とある最強盗賊の苦悩

水色の山葵

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第一章 記憶

1話 貴方が私に会う日まで

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「なあ、プランター。俺は正しいのか?」

「はい。貴方はただ……」


 俺は異世界から来た転移者だ。
 ゲーム中に起こったその災害に、俺は歓喜した事を覚えている。
 なぜって? 決まっている。
 彼らと別れずに済んだからだ。
 俺がやっていたゲームはTCGとRTSを融合したようなゲームで、そのサービス最終日にそれは起こった。
 俺はそのゲームの能力を保持したまま、いやむしろ強化されてこの世界へとやって来た。
 最終日までそのゲームに入れ込んでいた理由は、確かフィールドに隠された特殊ユニットレアカードを探していたとかそんな理由だった気がする。

 そしてその目的を完遂した俺は、対戦中に別世界へと転移していた。
 
 ゲーム通りユニットを召喚してみると、それは言葉を話し感情を有していた。
 そんな馬鹿げた話を俺は最初素直に受け止める事は出来なかった。
 それでも何とかここまでやって来た。
 拠点のレベルは最高レベルの10を突破し、100まで上がっている。
 資金も最大量の一億を突破し、数兆の金貨が貯蔵庫に眠っている。
 ユニットも最大レベルの10を突破し、何人かは100に、殆どが50を超えている。

 そして今から、俺はこの能力で人を殺める。
 俺とオンラインで対戦中だった三人の転移者、俺と同等の権限を有し、騎士、魔法使い、アンデットを操った彼らは俺と相容れる事は無く、俺の最強の僕「奪神・プランター」によって滅ぼすのだ。
 その能力は「この世界で使用された全ての魔法の使用」。
 ゲーム時代なら、他のプレイヤーが一度でも使った魔法を自分も使えるようになるという能力だったが、今は違う。
 本当の意味で言葉通り、この世界で使用された事のある全ての魔法を使用できるようになるのだ。
 流派も属性も波動も制約も関係ない。
 俺の転移した世界は魔法という技術が発達した世界だった。
 そんな世界で、誰が開発したとか関係なく、全ての魔法を使用できるプランターは無類の強さを発揮した。

 プランターは『ゼロマジック』(全魔法のリキャストが5秒になる)とか『魔法無効』(魔法による干渉を完全に防ぐ)といった能力もレベル上昇によって得て行き最後には他の3プレイヤー全てを撃滅出来るほどに至った。

「ですが、やはり主は人間です。これ以上の重荷を背負う必要はありません」

 三人のプレイヤーを殺す事で、事実上世界征服の完了を意味する寸前、プランターはそんな言葉を俺に投げかけた。

「何を言っている?」

「もしも貴方がもう一度、私を見つける事が出来たのなら……私は二度と貴方から離れません」

 奪神・プランター
 黒く長い髪は清楚な雰囲気を見せるが、その妖艶な笑みからは絶対的な自信を感じた。
 そう、一言で表すのならば「美しい女性」。
 プランターはそんなキャラクターなのだ。
 そして奪神の名に相応しく、彼女はゲーム時代でもプレイヤーの多くの好感、愛情を得ていた。
 俺だって彼女に絆された1人で、俺のデッキのメインカードに採用するほどに彼女を好いていた。

「さようなら。我が主」

 ああ、そうか。
 プランターは俺のデッキの最強ユニットだ。
 あのゲームのプレイヤーの能力値は、50コストユニット程度の能力しかない。
 俺がプレイヤーを倒せたのは、殆どプランターのおかげと言っていい。
 つまりはそう言う事だ。
 もう彼女にとって俺は必要ないと言う事なんだな。

 殺される。
 そう思った瞬間、身体全体を柔らかい感触が包んだ。
 甘い香りが包んだ。
 それがプランターによる抱擁だという事に気が付くまで、長い時間がかかった気がする。

 だけど、現実を理解した頃、耳元で彼女の声が聞こえた。
 それは魔法詠唱だった。

能力封印ステータスロック 記憶封印タイムロック 時間跳躍タイムスリップ 奪神の溺愛わたしに会う日まで


 その瞬間、俺は意識を失った。
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