首を切られた人形師、実家で見つけた機械生命体が現れるダンジョンでメカニックとして覚醒する

水色の山葵

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第3話 最高峰探索者の戦闘

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 ブリキの迷宮の中へ入った。
 その内部は回廊の様な洞窟だ。
 きっちりと加工された石を用いて造られた洞窟型のダンジョン。
 足場は割と整っている。
 戦いやすい部類のダンジョンだ。


 ダンジョンには様々なこの世の物では無い化物が生息する。

 魔物、怪異、怪物、伝承。
 そんな風に呼称される存在。

 奴等に対抗する為に探索者は存在すると言っても過言ではないだろう。

 懐から取り出したデバイスを起動する。
 すると頭に声が響く。


『パッシブスキル:アクティブ』
『アーツスキル:レディ』


 正式名称を【役割別魔技代行実行機】。
 略式名称を『クラスデバイス』。
 そう呼ばれる探索者の必須装備だ。

 俺のは腕輪の様な形状をしている。
 クラスデバイスは脳波を受信し、使用者の任意のタイミングで予めセットされたスキルを発動させる事ができる。

 パッシブスキルと呼ばれる全デバイス共有機能が3種。
 アーツスキルと呼ばれる『固有技』が、使用者の魔力量とデバイス適合率によって定められた数だけセットできる。

 まずはパッシブスキル。

 身体強化の『ブースト』。
 魔物鑑定の『アーカイブ』。
 装備召喚の『アームズ』。

 これらが全探索者が持つ基本能力。

「兄さん、魔物が出て来たよ」

「あぁ、分かってる」

 ブリキの迷宮。
 そう俺が呼んでいるこのダンジョンに出て来るモンスター。
 それは「ブリキの人形」だ。

 伸が木製で表面はスズの様な金属で覆われている。
 武器は手足。だいたい鼻が長い。

 アーカイブのパッシブスキルが発動し、頭の中に敵の情報が流れて来る。


 種族名:ブリキの人形。
 危険度ランク:E-
 特殊技スキル:アブソーブリペア


 読み取れる情報は雑魚だ。
 このダンジョンに出る魔物は一種のみ。
 スキルに関しても「仲間の死体を吸収して自分の損傷を回復させる」という極めて単純な物。

 正直、身体強化スキルのブーストだけでも相手取れるくらいの強さだ。

 そういや元々、こいつ等のパーツを組み合わせてレイを作ったんだよな。

 だが、やる気もそんなにでない。
 最高討伐数でも狙ってみるか。

 そう決めてアーツスキルを起動する。


「【爆指人形パペット・ショット】」


 敵へ向けた俺の指先から、指人形が射出される。
 それには小さいが手が生えている。
 敵を追尾し、その体に捕まり。

 そして。


 ドカーン!


