカネを得たことを…

マキは知っている
ユートが大人しく『グー』を出すなんてありえない事を…

※※※

ならばどうする
簡単な事だ、相手が出す手を予測してそれに負ける様に手を出せば全てが元通り…実に簡単な事だ…

簡単すぎで吐き気すら覚える
そう…負けるだけ…さっきから負けてきているのだから、もう負けても何にも感じないだろう…

……ふざけるな
負けるのに慣れるギャンブラーがどこに居る…今し方こいつから散々言われた事だろう…勝たなければならない

そう勝たなければ…だが、勝った所でなんだ?
勝っても得るのは先程自分が嵌められた手を知るのみ…少しも自分が得をしないじゃないか…今更理由を聞くのも馬鹿らしい…

勝つのも無意味、負けるのは嫌
ならばどうする…【現状維持のあいこ】しかないじゃないか

そう…停滞するんだ…待っていればまたチャンスは訪れる
だけど…それでチャンスが来なかったら? 後悔するだろう…何であの時あいこにしたんだろう…と

駄目だ…わからない…どうする事も出来ない


違う……違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う

そうじゃない…そうじゃないだろ?
深く考え過ぎているのだ…落ち着けば直ぐにわかることじゃあないか…勝つ事に意味は無い?

否だ…断じて否だ
ここで負ければ全てを取り返すのかもしれない…だがそうすれば、俺様はこのまま一生勝つ事は出来なくなる気がする

そう、勝つ事にしか意味は無いのだ
こいつに勝って…また一からやり直せば良い…時間は限られてはいるが不可能な話ではない

※※※

覚悟を決めたマキが次に考える事…それはユートが何を出すかになる

このゲームでユートが最も得をする手は【現状維持のあいこ】なのは明白である
それならば話は簡単だ…ユートはチョキを出すだろう…だがそれは素直に考えるのならの話なのだ

ユートが素直にバカ正直に出すなど到底考えられない
マキが考えたシナリオはこうである

①ユートの手の裏を読んで『グー』を出す
②しかしユートは本当は手を変えずに普通に『グー』を出す
③あいこになって終わり

見切った…勝った
そう確信しユートの顔を見た瞬間、マキは青ざめる
何を勘違いしていたのだろうか…と

マキはまた深く考え過ぎだのだった
深読みし過ぎてマキは損をする所だったのだ

マキは今結果のみに着目して、肝心な出す手の事を考えていなかった

ユートが言ったのは【チョキなら返還】【パーなら理由のみ】としか言っていない…ジャンケンの勝敗については一つも明言していなかった

それならばもう…迷う事はない…マキが出した手は…

『パー』覚悟を決めたマキにとっては、持ち物の返還よりも価値がある結果となるモノだった

「どういう事だ、なんでお前は『チョキ』を出してるんだ?」

ユートが出した手は『チョキ』、ジャンケンの結果としてはマキの負けであった

「っ……ふざけんなよ…お前この期に及んで……」

マキは怒りが頂点に達し、ユートを殺す為に戦闘態勢を取ろうとするが…

「あ~残念だわ~…間違えてチョキを出しちまったわ~」
「マキの負けだから返還しなくちゃな~」

ユートがそう言うと、先程のゲームで得たモノの全てが返還される
何が起こったのかわからず混乱しているマキに更に追い打ちがかかる

「あぁそうだ、さっきのゲームだけどな」
「俺がやったのは必勝のルールを忍び込ませただけだ…」

・アルカを賽人サーヴァントにする事
・役以外の出目【等】が出たらユートと勝ち

大前提として前半のルールが無ければ勝つ確率は極端に下がる為、アルカに決まった時点で勝ちはほぼ揺るがなくなった
そして、後半のルールによりアルカに耐えきれないようなプレッシャーを与える事により肩に力を入れすぎて『ションベン』が出るようにした

