とある最強盗賊の苦悩

水色の山葵

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第一章 記憶

11話 奪神・プランター

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「じゃあ殺すわ」

 シアが堕天使に近づいて行く。
 当たり前の事だ。
 俺達はそうするためにここに来たんだから。
 だけど……

「なんか違う気がする」

「え?」

 何か違和感を覚える。
 そもそも迷宮ってのはなんだ?
 思い出せ、今間違えたら全部間違う。
 考えろ、何を忘れている?

「なあ、お前の名前を教えてくれないか?」

「我が名かそんな物はとうに捨てた」

「捨てる前は、頼む名前を教えてくれ」

 それで何かが解りそうなんだ。

「騎士団長・クローバー」

「そう、か……」

「ねえ、どうしたのよ?」

「いや、大丈夫だ」

 クローバー、俺はその名前を知っている。
 俺がやっていたゲームの王国軍クラスのコスト50ユニットだ。
 だが、なんでそれがここに居る?
 なんでゲームの頃のユニットが、異世界であるはずのこの場所に存在している?
 この世界はゲーム世界と何か繋がりがあるのか?
 この世界はなんだ?

「なあシア、プランターは今も生きているのか?」

「……いいえ、三柱の神々に滅ぼされたと伝えられているわ」

 俺のやっていたゲームはプレイヤー4人が戦うバトルロワイアル形式の対戦ゲームだった。

「その三柱って」

「戦の神、魔の神、死の神の三柱よ」

 俺が最後に戦っていた相手のクラスは、王国軍クラス、魔術組合クラス、死霊軍団クラスの3クラスだった。
 つまり、この『騎士団長・クローバー』は神々の対戦で召喚されたまま放置されたユニット?
 つまり、この世界は盗賊連合クラスが他3クラスに滅ぼされた世界の成れの果て?
 いや、違う。
 答えはもっと近くにある。

「シア、ちゃんと答えてくれ」

「何よ?」

「お前、プランターなのか?」

「何を言ってるの? そんなはず無いじゃない」

「じゃあ、なんでお前はあの日森の中に居た!?」

「依頼で偶然……」

「嘘を付くな。お前は俺と組むまでずっと迷宮の魔獣を狩っていたと言ってたじゃ無いか?」

「それは、だから唯の偶然でしょ」

「なら、なんでお前は……」

「止めてよ」

「お前は、俺の服装に疑問を抱かなかった。お前は、戦士である俺が魔法を使う事に疑問を覚えなかった。何故俺のカードはお前が近くに居ないと解放されない?」

「止めなさいよ!! もういいから」

「『奪神の溺愛』に込められた”私にまた会う日まで”の言葉は俺が、お前が見つける事が出来る場所に居るという意味じゃ無いのか!?」

「そうよ! 全部、私が仕組んだわ! 主が私を嫌いになったから」

 泣き叫ぶシア。
 その髪は黒く変色する。
 その姿は、どんどん俺の知るプランターに近づいて行く。

「なあ、聞かせてくれ。何が有ったんだ?」

「千年前、貴方と他3人の異世界人がこの世界に降り立ったの」

「千年……。待ってくれ俺はそんなに爺さんじゃないぞ?」

「プレイヤーと呼ばれるスキルでその4人が歳を取る事は無いわ」

 プレイヤースキル『不老』の効果か。

「異世界に召喚された時、既に貴方は他3人のプレイヤーを滅ぼす事が出来る状態だったわ」

 俺のデッキ『プランターOMK』の条件が既に整っていたのか。

「だから、他の3人は結託したの、自分たち全てを滅ぼす事が出来る貴方だけを敵としてね。でも貴方は見事にその三柱を相手取って三人を瀕死にまで追い込んだの。私の能力でね」

 奪神・プランターが召喚されていて、さらにレベルがゲーム時代の最大レベルの10まで上昇していたとしたら、確かに可能だ。

「じゃあなんで、今俺はその記憶を持たずに千年後の今に生きているんだ?」

「それは……」

 一体、どんな深刻な理由が……

「貴方が、私の事を捨てようとするから……」

「どういう意味だ?」

 俺がプランターを捨てる?
 こんなにも愛おしく思っているのに?
 そんな訳はない。
 俺は今も昔も、彼女を見た瞬間からプランターというキャラクターが大好きなんだから。

「最初は貴方は私の能力を使って世界征服を完遂させようとしていた。なのに、徐々に貴方は私に頼らなくなっていった」

 ああ、そうか。
 ゲーム時代、ユニットはプレイヤーに絶対服従で逆らう事は無かった。
 多分、その設定がこの世界では完全な好意として存在している。
 プレイヤーは無条件で自分の召喚したユニットから好かれ、慕われる。
 でも違うよ。

「多分、俺はお前に頼り過ぎている事実が嫌になったんだろうな。今回と同じだ、俺は自分で努力しようとしたんだ」

「そんな……じゃあ私は……」

「お前は何も悪く無い」

「え?」

「悪いのは、お前の事に気が付かなかった俺だ」

「そんな……違う、違うのです! 私は、あの人達に……」

 プランターが言い終わる寸前、暗いはずの迷宮の天井が光り輝いた。
 その光から、二人の女と一人の男が現れる。

「あーあー。迷宮を攻略した奴が居るってんで来てみれば、何やってんだプランター?」

「おやおや? そこに居るのは盗賊連合のプレイヤーかな? もう目覚めてたんだ」

「どうやらそのようですね。メイフォン、話があります」

 
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