 と、爆発する。
 効果範囲は拳大程度だが、威力的にはブリキの体を抉る。

 俺が自分で戦闘する場合は、最も使い易いスキルだ。

「流石兄さんだね」

 ブリキ人形を倒すために俺が行った動作は「指を向ける」だけ。
 ま、低位のモンスターだからだけど。

「どんどん行くぞ。
 つーか、迷宮内の魔物全滅させちまうか」

「そんな事できるの?
 僕なんてまだ1日頑張っても200体が限界なんだけど」

 それでも相当すげーから心配するな。

 ただ俺も、最も強力なアーツスキルである【レイ】が居ない事で能力は大幅にダウンしている。
 が、それでもEランクダンジョン程度のソロ踏破。

「余裕に決まってるだろ?
 兄ちゃんに任せろ」

 佳にかっこつける事も兼ねて、俺は【爆指人形パペット・ショット】を連射する。

「なんか兄さんかっこつけてる?」

「……んん? 別に? いいやぁ?」

「最高峰探索者でもそういう事考えるんだね」

 そう言って桂は笑う。
 クソ、なんでバレたし。

 通路の奥から現れるブリキを撃破。
 曲がり角からひょっこりした奴を撃破。
 天井に張り付いてた奴を撃破。
 集団で襲い掛かって来た奴らを撃破。

 俺の指から発射されるパペットが、全ての敵を倒していく。

 学生時から何度も通ったダンジョン。
 その構造は体が覚えている。
 迷う事無く、全ての通路を通りながら全ての敵を倒していく。

 俺の最高討伐記録は一日で1054体。
 だけど、それは6年近く前の話だ。
 最高峰と呼ばれたギルドでトップチームに居た俺の実力は、その頃とは比較にならない。

「凄いよ兄さん、もう千体以上倒してる」

「まぁ、俺のスキルは何度も進化してるからな」

 スキルは稀に進化する。
 デバイスには使用者の肉体に合ったスキルを再構成する機能があるのだ。

 進化を重ねればそれだけ効率が増し、最大威力が増加していく。
 端的に言えばスキルはレベルアップする。

 俺の【爆指人形パペット・ショット】は第三段階スキル。
 そこらの探索者より火力が出て当然だ。

「僕なんてまだ二段階スキルが一つあるくらいだよ」

「高2でそれなら十分だって。
 ってかクラスは何なんだ?」

 俺が【人形師】である様に、デバイスには型が存在する。
 そのデバイスの種類をクラスと呼ぶ。

 人には適合性が存在し、どの種類のデバイスとの適合率が高いかは探索者の能力を見る上で重要なファクターだ。

「僕は【剣聖】で適合率は250%だよ」

「天才じゃねぇか」

 【剣聖】の有名探索者は多い。
 つまり強クラスって事だ。
 そして何より適合率だ。

 そのクラスのデバイスの能力をどれだけ引き出せるかが適合率という数値。
 殆どは適合率が最も高いデバイスを選ぶ。
 俺も人形師が一番高かったから選んだ。

 そんな俺の場合は185%。
 例えばスパークルトーチの最強。
 ギルドマスター「白夜」の場合。
 その適合率は270%。

 そう考えると桂の250という数値は、一流探索者にも遅れを取らぬ破格の数値ということだ。

「そう?
 適合率が高くて成功するより、低くて成功してる兄さんの方がずっとすごいと思うけど」

 ニコニコしながらそう言ってくれる弟。
 桂が小学生の時、ダンジョンに勝手に入ってそれを俺が助け出した事がある。
 その時から、桂はかなり懐いている。

 ダンジョン侵入から3時間。
 俺と桂はダンジョンの最奥に入ろうとしていた。

「ボス部屋だね。
 今の所、討伐数は1700体」

 ボスが眠る扉の前で桂はそう教えてくれた。

 律儀に数えてくれたらしい。
 もう既に前の記録は越えてる。
 ルートは全部通って視界に入った奴は全て倒した。

 この迷宮のリポップ時間は1日。
 それは倒した通常の魔物が復活するまでの時間の事だ。

 つまり、この迷宮には現在魔物は殆ど存在しないという事になる。

 奇麗になると掃除のし甲斐があるな。

「行くか」

「うん」

 ここのボス部屋は少しだけ特殊だ。
 ボスだけでは無く雑魚も湧く。
 ブリキの人形が10体。
 それが1分毎に追加される。

 折角数を競っているのだ。
 できる限り多く倒して見るか。

「カロカロ……」

 木が鳴る様な不快の音。
 それと共に現れたのはブリキ。
 さっきまで戦っていた通常種とは異なり、西洋風の甲冑を着込み剣と盾を持っている。

 ブリキの兵隊。
 『D-』ランクの魔物だ。

「こいつは雑魚の死体を吸収して巨大化する能力がある」

「そうなんだ。僕まだ戦ったこと無いから勉強させて貰うね」

 巨大化に伴ってランクは向上していく。
 どれ、どの程度まで強くなれるのか実験してみよう。

 デバイスには適合率と魔力量に比例した数のスキルをセットできる。
 俺の場合は、スキルは全部で6つ。
 平均は5つだから、まぁ中の上程度だ。

 それでもこの程度の敵には負けない。

 俺は二つ目のアーツスキルを使う。

「【粘土の四役兵ハニワ・パーティー】」

 そうするとその場には、俺の下僕となる四体の人形が召喚された。

 片手剣士・騎兵・衛生兵・斥候。
 四種の役割が与えられた俺の人形。
 その姿は文字通り等身大のハニワ。
 役割によって装備が異なる。
 大体強さはCランク程度。

「騎兵は雑魚を倒せ。
 他はボスを死なない程度に抑え込め」

 そう指示を出すとハニワたちは、無機質な穴の目が敵を捕らえる。
 指示に従って動き始めた。

 騎兵は馬の形状にハニワに乗っているから機動力が高い。
 攪乱される雑魚を、【爆指人形パペット・ショット】で狩って行く。

 そうして30分後。

「雑魚が湧かなくなったな」

「そうだね兄さん。
 毎分必ず10体出て来てたのに。
 兄さんの討伐数は2000になってから出なくなった」

 ボスが周辺の雑魚の死骸を吸収していく。
 アブソーブブースト。
 吸収強化のスキルだ。

 巨大化し、黒く染まったブリキの兵隊。

 変異種。強化種。
 なんて呼ばれる特殊個体ユニークモンスターだ。
 ダンジョンではイレギュラーとして扱われ、逃走が推奨される様な存在。
 しかもアーカイブが発動しない。
 オンライン図鑑に登録されてない新発見種だ。

 だが……

「行け、ハニワたち」

 人形を先行。
 後方より支援スキルを飛ばす。

 【爆指人形パペット・ショット】。
 【螺子巻き修繕リバース・リペア】。

 四体のハニワが敵を囲む。
 しかも俺の指人形が弧を描くように敵に命中する。
 指人形には弾道制御と追尾機能がある。
 つまり、味方を避け、敵を追う。

 更に修繕のスキルでハニワは一撃で倒れない限り修復されていく。

 要するに。

「すご……」

「この程度の相手に負ける事はねぇさ」

 かっこつけてそう言っていると、『ブリキの兵隊』は最後の足掻きとばかりに黒い電撃をハニワにぶつけた。

 まぁ、剣士が盾で受け止めたけど。
 そいつを俺と衛生兵の能力スキルで即時回復させる。
 少しだけ絶望に停止したブリキの兵士。
 剣と槍が腹を貫き、短刀が首を飛ばす。

「ま、こんなモンだな」

 横目で桂を見てそう言うと、桂の視線がある一点を見つめている事に気が付いた。

「ねぇ兄さん、あれは何?」

 その視線の先を俺も追う。
 そこには、ここにある筈の無い門が鎮座していた。
 それはまるで【異界門】に酷似している。

 裏ダンジョン。

 そんな言葉が頭を過った。
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