「でも…一つ気がかりもあったんだ」
「E―666が『ションベン』を役として見るか…手として見るか…それだけでさっきまで築いた布石は粉々になる可能性もあった」

ユートがそう言ってE―666にバトンをパスした様に目配せすると、今度はE―666がやれやれといった表情を浮かべてから話し始める

勝者キングユート様がルールを説明する際、ションベンと呼ばれるモノを役とは説明しておりませんでした』
『よって、当機は勝者キングユート様に軍配を上げました』

これで良いだろと言わんばかりのドヤ顔を見せ付けるユートに、マキは訳もわからず混乱していた

「は? お前はパーを出したんだから理由を説明するのは普通だろ?」
ユートは何言ってんの? と顔でも表現しながら手をひらひらとさせながらその場から去ろうとする

そんなユートの後を、アルカ…パサル…ゼロ…クロウディア…オウミの順に追っていく
マキはユートの後を追っかけてどういう事か聞こうとするが…トシイエによって止められる

「これ以上聞くのは野暮ってモノだよ」
「彼は君を勝手に試して…勝手に納得して…勝手に帰ろうとしているんだ…それを止めるのは…最低でも君はダメだと思うけど」

トシイエの言葉を聞き、マキは初めこそ意味は分からなかったが…段々と理解して言った

 ―そうか…落ち着けば何でもわかるじゃないか

マキはそう思った瞬間、ついつい頬が緩みクスクスと笑い出す
そして、マキは《十二神獣》で【子】を呼び出しアルカの父母がいる部屋に先回りして伝言を頼む

「トシイエ、俺様は決めたぞ…俺様は旅に出る事にする」
「俺様はまたこの世界中を今まで自分で決めていた限界を超える旅に出る…その時には…お前も来てくれないか」

トシイエは一瞬え~といった顔をするが…真面目な雰囲気に押され半笑いしながら了承したのであった



__________________________________


「ここにいるのか…アルカの両親が……」

事前に教えられていた部屋の前にやってきたユートは…部屋の前でずっと中に入るのを渋っていた
それも当然だ、経緯はどうであれ…両親に挨拶もなしに勝手に結婚したとあれば普通の父親ならば大噴火するだろうからだ

いざ挨拶となると…ユートと言えど緊張に押し潰される
隣でアルカも先程から声を発さずにガクガクと震えている

「………ええい!!ままよ!!!」

ユートが扉を開けると…そこにいたのは豪華な白装束に身を包み、まさに高貴な貴族そのものの格好で大きな赤いソファーに座っていた

「……アルカ…アルカなのか?」

父親らしき髭を生やした男がフラフラと立ち上がり、ユートの隣にいるアルカの元へと歩み寄る

「うん…そうだよ…パパ……」

アルカも恥ずかしそうにもじもじとしながらラニオスの問いかけに応じる…すると、ラニオスはアルカの事を強く抱き締め泣き始める

「うぉぉぉぉぉん!! 長い間寂しい思いをさせてすまなかったアルカァァァァ!!!」

そんな姿を見ているユートは…空気を読んで部屋を退室するのが正しいと思い部屋を出ようとするが…ラニオスによって止められる

「待ちたまえ…君がユート君だね?」
「うちの娘が大変世話になっているようだね…所で…?」

ギリギリと軋むような音をたてながらユートの肩をつかむラニオスの手は…先程まで泣き喚いていたとは思えない様な鬼神の如き勇ましさを感じる

「え~…いや、その件に関しては俺も一種の被害者な訳でして~…」
「うちの娘と結婚するのに被害者だと? それも踏まえてたっぷりと…で話をしようじゃないかねぇ?」

ユートは助けを求めようと部屋の外に待機しているパサル達にヘルプを出すが…全員ぷぷぷといった嘲笑の顔を浮かべて突き放す
アルカに至っては母リーディアの膝の上でキャッキャウフフしている

そう言えば…何でニュクスの中にずっといたラニオス達が結婚のことを知っているのか疑問に思っていると…部屋の隅に【子】の姿があった
どうやら…マキが子に頼んだ伝言とは…ユートの無断結婚のようだった

「マキィィイ!! あの女ァァァァァ!!!!!」
ユートの魂の叫びは…ラニオスの恐怖の笑によって掻き消されその後一晩中ねっぷりたっぷりと話を聞かされる事となったのであった
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